【文徒】2018年(平成30)2月8日(第6巻24号・通巻1198号)

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1)【【記事】能町みね子が「週刊文春」休載を宣言!
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【【記事】能町みね子が「週刊文春」休載を宣言!

「雑誌の人格2冊目」(文化出版局)の能町みね子が2月2日に次のようにツイート。能町の連載はご存知「言葉尻とらえ隊」。私もファンのひとりだ。
「来週の原稿をもって週刊文春の連載を当面休載します」
https://twitter.com/nmcmnc/status/959373516813385729
能町は「『週刊文春』の一部の報道」を問題にしている。
週刊文春の一部の報道が非常に追従的で、内輪のリーク合戦の片棒を担がされているだけに見え、その情けなさに強く幻滅したため降板を考えましたが、降板では自分の発言機会を失うだけなので、最大限にわがままな休載という形を取りました。復帰の時期(というか復帰させてくれるかどうか)は未定です」
https://twitter.com/nmcmnc/status/959399554784247808
「『週刊文春』の一部の報道」とは、日馬富士暴行事件を起点にした貴乃花親方報道である。2月2日以前の次のような能町のツイートを読めば理解できよう。
「コラ文春ボケカス、相撲報道で新潮とまったく同じ路線とってんじゃねーよ腰抜けが」
https://twitter.com/nmcmnc/status/958632723014234112
次のようなツイートを見ると能町の怒りの背景が理解できないわけではない。
「7年前の八百長のときの発言?そら本当だったなら悪いよ、今やほとんど明るみに出ちゃってるけど、たしかに隠蔽発言だったろうね。でも4年前の暴行や7年前の問題発言を取り上げて、数ヶ月前の貴乃花部屋の暴行裁判は頑なに取り上げないのは何?誰がシナリオ考えてんのかな?」
https://twitter.com/nmcmnc/status/958634733230936064
「こんなん5分検索すれば出てくるけど、八角親方が追放したK顧問(力士のパチンコ台を作ろうとして業者から裏金を受け取った)がいま接近してるのが貴乃花親方。K顧問の背任事件を『金を返したから問題ない』と言ったのが当時の危機管理委員、宗像氏。八角親方を批判する宗像氏の寄稿を載せたのが週刊新潮
https://twitter.com/nmcmnc/status/958640532246245376
「いま理事長側の親方を叩く材料は週刊誌やテレビが湯水のように提供してくるけど、全然発言しない貴乃花親方の具体的なすばらしさについて言える人は誰かいるんだろうか。ブログでしか書かない精神論みたいなもんじゃなく。少なくとも八角親方はパチンコ利権で裏金を受け取った外部理事を解雇した」
https://twitter.com/nmcmnc/status/959357069672398848
「そしてその裏金の外部理事はいま貴乃花親方にすりより、貴乃花部屋パーティで乾杯の音頭を取ったりしてる。もうこれだけで構図は十分じゃないのか」
https://twitter.com/nmcmnc/status/959357849859010560
「リテラ」は予想通り「能町みね子週刊文春の“貴乃花親方ベッタリ”報道に激怒し、文春連載コラムの休載を宣言」を掲載し、能町を擁護している。
http://lite-ra.com/2018/02/post-3784_2.html
水道橋博士も能町の才能をツイッターで高く評価している。
週刊文春能町みね子のコラム、が、毎回、半歩先行っている。言葉知りとらえ隊。出版業界人よりもテレビ関係者は教養標準として読むべきだろうなぁ」
https://twitter.com/s_hakase/status/958914165065768961
サザンオールスターズ1978-1985」(新潮新書)のスージー鈴木も次のようにツイートしている。
「『週刊文春』の能町みね子の連載=『言葉尻とらえ隊』は、少なくとも私の知る限り、今の活字メディアの中で、最も知性と見識を感じる記事だと思う。最新号の『ドキュメンタル』論(松本人志論含む)は、目からウロコが数十枚落ちたような気がした」
https://twitter.com/suziegroove/status/959309689912569857

