【文徒】2017年(平成29)年8月8日(第5巻148号・通巻1077号)

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1)【記事】地域社会&地方紙再生に向けた「ソリューション・ジャーナリズム」の可能性
2)【本日の一行情報】

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1)【記事】地域社会&地方紙再生に向けた「ソリューション・ジャーナリズム」の可能性(岩本太郎)

◎『WEBRONZA』で電通総研メディアイノベーション研究部研究主幹の北原利行が「地方紙が地域課題解決の核に カギは当事者報道にあり」と題し、「ソリューション・ジャーナリズム(Solutions Journalism=解決模索型報道)」というものについての論考を寄稿している。
具体的な事例として北原が提示しているのは、栃木県の下野新聞社が県庁所在地ながら空洞化が著しい宇都宮市の中心街に、この種のもので新聞社が運営するものとして日本で初めて設置したという「下野新聞NEWS CAFE」、県内の里山再生を図るべく福井新聞社が開設した「コウノトリ支局」を軸にした取り組みなどだ。
前者については以前から日本新聞協会が行っている応募論文の中で北海道新聞の社員が提起していたほか、カナダにも既に「ニュースカフェ」とよばれる記者常駐スペースを街なかに設置のうえ、近隣の市民と気軽に対話できるようにする取り組みが進められているそうだ。そのうえで北原は言う。
《生活者の住む地域の社会的課題は誰が解決すべきなのか。第一義的には行政なのだろう。ただ、行政には限界がある。地方創生においても困っている行政は多いと聞く。新聞社がそれに取り組んではいけないのだろうか。新聞社は行政、企業、生活者との間に立ち、いわゆるハブとしての機能が期待できるのではないか。》
《新聞社はその取材力・取材網から、社会にどのような問題や課題があるのか、記者は日常的に接しているはずである。解決模索型報道として求められることは、何をどう解決していくのかという視点で問題点や課題に取り組むことでもある。》
http://webronza.asahi.com/journalism/articles/2017072100007.html
取材対象とは距離を置くべし、という従来の報道規範からは受け入れがたい向きもあるだろう。ただ一方で、地域コミュニティは取り返しがつかないほど衰退しており、もはや行政とメディアの緊張関係などと言っている場合ではない。それを行政も地元メディアも企業も住民もわかっているのに、というケースもある。
むしろ旧来型の「一県一紙」の枠組みで来た地方紙、あるいは地方紙と全国紙、在京キー局との調整の末に一県につき3〜4局も設立されてきた民放テレビ局の経営規模が、地方経済の現状に照らし合わせると大きすぎることを考えると、上記のような地域の課題解決型ジャーナリズムを採り入れることは、これからの地域メディアの経営的な再生を図るという意味でも有効な選択肢であるように思える。
無論、そこでは新興のネットメディアとの連携も大きな威力を発揮することになるだろう。米国では「Nextdoor」という、全米の75%以上、14万4000地区を網羅するという地域コミュニティのためのソーシャルメディアが、最近では各地のローカルメディアとの連携を強化し始めているという。この7月には『ワシントンポスト』とも連携を始めたそうだ。
https://techable.jp/archives/61979
日本でも佐賀新聞地域SNS「ひびの」のように地域の人々とのネット上での交流を紙面作りのほか、イベント展開などに活用しているケースがある。
https://hibino.saga-s.co.jp/login/
地域メディアのソーシャル化は各地のコミュニティのみならず地方紙それ自身の再生を図っていくうえで不可欠な選択肢になっていくのではないか。

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2)【本日の一行情報】(岩本太郎)

カドカワ純粋持株会社体制移行に伴い、ゲーム雑誌『ファミ通』などの発行を行う完全子会社として7月3日付で発足した「Gzブレイン」社長の浜村弘一に『MANTAN WEB』がインタビュー。かつての社名「エンターブレイン」は「メディアファクトリー」同様グループのブランドとして残し、新会社の社名は内部の公募で決めたそうだ。
https://mantan-web.jp/article/20170804dog00m200027000c.html
http://gzbrain.jp/

