【文徒】2018年(平成30)4月20日(第6巻73号・通巻1247号)

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1)【記事】財務省事務次官テレビ朝日の記者会見
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

                                                                                • 2018.4.20 Shuppanjin

1)【記事】財務省事務次官テレビ朝日の記者会見

週刊新潮」に女性記者に対するセクハラ常習を告発された財務省福田淳一財務事務次官が辞任することになった。福田によれば、こうした報道が出てしまったこと自体、不徳の致すところであり、また、報道後の大騒動を鑑みれば、財務事務次官としての職責を果たせないと判断して辞任するのだという。つまり、「週刊新潮」が報じたセクハラ疑惑に関しては、事実と異なるものと考えており、あくまでも無実だというのだ。福田は記者に問われて「週刊新潮」を名誉棄損で提訴し、裁判の中で引き続き争っていく決意を明らかにしている。福田の辞任発表は4月18日午後7時頃のことであった。
https://www.nikkansports.com/general/nikkan/news/201804180000809.html
それから数時間後のこと。テレビ朝日の「報道ステーション」が社内調査の結果、福田淳一財務事務次官のセクハラ被害者は自社の女性記者であったことを明らかにした。「ハフポスト日本版」によればキャスターの富川悠太が「テレビ朝日が社内調査をしたところ、福田次官を取材しました女性社員がセクハラの被害を受けていたことが明らかになりました。この社員は取材での、次官とのやり取りを録音していまして、次官のセクハラ発言が確認されました」と説明したという。
https://www.sankei.com/affairs/news/180418/afr1804180036-n1.html
かくしてテレビ朝日は午前0時から篠塚浩取締役報道局長が記者会見し、調査内容を明らかにすることとなった。毎日新聞が掲載した「次官セクハラ疑惑 テレ朝が緊急会見『当社社員が被害』」は次のように書いている。篠塚報道局長は「女性記者」ではなく「女性社員」という言葉を使って説明した。
「篠塚氏の説明によると、この女性社員は1年ほど前から数回、取材目的で福田氏と1対1で会食をしたが、そのたびにセクハラ発言があり、女性社員は自らの身を守るために会話の録音を始めたという。4月4日にも福田氏から連絡を受け、取材のために1対1で飲食した際、セクハラ発言が多数あったことから、途中から録音をし、後日、上司に『セクハラの事実を報じるべきではないか』と相談したが、放送すると本人が特定され、二次被害が心配されることなどを理由に『報道は難しい』と伝えたという」
https://mainichi.jp/articles/20180419/k00/00m/040/139000c
「『セクハラ被害が黙認され続ける』と考えた女性社員は週刊新潮の取材を受け、2016年に録音した音声も提供したという」
https://mainichi.jp/articles/20180419/k00/00m/040/144000c?fm=mnm
テレビ朝日は「福田氏による当社社員を傷つける数々の行為と、その後の対応について、財務省に対し正式に抗議する」という。元「週刊朝日」編集長の山口一臣は、こうツイートしている。
「いちばん頑張ったのは告発した記者だと思うけど、テレ朝も不適切な対応をきちんと認めて会見したのは偉かったと思います。セクハラ 、パワハラはもちろん、不当な扱いや圧力などももみ消し、隠蔽をやめてどんどん表に出すことが唯一改善の道筋です」
https://twitter.com/kazu1961omi/status/986759189107101698
山口はこうもツイートしている。
「今回、テレビ朝日が会見したのも本人から強い突き上げがあったからだと思います。会社としてはうやむやにしたかった。でも、もうそういう時代じゃないんですね。これをもみ消したら、こんどはテレ朝自身が報道機関としてもたなくなる。週刊新潮によると、他局にも被害者が複数いるようです」
https://twitter.com/kazu1961omi/status/986750858183426048
この記者会見をフジテレビは冒頭部分を生中継し、NHK日本テレビ、TBSもネット上で会見の様子を配信したが、「BuzzFeed News」によれば、当のテレビ朝日や会見の生中継を得意としている「AbemaTV」はその内容を生中継で報じなかった。これには疑問の声が上がるのも当然だろう。
https://www.buzzfeed.com/jp/kotahatachi/051?utm_term=.xg5ZLkV9Xo#.ogPloGA3dq
私などが信じ難いのは篠塚が「社員が取材活動で得た情報を第三者に渡したことは報道機関として不適切な行為であり、テレビ朝日として遺憾に思っている」と発言していることだ。もし「週刊新潮」という第三者に渡らなければ福田次官のセクハラは隠蔽されたままに終わってしまうのだから、これをテレビ朝日が遺憾に思うのは、ある種の倒錯だろう。こういう物言いこそセカンドレイプであるとすら私には思えてならない。
https://www.huffingtonpost.jp/2018/04/18/tvasahi_a_23414395/
この件について江川紹子がツイートを連発している。
「テレ朝の会見聞いて、やはり…の思い。上司に言っても、『報道は難しい』と言われて、新潮に持って行った、と。テレ朝以外でも、同じような対応をしたのではないか。メディアのセクハラ対応について、反省すべきでせう」
https://twitter.com/amneris84/status/986623857976008705
