【文徒】2019年(令和1)5月14日(第7巻81号・通巻1501号)


Index------------------------------------------------------
1)【記事】「誠光社」店主のオススメ絵本を起点にして
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】
----------------------------------------2019.5.14 Shuppanjin

1)【記事】「誠光社」店主のオススメ絵本を起点にして

京都・河原町丸太町に店を構える「誠光社」の店主・堀部篤史が「Pen-Online」の「絵本好きなら一度は行きたい、関西の書店。」に登場。さすがである。堀部のオススメの一冊はベン・シャーン+アーサー・ビナードの「ここが家だ ベン・シャーン第五福竜丸」(集英社)である。
https://www.pen-online.jp/news/culture/ehon2019_02/1
ベン・シャーン和田誠粟津潔安西水丸石田徹也に影響を与えた画家である。ベン・シャーンに少しでも興味があったならば永田浩三の「ベン・シャーンを追いかけて」(大月書店)をオススメしたい。
http://www.otsukishoten.co.jp/book/b183580.html
永田は元NHKのプロデューサー。産経ニュースが5月3日付で「元NHK・永田浩三氏『安倍君、憲法をいじるのはやめろ』」を公開している。
「大学を卒業し、安倍君はサラリーマンを経て、政治家になり、私はNHKのディレクターになりました。ある時、思いがけない接点ができました。2001年のことです。私は、日本軍の慰安婦として被害に遭った女性たちを扱ったNHKの番組の編集長でした。一方、その時、安倍君は内閣官房副長官。君は放送の直前にNHK幹部たちにちょっかいを出し、番組が劇的に変わってしまいました。永田町でどんなやりとりがあったのか。その後、朝日新聞の取材で輪郭が明らかになっています」 「私は抵抗しましたが、敗れました。体験したことを世の中に語ることができず、孤立し、長い間、沈黙を続けました。悔しく、また恥ずかしいことです。あのとき君はそれなりの権力者でした。放送前に番組を変えさせるなんて、憲法21条の言論の自由、検閲の禁止を犯すことになり、そのことが世の中にさらされれば、君は今のような総理大臣になっていなかったことでしょう」
https://www.sankei.com/politics/news/190503/plt1905030028-n1.html
アーサー・ビナードは詩人。詩集「釣り上げては」(思潮社)で中原中也賞、「日本語ぽこりぽこり」(小学館)で講談社エッセイ賞、詩集「左右の安全」(集英社)で山本健吉学賞を受賞している。「ここが家だ」で2006年の、「ドームがたり」(玉川大学出版部)で2017年の日本絵本賞を受賞している。
http://www.tamagawa-up.jp/book/b276639.html
https://www.tfm.co.jp/setouchi/article/article_20180804.php
「ドームがたり」の絵はスズキコージ。スズキの叔父さんは「平凡パンチ」の編集者だったこともあり、「平凡パンチ女性版」でデビューする。スズキは「講談社絵本通信」で次のように語っている。
「結局、東京に出て、赤坂の天ぷら屋さんに住み込みで働きました。働きながらも絵は描き続けていましたよ。19歳のころです。当時平凡出版(現マガジンハウス)におじがいて、堀内誠一さんに僕の絵を見てくれないか、と頼んでくれたんです。堀内さんは、雑誌『平凡パンチ』のアートディレクターで、他に絵本作家、編集者としてもひっぱりだこの人でした。
その堀内さんが「絵を見せてもらいにきました」ってほんとに天ぷら屋にやってきてきたんですよ! で、僕が描きためていた絵を天ぷら屋のカウンターで見てくれて、すぐに気に入ってくれて、絵をかついで帰っちゃったんです。翌日電話がかかってきて、『平凡パンチ』女性版の創刊号(『anan』の前身)に僕の絵を載せてくれるっていうんですよ! 感激でしたね」
http://ehon.kodansha.co.jp/archives/interview_sakka13.html
どんな「本」であっても決して孤立して存在していないのである。内容的に自らの足で立っている(私は「個立」と言っているけれど)本ほど、様々な繋がりを内包しているということだ。この繋がりに触れるのも読書の楽しみのひとつである。

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2)【本日の一行情報】

小学館の「ビッグコミック」に連載されている、かわぐちかいじの同名原作による実写映画「空母いぶき」が「第5護衛隊群かく戦えり―女子部―(映画『空母いぶき』より)」としてボイスドラマ化され、5月12日より順次、映画公式サイト内の特設ページで配信されることになった。ボイスドラマでは、映画に登場するキャラクターの声を女性声優が担当するという。
https://natalie.mu/comic/news/330778

