【文徒】2016年(平成28)8月22日(第4巻156号・通巻843号)

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1)【記事】朝日新聞公式Twitterアカウントが「SEALDs解散」の意見募集で炎上
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】朝日新聞公式Twitterアカウントが「SEALDs解散」の意見募集で炎上(岩本太郎)

朝日新聞「Voice1819」プロジェクトの公式Twitterアカウントが炎上した。きっかけは、さる15日に解散を公表した学生団体「SEALDs」についての意見を募集した、8月17日夕刻の担当者@asahi1819による次のツイートからだった。
《SEALDs解散について
「意見はあるけどツイートしづらい」
そんな意見が寄せられました
DMをお送りください
匿名でご紹介させていただきます》
https://twitter.com/asahi1819/status/765807330487250944
この朝日新聞の「Voice1819」は、先の参院選より新たに国政選挙でも有権者となった18・19歳を中心とする若者たちの声を集めながら、政治や選挙などについて考えようといった趣旨のプロジェクト。公式アカウントの紹介文では《朝日新聞の記者が新聞を飛び出し、慣れない中でサイトを運営しています。特に10代、20代の皆さん、フォローお待ちしています!》と謳い上げている。
上記のツイートもそうした趣旨のもとに担当者が発案したもののようだが、おそらく多くの人が読むなり「やめときゃいいのに」と思ったのではなかろうか?
そもそも「意見はあるけどツイートしづらい」と思う人の一番の理由は「何か自分で書いて炎上するのが怖い」なのであり、ならばそれを朝日新聞がDM(ダイレクト・メッセージ)で受け止めたうえで匿名にて紹介することにより防波堤になろうとするのは、一つのサービスとしてわからなくもない。が、その場合は当然ながら朝日新聞がまさにわが身に火を被る思いで炎上の主体を代行しなければならない。
案の定、炎上した。
《よく言うよ。SEALDsに賛成の少数意見だけを取り上げて、あたかも若者がSEALDs支持しているかのようなデマ記事流すんだろ?》
《SEALDsに賞賛や共感する若者は攻撃されてツイートし辛いだろうから
だから私達朝日新聞が守ってあげます、という構図を作りたいの?
そんなことしてまで、信念も無い彼らを持ち上げたいの?》
《ホントに朝日新聞公式なのね…どういう方針でやってるアカウントなのかよく見えない。
しょうもないツイートRTしてまで「公平中立」を演じてやっていく道を選んだのかねえ。「ペンの力」に過剰反応する記者といい、朝日新聞の限界を感じています。》
それでも@asahi1819はめげることなく、DMで寄せられたメッセージを「#SEALDs解散 Dmに寄せられたご意見です」と前振りしながらツイートしつつ、自らへのそうしたDis(批難)のツイートに対しても「多くの人に読んでもらいたい」ということなのか逐一リツイートしていたわけだが、当然ながら@asahi1819が単独でそれら全てを相手にしきれるわけがない。
日付が変わって翌18日になる頃には「朝日新聞x18歳19歳(asahi1819)がネトウヨからSEALDs叩きのDM集めてノーガードでRTし始める」というまとめサイトも立ち上がった。
http://togetter.com/li/1013567
タイトルの通り、SEALDsに好意的だったり支持する側からも「ネトウヨのSEALDs批判の書き込みを垂れ流すのか」との非難がなされるようになってきたのだ。
盛田隆二(作家)も見かねたのか、18日の19時過ぎには次のようにツイート。
朝日新聞の担当者様 @asahi1819
SEALDsに対する意見を匿名で紹介する。このシステムの危うさは、「カンパされたカネの使途が不明瞭」といった流言飛語の類までRTすることで、デマを拡散する土壌を作り出していることです。せめてあなたのお名前と責任の所在を明らかにして下さい。》
https://twitter.com/product1954/status/766216631223586816
そんなこんなの末、@asahi1819は18日の夜22時過ぎに至ってようやくギブアップを宣言。
https://twitter.com/asahi1819/status/766262041153634305
https://twitter.com/asahi1819/status/766262216546889730
https://twitter.com/asahi1819/status/766624680723656704
https://twitter.com/asahi1819/status/766624771404500993
https://twitter.com/asahi1819/status/766624864631332864
https://twitter.com/asahi1819/status/766624939424096256
もっとも、@asahi1819は、盛田からの名前と責任所在についての開示要求にはここでは答えず、《建設的な議論を提供する》《全てがオープンになる場所》を自分で作って《あえて評価を加えず、編集をせず、寄せられた意見をリツイートするのが望ましい》と意図を言い訳するのみ。この試みを、朝日新聞の匿名アカウントのまま会社の公式サイトでやろうと思いつき、そのまま実行したというのだ。
こうした手法が孕む拙さについておよそ自覚がないとは、21世紀の新聞記者・編集者として(ネットリテラシー的に)はなはだ心許ないところだ。

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2)【本日の一行情報】(岩本太郎)

一般社団法人日本報道検証機構の代表で、マスコミ誤報検証サイト「GoHoo」を主宰する楊井人文(元産経新聞記者で現在は弁護士)は相変わらずいい仕事をしている。
東京都議の音喜多駿議員の政務活動費支出の問題について、毎日新聞が8月10日付夕刊で掲載した「収支報告書 都議も疑問残る 政務活動費支出」という記事中で、取材時に自分が発しなかったコメントが掲載されたと音喜多が指摘。これを受けて毎日新聞は17日付夕刊に「おわびします」と題する訂正記事を掲載したものの、さらにここでも誤ったコメントが掲載された(しかも毎日から音喜多には何の連絡もなし)という「訂正記事でのコメント捏造」の疑いがさらに持ち上がっているというのだ。
http://gohoo.org/16081901/