「テレ朝の女性記者が週刊新潮に録音提供したことについて、『取材先との信頼関係ガー』とか言ってる人がいるが、自社で報道できないと分かって他メディアに持ち込んだ行為は、ジャーナリストとして正しいし、被害者としてはなおさら当然のこと。同社は、彼女に不利益にならないよう最善の努力をすべき」
https://twitter.com/amneris84/status/986758518525972480
毎日新聞の石戸諭のツイート。質問する記者も福田次官と同類なのである。
テレビ朝日の記者会見。質問で相手の許諾を得ずに録音云々と質問をしている記者が多くてびっくりした。ハラスメントがあったとき、証拠になるように録音を取るのは、身を守るために当たり前のこと。強い証拠がないと、訴訟になった時の立証もできない」
https://twitter.com/satoruishido/status/986646924890484737
NHK堀潤がツイートしているように女性社員から上司に「セクハラの事実を報じるべきではないか」と相談があったにもかかわらず、放送すると本人が特定され、二次被害が心配されることなどを理由に『報道は難しい』と伝えたことは、テレビ朝日にとっては「痛恨のミス」に他なるまい。
「テレ朝は自社の過ちも含めて公表。その上で、財務省や福田次官と対峙するのは社員個人ではなく社であるという姿勢を表明したのは良かった。しかし、会見で報道局長が述べていたように、当初社員から相談やセクハラを報道すべきと申し出があった時にその訴えを結果的に黙殺してしまったのは痛恨のミス」
https://twitter.com/8bit_HORIJUN/status/986632567846723584
映画監督の想田和弘
「テレ朝の会見。『当社社員が取材活動で得た情報を第三者に渡したことは報道機関として不適切な行為であり、遺憾』ではなく、『当社社員が取材活動で得た情報を自社で報道せず、第三者に渡さざるを得ない状況を作ってしまったことは、報道機関として不適切な行為であり、遺憾』でしょう」
https://twitter.com/KazuhiroSoda/status/986741001002803200
これは元TBSアナウンサーだった小島慶子のツイート。
「テレ朝の会見でも繰り返し言っていたけれど、女性記者の個人の特定がされないように報道には細心の注意を払って欲しい。ネットでも、声を上げた人を叩くのではなく、ハラスメントを撲滅する方にエネルギーを割いてほしい。声を上げた人が潰される世の中であってはならないと強く思います」
https://twitter.com/account_kkojima/status/986637352272461825
テレビも雑誌も経験している清水潔は、それでもテレ朝が財務省を正面から批判したことを評価している。
「セクハラ問題のテレ朝記者会見。もっと早く社員を守れなかったのか…、などの批判もあるが、それでもトップが顔出して財務省に正面から反論した。数年前は各社びびってうつむき忖度していたのだ。少しだけれど報道の意地や息吹を感じる。これを育てるか、批判してまた潰すか、最後は国民次第だと思う」
https://twitter.com/NOSUKE0607/status/986768338003963904
福田次官のセクハラを頭から否定するふてぶてしい態度はテレビ朝日財務省から睨まれては困ると思っているからだと推測しているのは鳩山由紀夫である。
「福田財務次官が辞任の記者会見で、セクハラ疑惑を否定するふてぶてしい態度を示した。そこで被害はテレ朝社員と報道局長が記者会見。報じるべきと女性社員が相談したが、上司は本人が特定され二次被害はまずいと拒否していた。そうではなく、テレ朝が財務省から睨まれるから困ると考えたのではないか」
https://twitter.com/hatoyamayukio/status/986762300664115200
福田はテレビ朝日が自社の女性社員のセクハラ被害を公表してからも、自らのセクハラ疑惑を否定している。
財務省福田淳一事務次官は19日、テレビ朝日が自社の女性社員のセクハラ被害を公表したことに対し、『同社がどういう調査をしたか知らないが、(会話の)全体をみればセクハラに該当しないことは分かるはずだ』と述べ、改めて自らのセクハラ疑惑を否定した」
https://mainichi.jp/articles/20180419/k00/00e/010/183000c
元朝日新聞記者で現在「ハフポスト日本版」に籍を置く錦光山雅子のツイートには驚いた!テレビ朝日の記者会見は週刊誌を締め出したのか!
「最悪。テレ朝の会見、ハフポや週刊誌などは入室拒否。財研とか放送の記者クラブ加盟社でないと入れないんだと。これだけの事態でどういう対応だよ。週刊誌が書かないと問題が明らかにならなかったというのに。馬鹿にすんな」
https://twitter.com/masakotoroji/status/986623321843359744
清水潔リツイートした。
「おいおい、これ本当なのかよ(笑)もし事実なら私の先のテレ朝擁護ツイートは撤回します」
https://twitter.com/NOSUKE0607/status/986779426158333952
テレビ朝日財務省の同質性こそ問われて然るべきなのである。朝日新聞の伊丹和弘のツイートにも目を通しておこう。
「実際にテレ朝の件も、女性記者の被害報告を上司が握りつぶしてしまった。もちろん、セクハラ加害の第一の責任者はセクハラの行為者本人。いわば正犯。しかしセクハラされる土壌を当然視/放置してきたメディア側は『未必の故意』的な共犯だったとも言えよう。それは徹底的に変えていかねばならない」
https://twitter.com/itami_k/status/986797259571453952
江川紹子のツイート。
「『週刊誌に扱われたことで、人権上の問題が興味本位に扱われた』とか言う学者のコメントが笑止。オウム真理教という人の命や人権に関わる問題も、ずっと週刊誌がやってきた。テレ朝の女性記者は、詩織さんの人権問題にしっかり取り組んだ週刊新潮を選んだのではないか。その選択は正しかったと思うよ」
https://twitter.com/amneris84/status/986759902793105408

