【文徒】2019年(平成31)2月22日(第7巻33号・通巻1451号)


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1)【記事】講談社第80期決算・役員人事報告会(2月21日講談社本社)速報
2)【本日の一行情報】
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1)【記事】講談社第80期決算・役員人事報告会(2月21日講談社本社)速報(岩本太郎)

◆乾智之広報室長による開会の挨拶

「たった今京区の表の気温はだいたい16℃くらいと、だいぶ春めいて参りました。本日は講談社第80期(注・平成29年12月1日~平成30年11月30日)の決算報告会にたくさんの方々にお越しいただきありがとうございます。一昨日から弊社の刑事裁判の案件という、本業とは異なる部分においてみなさまをお騒がせいたしましたことを、まずこの場でお詫びを申し上げます。
今日は講談社の決算・業績はもちろんですが、数字になかなか表われない出版界の課題等々もございますので、幅広くご質問を頂戴できれば幸いです」

野間省伸代表取締役社長による挨拶

「本日はお忙しい中、講談社の決算発表会にお越しいただきまして誠にありがとうございます。また、平素から弊社の出版活動にご理解を賜り、様々な形でみなさまの媒体に取り上げていただいておりますことを、改めて感謝申し上げます。
本日午前10時より第80期定期株主総会が行われ、決算・役員体制など全ての議案が承認され、無事終了いたしました。決算につきましては経理担当取締役の吉富より後ほど説明をさせていただきますが、増収増益という結果になっております。
昨年前半は「漫画村」という巨大海賊版サイトが猛威を振るい、電子コミック市場は大打撃を受けました。出版市場は14年連続で前年比マイナスという厳しい状況にあります。そうした中で増収増益という発表ができますことを率直に喜んでおります。
役員の業務分担についてはこれまでとまったく変更はありません。役員体制も含めて詳しくは常務の金丸から後ほど説明をしてもらいます。私からは最近のトピックスについていくつかお話をさせていただきます。
今年は新年早々わが社の刊行作品が芥川賞直木賞を同時受賞するという慶事に恵まれました。1909年の創業以来110周年というこの節目の年を最高の形でスタートできたことは本当にありがたいと思っていますし、この勢いをこれからも持続させていきたいと思っています。また、昨年の機構改編でアーティスト企画部を立ち上げて本格的に取り組み始めた写真集ビジネスですが、おかげさまで絶好調です。乃木坂46生田絵梨花さんの『インターミッション』が発売1カ月足らずで30万部というスタートを切り、一昨年2月発売以来記録的な重版が続いている白石麻衣さんの『パスポート』は遂に35万部となって、なお売れ続けています。こうした好調な作品群の効果で、今のところの予測では今年の上半期は良い数字を期待できそうです。
グループの連携も上手く回り始めています。みなさんはヒプノシスマイクというのをご存知でしょうか? YouTubeでご覧いただけますので、口で説明するよりも見ていただいたほうが早いんですけれども、声優たちによるラップバトルでして、これを手掛けているのがキングレコードです。とにかくこのヒプノシスマイクが昨年後半から若い人たちの間で大ブレークしています。そしてこの「ヒプマイ」をコミカライズした作品を弊社の『少年マガジンエッジ』に掲載したところ、通常号の3倍近くに部数を増やしたにも拘らず、あっという間に完売しました。売り切れのない電子版は通常号の20倍の売り上げを記録しました。
また、「ヒプマイ」関連のコミカライズはほかにも『少年シリウス』と、グループ会社であります一迅社の『コミックZERO-SUM』にも掲載していまして、どちらの雑誌も完売状態になるなど驚きの展開を見せています。従来の発想にとらわれず、コンテンツのジャンルを超えて、グループ会社同士の垣根の低さを活用して協力できたことが成功の要因だと考えています。こうした事例をこれからもどんどん増やしていきたいと 思っていますし、コンテンツを生み出すだけでなく、宣伝や販売、流通の分野、あるいは管理部門についてもグループ内の情報共有をさらに深めて、グループとしての強みを発揮していきたいと思います。
先ほども少し触れましたが今年は創業110周年でございます。おかげさまで素晴らしいスタートダッシュを切ることができましたので、様々な取り組みに挑戦する年にしていきたいと考えています。みなさまのご理解とご協力を改めてお願いいたします」

