【真相追及】第二弾 「黒幕」渡瀬昌彦常務 「実行犯」乾智之広報室長!講談社広報室劣化の軌跡「君側の奸」の実態に迫る

29ページ中6ページが「兵器」!講談社ビーシーの乗り物図鑑


厳密にいえば講談社ビーシーの仕事ということになるのだろうが、『BCキッズ くわしい解説つき! はじめての はたらくくるま 英語つき』の内容が一部で問題視され、講談社の出版物に対する不買運動まで引き起こしていることをご存じだろうか。この図鑑が人気なのは2016年9月16日に『BCキッズ くわしい解説つき! はじめての のりものずかん 英語つき』が刊行され、昨年2018年11月17日に、『BCキッズ くわしい解説つき! はじめての はたらくくるま 英語つき』が刊行されていることからも想像がつく。ただ、私には16年版と18年版が内容的にどのような違いを持つかはわからないが、講談社のホームページにおける説明は大きく変化している。16年版は、こう説明されていた。
「消防車、救急車、パトカー、バス、トラック、建機、スポーツカー、電車(特急、新幹線)と、乗り物好きのお子さんが大満足する美しい写真満載でお届けします」
これが18年版になると、こう変化している。
「消防車、救急車、パトカー、バス、トラック、建機、さらには潜水艦や戦車と、乗り物好きのお子さんが大満足する美しい写真満載でお届けします」。16年版には「潜水艦や戦車」という言葉はなかったが、18年版になると「潜水艦や戦車」という言葉が加わることになる。
新日本婦人の会は自らの機関紙に4月18日付で「絵本『はじめてのはたらくくるま』に戦車や戦闘機がズラリ」を掲載した。ただし、この記事にもあるように、販売するときは帯で表紙の自衛隊の写真を隠しているそうだ。それはそれで恣意的ではある。いずれにせよ、絵本「はじめてのはたらくくるま」に戦車や戦闘機がズラリ掲載されることに違和感を抱いた人々がソーシャルメディア不買運動を立ち上げるのだ。講談社から『しえりの秘密のシール帳』『レガッタ!2 風をおこす』『木工少女』などを刊行している児童文学作家の濱野京子にツイッターでこう言わしめている。
自衛隊関係に多くのページを割き、銃を構えている写真を掲載して問題になっている幼児向けの図鑑もどき『はじめての はたらくくるま』(講談社)、現物を見せていただきました。想像以上にひどい代物とでした》
こうした寄稿家の声を渡瀬昌彦常務なり、乾智之広報室長は当然のごとく知っていなければならないはずなのだが……これまでのパターンからして知らないのではなかろうか。ツイッターには次のような厳しい声が並んでいる。
講談社はつい先日、幼児向けの知育絵本『はじめてのはたらくくるま』で自衛隊の「戦車」「装甲戦闘車」「ミサイル発射機搭載車」や果てはF35戦闘機まで掲載して、「戦争好きの子どもを育てる講談社」と大きな批判を浴びたばかり。今回の「ViVi」が自社企画かどうかは分からないが、タガが外れている》
《『新婦人しんぶん』で取り上げられた講談社絵本『はじめてのはたらくくるま』。帯に「街で見かける大好きな働く車たち」とあるこの本にはあのF35Aも。昭和17年の絵本は「イサマシイ戦車」(くまもと戦争遺跡・文化遺産ネットワークのHPから)》
《絵本「はじめてのはたらくくるま」 29ページ中、6ページが自衛隊の特集。安倍首相の「自衛官募集に自治体は非協力」発言を機に自衛隊宣伝が増えている。戦車、護衛艦、ミサイル、小さいうちから戦争オモチャに親しませようとしている。親は嫌ですよね》
講談社の、3歳から6歳の幼児の本に戦車や戦闘機がズラリ、編集者は「自衛隊が有事の時に何をするのか考えなかった」は、言い訳に過ぎず。殺人兵器を幼児の本に掲載するなどあってはならない事で、売れれば何でもありの倫理感の無さと非常識に唖然とする。日本の中・壮年男性に危いものを感じる》
《「はじめてのはたらくくるま」に戦車、戦闘機を加える編集、軽蔑する。そんな植え付けや微妙な啓蒙活動するくらいなら堂々と「はじめてのさつじんへいき」という本出せば?とかツイートすると「事故起こした車だって立派な殺人兵器じゃないか」レスつけるとか面倒臭いからやめてねつぶやきだからね》

 

お詫びや訂正は後回しにして「美談」を優先?


私は5月27日付文徒に「【記事】講談社『move危険生物』の誤りを小学生が発見!こっちは誤りを認めたよ!!」を掲載し、次のように書いた。
琉球新報が5月25日付で「6歳の魚博士、図鑑の誤り発見 出版社修正へ」を掲載している。
6歳の魚博士、図鑑の誤り発見―。沖縄県今帰仁村立天底小1年の安部京志郎さん(6)が、講談社の人気図鑑『move危険生物』に掲載されている『タマカイ』の写真が別の魚であることを発見した。同属の『カスリハタ』である可能性が高い。講談社は京志郎さんの指摘を受け、次の版から写真を差し替える予定だ》
ここでは講談社は素直である。誤りをちゃんと認めている。やればできるじゃないか! むろん、次の版から写真を差し替えるということは、間違えた写真を掲載した現在の「move危険生物」はそのまま市場に出回らせたままにしておくということなのだろうか。この記事からだと講談社が間違えた写真を掲載した版の回収を決めたかどうかは分からない》
自らのミスを美談仕立ての記事として決着を図ろうとしたのかもしれないが、これは広報的な見地からすれば間違いである。何しろ講談社は「危険生物」を間違えて掲載してしまったのである。これを踏まえれば即座に回収を決断できなくとも、せめてホームページを使って訂正なり、お詫びを発信すべきである。これが広報からすれば常道である。しかし、琉球新報に「美談」を書いてもらう余裕はあっても、訂正やお詫びを発表することには鈍感である。どこぞから、あわてて文徒の記事を入手して、そのことに気がついたのだろうか。私には、そうとしか考えられない。講談社が自社のホームページに「『講談社の動く図鑑MOVE 危険生物』についてのお詫びとお知らせ」を発表したのは5月30日のことである。