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2)【本日の一行情報】

◎「週刊文春」の新谷学編集長の発言。
山尾志桜里さんの不倫疑惑の時が一番顕著だったのですが、山尾さんのスクープも売る、売らないで言えば、本当に完売してもいいぐらいのスクープだったと思うんですけれど、そこまでは売れなかったんです。いろんな人に言われたのは、『テレビで読んだ気になっちゃった』『あれで面白すぎるから十分だった』って言われちゃうと切ない。我々の仕事って何なんだろうと。テレビにネタとか情報を提供する仕事なのかよって忸怩たる思いもすごくあって」
http://news.nicovideo.jp/watch/nw3272101
お笑い芸人のカンニング竹山とのトークイベントにかかわる多くの記事を読んだが、どの記事を読んでも新谷の誠実さは伝わって来る。個人の資質もそうなのだろうけれど、こういう誠実さに文藝春秋の伝統が見え隠れするんだよね。

◎「出版人・広告人」に「反逆のメロディ」を連載している福井紳一がKADOKAWAより「戦中史」を上梓した。「戦前」を生きる私たちを「ですます」調で殴りつける福井のラジカリズムに感服した。「あとがき」が良いんだよなあ。
福井は大学院で橋川文三のもと学んでいるが、橋川が1983年12月17日に亡くなってしまうため12月10日が最後のゼミとなった。その日はゼミ終了後、コンパが開かれたが、そのときのエピソードが「あとがき」には書かれている。福井はコンパの席で「第七旅団の歌」を披露したという。この歌は一番も二番も「第七旅団のゆくところ ファシストは滅ぶ 第七旅団のゆくところ ファシストは滅ぶ 進め!進め!」で終わるのだが、福井は敢えて正確に歌わなかった。
「しかし、慶應義塾大学の我々の仲間は、『ファシストは滅ぶ ボルシェビキは滅ぶ』とわずかな替え歌で歌いました。その替えた部分を歌った時、先生は『そう、そうなんだよな』と小さくつぶやき涙されたことを記憶しております。この思い出が本書の基調になっています」
http://shoten.kadokawa.co.jp/book/bk_detail.php?pcd=321603000769
福井の名前は山本義隆岩波新書「近代日本一五〇年 科学技術総力戦体制の破綻」にも刻まれている。山本は福井に謝辞を述べているのである。
https://www.iwanami.co.jp/book/b341727.html
あまり公言して来なかったが、私は吉本隆明村上一郎谷川雁橋川文三桶谷秀昭磯田光一渡辺京二といった人たちの書物に強い影響を受けている。

◎2001年から15年間にわたり「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載された『BLEACH』が実写映画化され、7月20日から公開される。
https://sirabee.com/2018/02/05/20161489188/

◎安倍首相は心底朝日新聞が嫌いなようだ。読売新聞は、こう書く。
「安倍首相は5日の衆院予算委員会で、学校法人『森友学園』が『安倍晋三記念小学校』の校名を記した設立趣意書を財務省に提出したとの朝日新聞の報道について、『裏取りをしない記事は記事とは言えない。ほとんどちゃんとした品質を出していない』と改めて批判した」
http://www.yomiuri.co.jp/politics/20180205-OYT1T50043.html
一方、これは産経の記事。
安倍晋三首相は28日の衆院予算委員会で、森友学園問題をめぐる朝日新聞の報道に対し『(学園前理事長の)籠池泰典被告が言ったことをうのみにし、『安倍晋三小学校』という申請があったと報道した』と批判した」
http://www.sankei.com/politics/news/171128/plt1711280048-n1.html
読売のほうがキツイ書き方をしている。

◎「漫画アクション」(双葉社)4号は狩撫麻礼の追悼文を編集部名義で掲載した。「漫画アクション」で大友克洋の「East of The Sun,West of The Moon」、たなか亜希夫の「迷走王 ボーダー」、かわぐちかいじの「ハード&ルーズ」、岡崎京子の「ハイリスク」、やまだないとの「夕陽の落ちるころ」などの原作を手がけた。土屋ガロン名義では「ルーズ戦記 オールドボーイ」もそう。
「早すぎる死がとても残念でなりませんが、狩撫氏が作品に込めたメッセージは我々の心の中で生き続けます」
https://mainichi.jp/articles/20180205/dyo/00m/200/027000c
双葉社のマンガを支えた才能のひとりであることは間違いない。「カリブsong」を紹介しておこう。
http://www.futabasha.co.jp/booksdb/smp/book/bookview/978-4-575-94404-4/smp.html?c=&o=date

