【文徒】2018年(平成30)12月28日(第6巻244号・通巻1418号)

Index------------------------------------------------------
1)【記事】最近書店「開店」事情
2)【本日の一行情報】
3)【年末のご挨拶】
----------------------------------------2018.12.28 Shuppanjin

1)【記事】最近書店「開店」事情(岩本太郎)

産経新聞が「年の瀬記者ノート」(ウェブでは27日掲載)で「那須町の新たな書店 出版関係者の思いと住民支え」と題し、この秋でオープンから1周年を迎えた栃木県那須町那須ブックセンター」をレポートしている。「地域に書店が必要」と考える出版関係者らが出資のうえ、町内のコンビニ店舗跡を借りて開店。今回は1周年記念イベントで「古本祭り」を開いたそうだ。
https://www.sankei.com/region/news/181227/rgn1812270033-n1.html
記事中で創立メンバーとして挙がっている社長の内田真吾は、語学書や人社会科学書の版元として知られるベレ出版(都内・新宿区岩戸町)の創業者(現在は取締役相談役)である。ベレ出版の公式サイトに掲げられた「会社目標」には《著者→業者→ベレ出版→取次→書店→読者という流れ全般に目を配り、流通の改善に努めます》などと掲げられているが、ほとんど書店が絶滅状態にあった那須地方に敢えてこうした有志による独立系を開いた背景には、そうした理念に基づく部分もあるのだろう。
https://www.beret.co.jp/company/
同じく創業メンバーで今年4月に亡くなった森雅夫は三省堂書店元専務。小中強志は都内千代田区の出版社「アスカ・エフ・プロダクツ」の社長兼編集長。2人とも当初から無給で店を手伝ってきたらしい。運営は進駸堂や藤村書店で活躍してきたベテラン書店員も参加しているという
https://www.shimotsuke.co.jp/articles/-/9310
http://tosei-sha.jugem.jp/?eid=2200
http://www.webdoku.jp/column/sugie/2018/01/17/161421.html
「書店閉店」のニュースが連日上がってきた2018年だったが、逆に言えばそうした状況下でも敢えて参入するという「書店開店」が今や地域発のホットなニュースにもなってきた1年でもあった。去る11月末にも大船に新刊書店の「ポルベニールブックストア」が開業したことは先月の『』でも触れたが、店主の金野典彦は広告代理店、技術系出版社の出身。また、都内の田原町で9月に新刊書店「Readin’ Writin’ BOOKSTORE」をオープンした落合博は毎日新聞論説委員だった。
https://kamakura.keizai.biz/headline/300/
https://wotopi.jp/archives/80209
一方、北区の王子にある古書も扱う書店「コ本や」は映像ディレクターの和田信太郎、同じく映像系のアーティストである青柳菜摘、ブックディレクターの清水玄という現役のメディア関係者3人が運営。近々池袋に移転するという。新店舗ではライブや展覧会などのイベント展開も考えているらしい。
https://akabane.keizai.biz/headline/25/
こうしたマスメディア業界人が定年などで退職、あるいは現役のまま副業的に小規模書店の経営に乗り出すといったケースはおそらく来年以降も増えていくことだろう。また、9月の『メディアクリティーク』でも紹介したが、松戸市の「せんぱくBookbase」や下北沢の「BOOKSHOP TRAVELLER」のような、メディア関係者以外の一般市民も参加した「シェア本屋(書店)」も登場してきた1年だった。
http://bookbase1089.fun/
https://twitter.com/bst_bsl
後者の店長である和氣正幸はライターとして、そうした各地での動きを『日本の小さな本屋さん』『東京 わざわざ行きたい街の本屋さん』などの著書にまとめている。
http://xknowledge-books.jp/ipscs-book/BooksApp?act=book&isbn=9784767824833
https://honto.jp/netstore/pd-book_28542226.html
こうしたところから従来型とは異なる次世代の書店の姿がゆっくりと見えてくるのかもしれない。

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2)【本日の一行情報】(岩本太郎)

ソフトバンクQRコード決済システム「PAYPAY」が、ある居酒屋を無断で加盟店登録していたことが発覚した。Twitterユーザーが都内の高田馬場にあるという居酒屋に掲出された「当店では加盟しておりません」「PayPay社の誤表記によるものですので、その旨ご案内いたします」などと書かれた貼り紙の写真を添えてツイートしたことから表面化したらしい。
https://twitter.com/jishintaisakujp/status/1077584917989449733