江戸川乱歩賞で作品名を間違えて発表 訂正は4日後、「お詫び」はなし


講談社は6月6日、江戸川乱歩賞を神護かずみの「NOIRを纏った彼女」と発表した。そのようにリリースを配布し、講談社のホームページにも堂々と発表している。「講談社広報室」名義の文章だ。そこにもハッキリと「NOIRを纏った彼女」と書かれていた。ホームページが訂正されたのは6月10日午前中のことだった。それまで4日間も間違ったまま放置していたのである。文芸を担当するのは渡瀬昌彦常務であり、広報を担当するのも渡瀬昌彦常務である。『万葉集』研究の大家である渡瀬昌忠の長男である渡瀬常務にとっては江戸川乱歩賞などは、その程度の位置づけなのかもしれない。取り敢えず、順を追って説明しよう。
産経新聞講談社広報室からのリリースを踏まえて6月6日付で「江戸川乱歩賞に神護さん」を公開している。記事には、こうあった。
《第65回江戸川乱歩賞日本推理作家協会主催)は6日、神護かずみさん(58)の『NOIRを纏った彼女』に決まった》
デイリースポーツも産経同様にこう書いた。
《第65回江戸川乱歩賞日本推理作家協会主催)は6日、神護かずみさん(58)の『NOIRを纏った彼女』に決まった》
そう、講談社広報室が発信した、間違ったタイトルが大々的に新聞紙面を飾ってしまったのだった。広報室のリリースは作品名を間違っていたのだ。正しいタイトルは「NOIRを纏う彼女」なのである。毎日新聞が6月8日付朝刊で「講談社 乱歩賞受賞作名を訂正」を掲載している。毎日新聞は次のような「おことわり」を掲載した。
講談社が7日、受賞作タイトルを『NOIRを纏(まと)った彼女』から『NOIRを纏う彼女』に訂正したため、見出しと記事を修正しました」
しかし、当の講談社はといえば…。先に触れたように講談社のホームページは6月10日07時40分まで、間違えたままの文章が掲げられていた。もちろん、私たちが未訂正の古いキャッシュを見ていた可能性もあるが、「訂正」したことを報告すらしない「訂正」がなされたという事実のほうが重かろう。そもそも乾智之「閣下」が率いる講談社広報室は、事態を把握した7日以降も、訂正をしていなければ、「お詫び」も掲載していない。当事者ではない毎日新聞が早々と訂正しているのに対して、当事者そのものの講談社広報室は何もしていないのである。例によって例のごとく、講談社広報室の質は、この程度のものなのだ。相変わらず想像力を欠如させ、杜撰で、だらしないのである。
渡瀬昌彦常務にしても、乾智之広報室長にしても、作者・神護かずみに対するリスペクトなど微塵も持ち合わせていないのだろう。神護かずみには「裏平安霊異記」や遠野物語百周年文学賞を受賞した「人魚呪」という実績がある。なのに乱歩賞に応募したという経緯を念頭に置いていれば、講談社広報室はリリースを作成するに当たって、二重三重の確認をすべきだったのである。それでも何らかの理由でタイトルを誤って広報リリースに記載してしまったのであれば、そのことを講談社のホームページを通じて早急に訂正し、その経緯を発表する、それがデジタル時代の広報の基本中の基本である。それを何日も放置しておく神経は、一般企業からすれば広報失格である。
それとも、これが渡瀬常務流儀なのか?これが乾広報室長流儀なのか!講談社のホームページで間違えた情報を訂正することなく「拡散」しっ放しにしておいて何ら疑問にも思わない「痴」性の持ち主だとは!作者に対する「お詫び」を発表するということすらしようとしない傲岸不遜な態度はゴロツキストと呼ぶに相応しかろう。あぁ、この為体。キルケゴールに倣って言えば君は魂の可能性を失ってしまったのだ。
講談社の110年に及ぶ歴史が泣いていよう。このコンビはこうまでして講談社の110周年に泥を塗りたいのか。君側の奸が誰なのか、今回の件でもはっきりしたように思う。講談社の広報室は正常に機能しているとは、もはや言い難いのである。
かつて乾広報室長は私に「オレはサラリーマンなんかじゃないんだ」と凄んだことがあったが、確かにサラリーマンとしての常識を渡瀬昌彦常務ともども圧倒的に欠如させていることが講談社の広報室が正常に機能していない最大の理由であると私は考えている。講談社にとって大切なのは、この欠陥を意識することである。「欠陥を意識することは、それをなかば以上訂正したにひとしい」のだから。社員諸君! そろそろ奸賊芟除に踏み出そうではないか!
共同通信が運営する公式アカウントのツイートには、6月10日午前11時の段階で、こう書かれたままであった。
江戸川乱歩賞に神護かずみさん 『NOIRを纏った彼女』」
むろん、共同ニュースをクリックしてみると、「第65回江戸川乱歩賞日本推理作家協会主催)は6日、神護かずみさん(58)の『NOIRを纏う彼女』に決まった」と書かれている。ユーザーからすれば、どっちが正しいのか混乱してしまうことだろう。
こうした事態を放置したままにして講談社広報室は恥ずかしくないのだろうか。恥ずかしいと思わない講談社広報室の「質」に私はただ驚愕するのみである。
渡瀬昌彦常務取締役が文芸も広報もともに担当しているはずなのだが、講談社広報室の「働き方改革」は土日には仕事をしないということなのだろうか。講談社広報室に君臨する乾智之広報室長などは、土日のうちにSNSで間違ったタイトルで配信してしまったメディアに頭を下げて回り、SNSの記述を修正してもらうことが、本来、なすべき仕事ではないのか。それができないのであれば、高給を貪る資格はないはずである。
現在、共同通信のツイートは削除されているが、これも私たちの記事を読んでから動いたのだろう。


『ViVi』が自民党タイアップ広告で大炎上!


