【文徒】2019年(平成31)2月21日(第7巻32号・通巻1450号)


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1)【記事】法律家もマンガ家も反対するダウンロード違法化に出版界は沈黙
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】
----------------------------------------2019.2.21 Shuppanjin

1)【記事】法律家もマンガ家も反対するダウンロード違法化に出版界は沈黙

朝日新聞は2月19日付で「ダウンロードは違法、紙に印刷はOK どうして?」を掲載している。「プリントアウトは『ダウンロード』ではないからだ。また、スクリーンショットをした場合でも、『引用』が目的ならば違法にはならない見込みだ」ということなのだけれど…。
https://www.asahi.com/articles/ASM2L6V5QM2LUCVL04B.html
朝日新聞は2月19日付で「こんな違法化『誰が頼んだ?』漫画家や専門家ら声上げる」も掲載している。
「『誰が頼んだよ、こんなの…。』
今回の規制方針を伝える報道が出ると、『のだめカンタービレ』などで知られる人気漫画家、二ノ宮知子さんのツイッターアカウントがこうつぶやいた。19日昼までにリツイート数は3千余り。『誰が頼んだ』は法改正に疑念をもつ人たちの気持ちを代弁する言葉として、広く拡散し始めた」
https://www.asahi.com/articles/ASM2L748HM2LUCVL04G.html
政府の違法ダウンロードの対象を「著作物全般」に拡大する方針に対して、高倉成男(明治大学知的財産法政策研究所長 明治大学専門職大学院法務研究科教授)、中山信弘(東京大学名誉教授 明治大学研究・知財戦略機構顧問)、金子敏哉(明治大学法学部准教授)を呼びかけ人として、90名と1団体が「『ダウンロード違法化の対象範囲の見直し』に関する緊急声明」を発表した。
化審議会におけるダウンロード違法化の対象範囲の見直しについての検討は、海賊版対策の緊急性に鑑み、実質的には 2018 年 10 月末からの約3か月間に 5 回の法制・基本問題小委員会(以下、小委員会)の開催という異例のスピードで行われた。
しかし小委員会における議論にも拘らず、なおクリエーターやネットユーザー等からの新たな懸念の声が生じており、法改正の前提となる立法事実、法改正が国民生活に及ぼす影響については、いまだ十分な検討がされているとはいえない。対象範囲を拡大する際の具体的な制度設計のあり方(特に民事的規制の範囲)についても議論が大きく分かれている状況である。また刑事罰の適用範囲についても、本来は、現行著作権法 119 条 1 項が著作権侵害行為一般を処罰対象としていることの是非も含めた検討が行われるべきものである。
拙速な法改正は、私的領域における情報収集の自由に対して過度の萎縮効果を及ぼすとともに、著作権制度の妥当性について国民の信頼を失わせるものともなりかねない。ダウンロード違法化の対象範囲の見直しについては、なお検討すべき課題があり、立法措置を図るに際しては、さらに慎重な議論を重ねることが必要である」
http://www.kisc.meiji.ac.jp/~ip/_src/sc1464/20190219seimei.pdf
http://www.kisc.meiji.ac.jp/~ip/_src/sc1465/20190219seido.pdf
日本マンガ学会が1月23日に発表した「ダウンロード違法化の対象範囲拡大に対する反対声明」も読んでおきたい。
「1、合法とは言い切れない二次創作のダウンロードまで禁止することで、海賊版研究だけでなく、二次創作研究をも明確に阻害することになる。
2、現在のインターネット環境においては、研究あるいは新たな創作のために、記事・図版・章の一部などを合法・違法を問わずメモとしてダウンロードし、クリッピングすることは日常的に行われており、こうした行為を「違法」とすることは、むしろ広範囲での研究・創作の萎縮を招く懸念が非常に大きい。
3、動画や音楽の違法アップロードと違い、静止画や章が「違法」アップロードであるかどうかは判断が難しい。たとえば短のSNS等で正確な出所が示されていない記事はすべて「違法」と判断され、ユーザーがダウンロードを控える可能性がある。
4、ダウンロードを違法化しても、「漫画村」のようなストリーミング方式の海賊版はまったく取り締まることができない。現在の動画や音楽のダウンロード違法化・刑事罰化のあと、逮捕者は出ておらず、もっぱら法律による「抑止力」のみが期待されている状態である。このような現状を鑑みると、今回の「中間まとめ」にあるように、静止画等のダウンロードを違法化することは、悪意ある侵犯者に対してはまったく効果がなく、逆に一般ユーザーの萎縮を招き、研究・創作を著しく阻害する最悪の結果となることが予想される」
https://www.jsscc.net/info/130533
情報法制研究所も2月8日付で「ダウンロード違法化の全著作物拡大に対する懸念表明と提言の発表」を公開している。
「『事務局の考え方』は、『第三者著作権を侵害する部分を外して保存することが可能な場合もあると考えられる』などと記載し、報告書も『違法にアップロードされた著作物を外してダウンロードすることによる対応が可能な事例もある』などとするが、『可能な場合もあると考えられる』『可能な事例もある』などの能天気な想定は、およそ机上の空論というほかはない」
「小委員会事務局は、つじつま合わせに終始するあまり、保護法益・利益の観点に立ち戻っての整理を怠っており、元々の法目的を見失っていたと評するほかはない」
https://www.jilis.org/proposal/data/2019-02-08.pdf
