【文徒】2018年(平成30)2月2日(第6巻20号・通巻1194号)

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1)【記事】橘玲「80's エイティーズ ある80年代の物語」が描く宝島社
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】橘玲「80's エイティーズ ある80年代の物語」が描く宝島社

「新書大賞2017」(中央公論新社)を獲得したのは橘玲新潮新書言ってはいけない 残酷すぎる真実」であった。様々な「建前」を粉砕することで読者の快哉を浴び40万部を売った。
http://www.shinchosha.co.jp/book/610663/
「お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方」がベストセラーになったことからもわかるように資産運用術や自己啓発系のビジネス書を得意としているノンフィクションの書き手であり、「永遠の旅行者」が山本周五郎賞の候補になるなど経済小説の書き手でもある。
もともとは宝島社やメディアワークスで編集者をつとめていた。「宝島30」の編集長時代は本名の上田高史を名乗っていた。橘玲名義で仕事を始めたのは2001年以降のことのようである。
http://xiangcaishala.seesaa.net/article/356467366.html
橘は「宝島30」で確かオウム第7サティアン島田裕巳に取材させ、サリンと関係ない宗教施設と断言していたのではなかったか。また、メディアワークスで担当した「オルタカルチャー日本版」は小谷真理から名誉棄損で訴えられた。ペンネームは夫のものと書いたのだ。ある時期、橘が編集者として雑誌文化の最前線(エッジ)にいたことは間違いあるまい。そんな橘が太田出版から「80's エイティーズ ある80年代の物語」を上梓した。
「このように利害が一致したことで、地下鉄サリン事件の直後から、ぼくたちの雑誌は教団に対して独占的に取材できる立場にあった。事件が起きると南青山にあるオウム真理教本部はものすごい数のメディア関係者に取り囲まれたが、そんななか、ぼくたちだけは教団の建物に入っていくことができたのだ」
「こうして振り返ってみると、ぼくにとっての「80's」とは、大学を卒業した一九八二年からオウム真理教による地下鉄サリン事件が起きた一九九五年までということになるだろう。恥ずかしい言い方を許してもらえるのなら、この『長い八〇年代』がぼくの青春だった」
http://www.ohtabooks.com/publish/2018/01/19132002.html
島田裕巳ツイッターに次のように投稿している。
橘玲さんから送っていただきました。私とオウム真理教の問題についても、『宝島30』の編集長の立場から書かれています。もう23年も前の出来事です。生きて読めたことを幸いとしなければなりません」
https://twitter.com/hiromishimada/status/955819680664440832
橘が当初フリーランスとして出入りするようになった宝島社の編集部には町山智浩鶴見済、辰巳渚、村松恒平など「錚々たるメンバー」が揃っていた。橘は石井慎二のもとで働いていたわけである。
これは初めて知ったことだが、橘は宝島社で仕事をする前は平川克己と内田樹が共同で創業した翻訳会社でつとめていたこともあれば、創刊号で「黒人の彼ス・テ・キ」を特集した「キャロットギャルズ」の編集長もつとめていたのである。「キャロットギャルズ」は創刊号で即休刊してしまった伝説の雑誌である。

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2)【本日の一行情報】

◎オレの場合、既にアレクサと「関係」が成立しちゃっているからね。米アップルはスマートスピーカー「HomePod」を発売する。音は良いらしいけれど、アップルが「革命」から遅れだしたように思えてならない。
http://itpro.nikkeibp.co.jp/atcl/column/16/082600184/012900068/?rt=nocnt
アップルのソニー化!?

◎日経BP社から刊行された「未来市場2018-2027」って価格が48万6000円(税込み)って誤植じゃないの。
https://smart-flash.jp/sociopolitics/32992
誤植ではなく本当だった。
http://www.nikkeibp.co.jp/lab/miraishijo18/
驚くべきは「Smart FLASH」によれば、昨年12月15日付の日本経済新聞朝刊に広告が掲載されたこともあり、「問い合わせは急増し、初版100部のうち、すでに40部が売れた。年度末にはさらに上積みが期待できるという」ことらしい。
監修・執筆はミレニアムパートナーズの秦充洋代表取締役ボストン・コンサルティング・グループの出身。日経ビジネススクールの講師もつとめている。
http://school.nikkei.co.jp/lecturer/article.aspx?tid=NBS385
2006年にミレニアムパートナーズを設立している。
http://www.millenniumpartners.co.jp/