参院選を眼前に控えて講談社女性誌『ViVi』がインターネットを駆使した自民党のタイアップ広告を受け入れている。女性誌が特定の政党と組んでタイアップ広告を掲載するのは珍しいことである。タイトルは「わたしたちの時代がやってくる!権利平等、動物保護、文化共生。みんなはどんな世の中にしたい?【PR】」。
どんな世の中にしたいか、自分の気持ちを #自民党2019 #メッセージTシャツプレゼント の二つのハッシュタグをつけてTwitterもしくはInstagramに投稿すると、ViVi girlが考えたメッセージをプリントしたTシャツを一枚ずつ計13人にプレゼントするという企画である。
既に日本経済新聞がが5月9日付で「自民が広報戦略を刷新 参院選へ若者取り込み」を掲載し、次のように書いている。
《女性向けにはファッション誌『ViVi』と組んだ。令和時代への思いをデザインしたTシャツを着たモデルの写真や動画を、党公式の交流サイト(SNS)に載せる。
ツイッターではキーワードに『#』(ハッシュタグ)を付けて情報を広げやすくする手法がある。今後は『#自民党2019』を用いて効果的に支持を呼びかける》
そもそも「『#自民党2019』プロジェクト』は4月25日に発表されている。プレスリリースも配布されており、その内容はネットでも閲覧できる。そこにはこう書かれている。
《ファッション展開:「NEW GENERATION」"ViVi girl"メッセージTシャツ
これからの時代を担っていく新世代のモデル、"ViVi girl"とコラボレーション。自立したオトナの女性として発信される『これからは、こんな日本にしたい!』という一人一人のメッセージをデザインして、世界で一枚のTシャツを制作、ファッションスナップとしても撮影します。また、その模様は6月から記事として配信、特設サイトでも掲載を予定しています》
「#自民党2019』プロジェクト」という企画を推進しているプロジェクト・リーダーが甘利明だという点も押さえておこう。ダウンロード違法化に取り組んだ甘利明である。これは偶然の一致なのだろうか?海賊版対策を通じて両者の関係が一気に縮まった。「政治的な意図がない」なんてことはあり得ない企画なのである。
「ハフポスト日本版」が公開した「『ViVi』が自民党とコラボした理由は? 講談社が説明『政治的な背景や意図はまったくない』」。講談社のコメントは次の通りだった。恐らく全文を載せるように講談社広報室は「ハフポスト日本版」に要求したに違いない。
《このたびの自民党との広告企画につきましては、ViViの読者世代のような若い女性が現代の社会的な関心事について自由な意見を表明する場を提供したいと考えました。政治的な背景や意図はまったくございません。読者の皆様から寄せられておりますご意見は、今後の編集活動に生かしてまいりたいと思います》
BuzzFeed News」が公開した「『政治的意図はない』ViViと自民党がコラボ? その狙いは」は「BuzzFeed News」と講談社広報室の次のようなやり取りを掲載している。
《――企画の経緯を教えてください。
経緯につきましては回答を控えさせていただきます。
――選挙前のタイミングでの自民党ロゴ入りのTシャツ無料頒布に批判もあがっていますが、どう捉えられていますか?
皆様からのご意見は謙虚に承ります。
――シャツの費用は講談社自民党、どちらの負担になるのでしょうか?
回答は差し控えさせていただきます。
――他の政党との同様のキャンペーンは予定しているのでしょうか。
予定はありません。
――PR表記がございますが、自民党側からはいくら支払いがあったのでしょうか?
回答は差し控えさせていただきます。
――他党とのキャンペーンの予定はないとのことですが、政治的意図や背景がないなかで、自民党だけを選ばれた理由はどこにあるのでしょうか?
回答は差し控えさせていただきます。
――自民党と「ViVi」のどちらが持ち掛けた企画でしょうか?
回答は差し控えさせていただきます》
要するに講談社広報室は何も答えていない。それでいて「ハフポスト日本版」に掲載させたコメントをここでも掲載させている。このコメント全文掲載が、講談社広報室が取材を引き受けるに当たっての条件であったに違いない。
しかし、こうした講談社広報室の対応がSNSでの「炎上」にガソリンをぶっかける役割を果たしてしまった。それにしても、講談社広報室の乾智之広報室長、いつもだったら自らの写真つきで前面にしゃしゃり出て来る目立ちたがり屋だが、今回はお隠れ遊ばれた。講談社広報室のメディアに対する対応は匿名でなされている。
毎日新聞も「ViVi、自民党とのネット広告で批判殺到『機関誌になったのか』『Tシャツより年金を』」を掲載しているが、講談社の広報室はここでも次のようなコメントを出している。
《このたびの自民党との広告企画につきましては、ViViの読者世代のような若い女性が現代の社会的な関心事について自由な意見を表明する場を提供したいと考えました。政治的な背景や意図はまったくございません。読者の皆様から寄せられておりますご意見は、今後の編集活動に生かしてまいりたいと思います》
「政治的意図はない」なんてない!
私たちは「炎上」の現場に降り立つことにした。私がこの問題を知ったのは昨年、「週刊現代」で岩本太郎の「炎上!一〇〇円ライター始末記」を絶賛してくれた武田砂鉄による次のようなツイートであった。
《『ViVi』が自民党と組んだ広告記事が話題だが、モデルの皆の言葉を読むと、『外国の方やお年寄りにもっともっと親切な対応をすべき』『偉い人の意見が大事で、市民の意見なんて反映されていない』『他人の価値観を理解し、尊敬し合えることができたら』など、まるで自民党への問題提起みたいだ》
朝日新聞長岡支局の伊丹和弘は、こう見ていた。
《多分、自民党にとっては、ViViの読者層に、こういう意見も聞く政党なんだ、と思わせれば十二分な効果なんだろうなぁ》
文部科学事務次官までつとめた前川喜平も言及している。
《7人のサムライ、吉本新喜劇、ViVi・・・こんなことで自民党に投票するくらい国民は愚かだ、と自民党は考えている》
いや「こんなこと」でも効果があると判断して自民党は大金を投じているのだろう。
『出版人 広告人』に「カッパ・ブックスの遺伝子」を連載している京谷六二は、解説している。
《全盛時には40万部以上あったViViも直近のABCは63,000部(それでも赤文字系の中では崩壊のスピードは緩やかだった)。当然、広告も激減。そんななか政党の広告は今どきビックリの定価で入ってくる。これは政党助成金の中から支払われる可能性が高く、つまり血税講談社にガッツリ還流》
自民党や宗教団体の広告はカロリーが高いのである。京谷は、こう付け加えることも忘れない。
《もう一ついうと、選挙前だし『週刊現代』『FRIDAY』あたりへの牽制というか保険の意味もあるかもしれぬ》
編集/ライターの小山田裕哉のツイート。
《政党の宣伝について媒体はさすがに気をつけようよ……。これだと一番おカネを持っているところが勝つ世界になっちゃうよ》
天声人語」を6年担当した冨永格は講談社を叱咤する。
《すでに多数のツッコミが入っていますが、〈政治的な背景や意図がまったくない自民党の広告〉という説明がすでに矛盾しています。講談社しっかりしろ》