「私の居場所はどこにあるの?」(朝日庫)、「少女まんが魂」白泉社)、「愛情評論」(藝春秋)などの著書を持つ藤本由香里が講談社の「現代ビジネス」に「『違法ダウンロードの範囲拡大』に潜む、重大な問題点」を寄稿している。
「事実、諸外国でも、これほど広範にグレーの部分まで含めてダウンロードを違法化した例はない」
「しかし、諸外国では、著作物のジャンルにこそ制限を設けていないかもしれないが、化庁が『中間まとめ』で紹介している例だけを見ても、各国ともダウンロード違法化の対象は『明確な海賊版』に限定しており、『引用の要件を満たさない、著作物のごく一部の転載』など軽微な著作権侵害にまで広く違法化の網をかけるようなことはしていない」
「また、各国とも違法化の要件は客観的な事実に限っており、『著作権侵害を知っていたかどうか』という『主観要件』を条件に入れている国は、私の知る限り、ない」
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/59947
インターネットユーザー協会は1月6日の段階で「化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会 中間まとめに関する意見」を発表している。
「『いわゆるデッドコピー等への限定を行うべきか否かについて』の項について、デッドコピーへの限定を行わず、漫画や映像の一部を切り取ったもの、タイムストレッチにより長さを変更したものについても本規制の対象とする方針であることが示されている。しかしこれらは漫画評論や映像評論では一般的に行われる手法である。日本においては米国のような表現の自由の担保を主眼においたフェアユース規定や、欧州に存在するパロディ規定が存在しないため、ここで挙げられている事例が著作権侵害とされ、表現の自由を大きく毀損する。差し当たり緊急に対応する必要性の高い悪質な行為類型への対応をするという目的から鑑みれば、まずはデッドコピーに限定するべきである。中間まとめでは『⑤マンガを翻案し,新たなマンガを創作したもの』については議論があったようだが、これが入ると日本の二次創作化が大きく毀損される。クールジャパンを標榜するわが国に著作権法に絶対に含めてはならない条項である」
https://miau.jp/ja/902
化庁の「パブリックコメントで提出された個別事例を受けた事務局としての考え方」も読んでおきたい。
著作権侵害の場合以外にも,『フェイクニュースや政治家の失言などの検証のためにツ
イッターにアップされた新聞の切り抜きやTV画面の撮影画像を保存すること』などが困
難となるといった意見があるが,そのような検証のためにあえて違法にアップロードされ
た著作物を利用する必要性には疑義がある。仮に,正規版の捜索・利用にコストがかかる
としても,そのことにより,違法にアップロードされた著作物の利用を正当化することに
は疑義がある」
http://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/hoki/h30_08/pdf/r1413427_05.pdf
弁護士の水野祐のツイートである。
「ダウンロード違法化拡大はクリエイターのみならず研究者、ビジネスサイド、一般人にも広く萎縮効果を与える。DLは今やあらゆる創作、研究、日常的なコミュニケーションなど化・産業の土壌になっている行為。ここに萎縮が生じれば日本の競争力や豊かさが阻害される。この問題を見逃さないでほしい」
「現在、法案は化庁・化庁審議会での反対意見を無視する形で自民党部科学部会での審議に入ったと聞く。もう本当に時間がない。海賊版対策として検討された法案だったが、その実効性に対する検討分析もないまま、私たちの化や産業を細らせてしまう規制がこのままでは本当にできてしまう」
「国はクールジャパンやスタートアップ施策を進めながら、一方ではこれらの施策を根本から揺るがしかねない真逆の『ダウンロード違法化拡大法』を成立させようとしている。そのことを理解している政治家や官僚がいるのか危惧している。これは漫画などの海賊版に留まる話しでは全くない」
https://twitter.com/TasukuMizuno/status/1096599962383613952
https://twitter.com/TasukuMizuno/status/1096600910740938752
https://twitter.com/TasukuMizuno/status/1096604140837298176
植村八潮が「YAHOO!ニュース」に寄稿した「『スクショNG』は海賊版対策に有効か 気になる『表現の自由』への影響」で次のように警鐘を鳴らしている。
「漫画家のすべてを代表するわけではないが、赤松健さんや竹宮恵子さんのように、読者の立場に立って反対を表明する作家も出ている。一方、出版業界内から違法化に対する懸念の声は、一人として聞こえてこない。二次創作作品も楽しむ漫画ファンの間では、漫画カルチャー育成よりもビジネスを優先する出版社に対して不満の声も聞こえてくる。確かに漫画雑誌の不振が、書籍を含む出版全体の危機につながっていることは事実だ。だからといって、表現に関わるものとして、表現の萎縮につながりかねない法制化に反対しないままで、よいとは思えない」
https://news.yahoo.co.jp/byline/uemurayashio/20190214-00114821/
デメリットがメリットを上回っているとしか私には思えないし、表現の自由に関わる問題ではいつも饒舌な出版界が沈黙しているのも理解できないのである。大塚英志事務所がこんなツイートを投稿していた。
「見なくちゃいけないのは「漫画業界をダシに議論を矮小化して政府、情報・知財系、コンテンツ産業界が利益の一致する方向に表現の自由を制限していく」という大きな流れがあって「漫画家の利益代表みたいな顔した連中が「漫画界の利益」を守った気になって表現の自由を狭めていく」という構図」
https://twitter.com/MiraiMangaLabo/status/1097802213903163392

