【文徒】2017年(平成29)11月20日(第5巻218号・通巻1147号)

Index------------------------------------------------------
1)【記事】著者は三人とも編集長経験者
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

                                                                                • 2017.11.20 Shuppanjin

1)【記事】著者は三人とも編集長経験者

盛田隆二 の「焼け跡のハイヒール」(祥伝社)について「読書人」で「夜明け前に斜めから陽が射している」(思潮社)の森川雅美 は次のように評している。
「母が焼け跡で買った赤いハイヒールが、鮮やかによみがえる時、家族史は、ありえなかった死者の無数の家族の夢とオバーラップし、時代に消えた人たちの鎮魂となるだろう 」
http://dokushojin.com/article.html?i=2415
盛田がノンフィクションとして発表した「父よ、ロング・グッドバイ 男の介護日誌 」(双葉社)とはコインの裏表をなす小説である。
https://kaigo.news-postseven.com/3253/2
https://kaigo.news-postseven.com/3258/2
ちなみに盛田は「ぴあ」の編集者出身である。「ぴあムック」の編集長だった。
吉本隆明はどうつくられたか」(徳間書店)の松崎之貞による「『知の巨人』の人間学 評伝 渡部昇一」(ビジネス社)である。松崎は編集者として吉本隆明も担当していたし、 渡部昇一も担当していた。何しろ松崎は徳間書店オピニオン誌サンサーラ」の編集長であったのである。
私は渡部の名を一躍有名にした「知的生活の方法 」(講談社現代新書)すら読んでおらず(これが山本七平であれば別だ)、渡部に関しては全くの門外漢であるが、松崎も紹介している「ハイエク マルクス主義を殺した哲人」は面白く読んだ記憶がある。そんな私だが渡部がイギリスに「国学」を発見して見せる「イギリス国学史」(研究社出版)は読んでみたくなった。何しろ松崎によれば「ちょっとした小説を読む趣きもある」とのことなのである。
http://www.business-sha.co.jp/2017/10/%e3%80%8c%e7%9f%a5%e3%81%ae%e5%b7%a8%e4%ba%ba%e3%80%8d%e3%81%ae%e4%ba%ba%e9%96%93%e5%ad%a6-%e3%83%bc%e8%a9%95%e4%bc%9d-%e6%b8%a1%e9%83%a8%e6%98%87%e4%b8%80/
前田速夫の著書は被差別部落史の研究家として忘れ去られた存在だった菊池山哉を「白の民俗学」として見事に再評価して見せた「余多歩き―菊池山哉の人と学問」(晶文社)以来、白山信仰にこだわりつづけた一連の著作の総てを読んでいるし、また大きな影響も私は受けている。
この前田は「新潮」の編集長までつとめた文芸編集者であり、前田の文芸編集者としての凄みは車谷長吉の小説を読めばその一端を知ることもできよう。これは後に知ったのだが、前田は「新潮」で実は谷川健一の担当編集者であったのである。前田は谷川民俗学の嫡子と位置づけて良いのかもしれない。
そんな前田が古巣の新潮社に戻って上梓した新潮新書の一冊は民俗学ではなく、武者小路実篤が創設した「新しき村」の100年史なのである。皆さん、知っていましたか?「新しき村」が今も健在なことを!私は前田のこの「『新しき村』の百年 〈愚者の園〉の真実」で初めて知った。
「必要なことは、十人を五十人にし、百人にする具体的な方策であり、行動である」
そう大切なのは「個が独立しながら協調し、他者との共生をはかる」ことなのである。前田は本書で「新しき政治」の可能性を示唆しているのだろうか。まさか・・・。いや、私はそのように誤読することにした。前田が「新しき村」の村外会員であり、武者小路の担当編集者であることも、私はこの本で初めて知った。
http://www.shinchosha.co.jp/book/610743/

                                                                                                                    • -

2)【本日の一行情報】

朝日新聞ではなく、産経「日本人はゴージャス、セレブ好き? 米メディアが冷ややかに見たイバンカ・フィーバー『講演会場は空席だ』」が次のように書いている。
「日本でちょっとしたフィーバーを巻き起こしたイバンカ氏の来日。だが米メディアの目には、日本が女性の社会進出の面で国際社会から後れを取っているのみならず、保守的な女性観と金髪で豪華な“セレブ”への憧れが混在する社会であることの証左として映っているようだ」
http://www.sankei.com/premium/news/171116/prm1711160007-n1.html

