【文徒】2019年(平成31)2月12日(第7巻25号・通巻1443号)


Index------------------------------------------------------
1)【記事】東京新聞記者問題が今頃になって「炎上」する理由
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】
----------------------------------------2019.2.12 Shuppanjin

1)【記事】東京新聞記者問題が今頃になって「炎上」する理由

朝日新聞デジタルは2月7日付で「『取材妨害』官邸へ批判 辺野古巡る質問、問題視の書」を掲載している。
首相官邸記者クラブ『内閣記者会』に対し、官房長官会見での東京新聞記者の質問に『事実誤認がある』として『問題意識の共有』を要請する書を出していた問題で、批判が起きている。日本新聞労働組合連合新聞労連)が抗議声明を発表したほか、6日には国民民主党が官邸報道室幹部を呼んでヒアリングをした」
https://www.asahi.com/articles/ASM2644KHM26UTIL01P.html
昨年末の問題が今頃になって問題として認識され始めた。新聞労連が動かなかったならば、政党にしても、朝日新聞にしても、毎日新聞にしても動かなかったということである。その鈍さこそ新聞が構造的に抱える深刻な問題ではないのか。元毎日新聞記者である北村肇は記者のタイプの違いとしてしか認識できないのだろうか。
「政治部と社会部では記者のタイプが違う。官邸記者クラブは政治部の持ち場で、社会部の望月記者はいわば”異端”。官邸は「政治部記者は”仲間”。クラブに働きかければ望月記者を”排除”できる」と思ったのかもしれない。
甘い! 望月記者にはたくさんの市民がついている!」
https://twitter.com/bkhajime/status/1093317523213172736
「亡国記」(現代書館)や「虚構の太陽」(KADOKAWA)の作家・北野慶のツイートは事の本質を的確に捉えている。
「こういう朝日の小賢しい、自分を安全圏に置いて第三者面して、何日も経ってから他社の動向の報道を『政府批判的』に報道する偽善者ぶりが大嫌いで購読をやめた。命張って報道している他国の記者に対して恥だと思え!」
https://twitter.com/keikitano/status/1093310828516761601
朝日新聞記者であっても鮫島浩は、社内では異端なのかもしれない。現在の朝日新聞を含めたマスメディアの報道のあり方に批判的である。
「取材の自由を制限する国家に対し、報道機関としてなぜ自分の言葉で異議を唱えないのか。編集局長自ら毅然とした姿勢を表明しないのか。学者や新聞労連の言葉を借りるのか。今こそ権力と対峙する姿勢を示す時なのに。読者はこうした傍観的態度に本気度を感じず失望するのだ」
https://twitter.com/SamejimaH/status/1093295749528313857
ウィリアム・モリスの遺したもの」(岩波書店)の英学者・川端康雄も他人事のように報道する記事に違和感を抱いたようである
「『批判が起きている』という他人事の口ぶりはいい加減やめて、『本紙は批判する』という姿勢をはっきり示して記事にしてもらいたい」
https://twitter.com/acropotamia/status/1093343109625274371
日本会議 戦前回帰への情念」(集英社)の山崎雅弘によれば当事者意識を欠落させた報道なのである。
朝日新聞も当事者なのに、驚き、呆れるほど当事者意識が欠落した記事。まるで傍観者か見物人のように、他人事として書いている。菅官房長官と上村秀紀官邸報道室長の望月記者いじめを、朝日新聞はずっと傍観してきた。今さら批判する側に立てないという後ろ向きの姿勢なのか」
https://twitter.com/mas__yamazaki/status/1093426514232627200
弁護士の渡辺輝人は一歩踏み込み「共犯」という言葉を使う。
「しかし、官邸詰めの朝日新聞社の記者は、望月記者の援護射撃をする訳でもなく、独自に鋭い突っ込みをする訳でもなく、白けた雰囲気を醸し出す共犯な訳で、まず、自社の態度から改めるべきだろう」
https://twitter.com/nabeteru1Q78/status/1093326532687278080
朝日新聞が2月8日付で社説「官房長官会見 『質問制限』容認できぬ」を掲載している。報道が遅れたことの総括と自己批判は、どこにも書かれていない。
書が内閣記者会に『問題意識の共有』を求めたのも、筋違いだ。報道機関の役割は、権力が適正に行使されているかをチェックすることであり、記者会側が『質問を制限することはできない』と応じたのは当然だ」
https://www.asahi.com/articles/DA3S13884468.html?ref=editorial_backnumber
北海道新聞が2月10日付で社説「官邸の質問制限 『知る権利』狭める恐れ」を掲載している。北海道新聞にしてもやはり自己批判が欠けている
「報道機関の務めは権力監視である。疑問をぶつけなければその役割は果たせない。質問に異議があるなら反論すればいいだけだ。
記者の選別は許されない。
『質問制限』ではなく、むしろ積極的に答えるのが政府のあるべき対応ではないのか」
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/275348?rct=c_editorial
大手紙が「自分たちの手は汚れていない」と放置している間に、望月衣塑子が起こした波紋は誰も隠しきれなくなった。今になって炎上しているのはそういうことだろう。

