【文徒】2019年(令和元)8月27日(第7巻154号・通巻1574号)


Index------------------------------------------------------
1)【記事】アマゾンのクラウド障害記事で日経がミスリード
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】
----------------------------------------2019.8.27 Shuppanjin

1)【記事】アマゾンのクラウド障害記事で日経がミスリード

朝日新聞デジタルは8月23日付で「アマゾンのクラウド障害、復旧 ユニクロやdTVも影響」を掲載している。
《インターネットで事業を行う企業が多く使う米アマゾンの「AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)」の日本のデータセンターで、23日午後1時過ぎに大規模なシステム障害が起きた。このため多くの国内企業の事業に支障が出た。》
https://www.asahi.com/articles/ASM8R560LM8RULFA01F.html
日経も8月23日付で「クラウド集中にもろさ アマゾン『AWS』大規模障害」を掲載しているのだけれど。このタイトルからして…。
《米アマゾン・ドット・コムが運営するクラウドサービス「アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)」で23日、大規模なシステム障害が発生し、影響は広範囲に及んだ。企業はコスト削減の一環で、自社でサーバーを導入する従来手法からデータセンターをインターネット経由で利用するクラウドにシフトしている。今回の大規模障害はクラウドに集中することのもろさを浮き彫りにした。》
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO48956120T20C19A8EA1000/
案の定、日経のこの記事の評判がすこぶる悪いようだ。こんなツイートを発見した。
《読んだけど、クラウド集中がもろいんじゃなくて、障害があったときにも耐えれる構成にしてるかどうかだと思う。馬鹿正直にクラウドは危ない!自社データセンターだとか言い出すおじさんたちいそう。》
https://twitter.com/hiromitsuuuuu/status/1165218370267992064
こんなツイートもある。
《単一のAZ(Availability Zone、要はデータセンター)の障害とのことで、設計で回避出来たと思われるけど、安易にクラウド批判の論調に走るのは残念。
脆いのはクラウドじゃなくて、発生する障害のレイヤごとの冗長化設計》
https://twitter.com/yahatanokazu/status/1165163763638525952
「バカか?」とまで言われている。確かに日経もAWSを使っている。
《誰が書いてるのか知らないけど、バカか?
空調設備の障害なんだから、クラウドじゃなくてオンプレのコロケーションでも起こりうるでしょ。仮に同じ規模の障害が御社のデータセンターで起こった時、10時間で復帰させられますか?
あ、日経さんもAWS使ってましたっけね。》
https://twitter.com/Maki_Daisuke/status/1165097063224360960
楠正憲もツイートしている。
《芋蔓で多数サイトが落ちることの社会的影響は大きいんだけど今回の障害ならマルチAZで組めば問題ないんじゃなくて?オンプレだとビルの定期点検でもっと落ちるじゃん》
https://twitter.com/masanork/status/1165127641432674304
朝日新聞の丹治吉順がきついツイートを放っている。
《他社さんの記事をけなすのは気が引けるが、
「ほんっっっとうに、分 か っ て ね え な」。
大規模企業のオンプレミスのトラブルは、こんなレベルじゃなかったろうに。》
https://twitter.com/tanji_y/status/1165091245535793154
現在は日本から遠く離れてシリコンバレーの地にいる日経の中西豊紀は、気がついたのだろう。問題となった記事をこんなふうにフォローしている。
《ではクラウドが駄目なのかといえばそれは議論が飛びすぎで、事故時に何を問うかはそろそろテック報道の知恵の出しどころになってきた気が。邦銀はリーマンショック時に海外展開が進んいない結果の皮肉な傷浅でしたが、今回もクラウドへの「慎重」さは評価が分かれるのでは。》
https://twitter.com/TNakanishiNY/status/1165088014944497664

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2)【本日の一行情報】

◎アニメ映画とアニメ映画の小説版で儲けるKADOKAWA商法が確立されたようである。KADOKAWAは、長井龍雪監督のアニメーション映画「空の青さを知る人よ」の小説版「小説 空の青さを知る人よ」を本日8月23日(金)に角川文庫から発売した。映画の公開は10月11日(金)から。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000006184.000007006.html