福島第一原発事故で「被ばく」したアメリカ兵が裁判を起こしていたことは知っていたが、原告数は400人を超え、現時点で死者が9名になる。田井中雅人+エィミ・ツジモトによる「漂流するトモダチ アメリカの被ばく裁判」が朝日新聞出版から発売された。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000362.000004702.html
田井中雅人のツイート。
東日本大震災から七年。称賛されたトモダチ作戦の裏で、従事した兵士たちは白血病など様々な病を発症していた。被害の補償を求め、元兵士らが提訴。原告数は四〇〇人以上にのぼる。被ばくの真実を追った」
https://twitter.com/tainaka_m/status/957760953310789632

NHKは1月16日に「Jアラート」で誤報したことにより、報道局長を訓告、報道局ニュース制作センター長ら2人を厳重注意した。
http://www.sankei.com/entertainments/news/180130/ent1801300007-n1.html

元木昌彦は「プレジデントオンライン」に掲載した「"週刊文春みたいな仕事"は恥ずべきものか」で次のように書いている。
「『不倫ばかりやらないで、権力者を追及しろ』だ? 権力者のスキャンダルも芸能人の不倫も、週刊誌にとっちゃ貴賤の別はない。判断基準は面白いかどうかだけだ」
http://president.jp/articles/-/24326

日本ケロッグは、CCCが運営するT-SITE、蔦屋書店、蔦屋家電の4店とコラボし、新製品「オールブラン プレミアム」を活用したカフェメニューの提供やイベント実施など、「腸活」をテーマにしたライフスタイル提案を展開している。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000006.000031002.html

◎小杉健治の「父と子の旅路」(双葉社)を原作にし、滝沢秀明が弁護士を、遠藤憲一が死刑囚をつとめる連続ドラマ「家族の旅路 家族を殺された男と殺した男」(東海テレビ・フジテレビ系)が2月3日から毎週土曜午後11時40分より放送開始する。
http://mainichi.jp/articles/20180130/dyo/00m/200/016000c

白泉社の「花とゆめ」でデビューし、「LaLa」や「メロディ」を牽引してきた成田美名子が画業40周年を迎える。これを記念して様々なイベントが開催される。
成田は現在、青年能楽師の恋と日常を描く「花よりも花の如く」を「LaLa」に連載中だが、作中で主人公が演じた演目が2月11日から三日間、観世能楽堂で上演される。
また原画展が2月10日から2月20日まで銀座の画廊「スパンアートギャラリー」で開催される。
銀座蔦屋書店では2月1日から2月13日まで成田美名子フェアが開催される。
http://www.hakusensha.co.jp/narita40th/
2月13日に上演される「土蜘蛛」は見てみたいなあ。

◎産経は昨年12月9日「沖縄2紙が報じないニュース」として「危険顧みず日本人救出し意識不明の米海兵隊員 元米軍属判決の陰で勇敢な行動スルー」を掲載している。
「12月1日早朝、沖縄県沖縄市内で車6台による多重事故が発生した。死者は出なかったが、クラッシュした車から日本人を救助した在沖縄の米海兵隊曹長が不運にも後続車にはねられ、意識不明の重体となった。『誰も置き去りにしない』。そんな米海兵隊の規範を、危険を顧みずに貫いた隊員の勇敢な行動。県内外の心ある人々から称賛や早期回復を願う声がわき上がっている。ところが『米軍=悪』なる思想に凝り固まる沖縄メディアは冷淡を決め込み、その真実に触れようとはしないようだ」
http://www.sankei.com/premium/news/171209/prm1712090014-n1.html
産経の記事を書いた高木桂一那覇支局長は「『報道しない自由』を盾にこれからも無視を続けるようなら、メディア、報道機関を名乗る資格はない。日本人として恥だ」とまで大見得を切って記事を結んでいる。
ところが、である。この記事の雲行が怪しくなって来た。琉球新報が1月30日付で「産経報道『米兵が救助』米軍が否定」を掲載したのである。
「米海兵隊は29日までに『(曹長は)救助行為はしていない』と本紙取材に回答し、県警も『救助の事実は確認されていない』としている。産経記事の内容は米軍から否定された格好だ。県警交通機動隊によると、産経新聞は事故後一度も同隊に取材していないという。産経新聞は事実確認が不十分なまま、誤った情報に基づいて沖縄メディアを批判した可能性が高い。産経新聞の高木桂一那覇支局長は『当時のしかるべき取材で得た情報に基づいて書いた』と答えた」
https://ryukyushimpo.jp/news/entry-655697.html
琉球新報の記事は「産経新聞は、自らの胸に手を当てて『報道機関を名乗る資格があるか』を問うてほしい」と結ばれている。
ニュースサイト「HUNTER」が「産経新聞 沖縄メディア攻撃で虚報の可能性 那覇支局長との一問一答」を掲載し、この問題を取り上げている。「HUNTER」は事実確認のため、高木桂一那覇支局長に電話した際のやり取りが総て掲載されているわけだが、この応対を読む限り、これが事実なら高木那覇支局長はジャーナリストとして失格であろう。「米軍=善」としか考えられないイデオロジストに過ぎないのではなかろうか。ごくごく常識的な注釈を加えるならば、自国に駐留する外国軍を「善」としか考えられないようでは、少なくとも「愛国」を名乗る資格はあるまい。