◎「消えゆく本屋さん」を名乗り《今日から閉店までの記録や胸のうちはここに書くことにしました》という匿名アカウントがTwitter上に現われた。本人の言うところによればTSUTAYAの店員らしい。
《話は5月のある日から始まります。
私はTS○TAY○でパートをしています。
突然朝礼を5分前からはじめ、何だ何だと思ったら。同じ系列店のお店を6月で閉めるという内容でした》
《そもそも出来レースなのでは。。。
夏と冬に棚卸が普通あります。
去年は変な季節に頼むと安いという話で6月にはしてた記憶もあります。
それが8月になっても出なかった。
変だ変だと思っていました。
聞くのがなんとなく怖かったのです。
多分、もう閉店は急に出た話ではないと思いました。》
https://twitter.com/L23524772

◎LINEは着々と広告事業を拡大中。このほど台湾でもタイムライン上の広告掲載を開始したほか、今年下期は西日本や海外での営業を強化するという。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ28HZ5_W7A800C1TJC000/

KDDIグループ会社のSupership電通が共同で運営するネット広告の取引システム「電通PMP」が、新たに広告メニューの1つとしてPCに対応した「ゲート広告」の取り扱いを開始した。
https://supership.jp/news/2017/08/07/1234/

◎代表作『キャンディ・キャンディ』『ジョージィ!』などで一世を風靡した漫画家いがらしゆみこのデビュー50周年を記念し、公式ファンサイトがこのほどオープンした。
https://yumiko-fc.com/
https://skiyaki.com/contents/112724

バンコクに編集部を置く日本語雑誌で、現地での飲食情報のほかカラオケやマッサージなどの男性向けエンタメ情報で知られていた月刊誌『G-DIARY』は、昨年9月発売号を最後に紙媒体としては休刊。電子書籍版も今年2月発売号で途絶えていたが、このほどウェブサイトとして復活。以前は東京都内の大きな書店でも入手可能な雑誌だった。
http://www.gdiary.com/
http://www.globalnewsasia.com/article.php?id=4470&&country=2&&p=2

関東大震災での朝鮮人虐殺をテーマにした『九月、東京の路上で』(加藤直樹)や『NOヘイト! 出版の製造者責任を考える』(ヘイトスピーチと排外主義に加担しない出版関係者の会)などの版元である赤羽の「ころから」は、ピースボート運営スタッフ出身の木瀬貴吉とフリーデザイナーの安藤順が共同運営する「ふたり出版社」だ。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokyo/list/201708/CK2017080702000108.html
http://korocolor.com/index.html

ドキュメンタリー映画監督の森達也が今週末に放送されるテレビドラマで演出をしているそうだ。テレビ東京で11日深夜に放送される『デッドストック 未知への挑戦』の最終話で、かつて森が手掛けたドキュメンタリー番組や活字ノンフィクションに登場したスプーン曲げの清田益章が本人役で登場するとのこと。
http://www.tv-tokyo.co.jp/deadstock/news/?trgt=2017.8.4,0
https://news.walkerplus.com/article/117103/

◎国内では売り上げが伸び悩み、海外展開でも撤退が続いたヴィレッジヴァンガードは、越境ECのサポートを行うtensoと業務連携することを2日に発表。
http://www.itmedia.co.jp/business/articles/1708/03/news072.html

◎『VOGUE』の姉妹誌4誌の休刊を7月28日に発表したコンデナスト・イタリア(CONDE NAST ITALIA)では、休刊に伴い40人がリストラになることなどから、編集委員会が4日間のストライキに打って出たそうだ。
https://www.wwdjapan.com/455858

◎米googleの男性エンジニアが「女性は生まれつきエンジニアに向かない」などといった主張を社内文書で行って騒動になったらしい。Googleでも社員の男女比は半々に届かず、技術職での女性比率は2割だとか。
http://news.nicovideo.jp/watch/nw2911111

三重県の熊野地方で2010年秋に創刊され、15年7月に休刊した情報誌(フリーペーパー)の『クマノジャーナル』が来年春の復刊を目指しているという。地元NPO職員の女性が事業化したものの、本人が出産が近づいた(後に家庭の事情で県外に転出)のを機に休刊。協力していた友人の女性が復刊に向けた準備を進めており、ライターも募集中とのこと。
http://www.chunichi.co.jp/article/mie/20170805/CK2017080502000212.html

◎『出版人・広告人』8月号でインタビューを掲載した『1985-1991東京バブルの正体』の著者・昼間たかしがnoteでの記事掲載を開始した。《ルポルタージュ/ノンフィクションが理解されず知られずという状況の中でひとまずは、これまでの取材記事やルポルタージュなどを整理して公開。取材して書くことの意義を世に問うていきます》とのことだ。
https://twitter.com/quadrumviro/status/894456742968401920
https://note.mu/quadrumviro