【文徒】2018年(平成30)3月13日(第6巻46号・通巻1220号)

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1)【記事】ブログ記事「出版状況クロニクル」に大阪屋栗田が反論
2)【本日の一行情報】

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1)【記事】ブログ記事「出版状況クロニクル」に大阪屋栗田が反論(岩本太郎)

ブログ「出版・読書メモランダム」の記事に対して大阪屋栗田などが反論する事態になっている。
対象になったのは同ブログの3月1日付記事、恒例の月間まとめ「出版状況クロニクル」(第118回)。去る2月中の出版業界における主な話題を全部で17件ピックアップのうえ紹介しているのだが、現在ではそのうちの「6」が削除されている。
http://odamitsuo.hatenablog.com/entry/2018/03/01/000000
問題の「6」とは「大阪屋栗田が大手出版社に対し、支払手形をジャンプ」とのタイトルだった。
これに対して大阪屋栗田が反論。6日付で公式サイト上に「当社に関する虚偽情報の発信に関して」と題した記事を掲載した。
《現在、当社に対する事実無根の情報が一部のブログで発信されており、複数の問い合わせを頂いております。
具体的には、大株主の経営からの撤退や支払手形のジャンプなど、当社の経営不安を連想させるような記載がされておりますが、当社の資金状況は安定しており、大株主の経営からの撤退や支払手形のジャンプといった事実は一切ございません。
当社の信用を毀損し業務を妨害するような虚偽情報の発信がなされたことは極めて遺憾であり、顧問弁護士とも相談の上、刑事告訴民事訴訟の提起等の法的措置も含めた適切かつ断固たる対応をして参る所存です。
当社は、主要株主たる楽天株式会社、株式会社講談社、株式会社小学館、株式会社集英社株式会社KADOKAWAおよび大日本印刷株式会社との連携をさらに強化し、よりよいサービスを提供し、出版業界の発展に取り組んで参ります。
お取引先様、関係各位におかれましては、引き続きのご愛顧、ご支援を賜りますようお願い申し上げます。》
http://www.oak-pd.co.jp/newsrelease/archives/13
これを受けて当該ブログは、記事「出版・読書メモランダム118」に、8日付で以下の「付記」を追加した。
《明らかに本クロニクルに対する3月6日付の大阪屋栗田の「ニュースリリース」に関して、それへの批判と懸念の問い合わせが相次いでいる。
これには出版業界の言論をめぐる重大な問題も含まれるし、また出版状況の流動性を見極める必要もあるので、次回のクロニクルにおいて、正面から反論していくことを約束しておこう。それまでしばらくお待ち頂きたい。
なお大阪屋栗田からは本クロニクルに対する質疑や接触はまったくなく、3月6日になって、いきなり「ニュースリリース」が出されたのである。その後も同様であることを記しておく。》
http://odamitsuo.hatenablog.com/entry/2018/03/08/124836
他方、当該ブログ記事に対しては楽天も9日付で「一部ウェブサイトについて」と題して以下の見解を公表した。
《一部ウェブサイトにおいて、当社が、出資している株式会社大阪屋栗田−OaK出版流通−から撤退するかのような言及がありましたが、そのような事実は一切ございません。
楽天は、引き続き株式会社大阪屋栗田−OaK出版流通−と連携し、出版業界の発展に取り組んでまいります。》
https://corp.rakuten.co.jp/news/press/2018/0309_02.html
結果、当該ブログは「6」を削除した。10日付の「付記2」では以下のように綴っている。
《間接的に、議論の応酬もまったくなく、出版業界の言論の自由を圧殺する事態が生じた。
それゆえに、本クロニクルの継続の優先を選択したことを報告しておく。》
http://odamitsuo.hatenablog.com/entry/2018/03/10/084500
ネット上では今のところ目立った意見は上がっていないが、ジャンプ説については三才ブックスの海塚義昭がこんな見方をツイートしていた。
大阪屋栗田が大手版元への手形をジャンプって情報がありますが、取次から版元への支払いは返品等で金額が変動するので、数ヶ月前に振り出す手形というのは引っ掛かります。大手版元だけはすぐに払って貰えるという売掛金か、大手版元が大阪屋に融資をして、返済方法として手形を切らせたのでは。》
https://twitter.com/yoshiakikaizuka/status/969036032095150080
「ウラゲツ」も直接この件に言及していないが、10日にはこんな呟きをしている。
《もし本当に大きな変化が不可避ならまず最初に「帳合変更」から始まるはず。》
https://twitter.com/uragetsu/status/972359559443505153