◎鎌倉のセレクト書店「ポルベニールブックストア」で8月30日、下北沢「BOOKSHOP TRAVELLER」オーナーの和氣正幸を招き、トークイベント「最新版ブックショップトラベルin鎌倉 本×サムシングで鎌倉を味わい尽くせ」が開催される。
https://kamakura.keizai.biz/headline/360/

◎「次にくるマンガ大賞2019」が発表された。
【コミックス部門TOP10】
第1位「薬屋のひとりごと」(既刊5巻 スクウェア・エニックス
第2位「チェンソーマン」(既刊3巻 集英社
第3位「神クズ☆アイドル」(既刊2巻 一迅社
第4位「乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…」(既刊3巻 一迅社
第5位「ブスに花束を。」(既刊6巻 KADOKAWA)
第6位「その着せ替え人形は恋をする」(既刊3巻 スクウェア・エニックス
第7位「疑似ハーレム」(既刊2巻 小学館
第8位「ぼっち・ざ・ろっく!」(既刊1巻 芳文社
第9位「ライドンキング」(既刊2巻 講談社
第10位「こじらせ百鬼ドマイナー」(既刊3巻 集英社
Webマンガ部門TOP10】
第1位「SPY×FAMILY」(集英社
第2位「村井の恋」(KADOKAWA
第3位「腸よ鼻よ」(コミックスマート)
第4位「女神降臨」(LINEマンガ)
第5位「僕の心のヤバイやつ」(秋田書店
第6位「忘却バッテリー」(集英社
第7位「新しい上司はど天然」(秋田書店
第8位「異世界おじさん」(KADOKAWA
第9位「あせとせっけん」(講談社
第10位「見える子ちゃん」(KADOKAWA
https://hon-hikidashi.jp/enjoy/91804/
https://ddnavi.com/news/559503/a/

◎相鉄グループは、書店チェーンの有隣堂とのコラボ企画を始めた。相鉄が11月30日に東京都心への相互直通運転を始めるのを記念して、100日前の22日から有隣堂横浜駅西口ジョイナス店やアトレ恵比寿店など4店舗で限定デザインの文庫本カバーを配布するというもの。
https://www.sotetsu.co.jp/news_release/pdf/190816_01.pdf

江川紹子のツイート。
《表現の不自由展の中止に抗議して、自分の作品の展示を止めた海外作家の声明(右)とトリエンナーレ主催者の説明(左)。作家らは「検閲」と批判し、実行委員会側は検閲ではなく観客の安全の問題、と。思うに、国などの「上からの検閲」ではなく、「下からの検閲」だったのではないかな。》
https://twitter.com/amneris84/status/1164459042279841793
「下からの検閲」の「主犯」が津田大介なのである。「BuzzFeed News」が公開している「『表現の不自由展・その後』中止を考える緊急シンポ 出展作家『表現の自由を守れ』と再開訴え」は次のように書いている。
《中垣(克久)さんは今回の中止について、「法を守ることをリードしなければならない立場の政治家から、率先して法を無視、法を忘れてしまったような発言が飛び出し、それに乗せられたトリエンナーレの企画者達の軽率さ、無能さがこの事件を生んだ」と厳しく批判した。》
https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/fujiyuu-symposium
こういう発言をするのか…津田大介は。彼を芸術監督に据えたのが失敗であったのは動かし難い事実である。「webDICE」がアップリンク浅井隆による「あいちトリエンナーレ津田大介芸術監督インタビュー」を公開した。
《実施の過程では、何を入れて何を入れないか。どのように進めていくかという部分で不自由展実行委と僕が意見を衝突させる場面もありました。が、最終的に僕はほぼすべて彼らの意向を汲んで進めました。企画実現と内容の充実、このせめぎ合いが最後まで続きました。それが芸術監督として正しい態度だったのか、という批判はあり得るでしょうが、僕自身は最終的にやはりこの企画がやりたいという気持ちが強かったんですね。》
http://www.webdice.jp/dice/detail/5849/

