【文徒】2018年(平成30)3月20日(第6巻51号・通巻1225号)

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1)【記事】ライターとみさわ昭仁ら、印税不払い事案が続々可視化
2)【本日の一行情報】
3)【人事】主婦の友社 4月1日付人事異動

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1)【記事】ライターとみさわ昭仁ら、印税不払い事案が続々可視化(岩本太郎)

ゲームデザイナーやライターとして活躍中のとみさわ昭仁アスペクトから2016年3月に上梓した単行本『無限の本棚 手放す時代の蒐集論』が文庫化され、ちくま文庫から3月6日に発売された。執筆仕事の傍らマニアックな本の収集に異様なまでの情熱を注ぎ、ついには神保町交差点の近くに「特殊古書店マニタ書房」を2012年に開くまでに至った著者の書物論として話題を呼んだ作品だが、刊行から2年にして早くも大幅に加筆(伊集院光との対談など)した〈増殖版〉の文庫が他の版元から出ることになった。
http://www.aspect.jp/isbn/?k=978-4-7572-2459-9
http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480435057/
ところがこれ、円満な形での文庫化ではなかったようだ。著者のとみさわ自身は文庫発売直前の先月28日にこんな予告のツイートをしていた。
《文庫版『無限の本棚』に関する用事をスケジュール帳や日記に書き込む際には「無限の打合せ」「無限の執筆」「無限のゲラ」などと表記していたんだけど、いま初版印税の振込み予定日に「無限の印税」って書いて、ちょっと気持ちが大きくなった。欲しいなあ、無限の印税。》
https://twitter.com/hitoqui_ponko/status/968801055789088769
さらにとみさわは今月4日付の自身のブログで経緯を公表した。ようするに今回の文庫化はアスペクトが元本の印税を刊行から2年を経た今も払おうとしないことが背景にあったらしい。
《「同じ本で何度も商売しやがって!」というご意見もあるかと思います。でも、そこにはやむを得ない事情もあるのです。詳しいことは省略しますが、著者であるとみさわ昭仁は、元のアスペクト版『無限の本棚』に関して、いまだ一銭も原稿料をいただけていません(これで事情を察してください)。
元本はすでに版元との出版契約を解除したので、現在は絶版です(あるのは在庫のみ)。けれど、著者としては『無限の本棚』をこのまま終わりにはしたくなかったので、必死の思いで別の版元を探しました。その結果、ありがたいことに筑摩書房さんが受け入れてくれました。そして今回の文庫化が実現したというわけです。》
http://maneater.hateblo.jp/entry/2018/03/04/135019
アスペクトについては昨年末の『文徒』でも本間龍が同社から出していた『大手広告代理店のすごい舞台裏』電子書籍版の印税が再三の督促にも関わらず2年以上もの間まったく支払われなかったことに怒って出版契約を解除(それをTwitter上で告発)した一件を紹介した。『メディアクリティーク』でも昨年初めに同様の例を取り上げたし、このところ原稿料不払いの話題ではたびたび名前があがる版元の一つだ。
https://twitter.com/emi_ya/status/943795170473996288
https://twitter.com/desler/status/943797631062380544
アスペクトのような規模の版元でもこうした話題が生じるほどだから現状は深刻だ。それこそ編集プロダクション経由で仕事をしているライターへのギャラ支払いになると悲惨な話がごろごろしていることだろう。
ライターの大西桃子も『日刊ゲンダイDigital』の12日付で「昨年9月に出版した本の原稿料19万円が支払われない」と題し、版元に問い合わせたところ「自転車操業ゆえ、資金繰りが厳しく、お支払いができませんでした」「3月には支払いたいが、日付の確約はできない」などと言われた話を紹介していた。この大西による、ライターへのギャラ未払い問題についてのレポートは「ザ・未払い 私のギャラはどうなった?」とのシリーズ名でまだ続くらしい。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/224946

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2)【本日の一行情報】(岩本太郎)

幻冬舎の編集者で、今年初めに同社とCAMPFIREとの合弁による「エクソダス」にも役員として参加している箕輪厚介が昨年立ち上げた編集サロン「箕輪編集室」が会員急増(この1ヵ月で50名以上増えたとか)などを受け、このほど「箕輪編集室2.0」として新展開に乗り出すことを「note」で宣言。新規会員の募集も始めた。
https://minohen.com/n/nb3e758670703
https://minohen.com/n/nf744cde2d9f1
箕輪は宣伝会議主催「編集者・ライター養成講座」でも講義を持つなどしてきたが、今回はそちらには決別を宣言したらしい。Twitterでもこんなふうに呟いていた。
《編集者ライター養成講座。担当の方も参加者も素晴らしくて好きなんだけれど、仕組みが新しくないから今回で最後かな。》
https://twitter.com/minowanowa/status/974889609367703553
《編集者ライター養成講座がなぜだめか、一方的な講義形式。体系だってないカリキュラム。そしてなによりも納品型の授業ってとこだ。学びをアップデートし続けるコミュニティがない。》
https://twitter.com/minowanowa/status/974892138491031553
《あと法人契約が多いからか、明らかに受けに来させられてる人がいる。場が淀む。
ニューズピックスアカデミアも法人契約は慎重にしないとな。》
https://twitter.com/minowanowa/status/974892816911319040
《この一連のツイートで箕輪が編集者養成ライター講座に登壇することも、「編集会議」で特集されることがなくなるかもしれませんが、私は宣伝会議さんを応援しています。立地最高。》
https://twitter.com/minowanowa/status/974893374745452544
《そして何より、あんだけ頑張って講義をしてもコンテンツの二次利用、ストックがされないってことだ。箕輪編集室なら一回喋れば、生配信、アーカイブ、テキストになり、一気に拡散される。》
https://twitter.com/minowanowa/status/974895532639363073