冨永は保阪正康の新刊をめぐって朝日新聞出版と講談社が激しくぶつかったことをご存知だろうか。朝日新聞出版は講談社の言い分を飲んだが、講談社の高圧的な態度にはさすがに腹が立ったようだ。
講談社広報室の対応は、総てその場しのぎであって、その場しのぎのためであれば、たとえ辻褄が合わなくても情報発信してしまえということなのだろう。山崎雅弘は見逃さない。
《2019年3月1日現在の自由民主党の女性衆議院議員比率は、わずか7・8パーセント。講談社の公式説明によれば、自民党とコラボした理由は「若い女性が現代の社会的な関心事について自由な意見を表明する場を提供したい」という話だが、話の辻褄が全然合わない。つまり講談社は本当の理由を説明していない》
能町みね子の指摘する通りだ。
講談社が黙秘しまくってる》
香山リカ
《「講談社、おまえもか」》
これも香山リカのツイートだ。
講談社は『政治的な背景や意図はまったくございません』と説明。いや、若い読者に政治を考え、発言してもらうのはおおいにけっこう。問題になってるのは、それがなぜ #自民党2019 のハッシュタグつきがマストか、ということです》
《たとえば『自民党はなぜ強い?』のテーマで識者が多様な意見を述べ、読者が議論、ならありでしょう。でもインスタでモデルもはっきり『自民党キャンペーンのタイアップ』と言ってます。講談社の『若い女性が現代の社会的な関心事について自由な意見を表面する場』という説明はウソじゃないですか》
そう嘘をついているのである。私たちに言わせれば渡瀬常務+乾広報室長のラインは繰り返し、繰り返し、嘘をついているのだ。今回の件で「政治的な背景や意図はまったくない」と発言すること自体が嘘をついていることと同じなのだ。
「これでわかった!超訳特定秘密保護法」(岩波書店)の弁護士・太田啓子は、講談社広報室の対応にこう詰め寄っている。
《政治話はファッション誌でもされたほうがいいけど、でもViViは『社会的な関心事について自由な意見を表明する場を提供』したのではなく自民党イメージアップに貢献という応援をしたわけでそれは否定できないでしょ。それで政治的意図ないって何。応援だというのは認めようよ》
前川喜平講談社が言い訳に使ったフレーズに疑問を呈する。
《ViViと自民党のコラボについて講談社「このたびの自民党との広告企画につきましては・・政治的な意図や背景はまったくございません」。これ日本語として成り立つか?》
講談社広報室から発せられた、その場しのぎのコメントは集中砲火に晒されることになった。
「安倍官邸 vs. NHK」(文藝春秋)の相澤冬樹は「ヤフー!ニュース」に「『美女たち』の政治利用?ファッション誌ViViとコラボ 自民党の狙いを聞いた」を発表しているが、そこでこう書いている。
《取材に対し、以下のコメントを送ってきました。
『このたびの自民党との広告企画につきましては、ViViの読者世代のような若い女性が現代の社会的な関心事について自由な意見を表明する場を提供したいと考えました。政治的な背景や意図はまったくございません。読者の皆様から寄せられておりますご意見は、今後の編集活動に生かしてまいりたいと思います。講談社 広報室』
これで納得できる読者がどれほどいるでしょうか?》
講談社広報室の対応は本当に酷い。町山智浩はこうツイートしている。
《『政治的な意図がない』という講談社のコメントで記事を終える日本のハフィポスはダメダメ。アメリカの本家ハフィポスなら絶対に『なぜ政治的意図もなく参院選の前に政権党の宣伝を? Tシャツのプレゼントは公選法違反ギリギリでしょ』って突っ込んでる》
町山がこうもツイートしている。
《ここで講談社自民党との関係について回答を拒否したけど、プライバシーではなく、メディアと政治の関係なのだから、ちゃんと答えないと、今後、ジャーナリズムを続けていくうえで、取材先の回答拒否を批判できなくなっちゃうよ》
講談社の広報担当常務である渡瀬昌彦も、広報室長の乾智之もともに元「週刊現代」編集長である。二人は今やジャーナリズムの現場から遠く離れてしまっているが、現在そこに踏みとどまり歯を食いしばりながら奮闘している現役の社内ジャーナリストの足を引っ張っているのである。
日本会議 戦前回帰への情念』(集英社新書)の山崎雅弘のツイートは町山よりもキツイ。
《来月行われる総選挙を視野に入れた政権与党の『イメージアップ宣伝』という政治プロパガンダに加担しておきながら『政治的な背景や意図はまったくない』と、いかにも安倍政権的な居直り遁辞を述べる講談社の態度はお笑い草だろう。講談社の上層部が決裁した案件だと確定した》
講談社が選択したのは津田大介が指摘しているように「官房長官話法」にほかなるまい。講談社広報室のこの件に対する対応は失敗と言って良いだろう。といって渡瀬昌彦常務や乾智之広報室長は責任を取る度量を持ち合わせておらず、社内はシラケるのみである。
杉田水脈衆議院議員によるLGBT差別論文に端を発し、小川榮太郎がこれを擁護するヒョーロンのあまりの酷さで遂には「新潮45」が休刊に追い込まれた事件にしても、『日本国紀』を批判するツイートを多数発表していた作家の津村泰水の実売部数をツイッターで晒した幻冬舎見城徹が謝罪に追い込まれた事件にしても、今回の「ViVi」の一件にしても小田嶋隆からすれば「同じ背景を踏まえたものだ」。
《その『背景』をあえて言語化するなら『雑誌の断末魔』ということになる。あるいは『出版業の黄昏』でもかまわない。
いずれにせよ、私たちは、20世紀の思想と言論をドライブさせてきたひとつの産業が死に絶えようとするその最期の瞬間に立ち会おうとしている》
そう貧すれば鈍するのである。
集英社OBの鈴木耕が嘆く。
《権力と癒着すれば雑誌の力は消滅する。ああ、講談社よ、お前もか…》
津田大介によれば講談社は、もともとそういう出版社だったのだ。
《ViViのやつ新聞の軽減税率のように、体力的に弱ったメディアに目を付けた政治側からの籠絡案件にも見えるけど、まだ勢いがあったころの講談社でもこれが持ち込まれたらやってたのではとも思う。元々そういう出版社だよね。単に自民党がネットマーケティングを積極的にやるようになった結果なのでは》
講談社は売れれば正義って文化の娯楽出版社だから、右も左もたくさんの本が出る。それが講談社の良さでも悪さでもあり、何より強み。2017年に最も売れたベストセラー新書は講談社だったでしょ》
ケント・ギルバート講談社+α新書『儒教に支配された中国人と韓国人の悲劇』で一儲けしたのも、百田尚樹の『永遠の0』や『海賊とよばれた男』で大儲けしたのも講談社にほかならないのである。百田本で最も儲けたのは幻冬舎ではなく講談社なのである。これは豊崎由美のツイートである。
幻冬舎にしても講談社にしても、『貧すれば鈍する』をわかりやすい形で見せてくれて。そんな読者サービスはいらないのよ。のよ》
政治学者の山口二郎の歯ぎしりが聞こえて来るようである。
講談社自民党の宣伝のために協力することも、政治的な意図はないと言い訳した。まさに、政府・与党にひれ伏すことは非政治的ということ。やんぬるかな》
弁護士の佐々木亮は言う。
《政治的な意図がないという説明のほうが怖いよ。普通に『当雑誌は自民党を応援しております』というべきじゃないのかな。変なの》