◎日販は東武ブックスの普通株式について、東武鉄道保有する株式全てを含む発行済株式の83.3%を、1 月 25 日(木)付で取得した。代表取締役社長は、引き続き渡辺剛史がつとめるが、商号および屋号については、今後変更する予定だという。
http://www.nippan.co.jp/wp-content/uploads/2018/01/news20180131.pdf

◎日販は「全国書店員が選んだおすすめコミック2018」一般部門およびWeb部門のランキングを発表し、全国の取引書店で店頭フェアを開催している。
1位:「とんがり帽子のアトリエ」(白浜鴎講談社
2位:「憂国のモリアーティ」(原案:コナン・ドイル(「シャーロック・ホームズ」シリーズ) 構成:竹内良輔 漫画:三好輝/集英社
3位:「怪物事変」(藍本松集英社
4位:「Dr.STONE」(原作:稲垣理一郎 作画:Boichi集英社
5位:「空挺ドラゴンズ」(桑原太矩講談社
6位:「間違った子を魔法少女にしてしまった」(双龍/新潮社)
7位:「能面女子の花子さん」(織田涼/講談社
8位:「八雲さんは餌づけがしたい。」(里見U/スクウェア・エニックス
9位:「バイオレンスアクション」(漫画:浅井蓮次  原作:沢田新/小学館
10位:「ドラゴン、家を買う。」(原作:多貫カヲ 作画:絢薔子/マッグガーデン
11位:「青のフラッグ」(KAITO集英社
12位:「北北西に曇と往け」(入江亜季KADOKAWA
13位:「魔王の秘書」(鴨鍋かもつ/泰文堂)
14位:「執事たちの沈黙」(桜田雛/小学館
15位:「あげくの果てのカノン」(米代恭小学館
http://www.nippan.co.jp/news/osusume_comic2018_0201/
集英社から4作品がランクインいている。講談社小学館は3作品ずつのランクイン。

◎TOKYO-FM系全国38局ネットで放送している山下達郎の「サンデーソング・ブック」の25周年を記念して、マガジンハウスの「ブルータス」が「山下達郎のブルータス・ソングブック」を特集している。これグッドジョブ。
https://www.cinra.net/news/20180130-brutus
私にとってはシュガー・ベイブの山下なんだよね。ロフトの平野悠とサンボマスター山口隆が対談しているのだが、そこで平野が次のように語っている。
「僕等の時代はベトナム戦争がひどい形であって、徴兵を拒否した自由を求めるヒッピーの人たちがラブ&ピースを叫ぶ、それが挫折して、ギター持ってみんな理想の地を求めて世界中に散らばってヒッピーになって最終的にはドラッグで沈没していった時代があったんだよ。で、僕らはそこで非暴力なラブ&ピースはもう駄目だなって。結局僕ら世代は失敗してるし。
ただ、あなたが昨年の『Quick Japan』の対談で山下達郎さんに何で愛とか戦争の問題をやらないんですか? って聞いたら僕は1回挫折してるからとか、僕はアナーキストだからそう言うことはやらないと言われてるわけじゃん。それに対して山口さんは反論なかったの?」
http://www.loft-prj.co.jp/interview/0604/01.html
山下が自らをアナーキストだと言わしめているのは、高校時代の経験があってのことだろう。山下は都立竹早高校の出身だが、1968年の入学。翌年は校舎改築のため都立新宿高校旧校舎が1年間仮校舎となった。ちなみに坂本龍一は都立新宿高校で平井玄、塩崎恭久、馬場憲治らとともに学生運動に没頭していた。はっぴいえんどの周辺に結集した才能の背景に「1968」があったことは間違いあるまい。
筑摩書房から「1968[1]文化」(四方田 犬彦 編著)が発売された。
http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480016614/