◎『新聞社崩壊』の畑尾一知(元朝日新聞社販売管理部長)が同書をもとに『デイリー新潮』にて、全国紙・ブロック紙・県紙の経営状態を独自にランキング。ワーストは神奈川新聞、ワースト2は産経。ベストは読売・日経を抑えて静岡新聞
https://www.dailyshincho.jp/article/2018/03160700/

芳文社まんがタイムファミリー』『まんがタイムジャンボ』の突然の休刊発表の背景には、販売不振というより《昨年来の人手不足に伴う再編があるのではないか》との噂を『日刊サイゾー』が紹介している。
http://www.cyzo.com/2018/03/post_154997.html

◎『週刊少年ジャンプ』で2004?08年に連載された「ムヒョとロージーの魔法律相談事務所」(西義之)が、連載終了から10年を経てテレビアニメ化されることになった。
BSスカパー!とアニマックスで今夏より放送される。
http://mainichi.jp/articles/20180318/dyo/00m/200/007000c

魔夜峰央パタリロ!』は舞台化に続き今秋には実写映画化されることになった。15日に天王洲銀河劇場で行われた「舞台『パタリロ!』★スターダスト計画★」初日の記者会見で会見で発表された。
https://natalie.mu/comic/news/273653

千坂恭二のツイートによると雑誌『情況』発行元である情況出版が来たる5月ごろに廃業するらしい。同社代表の大下敦史が今年1月初めに死去して以来、副代表の大谷行雄の下、存続か廃業かをめぐって内部で議論が続いていたようだ。
https://twitter.com/Chisaka_Kyoji/status/973124505307553793
https://twitter.com/Chisaka_Kyoji/status/973362367798034432
https://twitter.com/n__n__s/status/973498192271519744

◎『アサヒカメラ』は昨年初めから12回連続で掲載したシリーズ特集「写真好きのための法律&マナー」をムック化のうえ発売(定価1296円)。昨年2・3月号に掲載した「写真を無断使用する“泥棒”を追い込むための損害賠償&削除要請マニュアル」が2号連続で完売するなどの大反響を巻き起こした企画だった。
https://www.work-master.net/2018121629
https://netatopi.jp/article/1112253.html
https://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=19907

◎先に23年ぶりとなる新作ドキュメンタリー映画『ニッポン国VS泉南石綿村』が公開された原一男の「全仕事に迫る」本をキネマ旬報社が刊行すべく目下準備中。予算がオーバーしたことから、朝日新聞の「A-port」で資金獲得のためのクラウドファンディングが立ち上がった。
https://a-port.asahi.com/projects/harakazuo_kinejun

◎『Business Journal』の「ツタヤ図書館」問題続報。今回は宮城県多賀城図書館が利用者から弁償本の代金を受け取っておきながら、その本を公費で購入していたことに絡む不明朗な会計処理の件についてレポートしている。
http://biz-journal.jp/2018/03/post_22653.html

◎2011年に『FACTA』のスクープにより明るみに出たオリンパス損失隠蔽事件の内幕に迫ったドキュメンタリー『サムライと愚か者 ?オリンパス事件の全貌?』の予告編がこのほどウェブ上で公開された。解雇されたマイケル・ウッドフォード社長や、事件をスクープした記者・山口義正ほかへのインタビューも盛り込まれた作品だ。5月よりシアター・イメージフォーラムほかで順次全国公開の予定。
http://www.moviecollection.jp/news/detail.html?p=12414
http://eiga.com/movie/84341/

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3)【人事】主婦の友社 4月1日付人事異動

内藤 壮司
新:販売マーケティング本部 販売部 部長 兼 販売促進ユニット ユニット長
旧:販売部 販売管理課 課長

山口 香織
新:コンテンツ事業本部 ライフスタイル編集部 部次長 兼 育児・絵本ユニット 編集長
旧:第1事業部 第2編集部 部付編集長 兼 新規コンテンツ開発編集 編集長

村井 未来
新:メディア事業本部 第2メディアビジネス部 部次長 兼 暮らしニスタユニット 編集長
旧:メディア・コンテンツビジネス事業部 WEBメディア推進部 部付課長