◎「春オンライン」は、「週刊春」3月28日号掲載の記事を5月12日に公開している。「ベストセラー移籍で出版社困惑 こんまりに“片づけられちゃった”理由とは?」がそうだ。少しも古びていない。むしろ、「こんまり」に対する認知度が格段に上がっている現在であればこそ、ネットでも話題になろう。紙よりも早くスクープを公開することも方法であれば、ネットオリジナルのスクープを飛ばすことも方法であろうし、紙よりも遅く公開することで新たなオーディエンスを獲得するという方法もあるということだ。いずれにしても、“こんまり”こと近藤麻理恵に片付けられてしまったのがサンマーク出版であり、新たに指名されたのが河出書房新社である。
https://bunshun.jp/articles/-/11753?fbclid=IwAR0SrlKLz4GNpmJ5gA5yNEuYtN9ZGsX1IWsUODyOtTsid4MNaBEs9SsP_Lw

村上春樹は10日発売の「藝春秋」6月号に「猫を棄てる―父親について語るときに僕の語ること」と題する手記を発表した。共同通信によれば村上は父親と長年不仲だったこともあり、これまで全く語って来なかった。村上は父親が戦時中、出征先の中国で捕虜殺害に関わった可能性についても言及し、自身のルーツに絡む負の歴史を直視している。
https://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2019050901002022.html

◎「東京バーゲンマニア」が「これが雑誌付録...!? 『SNIDEL』12色、マスカラ付き2段メイクパレット豪華すぎでは?」を公開している。宝島社のファッション誌「sweet」6月号の付録について、「12カラー+ミニマスカラが付いた、2段メイクパレットが980円」と語っている。読者にとって本体の雑誌の部分は、もはやどうでも良い存在なのである。
https://bg-mania.jp/2019/05/09290166.html

北海道新聞が5月10日付で「岩原書店、90年の歴史に幕 せたなで唯一 少子化、ネット注で販売低迷」を掲載している。
「70~80年代は学校の教科書の販売契約が二十数校あり、店頭は参考書や房具などを求める高校生らでにぎわった。当時は従業員を4人雇用するほど繁盛し、岩原さんは『北海道新聞社の図鑑などがよく売れました』と振り返る」
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/303506/

毎日新聞が5月9日付で「テロ対策かプライバシーか ソーシャルメディア規制に慎重論 国際会議開催へ」を発表している。
「…表現の自由や利用者のプライバシー保護を『売り』にしたソーシャルメディアが、過激派組織やテロリストに悪用されているのも事実だ。その代表格が、高度に暗号化された無料通信アプリ『テレグラム』だ」
「テレグラムは13年にロシア人のパーベル・ドゥロフ氏(34)が兄と設立。暗号化されたメッセージを最大20万人のグループに一斉送信できるほか、送受信歴などの痕跡を一切残さずにいつでもメッセージを消去することが可能だ」
https://mainichi.jp/articles/20190509/k00/00m/030/225000c
これは「BD」に公開されている「Telegram(テレグラム)のインストール方法や使い方、おすすめのチャンネルは?仮想通貨やICOの情報収集に必須!」だが、こうした記事があるということは日本でも「テレグラム」を利用するユーザーがいるのだろう。
https://bitdays.jp/blockchain/crypto_tools/telegram/

◎「ITmedia NEWS」が「Instagram、反ワクチンハッシュタグのブロック開始」を発表している。
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1905/10/news056.html
piece of cakeの深津貴之は「noteにおける反ワクチン記事の方針について」を公開している。
https://note.mu/fladdict/n/ne9c89e31d040

◎無料で読める電子雑誌を発行するブランジスタは、創刊12年目を迎えている旅行電子雑誌「旅色」初の「紙版」を5月17日(金)に刊行する。
https://tabiiro.jp/magazine/
https://www.atpress.ne.jp/news/183590

◎日経が5月9日付で「五輪チケット、130万件アクセス 『抽選』周知甘く」を掲載。
2020年東京五輪チケットの申し込み受け付けが始まった9日、アクセスの殺到で公式販売サイトがパンクし、申し込みができない状態が続いた。大会組織委員会は大量のアクセスに備えた仕組みを設けていたが、午前10時の開設から午後5時までで延べ130万件のアクセスがあり、想定を超えたとみられる」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44599350Z00C19A5CC1000/

