【文徒】2017年(平成29)年4月10日(第5巻66号・通巻995号)

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1)【記事】最近書店閉店事情
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】最近書店閉店事情

多摩モノレール「立飛」駅に直結するオリオン書房 ららぽーと立川立飛店が5月7日をもって閉店する。
「【お知らせ】いつもオリオン書房ららぽーと立川立飛店をご利用頂き誠にありがとうございます。誠に勝手ながら5月7日(日)をもちまして閉店することになりました。今までありがとうございました…! 」
https://twitter.com/Orion_Tachihi/status/847999504200589312
「昨日はエイプリルフールだったので、閉店のお知らせが冗談だと思われた方がいらっしゃいましたが…残念ながら本当です…!只今『オリオン書房ご愛顧感謝キャンペーン』として、次回のお会計よりTポイントが3倍になるクーポン券をお配りしております☆ 」
https://twitter.com/Orion_Tachihi/status/848350910480654336
紀伊國屋書店 高松店が5月31日(水)をもって閉店する。オープンは2006年であった。売り場をオープン時の約半分、取扱冊数も15万冊に縮小 していたにもかかわらず閉店することになった。
http://www.asahi.com/articles/ASK4455H2K44PLXB014.html
紀伊國屋書店高松店でございます。フォロワーの皆様にお知らせがございます。高松店は諸般の事情により、2017年5月31日をもって閉店させて頂く事となりました。今までご愛顧頂きましたお客様には、大変ご不便をおかけしますことを心よりお詫び申し上げます」
https://twitter.com/Kino_Takamatsu/status/848077274725236736
高松を拠点とする宮脇書店にとって紀伊國屋書店との競合に負けるわけにはいかなかっただけにホッとしているのではないだろうか。こんな声も地元の古書店からあがっている。
「せとうち暮らし、IKUNAS、その他いろいろ本当にお世話になりました。香川県民は新刊書店を『選べる』という環境の良さを、そもそも知らないだけになおのこと残念です」
https://twitter.com/KikinoNatasyo/status/848511413345591296
紀伊国屋書店閉店か… どう考えても宮脇つおいよ 出店が驚きやった 」
https://twitter.com/suiseihiyoko1/status/850147667111927809
大阪府門真市 のパルネット大和田駅店が4月26日(水)をもって閉店する。
「エル大和田にある、本屋パルネット大和田駅店が4月26日で閉店するそうです。
以前はブックスサトウとゆう名前で、昔からこの場所は本屋さんだったので、なくなるのは非常に寂しいです。
この辺りでは一番大きな本屋さんです 」
http://moriguchikadoma.goguynet.jp/2017/04/03/parunetto/
http://palnet.co.jp/
アミーゴ書店 泉佐野店(大阪府)が3月29日(水)をもって閉店した。
イズミヤ泉佐野店に行ったところ、2階のアミーゴ書店が閉店していました」
http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20170402
漫画・同人誌・グッズ販売のK-BOOKS秋葉原新館が5月7日(日)をもって閉店する。
http://www.k-books.co.jp/news/2017/0507/

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2)【本日の一行情報】

斎藤茂吉に愛され、司馬遼太郎が「街道をゆく」で取り上げた山形市の「郁文堂書店」 が東北芸術工科大 の学生二人の尽力によって蘇った。
https://news.biglobe.ne.jp/domestic/0408/mai_170408_3138156800.html

◎フォークシンガーの加川良が亡くなった。私たちに「逃げなさい 隠れなさい」と勧めた「教訓1」があまりにも有名だが、オレは「戦争しましょう」が好きだった。
http://www.sankei.com/west/news/170405/wst1704050092-n1.html
https://www.youtube.com/watch?v=pD4cxI3ktes
「戦争しましょう」は山松ゆうきちのマンガを題材としている。山松の「ヤクザ無情」を読んだことありますか。最近では「インドへ馬鹿がやって来た」などインド体験ものを日本文芸社から発表している。山松の作品を電子書籍化するという気概を持った出版社はないものか。

