【文徒】2019年(令和1)5月24日(第7巻89号・通巻1509号)


Index------------------------------------------------------
1)【記事】「週刊誌が週刊誌でなくなる時代」いよいよ到来か?
2)【本日の一行情報】
3)【決算・人事】小学館 5月23日付決算と役員人事
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1)【記事】「週刊誌が週刊誌でなくなる時代」いよいよ到来か?(岩本太郎)

既に5月15日号の『』でも紹介しているが、元木昌彦が「連休前に衝撃的な話を聞いた」として『JCASTニュース』の「深読み週刊誌」の9日付や『日刊サイゾー』の「週刊誌スクープ大賞」の13日付で、『週刊現代』の「月3回刊化」説について書いていた。10連休中は「大講談社がそんなバカなことをやるまい」と思っていたという元木だったが、開けて7日に発売の同誌を見てびっくり。ライバルの『週刊ポスト』は5月17・24日合併号で、次の発売は20日。『週刊現代は合併号ではないが次の発売は『週刊ポスト』と同じと知るに至って元木はOBとしての無念を滲ませながら次のように書いた。
《読者に何の説明もないまま、なし崩し的なやり方は、おそらく大方の納得を得られないだろう。そうなれば、元に戻して知らん顔をする。姑息ではないのか。
私には愛社精神はこれっぽっちもないが、週刊現代に対する愛情は人に負けないと自負している。講談社は昨年度、久々に大きな利益を出したのに、これでは講談社の看板が泣く。それ以上に、週刊現代編集部の浅慮を悲しむ》
https://www.j-cast.com/tv/2019/05/09357074.html
https://www.cyzo.com/2019/05/post_202860_entry.html
この「総合週刊誌 月3回刊化」説は連休明けから私(岩本)のもとにも届くようになっていた。承知の通り、既に『SPA!』も毎月1回のペースで合併号を発売するパターンへと移行しており、遠からず他誌でも同様の体制へと移行するところが出てくるのではないかという観測が、このご時世にあって出てきたところで特に不思議ではないだろう。
そうしたところ19日にはこんなウェブ記事も出てきた。『覚醒ナックルズ』なる媒体の「【衝撃】バカ売れ雑誌『週刊現代』 週刊誌じゃなくなった?」という、いかにも扇情的な表題のエントリだったが、ここでは「編集プロダクション関係者」の談として上記の件の「裏情報」が書かれていた。
https://k-knuckles.jp/6/5222/2/
その多くは既に業界の噂話として語られていた類いのものだが、さすがに記事中にあった《講談社の系列である光社の『フラッシュ』は、5月は1冊しか発売しないようだ》とのくだりは、既に同誌が14日、21日と通常通りの火曜日発売を続けているこからして明らかな誤報私から光社関係者にも当ててそこは確認した。ただ、その関係者も「月3回刊化」の動きには関心を当然持っており、以下のように語ってくれた。
「『FLASH』の場合はdマガジンでの好調などもあって黒字になったことから今のところそういう話は出ていませんが、『SPA!』のように週刊自体の刊行ペースを落としたうえで人的リソースをウェブの『日刊SPA!』や、単行本の制作に振り向けるというやり方には、当然他誌でも注目しているはずです」
週刊誌が週刊誌でなくなる時代が近づいている。そこはもう、今や誰しも「笑い話だ」と否定できない状況になっているのではないか

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2)【本日の一行情報】(岩本太郎)

◎『BuzzFeed Japan』編集長の古田大輔(元朝日新聞記者)が5月31日限りで編集長から退任することを表明。23日付の寄稿では、2015年に同誌の「第1号社員」になって以来(サイト開設は2016年から)の足跡を振り返っている。
現在「BuzzFeed Japan」社は「ビジネス部門含めて70人規模」にまで人員が増えているらしい。自身の今後については引き続き《BuzzFeed Japanを「シニアフェロー」としてサポートしつつ、個人として他メディアやその他の組織のデジタル化や、欧米で進む業界横断的なコラボレーションなどに役立ちたいと思っています》とのこと。
https://www.buzzfeed.com/jp/daisukefuruta/from-bfj-to-media-collab
これから参院選を控えていることもあって「選挙に出るのでは?」との問い合わせも来ているそうだ。古田本人がTwitterで否定していた。
《問い合わせがあったので明言しておきますが、選挙には2万%出ませんw》
《政治家の仕事も尊いとは思いますが、僕はメディアで情報を発信して、世の中の課題や喜怒哀楽を多くの人と共有して、一緒に考えたり感じたりするのが好きなので》
https://twitter.com/masurakusuo/status/1131434201843097600
https://twitter.com/masurakusuo/status/1131439067806093312