◎「LINE Financial」が設立された。
https://linecorp.com/ja/pr/news/ja/2018/2023
アプリを使って仮想通貨の事業にも参入する。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180131/k10011309471000.html

◎日経によればKADOKAWAは、1冊単位で製本・販売する「プリント・オン・デマンド」(POD)を活用し、注文から48時間以内に書籍を届けるサービスを2020年以降に始めると発表した。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO26357790R30C18A1X35000/
2020年以降にKADOKAWAは存在できるのだろうか。存在するとして、どのようなカタチになるのか。私の問いのほうがリアリティがあると思うなあ。

◎これまた日経によればアマゾンジャパンは出版社に注文した雑誌などは出版取次会社を介さず、印刷工場から自社倉庫に直接仕入れる。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO26392390R30C18A1TJ2000/

◎日本独立作家同盟は「hon.jp」のドメインと「hon.jp DayWatch」の事業承継を前提に協議を続けているそうだ。
「1月30日現在、『hon.jp』のドメインおよび本ニュースサイトである『hon.jp DayWatch』につきまして、特定非営利法人日本独立作家同盟(主たる事務所:東京都練馬区)と事業承継を前提に継続協議中です」
https://hon.jp/news/1.0/0/11689
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1801/31/news102.html

トーハンは、幻冬舎と協力し、2002年刊行の幻冬舎文庫「暗いところで待ち合わせ」(乙一)の増売企画「くらまち プロジェクト」による店頭フェアを、全国約1,200書店で展開している。
http://www.tohan.jp/news/20180201_1143.html

橋下徹が岩上安身に対して名誉棄損による損害賠償訴訟を起こした。
「僕は今回岩上氏のツイート、しかもリツイートの内容が名誉棄損にあたると訴えた。リツイートの内容は『橋下徹大阪府の職員を自殺に追い込んだ』という内容だった。これは、これくらいの表現はまあいいじゃないと軽く扱うわけにはいかない。
しかも、岩上氏は、かつてジャーナリストとしてテレビ番組のコメンテーターにレギュラー出演した経歴があるし、現在もジャーナリストして活動している。IWJ(インディペンデントド・ウェブ・ジャーナル)というものを立ち上げ、会費を募っている。バリバリのプロのジャーナリストだ。
こういう者が、ツイッターというものを使って情報発信をする際のルールはどうあるべきか。ツイートやリツイートが簡単にできるからといって、注意義務が減じるわけではないというのが僕の持論だ」
http://president.jp/articles/-/24337

ディー・エヌ・エーの子会社であるエブリスタと双葉社は、2月1日(木)、共同出資会社DEF STUDIOS(デフ スタジオ)を設立した。出資比率 エブリスタが51%、双葉社が49%。DEF STUDIOSは、エブリスタから投稿プラットフォームを活用した原作発掘、双葉社からは編集ノウハウを生かしたコンテンツの企画・制作の側面から協力を得ながら、事業運営を行っていくそうだ。
http://dena.com/jp/press/2018/02/01/1/

◎「留萌ブックセンターby三省堂書店」をボランティアで支援している市民グループ三省堂書店を応援し隊」が第25回北海道地域文化選奨特別賞を受賞した。
留萌市内では10年12月に書店が閉店し、市内から書店がなくなった。主婦5人は11年4月に『三省堂書店を留萌に呼び隊』を結成し、三省堂書店(東京)に出店を要請した。誘致が実現した後も『三省堂書店を応援し隊』と改称し、書店の運営を支援してきた」(北海道新聞)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/160813/

文藝春秋から発売となった石田ゆり子のフォト&エッセイ「Lily――日々のカケラ――」が、3度目の重版で累計発行部数が14万5000部と大ヒット!
http://news.nicovideo.jp/watch/nw3260053

◎CCCメディアハウスの小林圭太代表取締役社長が主婦の友社の取締役会長に就任した。

徳間書店は本社を移転して、2月5日(月)からJR目黒駅駅前の新社屋で業務を開始する。住所は以下。
〒141-8202
東京都品川区上大崎3-1-1 目黒セントラルスクエア
電話 03-5403-4300(代表)
(各部署の電話番号は現状と変更なし)
http://www.tokuma.jp/topicsinfo?tid=15219

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3)【深夜の誌人語録】

間違えは早く認めるほどダメージは軽くなる。