◎TBS系のバラエティ番組『水曜日のダウンタウン』が26日夜の放送終了後、都内の遊園地「としまえん」で芸人を檻に閉じ込めるなどのイベントを実施。番組のtwitter公式アカウントでも「是非お越しください」「朝9:30まで入園料無料」などと書き込んでいたことから、翌27日早朝にかけて大勢の人がとしまえん」に詰めかけ、騒音などによる110番通報を受けて警視庁も出動する騒ぎに発展。TBSはイベントを急遽中止し、番組公式サイト等で謝罪。
http://www.tbs.co.jp/suiyobinodowntown/
http://www.news24.jp/articles/2018/12/27/07412846.html
https://abematimes.com/posts/5471921

◎宝島社から17日に発売された付録つきムック『とことん売れる! メルカリ 発送らくらくセット』は、さっそくメルカリにも多数出品されてしまっている。
https://getnews.jp/archives/2108575

KADOKAWAの怪談専門誌『幽』は18日発売の30号(特集「平成怪談、総括!」)を最後に「終刊」。来年初夏には同社発行の妖怪専門誌『怪』と合併した新雑誌としてリニューアルするという。
https://www.asahi.com/articles/ASLDL6F60LDLPTFC016.html
https://promo.kadokawa.co.jp/yoo/

ヤマハミュージックメディア発行の『Go!Go!GUITAR』が昨日27日発行の2月号限りで休刊。1998年8月創刊の初心者向けギター雑誌だった。《今後は多様化した読者のニーズに対応すべく、ネット対応なども視野に入れた次なる展開を模索してまいります》(「休刊のお知らせ」より)とのこと。
https://www.ymm.co.jp/info/info020.php
https://www.oricon.co.jp/news/2126453/full/

集英社がファッション誌10誌(Seventeen、non-no、MORE、MEN'S NON-NO、BAILAMarisol、UOMO、LEE、eclat、OurAge)を対象に業務委託のウェブエディターを募集中。応募期限は来年1月26日(当日消印有効)。
https://www.wwdjapan.com/760562

◎光社ではプラットフォーム開発室の「Webアプリケーションエンジニア」(正社員および契約社員)を募集中。応募期限は来年1月31日(必着)。
https://www.kobunsha.com/recruit/career/

ADKは2020年度採用について「スタメン採用」という施策を12月20日より開始している。応募者が自身の「強み」」をエントリー段階でアピールし、書類選考と1次面接はその「強み」を欲しがる「スカウト社員」が担当。通過者についてはそのスカウト社員が最後までサポートを行うなどの方法が盛り込まれている。エントリーシート提出は来年1月21日の朝8時まで。
https://recruit.adk.jp/
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000040465.html

講談社の創業者・野間清治の出身地である群馬県桐生市に、その業績を紹介する資料館が、野間の誕生日である今月17日にオープンした。館長で同市在住の桑原昭二が20年かけて収集した野間直筆の書や手紙、『少年倶楽部』ほかの雑誌、レコードなど計数百点を展示。野間家が同市内に所有している平屋を借り受けて開館したという。 
http://www.tokyo-np.co.jp/article/gunma/list/201812/CK2018122302000146.html
https://www.jomo-news.co.jp/feature/miyama/101882

◎『暮しの手帖』編集長の澤田康彦が『週刊春』のインタビューに登場。今月20日にはPHP研究所からエッセイ集『ばら色の京都 あま色の東京』を上梓していた。かつて『BRUTUS』の編集長などを務めていたマガジンハウスを2010年に退職後、京都に移住していた3年前に編集長の打診を受けた際のこと、妻である女優本上まなみの暮らしなどについて語っている。
http://bunshun.jp/articles/-/10092
個人的には『本の雑誌』初期の配本部隊員や「あやしい探検隊」の「ドレイ隊員」として椎名誠目黒考二の著作に登場する若き日の姿が印象深い。