中央公論文芸賞中央公論新社主催)は吉田修一の「国宝」(朝日新聞出版)に決まった。
https://www.yomiuri.co.jp/culture/20190822-OYT1T50264/

谷崎潤一郎賞中央公論新社主催)は、村田喜代子の「飛族」(文藝春秋)に決まった。
https://www.sankei.com/life/news/190824/lif1908240013-n1.html

◎「週刊ポスト」8月30日号に掲載された【著者に訊け】は「純子」(双葉社)の赤松利市を取り上げている。
《昨年、『藻屑蟹』で第1回大藪春彦新人賞を受賞し、〈62歳 住所不定 無職 平成最後の大型新人〉として話題に。以来、「浅草に月極で借りた漫画喫茶」を拠点に作を重ね、元会社経営者にして元除染作業員という異色の経歴も持つ赤松利市氏の作品群は、書かずにいられない魂こそが書かせた、純然たる文学、だと思う。》
https://www.news-postseven.com/archives/20190823_1433460.html
赤松は私にとって気になる作家のひとり。「大学卒業後、某消費者金融に入社、上場業務に関わるなどし、後に独立。ゴルフ場の管理設計を担うコンサル業で成功を収めるが、3.11後、経営破綻。土木作業員や除染作業員を経て上京し、風俗店員等で食い繋ぐ中、昨年『藻屑蟹』で大藪春彦新人賞を受賞しデビュー」というキャリアが良いよね。ちなみに「純子」は「うんこ」の話である。

◎「週刊漫画ゴラク」(日本文芸社)で連載20年目を迎える「銀座柳寿司三代目 江戸前の旬」がテレビ東京で実写ドラマ化され、「江戸前の旬season2」として1年ぶりに復活する。
https://www.tv-tokyo.co.jp/information/2019/08/23/216826.html

トーハンは、名古屋市中区丸の内にビジネスホテルを新築する。
https://www.kentsu.co.jp/webnews/html_top/190823300041.html

白泉社の「ヤングアニマル」で連載されていた、自殺催眠によるデスゲームというパニックスリラーの新境地を拓いた「シグナル100」(原作:宮月新 作画:近藤しぐれ)が、橋本環奈主演で実写映画化される。公開は2020年1月24日だが、これに向けてスピンオフ漫画「シグナル100 零」(原作:宮月新 作画:Ryuki)が「マンガPark」に連載されることが決まった。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000017.000046848.html

◎CCCグループのカルチュア・エンタテインメント(C・E)は、グループ出版社である徳間書店よりマンガ「ブルーアワーにぶっ飛ばす」を9月6日(金)に発売する。
映画のコミカライズで、描くのは監督・脚本を務めた箱田優子本人。劇場公開は10月11日(金)。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000879.000018760.html

小林秀雄賞は平山周吉の「江藤淳は甦える」(新潮社)、新潮ドキュメント賞河合香織の「選べなかった命」(文藝春秋)に決まった。
https://www.chunichi.co.jp/s/article/2019082301001728.html
平山は文藝春秋OBの細井秀雄である。元「文學界」編集長だ。元「諸君!」編集長でもある。

◎こうなると私も予想していた。朝日新聞デジタルが8月23日付で「出会い系投稿だらけ… LINEオープンチャット即制限」を掲載している。
《LINEが不特定多数とやりとりできる新機能「オープンチャット」を始めたところ、不適切な投稿が相次ぎ、すぐに大幅な利用制限に追い込まれた。わいせつな内容や売春を疑わせる内容の投稿も多く、LINEは一部の機能を停止。現在は新規の利用が難しくなっている状態だ。》
https://www.asahi.com/articles/ASM8Q5RJ1M8QULFA00R.html

カラテカ矢部太郎によるコミックエッセイ「大家さんと僕 これから」(新潮社)の累積売上が12.3万部となり、、発売4週目で10万部を突破した。
https://www.oricon.co.jp/news/2142865/full/