◆第80期(平成29年12月1日~平成30年11月30日)決算報告

売上高 1204億8400万円(前年比102.1%)

《内訳》

雑誌        509億0900万円(同91.1%)

 (雑誌)     144億1800万円(同98.1%)

 (コミック)   364億9100万円(同88.6%)

書籍        160億3300万円(同90.6%)

広告収入      50億0600万円(同108.6%)

 (雑誌)     29億6400万円(同91.4%)
 (WEB)      18億8000万円(同155.8%)
 (その他)    1億6200万円(同99.6%)

事業収入      443億2100万円(同124.1%)

 その他      10億6100万円(同116.8%)

 不動産収入     31億5100万円(同100.6%)

税引前当期純利益   45億0700万円(同122.5%)

当期純利益      28億5900万円(同163.6%)

◆吉富伸享取締役による決算および事業についての説明(※上記の決算データと重複する部分については省略)

「主たる出版事業では落ち込みに歯止めがかからない製品売上をデジタル・版権分野を中心とした事業収入によりカバーする構造が続いております。出版事業合計の売上高は1173億円(前年比102.2%)で、製品売上は669億円(同91.0%)。事業収入443億円のうちデジタル関連収入が334億円(同133.9%)。このデジタル関連収入の中の電子書籍の売上が315億円(同144.1%)。国内版権収入が60億円(同94.8%)、海外版権収入は47億円(同109.3%)となりました。電子書籍において一部取引先と実情に合わせて契約を見直したことに伴う売上計上基準の変更が行われております。
年度前半は電子書籍の伸びが止まり大変厳しい状況が続きましたが海賊版サイト対策の効果もあり、年度後半にはコミック分野を中心に紙製品・電子書籍の売上が回復しました。また、広告収入はウェブ広告の伸長により6期ぶりに前年度を上回りました。
原価面では製品の直接製造費の削減に務めた結果、発行部数の減少が継続する状況の中、製品の原価率を前年より下げることができました。費用面においては販売・宣伝施策の見直しを進めたことに加え、大きな宣伝施策の実施がなかったこともあり、費用全体では前年を下回りました。以上の結果、当期の営業利益は対前年で3億円増益の22億円、経常利益は対前年で3億円増益の47億円。税引前当期純利益は対前年8億円増の45億円、当期純利益は対前年で11億円増の28億円の利益計上となりました。
紙媒体の製品は引き続き厳しい状況が続いております。そうした中でも今年度はSNSを積極的に活用するなどして大きく売り伸ばした写真集、年間を通じて話題を提供した新書、アニメ化で火が付き大ヒット作に成長させることができたコミックスなどが業績を牽引しました。ヒット作の影響力・収益力を再認識すると共に、厳しい市場環境にあっても様々な創意工夫をすることで多くの読者に提供できるという実例を示すことができました。
電子書籍は上期は前年実績に届かない月もあるなど苦戦を強いられましたが、通年では前年を超えることができました。特に大規模な海賊版サイトの閉鎖後の下期は、コミックコンテンツを中心に売上が回復し、利益の底上げに寄与しました。また、デジタル媒体の分野では『現代ビジネス』が過去最高のPVを記録し、『ボンボンTV』は前年の2倍を超える広告収入を上げました。
コミックでは「マガジンポケット」に加え新たに「コミックDAYS」「パルシィ」といったアプリが本格稼働を始めました。版権ビジネスの分野では、国内は前年の収入には届かなかったものの、映像化・舞台・イベント等、コンテンツの展開を精力的に行いました。海外ではビジネスエリアが拡大しているコミック、翻訳出版、映像の番組販売や、米国を中心に展開している電子コミックの配信などにより好調に推移しています。近年進めてきたVRコンテンツへの新たな取り組みとしては、お台場ダイバーシティでのVRライド型アトラクション「ヘキサライド」がスタートしました。デジタル時代におけるコンテンツの展開を今後もさらに進めてまいります。
出版業界は書店の減少、流通の危機、海賊版サイトと解決が難しい問題が山積しており、その影響はますます大きくなっています。これからも「おもしろくて、ためになる」コンテンツを作り続け、それを読者に届け続けるために、これらの問題に背を向けるのではなく、新たなビジネスチャンスと捉え、積極的なビジネス展開を継続してまいります。ここ数年、コンテンツを多面的に展開することに取り組んでまいりましたが、今後はコミックにとどまらず、あらゆるジャンルで存在感を示すことが必要です。コンテンツを読者に届けるために新たなテクノロジーを積極的に取り入れ、様々なデータを有効活用すると共に、業界の垣根を超えた他業種との協業を通じて次の時代の出版社像を具現化することを目指します