◎第16回開高健ノンフィクション賞を受賞した作家の川内有緒が、受賞作の『空をゆく巨人』を発刊に先立ち「note」で全料公開した理由について『AERA.dot』のインタビューで語っている。出版の1カ月前に版元・集英社の「出版チーム」から提案を受け即座にOKしたとのことだが、帯の言葉を執筆したスタジオジブリのプロデューサー・鈴木敏夫からの「今は1人称で発信する時代だよ。本を手に取ってもらうには、自分で発信しないとダメなんじゃない?」とのアドバイスに背中を押された部分もあったらしい。
https://dot.asahi.com/aera/2018122000018.html
https://note.mu/ariokawauchi/n/n9ceedfc7f256

◎『ちびまる子ちゃん』単行本の完結巻(第17巻)が集英社から25日に発売されたことを受けて、故・さくらももこの出身地であ静岡県の各書店では特設コーナー設置や記念グッズ配布などの追悼キャンペーンが開かれている。
http://www.at-s.com/news/article/culture/shizuoka/582060.html

◎「(必ずしも)旅に出ない旅雑誌」をテーマに2013年に創刊されたウェブ雑誌『モウタクサンダ!!!マガジン』はほどなく紙の雑誌に移行し、2015年から不定期に発行を続けている。編集長の山若マサヤ(フリーランスエディター・主婦の友社で女性誌や書籍の編集を担当した後に独立)は、もともと紙媒体を出したかったようだが「コストが安く、はじめやすかったから」との理由でウェブ版を選択。後に自ら集めた100万円で1500部を自費出版する形で紙版をスタートさせたとのことだ。
https://moutakusanda.com/
https://www.asahi.com/and_w/articles/SDI2018112652411.html
https://good-creator.jp/feel/generation/masaya-yamakawa

◎ジャーナリストの三宅勝久が、ネットメディア『MyNewsJapan』での連載をもとに6月に上梓した『大東建託の内幕』について、大東建託が版元の同時代社に対して内容証明郵便を12日に送りつけてきたそうだ。内容は《名誉毀損であるから、中止・回収し、今後発行しない旨の誓約書を出せ》というものだったそうだが、具体的にどの部分が名誉棄損にあたるのかについての指摘はなかったらしい。同書は発売後1週間で初刷1,500部を完売し、以後増刷を重ねて12月現在で1万4000部に達する売れ行きだという。 
http://www.mynewsjapan.com/reports/2435
http://www.doujidaisya.co.jp/book/b369786.html

◎パリまで「黄色いベスト」運動の模様を取材に行っているジャーナリストの田中龍作によると、ベストを着た運動参加者たちは国営放送の「フランスTV」にも押しかけ、「政府寄りの報道が目立つ国営放送に受信料を払いたくない」と抗議したそうだ。フランスでも国営放送がテレビだけでなくインターネット利用者からも受信料を徴収しようという動きがあるらしい。
http://tanakaryusaku.jp/2018/12/00019348

◎『週刊春』での性暴力告発のあおりを受けて、沖縄県久米島博物館で来年1月4日から開催される予定だった広河隆一の写真展が中止になった(同館の公式サイトでは「諸般の事情により中止」と説明)。
http://www.town.kumejima.okinawa.jp/docs/2018122600037/
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/364803 

斎藤貴男盛田隆二・鈴木耕の3人が『マガジン9』と『デモクラシータイムズ』の共同企画として25日に配信されたネット番組座談会「『新潮45』と雑誌ジャーナリズムの危機」に出演。企画発案者である斎藤は座談会の最後に「雑誌ジャーナリズムの復権ために、関心のある出版社が協力して、新しい『ジャーナリズム雑誌』を創刊してはどうか」と提案。
https://maga9.jp/181226-4/
翌日に『DAYS JAPAN広河隆一の件が報じられたのは皮肉というほかない。

ボイジャーから刊行された『ベストセラーはもういらない』(秦隆司)で紹介されたニューヨークの「返本ゼロの出版社」ORブックスの社主・ジョン・オークスが年明けに来日することが決定した。1月31日午後に都内の日比谷図書化館コンベンションホールにおいて著者の秦隆司、ボイジャー代表取締役の鎌田純子も一緒に登壇のうえ講演が行われる予定だ。
https://www.voyager.co.jp/info/press-release/2018/2018-1227/pressrelease.html

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3)【年末のご挨拶】(今井照容

本号が2018年における最後の配信となります。本年中は大変お世話になりました。
2019年の配信は1月7日からとなります。来年もまた、ご指導ご鞭撻のほど何とぞ宜しくお願い申し上げます。

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