「大衆文学」に叛乱の兆しあり!


日本推理作家協会賞の贈呈式で版元の幻冬舎を、勇気をもって批判した『凍てつく太陽』の葉真中顕もただ呆れるばかりである。
《〝講談社が説明『政治的な背景や意図はまったくない』〟んなアホな。私がこれを客観的事実とする原稿書いたら、講談社校閲だって『政党のハッシュタグつけてるので政治的な背景や意図があるのは明確では?』みたいなエンピツ入れるだろ》
「完璧じゃない、あたしたち」の小説家・王谷晶がダメ出し。
《おいおい講談社さんマジかよ 何考えてますのん? ファッション誌が政治を語るのは大いに応援するけど政権与党ピンポイントでピックアップってダメ過ぎますでしょ》
『路地裏の迷宮踏査』の文芸批評家・杉江松恋は言う。
《これで政治的な意図がまったくないと強弁するなら、講談社当該担当者は『私には政治というものを理解する能力がまったくありません』と言っているに等しい》
断言はできないが、乾智之広報室長あたりに政治を理解する能力があるとは思えない(あくまで私見だが)。今日こうした事態を迎えているのは乾智之広報室長の政治力のなさに起因していると私たちは理解している。
『世界でいちばん美しい』(小学館)で織田作之助賞を受賞した藤谷治は「マジかこの企画!?」と呟いた後、この広告について連続ツイートしている。
《こういうことにいきなり食いつくのは僕のような馬鹿は現に慎まなければならないのだが、あまりといえばあまりのことに頭がくらくらしている》
自民党が自分のところで何をプロバガンダしようとそれは構わない。だが講談社ほどの大きな出版社が特定の政党の片棒を担ぐというのはやってはいけないことだと思う》
《まして選挙前。『女性誌』というのは今や完全にただの区分けであって、男はViViを買わないということもないし、いくら雑誌が力弱くなったと言われるようになっても、これは講談社が全世界に向けて自民党の広報を担っていると公言しているのと同じことではないのか》
講談社の人からは藤谷の小説は売れない売れないとしつこく言われている。それに対して僕は申し訳ありませんとしか思えない。藤谷に比べれば自民党は金払いのいいスポンサーだろうし勝算もあるだろう》
《出版社が不偏不党でなければならないという決まりもなさそうだし、ViViと文芸は違うのかもしれない。それでもやっぱりこれには小説家として考えこんでしまう。少なくとも『こういう商売もあるんでしょうね』などとダンマリを決め込むことはできない。以上です》
『ハロー・ワールド』で吉川英治文学新人賞を受賞した藤井太洋は危惧している。
《政権に寄り添う発言や運動を『政治的でない』と言い抜けるのはとても危険なことだ》
しかし、広報担当の渡瀬昌彦常務取締役は文芸担当でもある。
『凛の弦音』(光文社)の我孫子武丸は速水三兄妹シリーズや人形シリーズなど講談社との仕事が多い小説家も落胆している。
《ぼくもデビューから30年、講談社とは仕事をしてない年がないくらい仕事をしてるが、ほんとがっくりくる。お笑いが好きなので最近の吉本のことも危惧していたが、まさか講談社までね……》
講談社からは『スターダストパレード』を刊行している小説家の小路幸也は怒っている。
《関わってない講談社の編集者が全員舌噛んで死にたくなるんじゃないかと心配になるほどセンスも良識も矜持も欠片すらないじゃないか。何をやっているのか》
『亡国記』(現代書館)で城山三郎賞を受賞した北野慶は断言する。
講談社は『このたびの自民党との広告企画につきましては、政治的な背景や意図はまったくございません。』これ自体、アベ側に立っていくらものを言ったり媚びへつらっても政治的でなく、反アベ的なことを少しでも言ったら政治的と決めつけるアベ=ネトウヨ的発想そのもの》
『QED 百人一首の呪』でメフィスト賞を受賞し、講談社との縁も深いミステリー作家の高田崇史は「ViVi」の問題で予定をキャンセルしたそうだ。
《10年前に幻冬舎と揉めて、社会通念上あり得ない話だと感じたので(弁護士さんにも入ってもらい)決別した。でも今度は講談社『ViVi』の問題で予定をキャンセルしたりと煩わしいことになっている。
両方とも知らんぷりしていれば何も問題がないのに、実に損な性格だと自分でも思います。本当に》
ミステリ評論家の千街晶之講談社広報室の対応に「不誠実」であり、「バカ」だという評価を下している。
《『ViVi』と自民党のコラボの件に対する講談社の言い訳、不誠実なのかバカなのか少し悩んでしまったが、特定の政党に協力しながら『政治的な背景や意図はまったくない』と言えてしまう点は不誠実だし、そんな言い訳をすれば再炎上するのが予想できない点はバカだし、たぶん両方を兼ねているのだろう》
「ViVi」が編集タイアップ広告で自民党と組んだことについて、純文学よりも大衆文学に身を置く作家たちからの批判がSNSでは目立つ。大衆文学が時代に対して危機感を抱いているのだ。