◎「仕事旅行」が卒寿を迎えた小沢信男にインタビューしている。小沢は花田清輝に才能を見出された作家だ。
「それで、ヤマギシ会このかた、ルポルタージュの若手というふうに見られてきて。そのうちに、徳間書店が『問題小説』っていう新しい雑誌を出したんですよ。すでに『オール讀物』とか『小説新潮』なんかがあったんだけど、そこへ徳間が殴りこみをかけた。
この『問題小説』がルポルタージュに力を入れるっていうので。それで当時、ある女学生が突然失踪しちゃって、どこにいるのか半年ぐらいわからなかったっていう事件があって(1965年の女子高生籠の鳥事件)。それをテーマにルポを書けと言われてね」
http://top.tsite.jp/news/workstyle/o/38750636/
http://top.tsite.jp/news/workstyle/o/38757957/
この女子高生籠の鳥事件は「犯罪紳士録」に収められている。講談社文庫やちくま文庫では今や絶版になっている。こういう本をいつでも読めるようにしておかなけりゃ駄目だよ、出版業界は。「ドキュメント犯罪の主役たち」「ドキュメント悪女」(三一新書)とか読んでおいて損はないはずだ。
ちなみに「問題小説」の犯罪ものは小沢から佐木隆三にバトンタッチされる。「捨身なひと」(晶文社)は中川六平の編集者としての遺作になるのか…。
http://www.shobunsha.co.jp/?p=2955

KADOKAWAは、webサイト「ザテレビジョン」で、SNSや独自調査を集計し、盛り上がり度をポイント(pt)として算出する「視聴熱」を発表している。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000004159.000007006.html

◎「ぴあアイドルHappy 1st Anniversary」が3月17日(土)に大阪・阿倍野ROCKTOWNで開催される。
http://kansai.pia.co.jp/news/music/2018-02/piaidolfesta.html

◎ぴあは「桜の絶景 首都圏版」を発売する。こういう企画は、ぴあの得意とするところ。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000751.000011710.html

◎学研プラスが運営する「Gakken Tech Program」は、小・中学生向けのプログラミング無料ワークショップと1DAYキャンプ(短期集中講座)を、2月から4月にかけて有隣堂と共同開催する。1DAYキャンプの参加費は15,000円。
https://resemom.jp/article/2018/02/06/42721.html

白泉社博報堂DYデジタルは、Preferred Networksの協力のもと、深層学習技術を使った自動着色によるカラー版マンガ作品の配信および販売を開始した。
http://www.hakuhodody-digital.co.jp/wp-content/uploads/2018/02/HDYD_release20180206.pdf

◎「ハフポスト日本版」は宝島社の「& ROSY」編集長の梅田美佐子による「2児の母である女性誌編集長が、仕事と家庭を両立させるために行う1分の日課とは」を掲載している。
「編集部員はもちろん外部であっても、私の作りたい雑誌に共感して協力してくれる人がきっと手を挙げてくれると思うんです。『助けてもらおう』ではなく『一緒にやろうよ!』という楽しい雰囲気が人を集めて、よいものを作るんだと、いつも感じています」
http://www.huffingtonpost.jp/umeda-misako/eic-and-rosy_a_23353826/

◎これは大ニュースだ。日本での出版は再来年か。AFPの記事。
「今年で死後34年を迎えるフランスの哲学者ミシェル・フーコーMichel Foucault)が著した「性の歴史(The History of Sexuality)」シリーズのうち、未発表だった第4巻『肉体の告白(Confessions of the Flesh)』が今月9日、ついに出版される」
http://www.afpbb.com/articles/-/3161404?cx_amp=topstory

◎フィッティングした上で商品の受け取りができるヤマトホールディングスの新サービス「Fittingステーション」への参加企業が新たにユナイテッドアローズハースト婦人画報社、トランスコードの3社が増え、合計6社になった。
https://www.tsuhannews.jp/49139
集英社はどうするのだろうか。

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3)【深夜の誌人語録】

敵の強さに対峙する前に自分の弱さに対峙せよ!