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2)【本日の一行情報】(岩本太郎)

◎蛇足ながら上記の大阪屋栗田による公式サイトでの6日付反論は、PCではともかくスマホなどでは読みにくかったとの声が上がっていた。
《PC用ページはこれでいいとして、モバイル用ページ(http://www.oak-pd.co.jp/s/newsrelease/archives/13 …)はもうちょいどうにかならんのか》
https://twitter.com/pmx003_the_o/status/971260172168556544
《関係ないけど、iPad だとクソ読みにくかった》
https://twitter.com/daruyanagi/status/971180268043173888

◎経済評論家の加谷珪一がネットメディアの『ビジネス+IT』(ソフトバンクグループのSBクリエイティブが運営)に「TSUTAYA展開のCCC、なぜ崩壊する出版市場に『逆張り』するのか」を寄稿。「非上場化で経営の実情が見えにくくなった」CCCの在り様に疑問を呈示しつつ、そのフランチャイズ制度について、本部が一種のR&Dの役割を担いつつ加盟各店舗との間で「対等な関係」による運営を行っていると分析。
《増田氏は代官山の店舗について坪あたりの月商が30万円を超えると発言しているが、この数字がもし本当であれば、単位面積当たりの売上高としては驚異的な水準を誇るコンビニに近い販売力ということになる。
これだけの数字を出せるモデルが提示できるのであれば、同様の大型店舗をフランチャイズ加盟企業が展開する余地は大きいかもしれない(略)しかしながら、力のある加盟店に支えられた同社のビジネスモデルは、諸刃の剣でもある。(略)CCCが提示する新しいモデルに各加盟店が賛同しなかった場合、全体の動きはバラバラなものとなってしまい、ブランド力の衰退につながる可能性もある。本部主導での展開が難しいゆえのリスクといってよい。》
https://www.sbbit.jp/article/cont1/34678

青山ブックセンター本店がTwitterの公式アカウントでこんなふうに呟いていた。
《【お知らせ】出版不況といわれていますが、当店では昨年12月、今年1月、2月と3ヶ月連続で前年の売上を超えることができました。いつも応援いただき、ありがとうございます。今後も、みなさまと本との出会いの場となれるようなお店を作ってまいります。(スタッフ一同)》
https://twitter.com/Aoyama_book/status/969046590458445824

KADOKAWAは「電撃文庫」創刊25周年と「電撃文庫MAGAZINE」の創刊10周年を祝し、この4月からの1年をかけて様々な記念企画を実施すると発表。
https://www.kadokawa.co.jp/topics/1684
しかしこの「電撃」というブランド、もとをたどれば角川歴彦が兄の春樹によって1992年に角川書店(当時)を追われた際、『マル勝スーパーファミコン』などのゲームやPC関連の雑誌を手掛けていた角川メディアオフィスの社員たちが一斉退社し、歴彦の協力を得て設立したメディアワークスから『電撃スーパーファミコン』などを創刊した際につけられたのが確か最初だった。
同社の創業社長となった佐藤辰男(後にKADOKAWA・DWANGO社長などを経て現在は角川ドワンゴ学園理事長)は当時、出版業界誌の取材に答えて「『電撃』という名前だって相当いい加減に決まったんですよね……」と舞台裏のあわただしさをこぼしていたが、その名前が四半世紀も続いたことになる。佐藤辰男は大学卒業後に玩具業界紙の記者となったことが職業キャリアのスタートだった。

◎「ジャーナブロガー」の不破雷蔵が学年別学習誌の動向を分析。現在は定期発行が『小学一年生』のみとなったため、『学習幼稚園』『幼稚園』『たのしい幼稚園』の3誌と一緒にグラフ化している。『小学一年生』は2014?15年の『妖怪ウォッチ』特需が一段落した後の部数減が大きく、2017年には印刷証明付き部数が5万部の大台を割っていることから《早急な手立てが求められよう》としている。
https://news.yahoo.co.jp/byline/fuwaraizo/20180311-00082463/
不破は女性コミック誌についても分析。こちらも昨年は「ポーの一族」続編特需で『フラワーズ』の部数が瞬間的に跳ね上がったケースなどはあったものの、全体的に「軟調」だとしている。
https://news.yahoo.co.jp/byline/fuwaraizo/20180311-00082460/