講談社の先祖返りを危惧する


今回の一件で「大日本雄弁会講談社」の歴史を思い起こしている関係者が多いことに私は正直驚いている。もしかすると講談社講談社の戦後が終わり、先祖返りが始まったのかもしれない。「ひとりから始める〜『市民起業家』という生き方」の川口和正講談社の変質を見て取っている。
《「講談社文庫刊行の辞」はこう謳っています。「われわれは権威に盲従せず…(略)日本の「草の根」をかたちづくる若く新しい世代の人々に、心をこめてこの新しい綜合文庫をおくり届けたい」。「時の政権の広報」と化していいのですか?》
講談社の「戦後」は遂に終わってしまったのだろうか。
高文研という社名は高校生文化研究会に由来する。かつては雑誌「考える高校生」を擁していたことでも知られているが、ツイッターにこんな投稿をしている。
講談社女性誌自民党ロゴ入りTシャツプレゼントが話題になっていて思い出したのが、早川タダノリさんのブログ『虚構の皇国』の記事》
高文研が思い出した記事というのは2013年8月28日にブログ「虚構の皇国」にエントリされた「お子様向け日本軍大活躍『過激描写』画像」がそうだ。早川タダノリが紹介しているのは1938年に大日本雄弁会講談社から刊行された「支那事変大手柄絵話」で、「馬詰准尉の三十六人斬り」とか、「柳上等兵の五十二人斬り」が描かれている。
デラべっぴん」に十年間連載された「オナマイド」で知られるエディトリアルデザイナーのほんとうひろしが呟く。
《とうとう戦前戦中の大日本雄弁会講談社になっちゃった!》
「日本人の〈ユダヤ人観〉変遷史」(論創社)の松浦寛がこんなツイートを投稿している。
《大日本雄辯會は講談社の前身で『少年倶楽部』には、大佛次郎の『鞍馬天狗』、山中峯太郎の『敵中横断三百里』など大衆小説によって、日本人の間に長州史観を浸透させ、大陸雄飛の夢を掻き立てた…ある意味で、講談社はまた〝大日本雄辯會〟時代の大政翼賛の歴史を繰り返そうとしているのである》
松浦のツイートが単なる妄想でないことは共著に『亡国の武器輸出』(合同出版)や『武器輸出大国ニッポンでいいのか』(あけび書房)を持つ杉原浩司の次のようなツイートを読めば納得できるかもしれない。
講談社の『はじめてのはたらくくるま』が自衛隊の武器を平仮名で紹介。爆買いされるF35や米国輸出が狙われるF15まで。かつて『あたらしい憲法のはなし』では、戦車や戦闘機や軍艦が消防車や電車や商船に生まれ変わっていた。今や大手出版社が政権に忖度して武器を子どもに刷り込むまでに》
『夜の記憶―日本人が聴いたホロコースト生還者の証言』や『原爆被爆者三世代の証言―長崎・広島の悲劇を乗り越えて』などの著書で知られる看護学者の澤田愛子は決断したようである。
《もう講談社が出版する本は買わないことにしました。自民からお金が流れているからとしか思えない。公選法に引っかかることをする出版社だとは思わなかった!もう、私は講談社の本は買いません》
軍地彩弓「私たちが絶対やりたくなかったことを
今の講談社はした」
ファッション・クリエイティブ・ディレクターの軍地彩弓が「ニュースピックス」に書いている。
《朝この記事をみて腰が抜けた。ViViは古巣です。2000年初頭まで在籍してファッションページを編集してました。#自民党2019 って完全政治色じゃないですか。これが『政治的背景がない』、のだとしたら講談社自民党を政治政党と認識していないことになりますが。タイアップ広告は双方の利害が一致して成立するものです》
そんな軍地彩弓が6月13日付「ハフポスト日本版」に「ViViの自民党キャンペーン『#自民党2019』は、読者への裏切りではないのか。元編集スタッフの私が感じたモヤモヤ。」を寄稿した。
軍地のプロフィールを簡単にスケッチしておこう。1964年生まれで中央大学文学部哲学科を卒業と同時に『ViVi』編集部でフリーライターとして活動を開始。後に『GLAMOROUS』創刊にも関わったというから、講談社との関わりは深い。そんな軍地が今回の一件が表面化した当初よりツイッターで嘆き節を重ねた末、《何よりも釈然としないのは、彼らが読者や社会に対して、きちんと説明責任を果たせていないということだ》としたうえで、『ViVi』がこの広告キャンペーンに踏み切った背景について以下のような観測を記事では述べている。
《私が今まで他媒体で経験している例で考えると、この規模でも大体グロスでトータル800-1000万円くらいの広告料だったのではないかと推測できる》
《ここで登場しているViVi girlsたちも報酬をもらって投稿する#PR記事に慣れていて、メイクアイテムの宣伝をするように、今回の仕事を受けたのかもしれない》
《彼女たちやこの記事に関わったスタッフに対して、きちんと編集部からの説明を受けないまま、議論を経ることなく仕事を受けているでのはないか? だからこそ、編集部の罪は重いように感じる。
