【文徒】2016年(平成28)5月24日(第4巻94号・通巻781号)

Index------------------------------------------------------
1)【記事】〈大震災〉出版対策本部が熊本地震に際して新たな活動を開始
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

                                                                            • 2016.5.24.Shuppanjin

1)【記事】〈大震災〉出版対策本部が熊本地震に際して新たな活動を開始(岩本太郎)

2011年3月の東日本大震災発生直後、当時の日本書籍出版協会の理事長と副理事長だった相賀昌宏(小学館)と菊池明郎(筑摩書房)、日本出版クラブ会長の野間省伸講談社)の3人が話し合い、出版界が一体となって震災の復興に取り組むことを確認し、その中核組織として「〈大震災〉出版対策本部」を立ち上げた。後にここに日本雑誌協会の理事長(当時)の上野徹が加わって書協・雑協・出版クラブの3団体で、2013年夏には読書推進協議会も加わった4団体で構成されることとなった。当初は震災から5年となる今年2016年を目安に解散する予定だったという。
ところが先月14日以降、熊本・大分を中心とする強い地震が断続的に発生し、なおも地元では被害が深刻で復興には長い時間を要する状況にあることを踏まえ、このほど当初からの名称はそのままに、新たな取り組みに乗り出すことになった。
昨日5月23日、神田駿河台の日本雑誌会館に本紙を含む各業界紙誌を集めて行った記者会見では、同対策本部がこれまで募金を呼び掛けつつ東日本大震災被災地への支援活動を行うために供されてきた「大震災出版復興基金」より、熊本・大分地震被災地への支援にも原資を充てることを決定した旨が、冒頭で挨拶に立った同対策本部メンバーの鈴木宣幸(講談社出版総務局長)より報告された。
もとより、同対策本部によるそうした支援活動には趣旨からして異論や反対意見などさほどなかろうと思われるが、正式名称でうたった〈大震災〉が東日本大震災を指しており、主に東日本の被災地を支援するために設立された組織や基金を、別の地域で起こった災害への復興にあてるとなれば、やはりきちんと一つの手続きは踏んでおいたほうがよいとの判断が内部での議論を経てなされたようだ。
最終的には上記の構成四団体のトップからなる常任委員会のメンバー3人、書協からは相賀昌宏、雑協からはマガジンハウス社長の石崎孟、出版クラブおよび読書推進運動協からは野間省伸が今月18日の会合で協議。その席上では相賀からも「こういうお金を熊本のために使うと言って『約束違反だ』と反対する人はいないでしょう」との発言があるなど全員の賛同が得られたことから、今回の地震被災地支援にも基金があてられることになったという。
ちなみに、当初は東日本大震災被災地用とは別に熊本・大分地震への支援募金用の新たな銀行口座を開設することも検討されたが、これも常任委員会での決定も踏まえつつ従前からの口座にて募金を行う形にしたとのこと。これについて、同じく対策本部メンバーである原本茂(小学館監査役)は「業界として何か支援をしていく場合に、業界共通の受け皿がないと困るだろうということで、今後もこの大震災出版復興基金を活用していくことになった」と説明した。
だとすれば、当初の設立目的だった「東日本大震災被災地への復興支援」に限らず、おそらく今後も起こりつづけて行くであろう地震や噴火、台風や大雨大雪などの風水害も含めた大災害後の復興支援も念頭に入れた常設的な組織および基金といった形にシフトしていくことも考えるべき時期に来ているのではないか? との問いかけに対し、前出の講談社・鈴木は「激甚災害に指定されるのであれば、それを基準にしていきたい。また、地元の書店さんの被害がどうなのかということも加味しながら今後はやっていきたい」と回答した。
やはり、何か大災害が発生した後で一から組織を立ち上げたり口座を開設したりといった段取りを踏むよりは、常設組織があったほうが機動力も発揮できるし効果的だろう。
なお、上記の通り今年で解散予定だった〈大震災〉出版対策本部は熊本・大分地震の発生前から5年目の節目となるイベントの開催を企画していたが、これについては来月初めにも改めて概要を公式発表(被災地の子供たちへの支援を中心にしたものになるらしい)する予定とのことだ。
http://www.shuppan-taisaku.jp/