文藝春秋の「オール讀物」が主催する「本屋が選ぶ時代小説大賞」は、福島市在住の佐藤巌太郎さんの単行本デビュー作「会津執権の栄誉」に決まった。
http://www.minyu-net.com/news/news/FM20171117-220947.php
佐藤は東日本大震災をきっかけに小説を書き始めた作家である。

◎日本出版者協議会は、11月22日(水)、12月7日(木)、2018年2月2日(金)の3回に分けて、「出版流通・販売問題研修会」を開催する。第1回の講師は大阪屋栗田の鎌垣英人執行役員。第2回の講師は語研の高島利行営業部長。第3回の講師は日販の上原清一ネット営業部部長。非会員も各回2000円で参加できる。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000329.000012505.html

◎ぴあと三井ショッピングパーク「ららぽーと」(三井不動産商業マネジメント)がコラボした「ぴあ×ららぽーと“エンタメ・コレクション”」の第4弾として、ららぽーとTOKYO-BAY、横浜、富士見、磐田の4会場にあるTOHOシネマズで映画「オリエント急行殺人事件」の無料特別上映会を実施する。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000681.000011710.html

インターネットテレビ局「AbemaTV」は、12月1日(金)より、「ラジオチャンネル」を開設する。全国各エリアでしか聞くことのできなかった音楽番組を独自に編成し、サイマルでの生放送を中心にすべて無料で提供する。参加するラジオ局はAIR-G’エフエム北海道)、FM NORTH WAVEFM802J-WAVEKBCラジオ九州朝日放送株式会社)、LOVE FMZIP-FM (株式会社ZIP-FM)、渋谷のラジオ
https://www.cyberagent.co.jp/news/detail/id=20984

中森明夫は「AbemaTV」の「72時間ホンネテレビ」を日本メディア史上の革命だと捉えているようだ。中森明夫朝日新聞で次のように語っている。
「まず、実感として、僕の周りでは見ていない人がいなかった。もちろん72時間ぶっ続けではないけど、ちらっと見た人も含めて。最終日の夜に行きつけの中野のパスタ屋さんに行ったら、他のお客さんもみんなスマホで番組を熱心に見ている。店員さんまでこっそりと。驚きました。スマホ時代の新しい体験だなと思った。知人の若いクリエーターたちの間でも、番組の話題で持ちきりでした」
http://www.asahi.com/articles/ASKCJ4H5KKCJUCVL00Q.html
民間放送が始まった際に力道山のカラテチョップが米国人レスラーに炸裂する模様を街頭テレビは伝え、テレビというメディアの存在感を一気に高めたことは知られているが、同じようなことが「72時間ホンネテレビ」についても言えるのかもしれない。「AbemaTV」の革命性がどこにあるかといえばテレビを部屋のメディア装置から解放したことであると私は考えている。見る場所を選ばないということだ。「AbemaTV」は21世紀の街頭テレビなのである。この革命を盤石なものにするためには、今年の大晦日でどんな一手を打つかである。

元木昌彦が「プレジデントオンライン」で東京新聞の望月衣塑子記者をインタビューしている。望月は読売新聞への移籍を真剣に考えていた時期があったそうだ。父親に相談したところ反対されて踏み止まったようだが、周知のように元木昌彦の父親は読売新聞であった。元木は次のように書いている。
「なぜ、父親が反対したのかはわからないが、私の父も読売新聞だった。戦前からの古株だったが、子供の私によく、『読売争議(1945年から46年)の時はアカ(共産党)を追い出してやった』と自慢していた。
また、正力松太郎は新聞に自分の動向を毎日書かせて私物化し、務台光雄は大手町の国有地を読売に払い下げろ、そうしないなら新聞でお前のことをたたくと、時の総理大臣を脅したことを、得意そうに私に語った。
今のナベツネ渡辺恒雄主筆)の横暴ぶりはいうまでもない。読売というのはそういう体質を持った新聞だから行かなくてよかったと、彼女にいった」
http://president.jp/articles/-/23625
それにしても東京新聞ってキャラの立っているプレイヤー(=記者)が多いよな。

◎あれっ?この男性、「JJ」の編集者じゃなかったっけ?「FLASH」11月28日号のJTのタイアップ広告なんだけれど。
https://www.kobunsha.com/shelf/magazine/current?seriesid=101002