平成31年2月21日付役員人事(氏名の後のカッコ内は担当局

代表取締役社長   野間 省伸

常務取締役     金丸 徳雄(社長室、総務局、編集総務局)

常務取締役     峰岸 延也(販売局)

常務取締役     古川 公平(ライツ・メディアビジネス局)

常務取締役     渡瀬 昌彦(広報室、第五事業局・担当役員直轄〔新企画開発チーム〕)

取締役       森田 浩章(第三事業局、第四事業局)

取締役       清田 則子(第六事業局)

取締役       鈴木 章一(第一事業局、第二事業局)

取締役       吉富 伸享(経理局)

取締役       吉羽 治(IT戦略企画室)

取締役(非常勤)(新任) 野内 雅宏

常任監査役     白石 光行

監査役       足立 直樹

(なお、今回の退任役員には次の通り顧問を委嘱)

顧 問(相談役)  森 武

顧 問       重村 博

顧 問       大竹 深夫

◆金丸徳雄常務取締役による役員体制についての説明

本年2月で任期満了の取締役が7名、監査役が1名です。野間社長、私・金丸、古川公平さん、清田則子さん、鈴木章一さん、吉富伸享さん、白石光行さんの7名が重任となりました。大竹深夫さんは任期満了で顧問に就任していただくことになっています。任期満了ではありませんが森武さん、重村博さんは退任され顧問に就任していただきます。
また、一迅社代表取締役社長の野内雅宏さんを新たに非常勤取締役として選任いたしております。先ほど社長から話がありましたけれども、常勤の取締役の担務に関してはこれまで通りで変更がありません。常任監査役の白石光行さんには本社に加えグループ会社全体を見ていただきます。凸版印刷代表取締役会長の足立直樹さんには引き続き監査役をお願いしました。新任の野内非常勤取締役には外部の視点から様々な意見をいただきたいと思っております。
なお、顧問の森武さんには肩書として「相談役」というものを使っていただくことになっています。これまでの知見から業界関係のアドバイスをいただきたいということと、引き続き日本図書普及の取締役、大阪屋栗田の相談役をお願いしています。顧問の山根隆さんには引き続き音羽建物の代表取締役社長を、入江祥雄さんには引き続き講談社コミッククリエイトの代表取締役社長をお願いしています。

◆質疑応答(抄録)

――決算には直接関係ないかもしれませんが、アマゾンが買い切りの姿勢を強めていることについては講談社としてどういう対応をとられていますか。

野間 もちろん返品という非常に大きな問題が業界にはございまして、その解決とまではいわないにしても軽減する一つの手になることも考えられるので、歓迎できる部分もあると思います。けれども一方で、それによって再販制度を崩すような行為を行うのではないかと危惧する声が聞かれているのが現状だと思っています。講談社で考えてみますと、直接取引というのは個別にアマゾン以外でも書店さんなどで行っているものはタイトル・バイ・タイトルであります。現状ではアマゾンとはやっていませんけれども、全面的にやるかどうかは別として一つの販売施策、我々にとっての返品抑制策というような形で……まあ、やるともやらないとも言えないところですが、十分に考える必要はアマゾンに限らずあるのかな、とは思っています。

金丸 直取引については、いろいろな書店のグループというか大手のところと、例えば品切れになっているものを売りたいとの意向から増刷し直取引で売っていたというようなことは、細かく言えば(従来も)結構ありました。これがどこまで広がっていくのかという問題だと思います。取次を全部外してそれができるのかといえば、たぶん今すぐにはできないでしょうが、そのへんの試みがアマゾンに限らず広がっていくのかなとは思います。