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2)【本日の一行情報】

◎「Yahoo!ニュース」は小林恭子の「『メディアの寡占化』会議報告 ーフィンランドのジャーナリストが『首相からメールで圧力』」を掲載した。「メディア・キャプチャー」をこう説明している。
「『キャプチャー(capture)』には『捕獲する』、『保存する』などの意味があるが、政府、政治家、大企業、富豪などの権力者が政治力や財力などを用いて自分達に都合の良いようにメディアの言論空間を牛耳る状況だ」
https://news.yahoo.co.jp/byline/kobayashiginko/20190207-00114011/

◎産経ニュースは2月8日午前2時22分に「毎日新聞社常務の妻を逮捕 覚醒剤使用疑い」を発表した。
「自宅で覚醒剤を隠し持ったとして、兵庫県警は7日、覚せい剤締法違反(所持)の疑いで、東京都中央区の広告会社社員、増田ルミ子容疑者(46)を現行犯逮捕した」
容疑者は讀賣新聞に出入りしていた。
「県警は同日、増田容疑者が職場として出入りしていた都内の読売新聞東京本社の一角を家宅捜索した」
毎日新聞社社長室広報担当は、『増田という姓の取締役がいることは間違いないが、容疑者との関係は不明です。ただいま事実関係を確認しています』としている」
https://www.sankei.com/affairs/news/190208/afr1902080002-n1.html
サンケイスポーツの「毎日新聞常務の妻逮捕 自宅で覚醒剤所持疑い」は2月8日午後12時36分に発表された
毎日新聞社は8日、増田容疑者が同社常務取締役の妻だと明らかにし『逮捕されたことは把握しているが、詳しい事実関係については確認中』とのコメントを出した」
https://www.sanspo.com/geino/news/20190208/tro19020812360004-n1.html
讀賣新聞の2月8日付「毎日新聞社常務の妻、覚醒剤所持容疑で逮捕」は、次のように書いている。
「増田容疑者が勤めていた広告制作会社には、読売新聞東京本社関連会社が業務を委託しており、作業用に同本社広告局の机を貸していた。増田容疑者が担当者としてこの机を使っていたため、県警は机の引き出しを捜索し、私物とみられるメモ6枚を押収した」
https://www.yomiuri.co.jp/national/20190208-OYT1T50003/
増田(耕一)常務は、東京本社代表本店管理担当。毎日新聞グループホールディングスでは取締役となる。
https://www.sankei.com/economy/news/180517/ecn1805170023-n1.html

◎日販は、投票をもとに「こどもたちにおすすめしたいプログラミングの本」の大賞を決める「こどもプログラミング本 大賞」を設立し、2月15日(金)、翔泳社が主催するソフトウェア開発者向けカンファレンス「Developers Summit 2019」会場内において投票会を開催する。
https://www.nippan.co.jp/news/kodomo_programming_20190205/

◎俳優の高橋克典が主演するテレビ朝日系ドラマスペシャル「庶務行員・多加賀主水が悪を断つ」が2月10日に放映されたが、原作者の江上剛が医師役で出演していた。「庶務行員 多加賀主水シリーズ」は祥伝社庫から刊行されている。今回は第二弾の放映であった。
https://www.asahi.com/and_w/interest/entertainment/CORI2128960.html
http://www.s-book.net/plsql/slib_detail?isbn=9784396343163

◎2月9日に全国ロードショーされた「コードギアス 復活のルルーシュ」の公開を記念して、2月12日、ぴあより「コードギアス 反逆のルルーシュ ゼロぴあ」が発売される。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001111.000011710.html

博報堂DYメディアパートナーズと中国放送(RCC)は、視聴率の向上やコンテンツ付加価値の向上を目的とし、野球中継終了後の、次の放送コンテンツまでの間の放送枠を活用した「リリーフドラマ」を開発した。
https://www.hakuhodody-media.co.jp/wordpress/wp-content/uploads/2019/02/HDYMPnews20190206.pdf