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2)【本日の一行情報】

熊本県民テレビ社長を解任された梅原幹も「東スポウエブ」によれば「セクハラ解任」であったようである。
熊本県民テレビは嫌がらせ行為の詳しい内容を明らかにしていないが、本紙の調べではセクハラ&パワハラだった。秘書部の女性へのボディータッチだけでなく、女子アナや契約社員もセクハラ被害に遭っていたという。被害女性の一人が訴えたという情報もある。パワハラに関しては数時間にわたり部下を罵倒し、退職に至ったケースもある。社内では怒りを通り越して、嘆きの声が大きかった」
https://www.tokyo-sports.co.jp/entame/entertainment/983173/

◎日経によればサイバーエージェントが「これまで清算などに踏み切った子会社は56社に上る」という。「単に子会社を次々と設立するだけでは、事業領域が重複するなど無駄が発生する可能性もある。サイバーでは撤退基準や順位付けも明確にし緊張感を持たせている」とのことだが、この速度こそサイバーエージェントの強みだろう。
「サイバーの広告事業の売上高はグループ全体で2081億円(17年9月期)と前の期比18.7%伸びた。電通博報堂の上位2社の背中はまだ遠いが、国内の広告業界では大広を抜き4位につける」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO29496460X10C18A4000000/
サイバーエージェントADKを買収するという一手はあり得るのではないだろうか。

◎「egg」と「ageha」がコラボした新雑誌「LOVEggg」(ラブジー)が4月17日に発売された。
http://loveggg.dunnery.tokyo/

◎半年に1回ほどのペースで全国放送されている「予約殺到! スゴ腕の専門外来スペシャル」(毎日放送)で明治の「R-1」のステマ疑惑を「週刊文春」が報じている。
http://bunshun.jp/articles/-/7065
「R-1」のステマ疑惑については「週刊新潮」も2016年12月に取り上げたことがある。このとき舞台となったのは岩手放送の番組であった。
http://blogos.com/article/206120/
http://d.hatena.ne.jp/teru0702/20170119/1484780348
明治はステマ常習犯なのだろうか。

◎児童書出版社の「名門」岩崎書店の社長はミリオンセラー「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」(ダイヤモンド社)の著者である岩崎夏海だ!
https://smart-flash.jp/lifemoney/38759
岩崎書店のホームページである。ちゃんと岩崎夏海の名前がある。
http://www.iwasakishoten.co.jp/company/cc974.html
岩崎書店は私などの世代からすると、ベトナム戦争を告発した岩崎ちひろの「戦火のなかの子どもたち」の版元なんだよなあ。ドラッカーというよりもマルクスと親和性が高いというイメージだ。岩崎夏海は次のように書いている。
「ぼくは、特殊な家庭環境で生まれました。
父方の祖父は、戦前、そして戦中、共産党の支持者でした。出版社を経営していましたが、共産党の本が軒並み発行禁止になった後でも、最後まで彼らの本を刷ったということで、官憲に目をつけられ、1年ほど拘置所に入れられました」
http://politas.jp/features/8/article/433
例えば「日本共産党の方針―第六回全国協議会決議 文化人から党への言葉」なんていう本も岩崎書店から刊行されている。周知のように日本共産党六全協をもって武装闘争方針を放棄する。六全協決定以後の敗北感を描いてベストセラーになったのが柴田翔芥川賞受賞作「されどわれらが日々―」だ。「されどわれらが日々―」の甘ったるさに耐えられそうもになかったら、高橋和巳の「日本の悪霊」をオススメする。
http://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784167102050
http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309415383/

◎「YAHOO!ニュース個人」は山本一郎の「『漫画村』ほか違法サイトへの広告配信問題と、NHKが取り上げるアドフラウド問題について」を掲載した。
「もしも、前述のようにきちんとした権利者である漫画家が所轄署に著作権法違反の疑いで被害届を出し受理されて事件化されていれば、配信されている広告やホスティング会社の履歴などから少なくとも運営者に近しい関係者の法人名や口座を割ることまではある程度可能です。実際、広告テクノロジーを提供している会社のログから逆引きをするだけで、今回は官憲の協力がなくとも『漫画村』など関連サイトの営業に携わる約40社の取引状況まで確認することが外部から可能です」
https://news.yahoo.co.jp/byline/yamamotoichiro/20180418-00084164/

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3)【深夜の誌人語録】

地位は選ばれるもの、生き方は選ぶもの。