◎中村秀之の「特攻隊映画の系譜学」(岩波書店)によれば映画「永遠の0」に至るまで特攻隊を題材とした映画は次のような基本パターンを踏襲している。
「・・・少なくとも劇映画にかぎれば、特攻隊の表象にかんして戦中と戦後に共通する特権的なイメージは青い空と白い雲であり、そこに消えてゆく特攻機なのである。それは〈昇天〉の儀礼的イメージが戦後にも継承される特攻隊表象の基本パターンとなったことを示している」
https://www.iwanami.co.jp/book/b281694.html
〈昇天〉で終わらせるのではなく、特攻機を最後まで見届けようとしたのが中島貞夫の傑作「あゝ同期の桜」である。
http://amzn.to/2nQpfom

住野よるの「か『』く『』し『』ご『』と『」(新潮社)が売れている。既に20万部を突破している。トーハンの週間ベストセラーでは、ここ二週間、村上春樹の「騎士団長殺し」(新潮社)よりも売れている。そうともに新潮社が版元である。
http://www.zaikei.co.jp/article/20170406/362570.html

◎メディアドゥの2017年2月期(16年3月〜17年2月)決算(単体)。売上高は前期比38.2%増の155億3200万円、営業利益が18.9%増の6億5600万円と増収増益。純利益は23.9%増の4億1400万円。「LINEマンガ」が成長を支えていると言って良いだろう。
http://v4.eir-parts.net/v4Contents/View.aspx?cat=tdnet&sid=1456624

電通の海外本社「電通イージス・ネットワーク」は、スペインのデータ分析コンサルティング会社「DIVISADERO DIGITAL INTELLIGENCE SL」(ディビサデロ社)の株式94%を取得すること、および今後完全子会社化するオプションを同社グループが有することに合意した。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/pdf-cms/2017050-0407.pdf

電通3月度単体売上高。マス4媒体で前年同月比を上回るのはテレビのみ。最も前年に比べ減らしているのは雑誌だ。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/pdf-cms/2017051-0407.pdf

集英社は「週刊ヤングジャンプ」から新増刊「ヤングジャンプGOLD」を5月18日に発売する。「ヤングジャンプ」で連載中の赤坂アカの「かぐや様は告らせたい 〜天才たちの恋愛頭脳戦〜」の外伝や、稲葉みのりの「源君物語」のスピンオフなどがラインナップされる。
http://natalie.mu/comic/news/227701

◎米「エスクワイア」電子版がイチローを特集した。
https://full-count.jp/2017/04/06/post64180/
http://www.esquire.com/sports/a53652/13-esq-2017-03-21-ichiro-suzuki-vol-num/

世界文化社は、男性誌「MEN'S EX」の女性版という位置づけの女性誌「OWN SPRING & SUMMER」を刊行した。表紙を飾るのは吉田羊。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000271.000009728.html

ダイヤモンド社が「週刊ダイヤモンド」の正社員記者を募集している。竹田幸平記者は次のように発言している。
ダイヤモンド社について他部署の社員の方も『風通しのよさ』というキーワードを挙げることが多いと感じていましたが、その社風を示す象徴的な実例だと思います。入社して半年足らず、しかも20代の若手社員が出した意見でも『面白い』と思ってもらえれば第一特集として、40ページにもなる企画を通してもらえる。もちろん実現までのハードルは高いですが、やりがいを感じます。
この例からも垣間見えますが、中途採用者に対する差別などはありません。副編集長でも7人のうち過半数は転職組で、ある中途入社の先輩記者も『転職者が入り込みやすい職場だと思う』と話していました」
http://diamond.jp/articles/-/123691
https://www.diamond.co.jp/recruit/intermediate/201703091145.html

毎日新聞によれば「広告最大手・電通の本支社で違法な長時間残業が続いていた問題で、厚生労働省電通の関西(大阪市)、中部(名古屋市)、京都(京都市)の3支社の当時の幹部らと法人としての同社を、今月末にも労働基準法違反(長時間労働)の疑いで書類送検する方針を固めた」そうだ。
https://mainichi.jp/articles/20170408/k00/00m/040/175000c

集英社が運営する公式ファッション通販サイト「FLAG SHOP」は、「ひとさじのフェミニン」をキーワードにWEB通販マガジン「LaVivant」(ラヴィヴァン)を4月5日に発行したが、発行直後から口コミで話題が広がり売り切れ商品が続出、「FLAG SHOP」会員以外からもカタログの問い合わせも殺到しているという。そこで、急遽1万部増刷することにしたという。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000029.000011454.html