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2)【本日の一行情報】

讀賣新聞オンラインは2月19日付で「講談社元編集次長、妻殺害を否認…『自殺した』」を掲載した。
「東京都京区の自宅で妻を殺害したとして、殺人罪に問われた出版大手『講談社』元編集次長で韓国籍の朴鐘顕(パクチョンヒョン)被告(43)に対する裁判員裁判の初公判が19日、東京地裁(守下実裁判長)であった。朴被告は罪状認否で『妻を殺していない』と起訴事実を否認。弁護側も『妻は自殺した』として無罪を主張した」
https://www.yomiuri.co.jp/national/20190219-OYT1T50129/
産経ニュースは2月19日付「妻殺害、講談社の元編集次長初公判 『私は妻を殺していない』と否認、弁護側『自殺』主張」で、こう書いている。
「弁護側は『他殺ではなく、自殺』と無罪を主張。『妻はストレスを抱え、産後うつと思われる兆候もあった』と指摘し、ジャケットで首を吊って自ら命を絶ったとした。また朴被告は子供たちに母親が自殺したことを言いたくなかったため、当初は警察官に『階段から落ちたことにしてほしい』と言ったと説明した」
https://www.sankei.com/affairs/news/190219/afr1902190009-n1.html
朝日新聞デジタルの2月19日付「講談社元次長、殺人罪初公判で無罪主張『妻は自殺した』」によれば検察側の主張は…。
「冒頭陳述で検察側は、被告は16年8月9日未明、子育てをめぐる口論から、寝室で妻(当時38)の首を圧迫して殺害したと指摘。犯行を隠すため、意識を失った妻を階段から転落させ、『自殺した』と119番通報したと主張した」
https://www.asahi.com/articles/ASM2M3G3DM2MUTIL009.html
毎日新聞の2月19日付「講談社社員『妻殺してない』 弁護人も『自殺だ』 東京地裁初公判」は、こう書いている。
「検察側は冒頭陳述で、朴被告が佳菜子さんから育児への不満を言われたり、被告の実母をけなされたりしたことから突発的に殺意を抱き、寝室のマットレスの上で殺害したと指摘。殺害後、自宅内の階段の上から転落させて事故死を装ったと述べた。
一方、弁護側は『佳菜子さんには『産後うつ』の兆候があり、育児や家事に悩んでいた。もめ事の後、階段の手すりにジャケットを巻き付けて首をつって自殺していた』と主張。『子どもに母親が自殺したとは言えない』と被告は考え、自らの通報で駆け付けた警察に『階段から落ちたことにしてほしい』と頼んでいたと説明した」
https://mainichi.jp/articles/20190219/k00/00m/040/086000c
讀賣新聞オンラインの記事は、こうも書いている。
講談社によると、朴被告は1999年に入社し、漫画『GTO』や『七つの大罪』といった人気作品の編集を担当した。事件当時は雑誌『モーニング』編集部の編集次長だったが、現在は休職中。同社広報室は『公判の推移を見守りつつ、会社として慎重に対処する』としている」
毎日新聞は2月20日付で「元モーニング編集次長は妻を殺害したのか 東京地裁・初公判詳報」を掲載している。
https://mainichi.jp/articles/20190219/mog/00m/040/014000c?fm=mnm