――現状では再販制度がありますし、やはり直取引が難しいところもあるでしょう。版元としてはどのような懸念をお持ちですか。

野間 まあ、現状のアマゾンとのやり取りは……言えないでしょう、それは(苦笑)。アマゾンとの直取に関してハードルになるものということで言うと、もちろん商売なので一定程度の差異はあっても仕方がないとは思うんですけど、なるべく会社のスタンスとしては各書店さん、取次さんに対して公平に扱うべきかなと思っています。フェアな競争の中で勝ち負けが出てくるのは仕方がないことだとは思っていますが、例えばアメリカなどでは直取引が結構多くて、いろいろ取次も活用して動いていると思いますが、出版社から卸す時の正味には、確かあまり差をつけてはいけないんですよね。だから値引き余地というのは限られるし、フェアに競争できる格好になっていると思うんですよね。
日本には現在そういう法律が一切ないですから、それこそアマゾンでたくさん買ってくれるから正味を下げましょうといった話になりかねない。そうしたことがハードルになりうるのかな、と。書店がどんどん減っていく中で、同業間で戦わないと勝てるわけがないし、一社だけ違うルールのもとで違うスポーツをやるようなことを推進しようという気は特にないですね。

――小売店とアマゾンとで極端に卸値が異なるようなことがないというのが前提になるわけでしょうか。

野間 そこが難しいところですけど、既に一部の書店さんとの間で個別タイトルについてやっている直取引のことも踏まえたうえで、そこからビジネスとしてどの程度になるか、ですね。ボリュームや相手の良心にもよりますし、言い方が難しいのですが、アマゾンだけを特別に贔屓してやることはない、ということですかね、敢えて言うなら。……ここまで言っちゃっていいのかな(笑)。まあ、原則ということで。

――流通に関連してトーハンと日販の協業について何かお考えがありましたらお伺いしたいと思います。

野間 流通の問題については、まあ(横を見て)ここまで言っていいんだろうかと思いますが(笑)、完全に今や破綻しかかってますものね、流通が。これは何とかしないと無理でしょう。輸送業者さんのコンプライアンスの問題や、全国同一(日)発売が今後可能なのか、雑誌ルートに書籍を乗せて売るという諸外国では例を見ない流通の仕組みを今後も維持できるのかということや、先ほども出た返品の問題などもあります。書店も流通もへたっているし、出版社もへたっているということで変えていかなければいけないとは考えていますし、トーハンと日販が協業するのも当たり前のことだなというぐらいに思っています。

――デジタルと紙媒体との比率は現在どのくらいでしょうか。

金丸 割合というと少々難しいですが、今日発表した決算で言いますと、紙以外の収入の比率は37%程度と、既に40%近くにまでなっています。ついこの間「25%になりました」とこの場所で言った気がしますが、デジタルも伸びている一方、紙が落ちているということも原因だと思います。
聞かれたこととは違いますが、我々としては紙のものというのはやはり売れた時の利益率が非常に高いので、そこを維持しつつベースの売上としてデジタル(での売上を)確保していきたいという考えてやっています。

――コミックは紙と電子の売上比率がかなり拮抗しているのでしょうか。

吉富 だいたい拮抗に近づいています。作品によっては(紙の比率を電子が)逆転しているものもあります。

――雑誌の売上が意外に落ちていないようですが、この理由は?

吉富 売上の中にはパートワークのようなものも入っていますので。月刊誌や週刊誌などの雑誌はすでに(それ以上に)落ちています。

――海外事業は全体の現状では全体の何%ぐらいで、将来的にどのくらいまで持っていきたいとお考えでしょうか。

金丸 割合というのは非常に言いにくいですね。それは一つにはライセンスで出しているケースと、当社の子会社が出版社としてやっているケースなど様々な形態がありますので、何を以て売上の何%というかは難しいです。ただ現状では、アメリカではかなり大きくなっていますし、ライセンスの収入は事業収入における国際収入の中で数字としても大きくなってきていますが、全体で見ればまだ微々たるものと言っても仕方がないところです。