◎これも「GoHoo」が指摘。例の甲子園での女子マネージャー練習参加をめぐる件で、東京新聞は8月6日付朝刊スポーツ面に掲載した「女子マネ制止 高野連が討議へ」という記事中、「大会を主催する朝日新聞社が5日、報道陣に女子マネージャー本人と選手、関係者に今回の件に関して取材をしないよう通達した」と報じたが、実際にはそうした事実はなかったとして13日付朝刊で訂正記事を掲載した。
http://gohoo.org/16082001/

KADOKAWAから発売された写真集『オリエンタルラジオ×青山裕企 写真集 DOUSEI -ドウセイ-』をめぐってネット上でひと騒動。「究極の変態写真集」「青山裕企の紡ぎだす写真世界に入り込む」とのオリラジからの要望に基づき「もしオリラジの二人が一緒に暮らしていたら」との設定で撮られた内容に対し、「同棲している同性は変態なのか?」などの批判や疑問が噴出。
撮影者の青山は「究極の変態=同性同士の同棲という意味ではなく、端的に言えば、青山=変態的な視点という意味」、KADOKAWA文芸編集部も「本書の製作において『同性どうし』“だから”『変態』という意識はみじんも有りません。『変態』ということばは、『青山さんの写真表現』に依るものです」などと、それぞれ公式アカウントでのツイートで釈明。
http://www.cinematoday.jp/page/N0085396
https://twitter.com/yukiao/status/765336555682619392?lang=ja
https://twitter.com/kadokawashoseki/status/765558083812589568

◎相変わらず高視聴率が続くNHK朝ドラ『とと姉ちゃん』について、『NEWSポストセブン』で五感生活研究所代表の山下柚実が指摘しているところによると、NHKに寄せられる意見は賛辞より批判のほうが約3倍にものぼっているらしい。
http://www.news-postseven.com/archives/20160820_440176.html
もっとも、批判意見が大量にあがってこそヒット作品の証とは昔から言われるところでもある。一方でネット上で見られる批判の声として山下が挙げていたものを見ても「騙し合いの中で作られていた雑誌なんですね。大橋鎭子さんも儲けるためだけに作ってたんですね。長年購読してましたが、このドラマが始まってから購読をやめました」などといったものがもっぱら。
こういうのばかりを引っ張ってきて「賛辞より批判が多いのになぜ高視聴率なのか」などと投げかけて終わるだけ。あまりに高評価なものにはイチャモンつけるのは週刊誌の王道だが、ちょっと尻切れトンボか。

マイナビ出版が女性実用書を中心に販売する電子書籍専門サイト『くらしの本棚』をオープン。
https://book.mynavi.jp/kurashi/
http://www.j-cast.com/trend/2016/08/18275431.html

◎2012年にシリア内戦の取材中に銃撃されて死亡したジャーナリスト・山本美香が生前に取材現場で撮影してきた写真などを記録した『これから戦場に向かいます』がポプラ社より発売されたのを記念して、公私にわたるパートナーだったジャパンプレスの佐藤和孝らによる講演会が8月18日夜に開催された。
https://www.poplar.co.jp/shop/shosai.php?shosekicode=49001980
http://www.news24.jp/articles/2016/08/19/07338394.html
http://mainichi.jp/articles/20160819/ddl/k13/040/036000c

イラストレーターのほか女性誌の編集長としても活躍した中原淳一終戦から1年後の1946(昭和21)年に創刊した女性誌『ソレイユ』(のちに『それいゆ』)の創刊号が、以来70周年を迎えた今年8月15日から中原の公式サイトにて期間限定で(9月末まで)公開中。
http://www.junichi-nakahara.com/soleil1946_no1/
http://news.biglobe.ne.jp/trend/0818/pou_160818_5004610812.html

◎『NARUTO−ナルト−』や『うる星やつら』のほか、最近では大ヒット作の『おそ松さん』を世に送り出したアニメ制作会社・スタジオぴえろ創業者の布川郁司が、大ヒットの舞台裏や、依然として厳しいビジネス環境が続くアニメ制作業界の現状を『ガジェット通信』のインタビューに答えて語っている。
http://getnews.jp/archives/1507927

阪神タイガースの「虎マーク」や「Tigers」の球団ロゴは、阪神電鉄の宣伝課に社員として在籍していたデザイナーの早川源一が、約80年前の球団創設時に考案して採用されたものが今でも使われ続けている。彼のデザインが後の球団のブランディングや絶大なる人気の獲得にどれだけ寄与したかを、鉄道設計技師の大森正樹が『東洋経済オンライン』にて論考している。
http://toyokeizai.net/articles/-/132059

マツコ・デラックスは本当は『SWITCH』今年5月号ののインタビューには出たくなかったのだそうだ。それがなぜ実現したのか? 編集長の新井敏紀からの手紙でのインタビュー依頼に対し、マツコは「断る場合も会って断る」姿勢であったため、それを繰り返しているうちにいつの間にかインタビューが成立していたのだとか。
http://www.j-cast.com/other/bookwatch/2016/08/19275641.html

山梨県北杜市中央図書館へ4月に就任した新館長が、それまで許可を得て館内に置かれていた市民団体発行のニュース(同市が推進する中部横断自動車道の建設に反対する市民団体が隔月発行)の掲示を「建設反対という一方のスタンスに立ったものを配るのはどうか」として拒否。市民団体側は当然「なぜ急に置けなくなったのか。納得出来ない」と反発しているとのこと。
http://www.asahi.com/articles/ASJ8K5409J8KUZOB00G.html

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3)【深夜の誌人語録】(岩本太郎)

逆境への強さは平時の何気ない営みを大切にすることから培われる。