◎扶桑社が運営する「ハーバー・ビジネス・オンライン」が「タレント、フィフィ氏の蓮舫氏に関する誤情報ツイートを拡散した日刊スポーツを直撃」を掲載している。
「…今回の『フェイク』が拡散した背景には、報知新聞や日刊スポーツ、日刊スポーツから提供を受けた朝日新聞デジタルの『&(アンド)』でも掲載され、ツイートが拡散されたということがある」
「本誌の取材に、ある朝日新聞関係者は匿名で以下のように語る。
『エンタメ系は外部からもらった記事なのかもしれませんが、記事審査のゆるいサイトを複数立ち上げたりして、危機管理が問題になっています』」
https://hbol.jp/186171

講談社ピクシブが共同で運営するマンガアプリ「Palcy」(パルシィ)は累計75万部突破のベストセラーとなった「未来の年表 人口減少日本でこれから起きること」(講談社現代新書)を「マンガでわかる 未来の年表」としてコミカライズし、連載を開始した。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002065.000001719.html

◎「ITエンジニアに読んでほしい!技術書・ビジネス書 大賞 2019」(ITエンジニア本大賞)が発表された。技術書大賞に「エンジニアリング組織論への招待 ~不確実性に向き合う思考と組織のリファクタリング」(技術評論社)、ビジネス書大賞に「イシューからはじめよ─知的生産の『シンプルな本質』」(英治出版)が選ばれた。
https://www.atpress.ne.jp/news/177517
https://www.shoeisha.co.jp/campaign/award/2019/result/

◎「YAHOO!ニュース」が不破雷蔵「継続的に減少…新聞、週刊誌や雑誌、書籍の支出金額の推移をさぐる(2019年時点最新版)」を掲載している。驚くべきことに新聞の世帯購入頻度は2002年の時点で100%を超えていた。それが今や73.8%。雑誌に至っては2002年には76.1%だったのが、今や半減以下の30.9%。
https://news.yahoo.co.jp/byline/fuwaraizo/20190219-00115007/

博報堂は、ニューヨーク市の大学及び研究機関とメディア、テクノロジー企業とをつなぐNYC Media Labに加盟し、ARを用いたバーチャル空間におけるコミュニケーションプラットフォームの研究開発を開始した。
https://www.hakuhodo.co.jp/uploads/2019/02/20190219.pdf

KADOKAWAは、ライトノベルをユーザー別にレコメンドするウェブサイト「キミラノ」を2019年春にスタートさせる。「ヨミタイがミツカル。」をキャッチコピーに、ユーザー別に本の好みを解析してオススメのライトノベルを紹介するスマートフォンけのウェブサービスだ。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000005522.000007006.html

電通は、2020年1月に純粋持ち株会社制度への移行に伴い発足する新会社の名称を「電通グループ」にすると発表した。電通ループのもとに海外事業会社と国内事業会社が並ぶことになるが、国内事業会社の名称は電通となる。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/pdf-cms/2019019-0219.pdf

電通は、海外本社「電通イージス・ネットワーク」を通じて、英国のクリエーティブエージェンシー「BJL Group Limited」の株式100%を取得することで合意した。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/pdf-cms/2019018-0219.pdf

東京商工リサーチの「【破綻の構図】(株)天牛堺書店~なぜ私的整理は頓挫したのか~」は次のように書いている。
「不採算店は順次閉鎖したが、収支とキャッシュフローは好転せず、2016年中旬になると最大の仕入先である書籍取次大手(株)トーハンTSR企業コード:291105009、新宿区)への支払いに支障をきたすようになった。
トーハンには所有権留保が付いた在庫商品の返品で対応した。また、商品の継続供給を目的に2018年5月期に入るとトーハンから役員を受け入れ、新体制で改革を目指した。
不採算店の閉鎖を進めた結果、12店舗まで縮小し、経費の大幅削減に一定の成果をみせた。だが、採算を確保できていた店舗は『天下茶屋店』と『粉浜店』のみ。規模縮小だけでは深刻な経営改善には結びつかなかった」
http://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20190219_02.html

湯河原町にたった1店しかない「書店 好の木」が2月24日に「一箱古本市」を開催する。
https://odawara-hakone.keizai.biz/headline/3106/

◎日販は10 月 1 日付で持株会社体制に移行することにった。
https://www.nippan.co.jp/wp-content/uploads/2019/02/20190219.pdf
4 月 1 日付の取締役・執行役員人事も発表した。
https://www.nippan.co.jp/wp-content/uploads/2019/02/officer_20190219.pdf

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3)【深夜の誌人語録】

拙速は災いをもたらす。