【文徒】2017年(平成29)年3月28日(第5巻57号・通巻986号)

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1)【記事】 差別的動画問題で広告主がYouTubeから離反。Googleの株価にも影響か
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

                                                                            • 2017.3.28 Shuppanjin

1)【記事】差別的動画問題で広告主がYouTubeから離反。Googleの株価にも影響か(岩本太郎)

"YouTubeバブルが弾けた"との声も海外では上がっているようだ。きっかけは英国『タイムズ』が17日に配信した「納税者は過激主義に資金を出している」と題された記事。ここでは英国内務省や英国海軍・空軍などの政府機関、あるいはBBCやガーディアンなどのメディアまでもが、YouTube上で公開されている差別的な内容を含む動画(白人至上主義、同性愛蔑視、反ユダヤなど)に広告を掲載していると指摘されている。
http://www.thetimes.co.uk/edition/news/taxpayers-fund-extremism-csdn0npsf
Googleはこれを受けて声明を発表。最高事業責任者(CBO)を務めるPhilipp Schindlerがブログで広告主の意思にそぐわないコンテンツに広告が掲載される事例が多数生じたことを認め、徹底した対応策をとる意向を21日付で明らかにした。
https://blog.google/topics/ads/expanded-safeguards-for-advertisers/
http://itpro.nikkeibp.co.jp/atcl/news/17/032200890/?rt=nocnt
しかし騒ぎは収まらなかった。24日付の『Wall Street Journal』は独自調査の結果として、コカ・コーラP&Gなどの世界的な広告主が上記のようなYouTube上のコンテンツに依然として広告を掲載していることを指摘した。
http://jp.wsj.com/articles/SB11171128282105153616004583041900587347488
https://www.wsj.com/articles/googles-youtube-has-continued-showing-brands-ads-with-racist-and-other-objectionable-videos-1490380551
『Businessinsider』によれば、そうした広告主の中にはホンダやトヨタなどの日本企業も含まれていたようだ。
http://www.businessinsider.com/these-brands-pulled-ads-from-youtube-and-google-over-extremist-content-2017-3
21日付の『Forbes Japan』は広告主のほか、世界6位の広告会社であるハバス(Havas)がYouTubeへの出稿を停止したことを明らかにした。同記事では『タイムズ』の記事を受けて英国政府とGoogleとの間で交わされたやり取りも交えながら報じている。
《「税金を使った広告が不適切なコンテンツと共に表示されたことは容認できない。グーグルにはその旨を明確に伝えた」と、政府関係者はフォーブスに語った。
グーグルのイギリス支社の責任者のローナン・ハリス(Ronan Harris)は「広告主や広告代理店から、物議をかもすようなコンテンツに広告を表示しないよう、要請を受けた」と声明の中で述べた。
「グーグルは現状で広告を表示する場所を広告主や広告代理店が選べるツールを用意しているが、今後は不適切な内容で利益を得ている動画やコンテンツへの対策を強化できると考えている」とグーグルは述べた。
一方で、グーグルは今後のポリシー変更で「広告主がユーチューブやGoogle Display Networkの広告表示位置を詳細に選択可能になる」としており、新ポリシーの導入後は広告の表示位置の決定は広告主側の責任になることを暗に示している。
つまり、今後は同様な問題が発生した場合、グーグルは広告主にも責任があると主張するのかもしれない 》
http://forbesjapan.com/articles/detail/15613
ロイターは《こうした事態を受けて、テレビから広告を奪うというユーチューブの長期戦略が危機に瀕する可能性があると専門家らは指摘する》と伝える。
《「動画はシリコンバレーが考えるよりエコシステムとしてかなり脆弱(ぜいじゃく)だ」と語るのは米調査会社ディフュージョン・グループのアナリスト、ジョエル・エスペリエン氏。「問題はすべてのコンテンツが同じではないこと。好みの要素があり、それが壊してしまえば、全体が崩れる始まりのようになる」との考えを示した。
グーグルはユーチューブの業績をほとんど明らかにしていないが、検索事業が成熟化した今、グーグルにとってユーチューブは成長の原動力だとアナリストらは見ている。
アルファベット株は今週3%超下落している》
http://jp.reuters.com/article/alphabet-youtube-idJPKBN16V0R1?sp=true
ブログメディア『Market Hack』編集長で、米国の投資顧問会社コンテクスチュアル・インベストメンツLLCでマネージング・ディレクターという広瀬隆雄は、このままでは《「YouTubeは汚らしい場所」という評価が定着してしまいます。(略)ここへきて「YouTubeバブルがはじけた」様相を呈しています》としつつ、以下のような予測も披露している。
《ところで、今回のYouTubeのイメージ毀損で「漁夫の利」を得るのはスナップ(ティッカーシンボル:SNAP)だと思います。
なぜならスナップはセルフィーをともだちとシェアするというサービスの性格上、ヘイトなどの対象になりにくいからです》
http://markethack.net/archives/52039766.html
欧米ほどではないが、日本のメディアでも差別的な内容を含むコンテンツに大手広告主が出稿し、指摘を受けて大慌てで引っ込めるといったケースはこれまでもしばし耳にした。あるいはこうした動きが日本でも今後のメディアの帰趨に少なからず影響を及ぼしていくことになるのだろうか。