――海賊版についてはどのように対策をとられているでしょうか。

金丸 業界として違法サイトの閉鎖や違法なファイルの削除の要請はやっていますし、講談社単独でもやっています。私が担当する編集総務局の法務部と知財契約管理センターでチームを作ったうえで対策をしています。例えば『少年マガジン』が発売される前に翻訳されてアップロードされているようなことがありましたが、これは流通の過程で雑誌を抜くという行為から出てきたものであり、そういうものを発見するよう取り組むということも個別の施策としてはやっています。

――コミックが落ち込んでいるのは、やはり上半期において海賊版の影響がかなり響いたという認識でよろしいのでしょうか。

金丸 証明はできないんですが、現実を見ると例えばブックオフやレンタルなどを含めてライトユーザーのコミックの売上が落ちていたのが海賊版が止まってからかなり復活しております。ですので、それが原因だったのではないかと私は思いますし、業界ではそう囁かれているのかなと受け止めています。

野間 業界全体でも7月ぐらいからコミックの紙の数字が(対前年で)100%を超える数字が続いています。4月半ばに「漫画村」が閉鎖になり、我々の電子書籍の売上も5月くらいから前年並みを取り戻して7月くらいからは順調に……以前と同じくらいの伸びに戻ってきました。そうしたことを考えると、直接的に証明するものはありませんが、数字を見る限りやはり紙でも電子でも「漫画村」がなくなったことで回復したのではないかと思っています。

――それは売上面において、例えば「漫画村」閉鎖後にこれだけ伸びたとかいう具体的な数字となって表れたのでしょうか。

金丸 閉鎖後と言いますか、この問題についての議論をしていた時に「これでだいたい2割が落ちたのではないか」と言われていました。当社もだいたい2割だったと思います。当社でいえば例えば300億円のうちの2割といえば結構な金額になりますので、まあそのくらいの規模だと捉えています。

――海賊版サイトに関しては昨年ブロッキング問題が大きな話題になったのに続き、また今年に入ってからは「ダウンロード違法化」の対象範囲拡大をめぐる問題がここにきて大きな議論になってきています。これに対しては出版社のお立場ではどのような見解をお持ちでしょうか。

野間 昨年「漫画村」をはじめとして海賊版が猛威を振るったということで、内閣府知的財産戦略本部の会議にも私も出ていました。その中での課題に「違法コンテンツのダウンロード」というものもありましたが、そこで私が発言したのは「悪質な違法電子書籍についてのダウンロードの違法化」と、まあ制限して言っていたんですよね。「ありとあらゆる手を使って違法な海賊版サイトを根絶してほしい」とも言っていましたし、そうした意味でダウンロード違法化やサイトブロッキングについては違法コンテンツ撲滅のために必要な手だとは思います。ただ、その大前提として、我々の常識であるとは思いますが「表現の自由をきちんと守る」「著作者の創作意欲を委縮させるようなことがあってはならない」ということがあります。それらを侵すようなことに関しては我々は反対するという立場は、最初から変わっていません。

乾 少しだけ補足します。ダウンロード違法化についての講談社の見解ということで、私はもう3カ月以上前から繰り返し取材には応えているんですが、そこで「静止画ダウンロード違法化」という言葉は私はずっと使ってないです。「権利を侵害した出版物のダウンロード違法化」ということを著作権法の30条に求めています。ずいぶんいろんな形で各紙でご批判をいただいていると思うんですが、我々が求めているのは侵害の対象を全てに広げることではないし、ハードルを設けてもらって構わない。限定をどんどん増やしてもらっていいということも、昨年からずっと私は取材にはお答えしています。
ですので、現状では化庁化審議会「著作権分科会」の「法制・基本問題小委員会」を経て、与党・自民党部科学部会に行っているかと思いますが、この先に2、3段階と様々な限定が加わっていくことを望んでいます。「願っている」と言ってもいいです。出版界全体を確認したわけではありませんが、野間も申し上げましたように講談社としてこの問題について臨んでいる部分は明確にしてきたつもりなので、できるだけそれに沿ったゴールで5、6月に法改正されることを望んでいます。この件については改めて個別に取材は私がお受けしますので、またおっしゃってください。

――顧問である森さんの肩書が対外的に「相談役」だというのは何か理由があるんでしょうか?