◎すでに絶版または品切れ本となった本を全国TSUTAYAの書店スタッフが中心となり、出版各社とともに新たに復刊にむけプロデュースするプロジェクト「復刊プロデュース文庫」第6弾、文春文庫の「紫のアリス」(柴田 よしき)が4月7日に発売 となった。第1弾から第5弾までの累計発行部数は20万部を超えている。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000259.000018760.html

講談社の「クーリエ・ジャポン」が紙からデジタルに完全シフトして一周年、これを記念して4月15日に謝恩イベント「コントゥール2017」を開催 する。クーリエ・ジャポン会員が6000円で、一般が1万2000円 。懇親会込みの値段である。「リベラルアーツ」をコンセプトに出口治明、岸見一郎、石黒浩、山口絵理子、宮沢和史が登壇する。これを前例のない豪華な顔ぶれと思えば、 決して高くはないだろう。雑誌のデジタルシフトは、必然的にリアルシフトもともなうべきだと考える私からすれば、こうした試みは大いに評価したい。ただし、私はこの手合いを「知の達人」だとは到底、思えない。
http://courrierjapon026.peatix.com/?lang=ja

岩波書店から出た「変態する世界」はウルリッヒ・ベックの未完の遺作だ。
「世界が国の周りを回っているのではなく、国々が『世界』と『人類』という新たな恒星の周りを回っているのだ。インターネットはこの一つの例である。第一に、インターネットはコミュニケーションの単位としての世界を生み出した。そして第二に、インターネットは、文字通りすべての人を互いにつなぎあう可能性を提供することによって、『人類』というものを生み出した。国境やその他の境界が再交渉され、消された後に新たに作られる―つまり、『変態する』―のは、この空間においてである」
https://www.iwanami.co.jp/book/b285362.html
ちなみに加藤典洋原発批判を展開するに際して依拠した思想のひとつがベックのリスク社会論である。

筒井康隆の「モナドの領域」が韓国で販売中止となった。
「旧日本軍慰安婦を象徴する少女像を性的に侮辱する衝撃的な妄言を発した日本の小説家・筒井康隆氏の小説『モナドの領域』が韓国国内で販売中止になった。同氏の『時をかける少女』は映画化されており、韓国でも有名な小説家だ 」(朝鮮日報
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2017/04/08/2017040800482.html
「韓国の『銀杏の木出版社』は7日、慰安婦少女像と関連して自身のツイッターに妄言を書き込んだ日本の作家である筒井康隆氏の韓国出版小説『モナドの領域』の販売中止を決定した。銀杏の木出版社はまた、今年の下半期に出版予定だった筒井氏の『旅行のラゴス』(引用注・正しくは『旅のラゴス』)契約の解除を韓国内のエージェントと日本の著作権会社に通知したと明らかにした」
http://japan.hani.co.kr/arti/international/27002.html

◎4月7日に八重洲ブックセンター中島岳志と荒井裕樹によるトークイベントが開催された。二人の対談で一冊が成立すると思わせるほど、一時間とはいえ充実した内容であった。中島が帯を書いている荒井の「差別されてる自覚はあるか 横田弘と青い芝の会『行動綱領』」(現代書館) をその場で購入した。
「『車椅子のままバスに乗りたい!』というのが『障害者のワガママ』だというなら、『車椅子のままバスに乗るな!』というのは『健全者のワガママ』ではないのか?『障害があっても普通学級に行きたい!』というのが『障害者のワガママ』だというなら、『障害者は養護学校に行くべきだ!』というのも『健全者のワガママ』ではないのか?
障害者が障害者のまま社会の中で生きようとすることを、〈障害者エゴイズム〉として批判する精神それ自体が〈健全者エゴイズム〉なのだ」
http://www.gendaishokan.co.jp/goods/80.htm
http://www.gendaishokan.co.jp/goods/ISBN978-4-7684-3552-6.htm
横田弘は原一男ドキュメンタリー映画「さようならCP」の主役である。「オレが恋愛するとね、恋愛しちゃいかん。今度、結婚して子供を作ることになったら、結婚はいいけどガキ作っちゃいかん、と言いやがんの。そういう形で抑圧してくるのよ、健常者は」 という言葉が耳から離れなくなる映画である。
http://amzn.to/2omaugV

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3)【深夜の誌人語録】

戦わざる者、食うべからず。