そして、何よりも釈然としないのは、彼らが読者や社会に対して、きちんと説明責任を果たせていないということだ。講談社は「政治的な背景や意図はまったくない」と言った。
自民党とのタイアップに政治的背景がない、というのであれば、講談社自民党政治団体と認めていないことになる。あまりに稚拙な釈明を読み、これを書いた人の顔を想像し、嘆息をする。編集部なのか、会社なのか、この程度の浅さなのだ》
《編集者であればこのタイアップが出ることの反響も分かって腹をくくっているべきではないか? そのくらいの気骨を持ってこのタイアップを受けたのなら、それはそれで編集部の意思を感じるが、この釈明からはそのような思いの一つも見えてこない。やるなら、覚悟を持ってやって欲しかった》
《私たちが絶対やりたくなかったことを今の講談社はした。
とはいえ、現場の元仲間の編集者たちは悩んでいるのだと信じている》
軍地に限らず、かつて『ViVi』で仕事をしたライター、あるいは長年の読者によると思しき嘆きの声が依然としてツイッターのタイムラインには溢れ返っている。木村嘉代子も『ViVi』にはかつて長らくレギュラーで書いていた。12日付「文徒アーカイブス」の記事をリツイートしつつ、憤懣やるかたないといった調子でさらにツイート。
《たかが女性誌でも、政治がからむと、意見するのは男性たち、とこれを読んでつくづく思った》
《いろんな女性誌でタイアップ(コラボ)をやった経験から、原稿はクライアントの徹底的なチェックと修正が入るので、今回のViVi girlの意見もモデルたちの言葉かどうか疑問》
《〝若い女性が現代の社会的な関心事について自由な意見を表明する場を提供したい〟〝読者の皆様から寄せられたご意見は、今後の編集活動に生かしてまいりたい〟と講談社広報が言うのなら、近々ぜひ編集企画としてやってほしい。
広告でなければやらないのは、政治的な背景や意図があるということだろう》
講談社広報室…沈黙す
ソーシャルメディアでは『ViVi』に対する怒りと嘆きと悲しみが渦になっている。そんな情況である。
書店人も声を上げる。ときわ書房志津ステーションビル店の日野剛広がツイートしている。
《『政治的な背景や意図はまったくない』
さすがにこれは無理があるだろう。
私にも立場があり、このツイートも業界関係者の方の目に触れるだろうが、この広告への嫌悪感は表明させていただく》
ミュージシャンの写真を撮り続けているフォトグラファーの石田昌隆は編集タイアップ企画に登場したのが「ViVi model」ではなく、「ViVi girl」であることに注目している。
《ViViの自民党Tシャツ問題。モデルは『ViVi model』じゃなくて立場が弱い『ViVi girl』を起用していたんだね。それでもインスタに出せば『いいね』が数百つく。インスタに出すことを条件に起用されているのでは? 『ViVi model』を巻き込まないように温存した講談社は卑劣》
これも石田の投稿。彼女たちを食い物にしたのは自民党だけではあるまい。
自民党Tシャツ来ていた女性のインスタ見たら、こういう投稿あった。〈ViVi専属モデルオーディションには落ちてしまいましたが、憧れのViViさんの雑誌に載ってViVi girlとして活動できるということは、本当に私にとって夢のようです。〉自民党はこういう人を食い物にするな》
今回の炎上について大塚英志は次のように見立てている。
《安倍政権の国民舐めきった態度が役人(金融庁)や取り巻き(幻冬舎)や広告利権に集まるメディア(講談社)に様々な綻びとして露呈していてこの『ふざけんな感』の拡散は今、政権周りにとって一番嫌な展開の気がする。大事なのはその『ふざけんな感』は選挙で政権の審判として投票で現すことです》
牧眞司の優しさは渡瀬常務や乾広報室長に届くのだろうか。『世界文学ワンダーランド』(本の雑誌社)の牧眞司である。
《出版のことを知っていないとわかりにくいかもですが、個々の出版物がかならずしもその社全体の意向をあらわしているわけではない。『新潮45』のときも、今回の『ViVi』もそうだけど、版元を批判をするのは『社内で自浄してほしい』からで、新潮社なり講談社なりを滅ぼせというのではない》
渡瀬常務-乾広報室長体制では残念ながら自浄能力に期待できない。これまで見て来た通りだ。二人は講談社の良き伝統の破壊者である。
講談社広報室の対応が狂い始めているようだ。現場の反乱が始まったのかもしれない。次のようなツイートを発見した。
公選法的には6月中ならセーフだというのが講談社見解ですが、私達の血税を使って与党がこのようなキャンペーンを張るのはものすごく問題があるのでは?と伝えたところ『たしかにそうです』と広報。声が大きくなれば中止・謝罪があると思うのでぜひ電話を。
講談社広報室 03-5395-3410》


しかし、その一方で岩本太郎には取材拒否!