◎大阪・朝日放送の制作で、放送開始から30周年を迎えた人気番組「探偵!ナイトスクープ」の初代プロデューサー松本修と現プロデューサーの奈良井正巳が5日に大阪市内の同局で報道関係者を相手に「取材会」を開催。同番組で「放送禁止」になった話題を集めた書籍を夏ごろに出すそうだ。
https://www.tokyo-sports.co.jp/entame/entertainment/940072/
ちなみに松本による『探偵!ナイトスクープ アホの遺伝子』は2005年にポプラ社から上梓されている。
https://www.poplar.co.jp/book/search/result/archive/8000178.html

日本新聞協会出身で専修大学教授の山田健太毎日新聞で連載してきた「ジャーナリズムウオッチ」は去る8日付が最終回。専修大学には来年「ジャーナリズム学科」が新設されるのだそうだ。
https://mainichi.jp/articles/20180308/ddm/004/070/033000c

三省堂が2月28日に発売した『三省堂国語辞典 第七版 阪神タイガース仕様』は、プレスリリース発表後から注文が押し寄せ発売前に増刷が決定。Amazonの国語辞典ランキングで発売前に1位を獲得したそうだ。ケースや表紙はタテジマに虎マーク、帯には「六甲おろし」の歌詞が書いてあるという熱の入れよう。編集担当者で自身も阪神ファンだという三省堂の出版局長が『日刊SPA!』の取材に応えている。
https://nikkan-spa.jp/1459722

◎元「東京タイムズ」政治部長の本澤二郎が自身のブログ『「ジャーナリスト同盟」通信』の1日付で書いているところによると、彼が執筆していた月刊経済誌『財界にっぽん』が《国税庁から、財産を差し押さえられて、廃刊に追い込まれた》との一報が同誌編集長から入った、とのこと。
http://blog.livedoor.jp/jlj001/archives/52204189.html
神田の淡路町(小川町)駅近くにあった『財界にっぽん』の編集部には、私(岩本)も20年以上前にライターとして短期間出入りした経験がある(最後の1本、約5万円分の原稿料は今なお未払いだ)。また宣伝になるが、先に刊行された拙著『炎上!一〇〇円ライター始末記 マスコミ業界誌裏道渡世』ではそのあたりの同誌をめぐる話題もp75に「注釈」という形だが少し書いている。
https://books.rakuten.co.jp/rb/15316066/

◎映画『素敵なダイナマイトスキャンダル』の17日からの公開を前に、原作者の末井昭(元『ウイークエンドスーパー』『写真時代』『パチンコ必勝ガイド』などで編集長)が相次いでインタビューに登場。
http://www.sankei.com/life/news/180305/lif1803050023-n1.html
https://nikkan-spa.jp/1458812

◎ベインによる株式公開買い付け(TOB)から3カ月、ADKの中井規之・取締役専務執行役員が『Campaign』の取材に応じ、今後の展望について語っている。
http://www.campaignjapan.com/article/%E3%83%99%E3%82%A4%E3%83%B3%E5%82%98%E4%B8%8B%E3%81%A8%E3%81%AA%E3%81%A3%E3%81%9F-adk%E3%81%AE-%E4%BB%8A/443158

◎有料オンラインサロンの「Umeki Salon」やオピニオンサイトの「The Startup」などを運営する梅木雄平が、音声ブログ「Voicy」で続けている「梅木雄平の全く役に立たないラジオ」の3月4日付で「宣伝会議を出禁になった話」を披露。宣伝会議が運営する「編集・ライター養成講座」に以前通ったものの、その旧態依然とした内容に疑問を感じたことなどから、昨年「はあちゅう」と共同で期間限定のWEB編集塾を開講しようと計画(実現しなかった模様)。その話をブログに書いたところ、宣伝会議の「上層部」が激怒したらしい。
https://voicy.jp/channel/589/15463
https://twitter.com/umekida/status/723747561509556224
http://thestartup.jp/?p=16423