野間 まあ、いろいろ相談をしようかなと(笑)。業界では、特に流通関係などこれから何があるかわからない状況ですし、そうした中で森が持つ知見や人脈というものを、まだまだこれからも活用してもらいたいということで、相談役という立場でやっていただく形になりました。

――今回は増収増益になっていますが、業績が良い時に、例えば事業分割して持株会社を上に置くような組織形態に移行するようなことはお考えですか?

野間 会社の組織形態をこれからどういう形にすればいいのかということは、もちろん考えていないわけではありません。まあ、業績が良い時、あるいは悪い時だからということよりも、むしろ「必要だからやる」というふうに考えるべきだと思っています。現段階でその必要があるとも思っていません。「(業績が)良い時だからお金を使え」といったことは役員会でも言いましたけどね、飲み食いではなくて(笑)。今後も積極的に様々な投資ですとか新規事業にお金は使っていくと思いますし、それを進めていく中で組織形態を変えていったほうがいいという話が出てきたらやっていきますけど、あまり組織に拘りはないです。組織を変えるのって面倒くさいじゃないですか(笑)。面倒くさい割に効果がなかったというのもよくあるパターンですし、今のところそれは考えていません。

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2)【本日の一行情報】(岩本太郎)

国立国会図書館は同館が提供している書誌データを4月1日より、利用目的に関わらず誰でも無料で利用できるようにすると発表した。
http://www.ndl.go.jp/jp/news/fy2018/190219_01.html
https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1902/20/news138.html

紀伊國屋書店は、出版社や取次、書店、倉庫など出版業界向けに業務システムを提供してきた光和コンピューターの株式の一部(3240株、同社株式の21.41%)を取得したと18日付で発表した。
https://kyodonewsprwire.jp/release/201902153212

◎「ゴミ清掃芸人」として話題のマシンガンズ滝沢秀一が、家族を養うためにゴミ清掃員として働く中で見た様々な日常風景を妻との共作(夫の秀一がネーム、妻の友紀が作画)で描いた漫画『ゴミ清掃員の日常』が今日2月22日から講談社『コミックDAYS』『現代ビジネス』、同28日から『Palcy』、3月8日から『マガジンポケット』で連載されることになった。以前からtwitterでアップしていたところ2600万PVを超えるほどの話題作になっていた。
https://www.oricon.co.jp/news/2130059/
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002062.000001719.html

白泉社は同社の3大漫画誌である『花とゆめ』『LaLa』『ヤングアニマル』の電子版について、2月20日より紙版との同時発売を始めた。ただしアプリの「白泉社e-net!」と「マンガPark」内での先行配信であり、他の電子書店では従来通り紙の発売から一定期間おいての配信としている。
https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1902/20/news069.html

産経新聞が《ご即位、ワールドカップ、五輪… この機会に国旗を公式ネットショップで》と謳いつつ、公式ネットショップで「高級日本国旗セット」を売り出したことがウェブ上で話題になっているようだ。
https://sankeishop.jp/ITEM/140198?utm_source=sankeibiz.jp&utm_medium=owned%20media&utm_campaign=self-made_20190219
https://www.sankeibiz.jp/econome/news/190219/ecg1902191200001-n1.htm
https://buzzap.jp/news/20190219-sankei-japan-flag/

◎京都の大垣書店がJR京都駅ビル「ザ・キューブ」内に新店舗を3月19日にオープンする。昨年6月まで三省堂書店が営業していたのと同じフロアで、店舗面積は約40坪。販売書籍の取り扱い点数は2万~2万5000冊という。
https://karasuma.keizai.biz/headline/3375/

大阪市内の地下鉄西梅田駅近くのビル2階にある小さな書店で「読書カウンセリング」を行っている女性がいるそうだ。店名は「本は人生のおやつです!!」。店主の坂上友紀は大卒後に書店などで勤務した後、2010年に同店をオープン。古本や新書などが並ぶ10坪ほどの店内で、来店した客と「普段、本は読みますか」「どんな本を読みますか」といったやり取りを行ったうえで「診断結果」に基づき、個々の客に合った本を薦めているという。
https://www.sankei.com/west/news/190219/wst1902190024-n1.html