                                                                                                                        • -

2)【本日の一行情報】(岩本太郎)

◎『月刊コロコロコミック』が公式サイト上で5月号(4月発売)の誌面を無料公開。「熊本・大分を中心とした地震により被災された方々に心よりお見舞い申し上げます」との編集部一同によるお見舞い文も添えられている。
http://www.corocoro.tv/
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1605/18/news110.html

◎ロシアに亡命中のエドワード・スノーデン(元CIA、NSA、DIAの情報局員)とインターネットで結んでの公開インタビューとシンポジウム「信教の自由・プライバシーと監視社会 『テロ』対策を改めて考える」が、自由人権協会(JCLU)の主催により6月4日(土)13時半より東大本郷キャンパスの福武ホールで開催される。
http://privacyandcivilliberty.jp/symposium20160604/

科学雑誌の『ニュートン』とオカルト系雑誌の『ムー』という、互いに対極ともいえるジャンルにおける老舗2誌が、それぞれのTwitter公式アカウントを通じてコントのごとき掛け合いを展開。
「ムーの中の人は、どこまで信じて原稿を書いているんですか」とツイートした『ニュートン』に、『ムー』が「はい、ニュートン錬金術師で、オカルティストだと信じております」「貴誌の初代編集長、竹内均先生の著書『ムー大陸から来た日本人』は名著です」などと応戦。
ニュートン』も「ニュートン自体がオカルティストだというご指摘。ぐうの音も出ない。。」と返すなど友好ムードで展開。
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1605/18/news127.html

東京五輪をめぐる情勢がいよいよ妖しくなり報道も過熱する一方で、新国立競技場建設に絡む近隣の都営霞ヶ丘アパートの解体および住民立ち退きをめぐる問題については相変わらずマスメディアは黙殺状態だ。そうした中、OurPlanet-TVの平野隆章は現場にて精力的に取材を続けつつ、映像・写真・テキストで事態の推移を逐一レポートしている。
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node%2F2046
https://www.facebook.com/takaaki.hirano.9/posts/1391393637553042?pnref=story

◎15年ぶりの新作映画『FAKE』が6月4日より公開予定の映像作家・森達也が、今から16〜17年前にオウム真理教信者たちを追ったドキュメンタリー『A2』(2002年)の「完全版」が、同じく6月から期間限定で公開される。
完成当初は入っていた麻原彰晃の四女・アーチャリー(松本麗華)への顔出し・実名でのインタビュー場面が、当時未成年だった彼女の意向を受ける形(他に人権運動家からの横やりもあったが)で一般公開までにカットされた経緯があり、その「幻のシーン」が15年を経てようやく蘇ることとなったのだ。
なお、そのカット場面にではないが、本作には当時の現場でオウム取材を行っていた筆者(岩本)も端役で「出演」している。
http://www.cinematoday.jp/page/N0082868

◎ドキュメンタリーといえば先週は静岡で面白い動きがあった。同県内の弁護士や市民が浜岡原発廃炉を求めて静岡地裁に起こした民事訴訟で、19日に行われた24回目の口頭弁論の際、原告側の意見陳述の中で代理人弁護士の河合弘之が監督として自主制作し、これまで全国で自主上映されてきたドキュメンタリー『日本と原発 4年後』の短縮バージョンが1時間に渡り、法廷に用意された大型スクリーンで上映され、裁判官・原告・被告・傍聴人が「鑑賞」したそうだ。
http://www.at-s.com/news/article/social/shizuoka/hamaoka/242330.html

◎エイベックスが無料視聴できる動画投稿サービスを昨日よりユーチューブ上で開始した。当初は映画『英国王のスピーチ』やAAAの音楽ライブ映像など約40作品を試験的に配信し、8月から本格稼働させる見通しという。
http://www.nikkei.com/article/DGKKZO02642770S6A520C1TJC000/

国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)によるパナマ文書に関する調査報道に、日本から参加しているジャーナリストの一人である朝日新聞編集委員の奥山俊宏が、同文書が公表に至るまでの経緯を明かすインタビューを『THE PAGE』が掲載した。
https://thepage.jp/detail/20160522-00000002-wordleaf