◎フランジアが開発したDappsゲーム「Cipher Cascade」のキャラクターやアイテムをラジオ番組内でリスナーに配布できる「TokenCastRadio」の試験放送を、同社、博報堂DYメディアパートナーズ、毎日放送トークンポケット、エヴィクサーと共同で3月に実施する。
https://www.hakuhodo.co.jp/uploads/2019/02/20190206_2.pdf
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000037787.html

伊藤博敏が「現代ビジネス」に「『噂の真相岡留安則さんの訃報に思う、メディアが歩むべき一つの道」を発表した。
「挑戦するタブーには、『最強の捜査機関』である東京地検特捜部を持つ法務・検察も含まれた。だが、権力は必ず驕り、逆らうものに刃を向ける。検察の内幕を20回以上も暴き、暴かれて怒り心頭に発していた検察は、95年6月、2人の作家の名誉毀刑事告訴を受理する形で捜査に入り、岡留氏を起訴して刑事被告人にした。当時の特捜部長は、出身地の政商からリンゴ箱を贈られたことを記事化され、個人的恨みを持っていた。
7カ月もの懲罰的捜査と起訴を経て、高検検事長報道の時には公判中(懲役8月、執行猶予2年で確定)の身だったが、歪んだ権力を振りかざす検察に対し、岡留氏はマスメディアを引き連れて、一矢報いたことになる」
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/59755

◎2月7日付日経「出版不振は地方の商機? 長野の製本会社、増産投資」。
「製本業の渋谷泉閣(長野市)は『製本の集積地である東京都内で後継者不足などを背景に廃業する同業が相次いでおり、展示会の図録など大型の受注が増えていることに対応』すべく『2億円超を投じ本社工場を増築した』」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO40988950W9A200C1L31000/
生き残ればチャンスが生まれるのは出版社も同じ。

◎創業141年目をむかえる春陽堂書店は、無頼派坂口安吾の命日である2月17日の「安吾忌」に、坂口安吾によるエンタメ小説やエッセイをまとめた「坂口安吾エンタメコレクション」の刊行を開始する。これは買いだ。
https://www.atpress.ne.jp/news/176293

毎日新聞は2月11日付で社説「ダウンロード規制拡大 ネットの自由、狭めぬよう」を掲載している。
「違法かどうかを判別するのは簡単ではなく、ネット利用の萎縮も懸念される。自由な情報収集が阻まれるようではいけない。規制拡大は委員会でも賛否が分かれただけに、法案化では十分な検討が必要だ。『表現の自由』や『知る権利』にもかかわる」
https://mainichi.jp/articles/20190211/ddm/005/070/065000c
自分で自分の首を絞めるような事態は避けなければならないはずである。

◎「CINEMA TOPICS ONLINE」の「映画『21世紀の女の子』ビームスとのコラボレーション展開催決定!」は次のように書いている。化出版局の「装苑」が映画衣装を全面的にプロデュースする。
「『ホットギミック』の山戸結希監督が企画・プロデュースを務め、自身を含む80 年代後半~90 年代生まれの新進映画監督、総勢15 名が集結したオムニバス映画『21世紀の女の子』が2月8日(土)よりテアトル新宿ほか全国順次ロードショーいたします。
21世紀の女の子は、ファッション誌『装苑』(化出版局)が創刊82年の歴史上初となる映画衣裳の全面プロデュースを担当。衣裳ブランドは、作品の世界観を表現した若手から重鎮までの14ブランドを独自にセレクトしました」
http://www3.cinematopics.com/archives/105529

紀伊國屋書店は、「2018年1月~12月期 紀伊國屋書店ベストセラー大賞」を発表した。
 <著者部門>原作:吉野 源三郎、漫画:羽賀 翔一(はが しょういち)
<出版社部門>株式会社 マガジンハウス
https://www.kinokuniya.co.jp/c/company/pressrelease/20190204120001.html
「マガジン」ではなく書籍で表彰されたわけである。

電通電通デジタルは、デジタル広告におけるアドベリフィケーション問題への対応を更に強化していくため、「Tailored Whitelist」(テーラーホワイトリスト)と「Agency Blacklist」(エージェンシーブラックリスト)という2つの施策の正式運用を開始した。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/pdf-cms/2019011-0206.pdf

◎昨年公開された「映画ドラえもん のび太の宝島」は興行収入53億円に達したが、今年3月1日に公開される「映画ドラえもん のび太の月面探査記」の前売りが前作を上回る好スタートをきっているそうだ。今回、脚本を手がけた辻村深月の書き下ろし小説「小説 映画ドラえもん のび太の月面探査記」も発売された。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000226.000013640.html