ドワンゴKADOKAWA、カラー、インクストゥエンター、アソビシステムホールディングスの5社が設立したVTuber業会社「リド」の解散が公表された。
https://ascii.jp/elem/000/001/856/1856508/

Facebook共同創業者Chris Hughesが同社分割をニューヨークタイムズの論説記事で提案したそうだ。「CNET Japan」が「『Facebookを分割するべき』--共同創業者ヒューズ氏」を公開している。
「Hughes氏は、FacebookによるInstagramとWhatsAppの買収を許可したことは米連邦取引委員会FTC)の過ちだとし、それを容易に正せる時間は今、刻一刻と過ぎていると述べた。
同氏は、『最近まで、WhatsAppとInstagramは親会社傘下の独立したプラットフォームとして管理されていたため、そのプロセスはまだ容易なはずだ』とし、『しかし時間が重要だ。Facebookは、3つの統合を急ピッチで進めている。そうなれば、FTCがそれらを分割するのはより困難になるだろう』と語った」
https://japan.cnet.com/article/35136738/

◎やまもといちろうがオフィシャルブログに「平和博さんが『AIリスク』ネタを記事にしたらFacebookから表示拒否されたでござるの巻(お詫び、追記あり)」をエントリしている。
元朝日新聞記者の平和博さんが上梓した『悪のAI論』に関するイベントで行われたパネルディスカッションの内容が、Facebookで見事フェイクニュース判定されてコミュニティ内での配信拒否になったということで、平さんが騒いでいたので見物に行ってきました」
https://lineblog.me/yamamotoichiro/
平和博はブログ「新聞紙学的」に「『AIリスク』の指摘は『規定違反』?フェイスブックが投稿を非表示した理由は」を発表した。
「『AIリスク』を身をもって実感する、貴重な体験をした。
フェイスブックに2カ月程前にした書き込みが『この投稿はコミュニティ規定に違反するため、あなた以外には表示されません』とのメッセージとともに、知らぬ間に非表示にされていたのだ」
「『コミュニティ規定違反』とあるが、具体的な違反箇所の指摘はない。
フェイクニュース拡散に対する国際的な批判から、コンテンツ規制に力を注ぐフェイスブック。その取り組みにはAIが使われているという。
非表示とされた座談会は、まさにAIに潜む差別や偏見、一方的に行われる判定の不正確さなどの問題にどう取り組むべきか、というテーマについて議論を行ったものだ。
そんな懸念が杞憂ではないことを、フェイスブック自らが示してくれた」
https://kaztaira.wordpress.com/2019/05/08/%e3%80%8c%ef%bd%81%ef%bd%89%e3%83%aa%e3%82%b9%e3%82%af%e3%80%8d%e3%81%ae%e6%8c%87%e6%91%98%e3%81%af%e3%80%8c%e8%a6%8f%e5%ae%9a%e9%81%95%e5%8f%8d%e3%80%8d%ef%bc%9f%e3%83%95%e3%82%a7%e3%82%a4%e3%82%b9/

◎「週刊少年ジャンプ」(集英社)で1990年から1994年まで連載された冨樫義博の「幽☆遊☆白書が崎山つばさ主演で舞台化される。読売広告社が噛んでいる企画だ
https://spice.eplus.jp/articles/237075

◎「アンアン」や「装苑」で活躍したモデルの雅子の生涯に迫ったドキュメンタリー映画「モデル 雅子 を追う旅」が、7月26日~8月1日に東京・アップリンク吉祥寺で公開される。監督&プロデューサーを務めたのは雅子の夫である岡大介
https://eiga.com/news/20190510/4/
https://www.youtube.com/watch?v=E923xURzzy8

◎「ITmedia NEWS」の「ヤフー、アフィリエイトサイトによる広告出稿を原則NGに」によれば、ヤフーは、「Yahoo!JAPAN」トップページなどに掲載される広告「Yahoo!ディスプレイアドネットワーク」(YDN)について、アフィリエイトサイトなど成果報酬型サイトに誘導する広告の出稿を、6月3日から原則、不可能にすることが決まった。
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1905/10/news099.html
ヤフーは、日本のインターネット広告業界が抱える悪意のある不正広告などの事象に真摯に向き合い、課題を解決し、永続的に業界の健全化に寄与していくとともに、透明性のある安全な広告配信プラットフォームを運用し、広告主とユーザーにとって満足度の高い広告体験の提供を目指す、そうだ。
https://about.yahoo.co.jp/pr/release/2019/05/09m/