◎TBSで放送中のドラマも大人気を博している『重版出来!』だが、当の原作に最初の重版が掛かったのは発売から5日目だったと、担当した『ビッグコミックスピリッツ』編集部の山内菜緒子が自社の『NEWSポストセブン』の取材に応える中で明かしている。
http://www.news-postseven.com/archives/20160522_414571.html

◎雑誌『POPEYE』の創刊40周年を記念し、現編集長の木下孝浩と創刊メンバーで元編集長の石川次郎さんが"僕とポパイ"をテーマに語るトークイベントが、6月13日(月)に代官山蔦屋書店で開催される。
http://top.tsite.jp/news/lifetrend/campaign/28955103/?sc_cid=tcore_a99_n_adot_

明石家さんまが出身地の関西でのラジオ番組『MBSヤングタウン土曜日』で、「福島のことを考えろ」などと、東京五輪の開催を批判する発言を行ったという。
http://news.biglobe.ne.jp/entertainment/0522/ltr_160522_0112723638.html

熊本地震後に東京のサーベイリサーチセンターが行った「平成28年(2016年)熊本地震被災地における避難状況およびニーズ調査」によると、現地の被災者が14日夜の最初の地震前後に利用しようとしたのは「携帯電話・スマートフォン(音声)」59.3%、「同(メール)」28.4%、「フェイスブックやライン等のSNS」19.3%。このうち、「常に利用できた」は「フェイスブックやライン等のSNS」が81.0%という高い結果になったそうだ。
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160518-00000007-ovo-life

出版労連の関連団体で、フリーランスのライターや編集者らが個人で参加する労働組合出版ネッツ」の関東支部メンバー有志による「ハイカイ倶楽部」(フリーランスのシニアライフを考えるサークル)が、年老いた両親の介護問題に直面したフリーランスのための講座「フリーランスが介護するとき 業界初 介護系フリーランスの生き方を考えよう!」を、6月18日(土)13時半より所沢市民文化センターにて開催する。
http://union-nets.org/

◎昨日5月23日はノルウェーの劇作家ヘンリック・イプセンが亡くなってからちょうど110年にあたる命日だった。彼の代表作『人形の家』と本誌代表・今井照容の名前で検索をかけてみると以下の文献案内が出てくる。
http://www.keibunsha-books.com/shopdetail/080034000025/

◎国際人権NGOヒューマンライツ・ナウの事務局長を務める弁護士の伊藤和子が、言論プラットフォーム・アゴラ代表・池田信夫を名誉棄損で東京地裁に提訴したと、22日付の自身のブログとツイートで公表。池田が伊藤に対し《国連に「性奴隷」を売り込んだ弁護士が、今度は「日本の女子学生の30%が援助交際」などのネタを売り込んでいる》などとツイートしたのが名誉毀損にあたるというのだ。
《多くの人が、発言をした代償として根拠のない誹謗中傷の被害にあっているなか、自分が黙って負けているべきではないと思いました。昨今の言論環境を少しでも改善することに役立てばと願っています》
https://twitter.com/KazukoIto_Law/status/734370774316781570
http://worldhumanrights.cocolog-nifty.com/blog/2016/05/post-ab7a.html
これに対して池田もTwtter上でさっそく以下のように応戦。既に危険な香りが漂い始めているというところか。
《こっちは伊藤某なんて名前も忘れてたのに、半年以上たって訴訟を起こしてくるのは、秋葉原界隈で彼女の嘘で迷惑した人々から集中砲火を浴びているから、彼らへの「萎縮効果」をねらったんでしょう。法廷内外で協力して、害虫を駆除しよう》
https://twitter.com/ikedanob/status/734409707104788480
なお、発端からこれまでに両者やその周辺関係者との間において繰り広げられてきたツイートのまとめはこちら。
http://togetter.com/li/893338

                                                                                                                        • -

3)【深夜の誌人語録】(岩本太郎)

集団内でAとBの激しい対立による混乱が生じた場合、時にはCが逆ギレしてみせることが最も効果的な収束方法にもなり得る。