先にも紹介したようにツイッターでは「#講談社不買」が立ち上がっている。渡瀬昌彦常務、乾智之広報室長という広報体制では、問題が起きても解決する方向に向かうのではなく、ガソリンをぶちまけ炎上・拡散するだけだということを講談社はそろそろ気がつくかである。小田嶋隆がこうツイートしている。
《ViViのコラボ広告にはおどろかされた。講談社とはかれこれ30年以上の付き合いがある。世話になった編集者も多い。とてもがっかりしている。自民党に対しては特段の感情はない。好きにすれば良いと思っている。ただ、良心的な業界人を暗黒面に引き込む所業は、なるべくなら控えてもらいたい》
『音楽の未来に蘇るもの―ポップ・ミュージックの進化と深化』や『ヘッドフォン・ガール』で知られる高橋健太郎は、こう予想している。
《まじめな話をすると、これ、間違いなく、改憲の練習だよね。公選法でこれが許されるなら、公選法の縛りのない国民投票の時はこんなもんじゃない》
音楽批評家の柳樂光隆からすれば別に驚くべきことではなかったのだろう。
《日本のファッション誌は元々思想も哲学もメッセージも持ってなさそうだし、こうやってすぐに魂売れそうだよね》
ニューウェーヴ・ギャル・田島ハルコは、こうツイートしている。
「ViVi自民党コラボのモデルの子たちの意見が、強烈な圧力というか暗黙のうちの言論統制のなかで思ってることをなんとか伝えるための必死の暗号みたいに見えてマジで涙出た…あまりにもつらすぎる世界になってしまった…」
「俵才記」がどのような人物であるか知らないが、秀逸なツイートが多いことで知られている。
甘利明自民党参院選対策委員長だな。ワイロ疑惑から逃げるため『睡眠障害』で雲隠れしてた奴がやりそうなことだ。甘利と講談社が手を組んで自民党とのコラボか。
講談社よ。寝ぼけたこと言うな。何が『政治的な背景や意図はありません』だ。
意図丸出しじゃないか》
4thアルバム「レトロニム」をリリースした「New Residential Quarters=NRQ」のツイートの文責はギターの牧野だそうだ。
《このようなキャンペーンにハッキリと『NO』を突きつけ続けることが可能な世の中にしたいです。特定の政党のキャンペーンに加担した当該雑誌と講談社には猛省して欲しい》
東京新聞の望月衣塑子はプロパガンダだと指摘する。
《『オンナ・子ども』と政治家はバカにしてる。軽んじたのは #ViVi か。絶対やりたくなかったことを講談社はした。大手出版社が資金力を持つ政党と組むのはプロパガンダと言われても仕方ない。
声を上げ、ダメ!と言わなくては若者にとって夢もない国になってしまう》
ポピュリズムと「民意」の政治学 : 3・11以後の民主主義』の木下ちがやもツイートしている。
《令和キャンペーン、自民党新時代、芸能人とのコラボ、甘利のゆるキャラ化、そしてViViと、物量戦が効いてるなら、いまなんで年金でこんなに揺らいでんだという話ですよ。どんなプロパガンダも、社会経済的な変動の前には霞んでしまうわけです。むしろプロパガンダの過信がこのような事態を生んでいる》
『ViVi』の不適切な表現をめぐって
『ViVi』の公式ツイッターが復活したことは報告したが、炎上する以前の6月10日に次のような投稿がなされていた。
「ニコル『私はもう本当にその人しか見えなくなる。盲目タイプ?』
星夏『それは昔から変わんないよね(笑)』
ニコル、星夏、愛花の3人が恋バナのため焼肉屋さんに集合。2時間ノンストップの赤裸々トークを特別に大公開しちゃいます!」
本文を見てみると藤田ニコルが「私はもう本当にその人しか見えなくなる。盲目タイプ?」と語ると、古畑星夏が「盲目(笑)。それは昔から変わんないよね(笑)。でもニコルのことは昔から知っているけど、恋愛観は大人になったと思う」と応じている。
視覚障碍者の存在を念頭に置いたとき、果たして、ここで「盲目」という言葉を使うことが妥当であるのかどうか、当然のごとく編集者は悩みに悩んだ末に「盲目」という言葉を確信的に選択したのだろうが、その判断に瑕疵はないと言い切れるとは思えないのである。他にも言い換えはいくらでも可能なはずである。この「ViVi」のツイートに対して、「使うべきではないと思う」という次のようなレスがあったことを報告しておこう。
「盲目は差別用語ではないという見解があるが、使うべきではないと思う。講談社自民党とのコラボで大失敗をやらかしたばかりなのに、無神経過ぎやしないだろか?」
私も「盲目」という言葉を「ViVi」のような大衆誌において使うことは避けるべきだと考える。
何故なら、「盲目」には視覚障害者に対して社会に存在する差別意識が歴然と表彰されていると私は考えているからだ。小林健治の次のような指摘を引用しておこう。
「それでは、視覚障害をもつ人たちは、この言葉についてどのような思いを抱いているのか。拙著『差別語・不快語』の中でまとめている、遠藤織枝氏の調査(2000年)から見てみよう。
先に例にだした『めくら蛇に怖じず』に対して、『容認できる』と答えた視覚障害者は23・5%。『避けたい』『絶対に言わない』と答えた人は53・0%である。
『群盲象をなでる』については、容認は23・1% 拒否は45・8%
『盲目的』(盲目ではない)については、容認が45・3%、拒否42・3%と意見が分かれている。『盲目的』と『盲目』では、『盲目』のほうがより強い表現のように思われるが、それでも半数近くの視覚障害者が差別感(不快感)をもっている」
問われるべきは講談社の人権感覚である。渡瀬昌彦常務や乾智之広報室長は、何も答えずに済むとでも思っているのだろうか。私たち出版人は『ViVi』が選択した表現に対して正式に抗議したい。私たちが正式に抗議するのは創業以来、初めてのことである。決して軽く受け止めてもらいたくはない。まさに講談社の言論(表現)の質が問われているのだ。
それにしても私も個人的にかかわっている差別論研究会には講談社の社長室や編集総務局からも参加し人権に関する知見を深めていたのではないか。残念である。むろん、そうした研究会で乾智之広報室長の姿を遂に見ることは遂になかった。