◎こういうカルチャーは例えば朝日新聞にはないんだよね。もっと言っちゃうと「週刊新潮」にプロの仕事に特有の暗い情念は感じても、親しみやすさや可愛げのようなものは絶対に感じられない。文藝春秋ならではなんだよなあ。「ダイヤモンドオンライン」で「週刊文春」の新谷学編集長とLINEの田端信太郎上級執行役員が対談しているが、そこで新谷は次のように語っている。
「月刊で作った人間関係を週刊で壊してしまうことも少なくないけど、それをもう一度作るためには愛嬌のようなものが求められる。読者の側から見ても、どこかに親しみやすさや可愛げのようなものを感じてもらいたいなという思いはありますね。偉そうに拳を振り上げて断罪、告発するのではなく、もっと面白がってもらいたいというスタンスで記事を作っています」
http://diamond.jp/articles/-/149333
田端の次のような提案を「週刊文春」のみならず、雑誌で碌を食んでいるものは真剣に検討してみる必要があるはずだ。
「あるいは、80年代半ばにテレ朝が放映していた『ミッドナイトin六本木』みたいなタッチで、毎週深夜に文春の編集会議をライブ中継しちゃうとかいった企画もアリかもしれませんよ 」
http://diamond.jp/articles/-/149442
そう言えば小林よしのりが新谷 編集長に公開対決を 求めている。
https://www.gosen-dojo.com/index.php?key=jogst4wat-1998#_1998
ビジネスとして考えれば、小林の提案に乗るという手もあるのではないだろうか。

◎これは大歓迎。しばし郷愁に浸ろうではないか。学研プラスの「大人の科学マガジン」12月15日発売の付録は何と活版印刷機「テキン」。
https://twitter.com/OKM_F/status/930411074293075969
http://amass.jp/97387/

◎「小学館DIMEトレンド大賞」のベストキャラクター賞を獲得したブルゾンちえみのカバーMV。撮影を担当したのは今井撮影事務所。
https://www.youtube.com/watch?v=KWW0U7QjsEs&feature=share
https://www.imai-sj.com/

◎「主婦の友Deluxe2018新年特大号」の別冊付録は「大人の家計ノート2018」と「保存版 やせぐせがつく 糖質オフの作りおき」。定価は1620円(税込)。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000770.000002372.html

◎日経によれば「米政府は16日、同じ地域で新聞とテレビの兼業を容認する方針を決めた」そうだ。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO2360194017112017FF8000/

◎国連人権理事会の対日作業部会は、日本の人権状況について各国から出た218項目の勧告を盛り込んだ報告書案を公表した。「NHK NEWS WEB」は次のように書いている。
「勧告の内容は、人種や性別による差別の解消や死刑制度の廃止に関するものに加えて、アメリカなどが、放送法の一部を見直し、報道機関の独立性を確保するよう求めたほか、ドイツなどが、東京電力福島第一原子力発電所の事故の影響を受けた住民や自主避難者への支援を継続するよう求めた勧告もあります」
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20171117/k10011226441000.html

◎ビーグリーが運営する「まんが王国」は、白泉社のページビュー形式のコミック配信を開始し、新規作品を順次追加しているが、これを記念し、ポイント購入ボーナスキャンペーンを展開している。
http://www.dreamnews.jp/press/0000163774/

◎「インディ王者『佐藤琢磨』のドリフト不倫」というタイトルは好きだなあ。「週刊新潮」のスクープ。お相手は、TOKYO MX「5時に夢中!」 の元アシスタントで、フリーアナウンサー内藤聡子
https://www.dailyshincho.jp/article/2017/11151700/?all=1
周知のように「5時に夢中!」には新潮社出版部長の中瀬ゆかり が現在も出演している。「スポーツ報知」は次のように書いている。
「中瀬さんは『聡子、お前! 文春? じゃなかった。うち(週刊新潮)じゃんか…』と嘆き、『こういう仕事をやっているとあるんですけれど、新潮社(の発行媒体)で友達と思っている人のスキャンダルがバーンと出たりする。今回も友軍誤爆的な気分』と心境を明かした 」
http://www.hochi.co.jp/entertainment/20171116-OHT1T50158.html
スポーツニッポンによれば中瀬は「怒っていいのは(佐藤の)奥さんとお子さんたちだけ。私たちがとやかく言うべき話ではない 」とも発言したそうだ。しかし、「不倫」は世間からすれば面白いネタなのである。だから「週刊新潮」に限らず週刊誌は「不倫」ネタが大好きなのである。
http://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2017/11/16/kiji/20171116s00041000280000c.html