◎「在宅避難で役立つ食まわりの知恵から日ごろの備えまで クックパッド 防災レシピBOOK」が扶桑社より発売された。これは売れそうだ。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000090.000027849.html

朝日新聞デジタルは8月23日付で「NHK、26日からTVer参加 朝ドラ・大河は対象外」を掲載している。
《NHKは26日から、民放のインターネットによる番組配信サービス「TVer(ティーバー)」を通じて、番組の配信を始める。NHKが23日、発表した。「ダーウィンが来た!」や「ハートネットTV」など8番組が放送後約1週間、誰でも無料で見られるようになる。ただ、「NHKオンデマンド」(NOD)で有料配信中の連続テレビ小説大河ドラマといった看板番組は、対象とならなかった。》
https://www.asahi.com/articles/ASM8R56DTM8RUCVL00Q.html
SNSには、こんな声も上がっている。
《おいおいNHKよ、俺は受信料を長年キレイに払ってるぜ。その受信料で制作した番組を一部なりとも無料で公開するわけ?だったら少なくとも無料放送時間分だけ受信料を返せよな。本放送でまで番宣してどうすんのよ!》
https://twitter.com/mdd125/status/1164995850705104896
TVerで配信される番組は次の通り。
ダーウィンが来た!」(総合) 日曜 午後7時30分~放送
チコちゃんに叱られる! チコっとだけスペシャル」(総合) 土日 深夜放送
「Nスペ5min.」(総合) 土曜 午前5時10分~放送
みいつけた!」(Eテレ) 月曜~金曜 午前7時45分~放送
「ハートネットTV」(Eテレ) 月曜~水曜 午後8時00分~放送
「バリバラ」(Eテレ) 木曜 午後8時00分~放送
きょうの健康」(Eテレ) 月曜~木曜 午後8時30分~放送
きょうの料理ビギナーズ」(Eテレ) 月曜~水曜 午後9時25分~放送
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000062.000002492.html

◎銀座蔦屋書店は「台湾、発見。」を特集し、いまなお好評を博している「Pen」6/15号と「新しい魅力発見 まだ見ぬ台湾。」を特集した「フィガロジャポン」8月号の2誌で、特集を担当した編集者やライター、コーディネーターによるトークイベントを9月5日(木)に開催する。
https://www.pen-online.jp/news/info/taiwan_event/1

◎お笑い芸人のマキタスポーツ読売テレビの西田二郎プロデューサーの「バカともつき合って」(主婦の友社)は、お笑いコンビ「キングコング」の西野亮廣堀江貴文の、20万部突破のベストセラー「バカとつき合うな」(徳間書店)の「公式便乗本」だそうだ。毎日新聞が8月23日付で「オリラジ中田 マキタスポーツとラジオで対決?! キンコン西野ホリエモンの“便乗本”巡り」を掲載している。「バカともつき合って」をお笑いコンビ「オリエンタルラジオ」の中田敦彦が「営業妨害」とツイッターで抗議し、マキタスポーツさんらとトークイベントで直接対決し、その模様が8月24日のラジオ番組「Nj on the Radio!」(FM OH!=FM大阪)で放送されたという。
https://mainichi.jp/articles/20190823/dyo/00m/200/018000c

◎「おたぽる」が8月23日付で「アプリ版『少年ジャンプ+』の年齢制限引き上げに賛否の声『“少年”の定義とは……』」を発表した。
《公式雑誌マンガアプリ『少年ジャンプ+』が8月13日に実施したアップデート。年齢制限が「12+」から「17+」へ引き上げられ、ユーザーから「“少年”の定義とは……」「ますますエロ路線が加速しそうで楽しみ」と賛否の声が巻き起こっている。》
https://otapol.com/2019/08/post-77007.html
そうは言っても「少年」という冠を被った週刊のマンガ誌で最も読者年齢が若いのは「週刊少年ジャンプ」であろう。紙のメディアの話ではあるが。

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3)【深夜の誌人語録】

一を聴いて十を理解することなど幻想に過ぎないのだから、一を聴いて一を理解することを積み重ねることに努力すべきである。