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2)【本日の一行情報】(岩本太郎)

◎今週末の31日付をもって休刊する茨城県の地方紙「常陽新聞」の記者や読者らが、後継媒体となる地域メディアを電子版で独自に立ち上げようと動き始めている。さる25日にはつくば市内で今後の方向性について話し合う「読者の集い」が開かれたそうだ。
https://t.co/6GLJExBvJy
http://mainichi.jp/articles/20170326/ddl/k08/020/073000c

クックパッドのお家騒動はどうにか決着したものの、同社の経営に少なからぬ禍根を残したようだ。出席株主が半減、お土産が廃止され、会場での撮影・録画・録音およびSNSへの投稿が禁じられたという定時株主総会の現場ルポを含めて『東洋経済オンライン』が伝えている。
http://toyokeizai.net/articles/-/164451

◎森友問題に絡めて、大学の学部新設に関して『週刊現代』に事実と異なる記事を書かれ名誉を傷つけられたとして、岡山市順正学園が同誌と講談社に対して2000万円の損害賠償と謝罪広告の掲載を求める訴訟を東京地裁に起こした。
http://mainichi.jp/articles/20170325/k00/00m/040/135000c

◎元『週刊朝日』編集長の山口一臣など朝日新聞を退職した4人が昨年末に「(株)POWER NEWS」を東京・新橋駅近くで設立。ネットニュースの配信、作成を主な業務としつつ《将来的にはネット界の総合メディアカンパニー」という大きな夢も持っております》との案内葉書が昨日に私の自宅にも届いた。サイト開設は4月終わりから5月初めを目指しているとのこと。途中経過は山口のTwitterアカウントなどで、おそらく今後順次報告されていくことだろう。
https://twitter.com/kazu1961omi
https://twitter.com/trademark_bot/status/810163655581036544
https://twitter.com/iwamototaro/status/846230940556836865

◎人と人との絆や関係性をテーマに、インタビュー記事などを中心に盛り込んだカルチャー雑誌『パートナーズ(PARTNERS)』が27日に創刊された。価格は1,500円、発行部数は3,000部で、今後は11月と3月の年2回、代官山蔦屋書店や青山ブックセンター本店、ジュンク堂池袋本店などで発売されるそうだ。
http://www.fashionsnap.com/news/2017-03-26/partners/

◎『文春オンライン』に小野一光「元祖風俗ライターが棲んだ街」が全編アップされた。『文藝春秋』3月号に寄稿した、“元祖風俗ライター”と呼ばれた吉村平吉の足跡を終の棲家となった吉原まで辿ったルポだ。
http://bunshun.jp/articles/-/1749
http://bunshun.jp/articles/-/1750
http://bunshun.jp/articles/-/1751