◎その古田も設立に参画したインターネットメディア協会(Japan Internet Media Association=JIMA)が6月8日、都内千代田区尾井町のヤフー本社で設立記念シンポジウムを開催する。代表理事の瀬尾傑(スマートニュース メディア研究所所長・元講談社『現代ビジネス』編集長)のほか、パネリストとして古田、『東洋経済オンライン』編集長の武政秀明、『MarkeZine』編集長の安成蓉子らが登壇。元TBS報道番組キャスターの下村健一(令和メディア研究所主宰)による「メディアリテラシー講座」も予定されている。参加費無料で定員300名。
https://jima.media/20190608event/

◎『朝日新聞デジタル&M』が「今求められているのは自分にとってよいコスメ。晋遊舎の広告を一切入れない雑誌づくり」と題して、独自の商品テストによる批評記事で部数を拡大してきた『MONOQLO』『家電批評』など晋遊舎が発行する雑誌群についてレポート。「テスト誌創刊10周年記念事業」として昨年から社内に専用の研究施設も開設して始めた「LAB.360プロジェクト」の担当者らにもインタビューしている。同社代表の西尾崇彦によれば、現在の売上は「紙書籍の売上げ・電子書籍の売上げ・ベストバイマーク(認証マーク)で「3本柱」となっているそうだ
《雑誌の売上げに関しては、正直紙だけでは相当厳しいですね。弊社の場合は電子書籍が強く、月刊誌でいえば、『モノクロ』『家電批評』『LDKビューティー』は日本の中で10本の指に入るくらいの収益をあげている媒体です。ですから電子書籍からの収益はとても大きいですね。ただ、やはり紙の媒体を出版していることでユーザーから得られる信頼は非常に厚いので、どちらもバランス良く大切にしていきたいです》
https://www.asahi.com/and_M/20190521/2482996/
ソニー出身の辻庸介が代表のマネーフォワードによるウェブメディア『MONEY PLUS』も17日付で「テスト誌のパイオニアLDK』が目指す雑誌ビジネスの未来」と題し、上記ラボへの取材をもとにレポートを掲載していた。
https://media.moneyforward.com/articles/2994
成人向け漫画や『嫌韓流』の版元として知られる晋遊舎だが、往年の『暮しの手帖』のようなことをやりながら注目を集める存在でもあるのだ。

◎神戸のスポーツ新聞『デイリースポーツ』(神戸新聞社発行)が、動画サイト『DMN』の流れを汲むニュースサイト『デイリーニュースオンライン』について「当サイトと関係ありません」との告知を出していた。
https://www.daily.co.jp/information/2018/12/05/0010573872.shtml

高知市の出版社「ほっとこうち」が2011年に立ち上げ、最盛期の2016年にはエリア数が全国で100以上(42都道府県)にまで広がっていた「ランパス」こと『ランチパスポート』が、現在では20エリアにまで縮小してしまった。神戸市のウェブメディア『まいどなニュース』がこのほど休刊した「ランチパスポート神戸版」の編集部に取材したところ「取り扱って頂いていた書店も相次ぎ閉店し、売り上げが伸びにくくなってきていたんです」とのこと。
上質紙のフルカラー印刷による高コスト体質に加え、取り上げる店舗の側が小麦粉など原材料費の高騰、さらには今年10月にも予定される消費増税などによる経営環境の厳しさに直面したことも大きかったらしい。
https://maidonanews.jp/article/12388508
ちなみに『まいどなニュース』は今年4月、上記『デイリースポーツ』の発行元である神戸新聞のグループ各社(京阪神エルマガジン社など)のほか京都新聞社も編集に参画する形で立ち上げた関西発の情報メディアだ。地域情報メディアの移り変わりにも本当に激しいものがある。
https://www.daily.co.jp/society/life/2019/04/09/0012225849.shtml

◎「ツタヤ図書館」として知られる佐賀県武雄市図書館の来館者は昨2018年度に初めて年間100万人を突破したそうだ。一昨年10月に隣にオープンした市こども図書館の利用が好調で、総数を押し上げたらしい。
https://www.asahi.com/articles/ASM5K3W9ZM5KTTHB00B.html

東京新聞・望月衣塑子の著書(角川新書)を原案に、シム・ウンギョンと松坂桃李がダブル主演を務める映画『新聞記者』(6月28日公開)には望月が本人役で出演。前川喜平やマーティン・ファクラー(ジャーナリストで元ニューヨーク・タイムズ東京支局長)との3人で、メディアや内閣情報調査室について台本なしのぶっつけ本番で語り合う鼎談場面に登場するそうだ
https://natalie.mu/eiga/news/332422
http://music-book.jp/music/news/news/259036
https://news.dwango.jp/moviestage/37741-1905
蛇足ながら本日発行の『出版人・広告人』連載の「PANTA日記」でも、望月が頭脳警察PANTAとステージ上で共演している場面の写真が掲載されている。なお、私の知人の東京新聞記者は望月の今後について異動(栄転か)の形で官邸記者会見から外される懸念を表明していた。