◎「AFPBB News」が5月10日付で「アマゾン創業者ベゾス氏、月面着陸船『ブルームーン』を公開」を発表している。「ベゾス氏は米首都ワシントンで行われたイベントでブルームーンを紹介し『月に戻る時がきた。今回は滞在するためだ』と述べた」そうだ。
https://www.afpbb.com/articles/-/3224348

◎「Mogura VR」が「アマゾンの“ARで試し置き”機能、ついに日本でも対応」を公開。
https://www.moguravr.com/amazon-ar-view-japan/

凸版印刷のグループ会社であるBookLiveは、総合電子書籍ストア「BookLive!」で連載し、各電子書店、各マンガアプリにて配信するオリジナル制作コミック「怨霊奥様」(若狭たけし)の紙版単行本第2巻を、子会社のフレックスコミックスから年5月11日(土)に発売する。「LINEマンガ」無料連載で累計PV数300万突破しているんだって!
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000047.000022823.html

◎13人組 K-POPグループのSEVENTEEN と角川庫がタッグを組んだ「SEVENTEEN庫」は5月29日(水)より数量限定で発売される。シングルのタイトル『Happy Ending』にちなんでセレクトした“Happy Ending”な海外学作品全14タイトルが、メンバーソロver.13種+全員ver.1種の「超幅広オビ」で登場するそうだ。
https://www.hmv.co.jp/news/article/1904251011/
同日発売の「アンアン」(マガジンハウス)では表紙を飾り、更に32ページのグラビアが組まれている。
https://ananweb.jp/news/230231/

朝日新聞は「改元記念パック(保存版)」の予約販売を開始した。「改元記念パック」の内容は、(1)特別新聞「平成人語」(24ページ、カラー)と、(2)2019年4月1日付の新元号表号外、5月1日付の新天皇位号外、(3)2019年4月30日付朝刊から5月2日付朝刊までの全朝夕刊(東京本社版、別刷り含む)。申し込みは5月31日(金)まで専用ホームページか、最寄りのASA(朝日新聞販売所)で受け付ける。価格は3,000円(税込み・送料込み)。
https://www.asahi.com/corporate/info/12352579
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000671.000009214.html

◎チャット小説アプリ「peep」を展開するtaskeyは5月10日、複数の投資家を引受先とする第三者割当増資にて2.7億円を調達した。同社に出資したのはグローバルブレイン、Global Catalyst Partners Japan、三井住友海上キャピタル、VOYAGE VENTURES、三生キャピタル。
https://jp.techcrunch.com/2019/05/10/taskey-fundraising/
VOYAGE VENTURESはCARTA HOLDINGSのグループ会社であり、CARTA HOLDINGSは電通のグループ会社である。

◎「rockinon.com」が「ウッドストック50周年が電通をフェスの開催妨害と資金横領で告訴。勝手にキャンセルを発表し、出演者にオリンピック出演を示唆しフェスを妨害していると語る」を掲載している。
https://rockinon.com/blog/nakamura/186122

小学館のマンガ誌「ゲッサン」が5月11日発売の6月号で創刊10周年を迎えた。
https://natalie.mu/comic/news/331001

◎「孔雀王」のマンガ家・荻野真が亡くなった。「週刊ヤングジャンプ」「月刊!スピリッツ」(小学館)の公式サイトとリイド社訃報を発表した。
https://youngjump.jp/info/news_2019050901/
https://bigcomicbros.net/news/oginomakotoshi_fuho/
https://www.leed.co.jp/pr2019051001
「『痴人の愛』を歩く」(白水社)の樫原辰郎がツイート。
「凄いな。代表作『孔雀王』のスピンオフを2作連載していて、それぞれの最終回を描ききって亡くなったとは」
https://twitter.com/tatsurokashi/status/1126775194750636032
角川春樹事務所の編集・中津宗一郎が呟いている。
菊地秀行夢枕獏平井和正という《伝奇エンターテインメント》の偉大な先達に続いたのが、荻野真さんの『孔雀王だったと思います。整合性を勢いで押し切る、東西問わぬオカルト大戦の描写は、日本のエンタメに大きな足跡を残されたと思います。ご冥福をお祈りします」
https://twitter.com/nakatsu_s/status/1126782061694427138

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3)【深夜の誌人語録】

他者へのいたわりを欠いた想像力が描き出すのは決まって被害妄想である。