◎『東京の編集』『編集天国』などの著書を持つ編集者・菅付雅信を講師に招いた編集者養成講座「菅付雅信の編集スパルタ塾」第5期講座が、下北沢の「本屋B&B」で4月11日よりスタート。ゲスト講師は東浩紀箭内道彦(クリエイティブ・ディレクター)、西田善太(『ブルータス』編集長)、今尾朝子(『VERY』編集長)など計17人を予定。
http://bookandbeer.com/seminar/sugatsuke5/
http://shimokita.keizai.biz/headline/2546/

◎上記にも名前の出た箭内道彦が主催するコミュニティFM渋谷のラジオ」が、開局1周年記念特番を4月1日に渋谷駅前ハチ公口の特設スタジオから行うそうだ。
https://shiburadi.com/
http://www.news24.jp/articles/2017/03/24/08357272.html

◎埼玉県上尾市の図書館移設問題をめぐって、市民団体「上尾の図書館を考える会」が同市を相手に起こした民事訴訟の第1回口頭弁論が22日にさいたま地裁で開かれた。
http://www.sankei.com/region/news/170323/rgn1703230029-n1.html

◎「餃子の王将」が読売新聞に出したクーポン付き広告から、クーポン部分が切り取られるという被害が都内のある図書館で続けて発生したらしい。図書館側が貼り紙で「器物損壊罪にあたる」と警告したところ、現在では被害は止んでいるとか。
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1703/22/news127.html

京都市左京区古書店「古書善行堂」の店主・山本善行が、書評家・岡崎武志の詩集『風来坊ふたたび』を出版(価格は1080円、800部)。山本と岡崎は高校の同級生で40年以上の親交があり、昨年11月に岡崎が10日間ほどで書いた20編超の詩の刊行を、出版に興味のあった山本が話を聞いて即決で引き受けたそうだ。 善行堂も公式サイトで、岡崎も自分のブログで公表している。
http://mainichi.jp/articles/20170325/ddf/041/070/017000c
http://zenkohdo.shop-pro.jp/?pid=114888043
http://d.hatena.ne.jp/okatake/20170327

◎これは未開拓市場ではないだろうか。CM制作会社のTYOが、ビジネスマン向けに動画制作セミナーを開講するそうだ。
https://tyo-mubisuku.com/
http://www.j-cast.com/trend/2017/03/23293777.html
一般市民を対象にした映像制作講座というのは、フリーランスのディレクターやカメラマンたちを講師に招いて細々と行う独立系のものはこれまでもあちこちにあったが、テレビやCMなどのメディア業界の大手制作会社がビジネス需要を当て込んで行う講座と言うのはこれまでそれほどなかったはずだ。オウンドメディアの増加などによって映像制作のスキルが一般企業なども高まってきていることの表れだろうか。

◎そのテレビCMの世界では、目下「CMを知らない子供たち」の増加が脅威として語られ始めているらしい。アメリカでの調査で「CMが何かを理解していない」子供の比率が、テレビがある家庭では8%だったのに対し、Netflixだけ観ている家庭では82%にものぼったんだとか。
http://www.news-postseven.com/archives/20170326_504251.html

◎『EBOOK2.0MAGAZINE』が「アマゾン・ジャパン『直取引』拡大の意味」について論考。アマゾンが所沢で1月にオープンした納品センターと、KADOKAWAの「ところざわサクラタウン」(仮称)とが関連する可能性についても言及している。
http://www.ebook2forum.com/members/2017/03/amazon-japan-to-expand-direct-trade-with-the-publishers/

◎公開停止中の『MERY』を運営してきたDeNA子会社ペロリの新代表に元IMJ執行役員CMOの江端浩人が4月から就任。伊藤忠商事を経て日本コカ・コーラに入社。会員数約1200万人、月間約10億ページビューを誇った会員制サイト「コカ・コーラ パーク」(昨年10月にサービス終了)を立ち上げた人物だ。
http://jp.techcrunch.com/2017/03/27/peroli-ebata/

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3)【深夜の誌人語録】(岩本太郎)

夢を見るのは悪いことではない。ただ、覚めた後できちんと記録して振り返っておくことも大事だ。