◎フリージャーナリストで、開高健ノンフィクション賞受賞作『黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い』(集英社)著者でもある畠山理仁が、防衛省記者会見への「フリー記者」の参加について2月に防衛省に開示請求。3月6日付で返ってきた書をTwitter上で「ご笑覧ください」と公開していた。「経緯」「現状」「検討」「今後の対応(案)」という各項目ごとの記載内容が完璧に黒く塗り潰された「のり弁」状態だ。
https://twitter.com/hatakezo/status/1130866262064500736

◎東京・代々木にある中国書の専門書店「東豊書店」が、入居している代々木会館の老朽化に伴い6月末で閉店することが決定。
https://www.buzzfeed.com/jp/keiyoshikawa/toho-syoten
https://www.buzzfeed.com/jp/keiyoshikawa/toho-syoten-photo
その外見からかつての香港の「九龍城砦」みたいだとも言われているらしい代々木会館だが、古い世代には故・荻原健一や水谷豊が出演した1970年代のテレビドラマ『傷だらけの天使の舞台になった「エンジェルビル」のロケ地だと言ったほうが分かりやすいかもしれない。

NHK働き方改革に関連して、長らく月~土に放送してきた連続テレビ小説(朝ドラ)の土曜日放送を止め、放送枠を週5日に短縮することを検討しているらしいとスポーツニッポンが報じている
https://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2019/05/23/kiji/20190522s00041000394000c.html

◎今年5月に『OCEANS』(ライトハウスメディア発行)の発行人兼編集長から「社長室付」に異動になっていた太田祐二(ブリヂストンから主婦と生活社に移って『LEON』創刊に参画)が6月15日付で「一身上の都合」を理由に退職することになった。
https://www.wwdjapan.com/860968

◎昨日も紹介したCCCグループの月額定額制雑誌読み放題サービス「T-MAGAZINE」にはメディアドゥが電子コンテンツ配信システムの提供を行っている。メディアドゥホールディングスが22日に発表した。
https://minkabu.jp/news/2395768

鹿児島市の出版社「南方新社」が今年4月で設立25周年。代表向原祥隆朝日新聞のインタビューに応じた。鹿児島の歴史や化、自然に関する書籍を数多く手がける一方、反原発運動に関わるほか知事選に立候補するなどの活動でも知られる。
https://www.asahi.com/articles/ASM5J0J8SM5HTLTB00S.html

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4)【決算・人事】小学館 5月23日付決算と役員人事

《第81期(2018年3月~2019年2月)決算報告》

総売上 970億5200万円 (対前期比102.6%)

<内訳>

出版売上 544億8500万円(同95.9%)

(雑誌) 229億6400万円(同91.7%)

(コミックス) 183億4000万円 (同95.3%)

(書籍) 107億0400万円(同101.1%)

パッケージソフト)24億7600万円(同126.3%)

広告収入 105億7200万円(同110.6%)

デジタル収入 205億3100万円(同116.0%)

版権収入等 114億6400万円(同109.6%)

経常利益 43億9800万円

当期利益 35億1800万円

《役員人事》

代表取締役社長 相賀 昌宏

取締役副社長 山岸 博(全社統括)

専務取締役 片寄 聰(管理統括 関係会社統括)

専務取締役(昇任)相賀 信宏(編集統括 制作局、デジタル事業局、マーケティング局、化事業局、国際メディア事業局)

常務取締役 秋山 修一郎(ポスト・セブン局、出版局)

常務取締役 佐藤 隆哉(小学館パブリッシング・サービス社長)

常務取締役 小室 登志和(社長室、総務局、編集総務局、経理局)

常務取締役(昇任)海老原 高明(広告局、ライフスタイル局、女性メディア局)

常務取締役(昇任)丸澤 滋(第一・第二・第三児童学習局、第一・第二・第三・第四コミック局)

取締役 大西 豊(MERY社長)

取締役 藤田 基予(広告局)

取締役 久保 雅一(ライフスタイル局、国際メディア事業局)

取締役 奥山 豊彦(出版局)

取締役 花塚 久美子(女性メディア局)

取締役 佐上 靖之(第一・第二コミック局)

取締役 塩谷 雅彦(制作局)

取締役 井手 靖(マーケティング局)

取締役 田中 敏隆(経理局)

取締役(新任)大村 信(第三コミック局)

取締役(新任)立川 義剛(第四コミック局)

取締役(新任)福田 博章(社長室、編集総務局)

取締役(新任)森 万紀子(ポスト・セブン局)

取締役(新任)林 正人(デジタル事業局)

取締役(新任)清水 芳郎(化事業局)

監査役 原本 茂

監査役(新任)横田 清

監査役 堀内 丸恵

最高顧問 白井 勝也

※桶田哲男専務取締役、宮下雅之常務取締役、大木武監査役は退任。
※横田清常務取締役は退任し、監査役に就任。