◎「受注数は追いません。編集と同じ目線で、クリエイティブに提案を行うダイヤモンド社の営業とは?:書店営業部の正社員メンバーを募集中!」を読めばわかるが、ダイヤモンド社ではマーケティングが根付いてきているようだ。「横浜市川崎市田園都市線小田急線とでは似ているようで売れ筋が微妙に違ってくるので、エリアや法人ごとの特性に合わせ、それぞれ最適な商品を提案」するのはマーケティングの基本だ。根拠をもって「売れる商品」を書店に提案し、書店の売上の最大化を図っているわけだが、その根拠こそがマーケティングに他なるまい。本を卸すことにノルマを課すのはマーケティングでも何でもなく、営業の現場を疲弊させるだけなのである。書籍編集局第3編集部・副編集長の横田大樹の発言を紹介しておこう。
「いま気づいたのですが、『受注数ではなく実売を追う』という営業の評価制度は、編集の評価制度とも本質的に一致していますね。多くの出版社では、編集者の目標として年間の出版冊数を設定されます。一方、ダイヤモンド社では、出版した冊数ではなく正味の売上金額で評価される。こうして営業と編集が同じ目線に立てることが、両者の仲のよさにもつながっているのかもしれない」
https://diamond.jp/articles/-/193301
この記事、募集広告なんだけど、なかなか示唆に富んでいる。いずれにしても出版はマーケティング「後進」業界のツケを支払わされている局面に現在はある。

朝日新聞デジタルは2月7日付で「出版物引き写し、朝日新聞社記者を処分 停職2カ月」を掲載した。問題となったのは「」2/4号でも報じた、朝刊北海道内版で1月12日と19日に掲載した連載記事「ひと模様 大道芸人 ギリヤーク尼ケ崎さん」である。
https://www.asahi.com/articles/ASM274DRFM27ULZU00C.html

◎「AERA」(朝日新聞出版)は今年も働く女性を応援するプロジェクト「ワーキングウーマンのための”新ライフマネジメント論“」を3月5日(火) 19:00より、TKPガーデンシティPREMIUM京橋で開催する。第一部は「AERA」編集長の片桐圭子を聞き手とした収納王子コジマジックによる「時間管理術」の講演、第二部は企業プレゼンテーション。
https://publications.asahi.com/news/1018.shtml
女性誌もこういう取り組みを参考にすべきだろう。

◎「週刊春」もやっている。「相続・葬儀・墓・解約が四大疑問 『死後の手続き』35問 あなたの悩みに答えます!」を6頁にわたって特集している。「老親の死後の手続き」は「週刊現代」が飛ばした大スクープであったのは間違いあるまい。
http://bunshun.jp/articles/-/10662
実用記事、大いに結構なのである。しかし、その一方で週刊誌編集者たる者は「ひとたび一世の動こうとする時に当っては、義侠のを組織して立ち、或いは百姓一揆を領導して、内乱を革命に転化せしめ得る力量の持主でなければならない」(村上一郎)はずである。

◎「AERA」(朝日新聞出版)が13年ぶりに刊行したロック関連誌「AERA in Rock クイーンの時代」が売れている。「ボヘミアン・ラプソディ」効果だ。
https://www.asahi.com/and_w/interest/entertainment/CORI2129108.html
こういう「腰の軽さ」は考えてみれば雑誌の伝統芸なんだよね。

◎まだ売れているのか…。乃木坂46白石麻衣の写真集「パスポート」(講談社)が、発売からまる2年となる2月7日、24度目の重版がかかり1万部増刷し、累計発行35万部となった。日刊スポーツによれば「軒並みヒットを記録している乃木坂46ンバーの写真集の中でも、発行30万部を超えているのは白石だけだ」そうだ。
https://www.nikkansports.com/entertainment/news/201902070000759.html
「パスポート」のカメラマンって誰か分かりますか?答えは中村和孝。

◎日販は、2月14日(木)・15日(金)の2日間、商品開発部主催で、取引先を対象とする商品展示会「New Item Convention 2019」を開催する。関連メーカー約40社の展示のほか、年齢別絵本ガイド企画「いくつのえほん」と一緒に展開できる年齢別ギフト「いくつのぎふと」、2018年12月に開催し約35,000人が来場した具の祭典「具女子博2018」など日販オリジナル企画も提案する。
https://www.nippan.co.jp/news/new-item-convention-2019/


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3)【深夜の誌人語録】

正しさに溺れないようにしたい。