◎11月16日に発表された動画投稿者向けの新アプリ「Facebook Creator」は当然YouTubeを競合相手として考えているだろう。
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20171117-00018531-forbes-sci

NHKにしても取材を申し込む際の配慮は、まあ、この程度だったということである。こういう裏側がバレてしまうのがソーシャルメディアの時代というものである。
http://snacken.hatenablog.com/entry/2017/11/17/230218

中川右介は、ともかく多作である。新書作家というか、新書評論家のような存在である。ともかく昨年来、出ずっぱりの活躍をしている。
昨年は私の知る限りでもNHK出版新書「怖いクラシック」、朝日新書「戦争交響楽 音楽家たちの第二次世界大戦」、ちくまプリマー新書「歌舞伎一年生 チケットの買い方から観劇心得まで」、幻冬舎新書「月9 101のラブストーリー」、角川新書『阪神タイガース 1965-1978」、朝日新書SMAPと平成』というように6点を上梓し、今年に入ってからも幻冬舎新書「現代の名演奏家50 クラシック音楽の天才・奇才・異才」、ちくま新書「ロマン派の音楽家たち−恋と友情と革命の青春譜」ときて、今度は「昭和45年11月25日 三島由紀夫自決、日本が受けた衝撃」を上梓した。
http://www.gentosha.co.jp/book/b5082.html
http://www.gentosha.jp/articles/-/9120
新書ではないけれど集英社からは「江戸川乱歩横溝正史 」が出たばかりである。
http://gakugei.shueisha.co.jp/kikan/978-4-08-781632-7.html
中川文人は弟である。

◎開閉会式に関する業務と、聖火リレーの運営 は電通に委託する方向だという。
https://www.nikkansports.com/sports/news/201711170000747.html

◎実は紙の雑誌のほうが付録なのではないだろうか、宝島社の雑誌の場合は。宝島社の女性美容誌「&ROSY 」2018年1月号の付録は「ロベルタ ディ カメリーノ」 とコラボしたドレッサーボックス。
https://www.buzzfeed.com/jp/catherinejihyego/rosy1?utm_term=.yo3VAGPBg#.pxD2ZGJ7M

小学館は、蘇部健一の驚愕の結末が待ち受ける恋愛 ミステリー小説のタイトルを一般公募する 。名付けて「小説X」企画。このサイトで小説も読める。読んだうえでタイトル案を応募できるわけだ。集まった案の中から編集部が選んだ5タイトルを最終候補としてネット上の投票で決める という。私たちの言葉で言うと「編集力の解放」を試みるということだ。
http://www.shosetsu-maru.com/pr/novelx/
https://mainichi.jp/articles/20171118/k00/00m/040/012000c

◎ウニクス上里(埼玉県上里町七本木)1階の「くまざわ書店上里店」が11月17日、文具売り場を新設してリニューアルオープンしたそうだ。
https://honjo.keizai.biz/headline/124/
ここの店長はマンガ家でもある。
https://honjo.keizai.biz/headline/92/

福山リョウコの「覆面系ノイズ」が三木康一郎監督によって映画化されたが、この映画に出演する中条あやみ、志尊淳、小関裕太が、劇中の衣装を着用して、少女マンガ誌「花とゆめ」(白泉社)24号の表紙を飾っている。
花とゆめ」の表紙を実写映画の人物が飾るのは1974年の創刊以来、初めてのことだそうだ。
https://mantan-web.jp/article/20171117dog00m200043000c.html

旭屋書店は、12月7日から各店舗で「芥川賞作家で読む、純愛を描く一冊」において、吉村萬壱の「回遊人」(徳間書店)と2014年発売の「臣女」(徳間書店)をフィーチャーした「本TUBEニュース」を設置する。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000071.000013301.html
11/25(土 )には京都の恵文社一乗寺店COTTAGEで吉村のトークイベントが開催される。
https://twitter.com/Mimei_DP/status/926791662549975046
「臣女」は「アメトーク」で紹介されたこともあり、重版しているのか。
https://twitter.com/Tokuma_Bungei/status/930986260901986304

◎「シャア・アズナブルぴあ」「ルルーシュぴあ」 につづき「北斗の拳 ラオウ × ぴあ 」が発売される。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000684.000011710.html

                                                                                                                    • -

3)【深夜の誌人語録】

振り向くから後悔するのだ。