【文徒】2019年(令和元)9月18日(第7巻169号・通巻1589号)

Index------------------------------------------------------
1)【記事】1)【記事】幻冬舎が光本勇介と組んで「株式会社価格自由」を設立
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】
----------------------------------------2019.9.18 Shuppanjin

1)【記事】幻冬舎が光本勇介と組んで「株式会社価格自由」を設

幻冬舎と誰でも簡単にオンラインストアが開設できる「STORES.jp」や即現金化アプリ「CASH」、後払い専用旅行代理店アプリ「TRAVEL Now」などを立ち上げて来た起業家・光本勇介は、出版業界の新たなビジネスモデルを確立すべく共同出資会社「株式会社価格自由」を2019年7月17日に設立したそうだ。取締役会長は見城徹代表取締役は光本勇介と箕輪厚介がつとめる。
「株式会社価格自由」が提供する「価格自由」は、消費者が自分が好きな金額を決め、その金額が課金できるページへ誘導するQRードを、書籍をはじめあらゆる媒体に提供していくサービスだという。
すでに幻冬舎が出版する2つの書籍にこの「価格自由」が導入され、1冊目はNewsPicks Bookの「実験思考」であり、著者は光本勇介本人。1ヶ月半で1億円が読者から課金され、2冊目は堀江貴のNewsPicks Book「ハッタリの流儀」。こちらは3日で1億円以上がすでに読者から課金されており、書籍の販売以外の新たな収入源が確立できているそうだ。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000048823.html
https://jikken-shiko.com/QR/report/
これだけの説明では「価格自由」がどういう仕組なのか理解できまい。「YAHOO!ニュース」が公開している「すべてが実験。光本氏の「価格自由」実験は、性善説の証明になるか」(徳力基彦)は次のように説明している。
《この本の値段は、本来であれば定価が1500円になるところを、紙の書籍は原価の390円、電子版は字通りの0円で販売されることになる模様。
ただ、単純に無料で書籍を配布するという話ではなく、読者が読んだ後に自分が本の最後にあるQRコードで、0円から1000万円までの値段を自分で設定して支払うという、書籍の値段を読者に委ねるという実験になっているわけです。》
徳力はこうも書いている。
《つまり、光本さんからすると、今回の価格自由実験は、ビルの屋上から1億円ばらまくのと同じで、本来なら出版社が「前払い」で「定価」をお客さんから払ってもらうという書籍のビジネスモデルを正面から疑い、本を無料でばらまいてしまって「後払い」で「自由な料金」をお客さんに払ってもらえるか、という壮大な社会実験なわけです。
さすがに紙の書籍は、紙代や販売店の手間もありますから無料で配布するわけにはいかなかったようで、原価の390円(税込421円)で販売という形になったようですが、本日光本さんからアマゾンで予約開始と告知がされると、あっという間に紙の本Amazonの売れ筋ランキング1位にランクイン。》
https://news.yahoo.co.jp/byline/tokurikimotohiko/20190426-00123773/
「アドタイ」が4月28日付で「書籍を0円で売る実験-購入後に払ってもらう『価格自由』な売り方」で箕輪厚介は次のように語っている。
《発売まで時間がなさすぎるタイミングでこの書籍の販売の仕組みを考えたんですが、光本さんのその組み立て方が秀逸。売り方の打ち合わせをしていくなかで、光本さんの凄さがわかりました。
ぶっとんだアイデアを考えながらも、しっかりと関わる各プレイヤーの心理を捉えて組み立てている。すべてのリスクをわかったうえでフルスイングする。最悪のケースはこれくらいだからやろう。こっち側の人は損してしまうからインセンティブ設計を変えようとか
こんな巧みに考えているのかと驚きました。あと動きが早い。QRコードの裏側のサイトは、今この対談中にはまだ完成していない(笑)。本を印刷して、読者に届くまでの間に作るんです。そのスピード感がすごいなと感じました。》
https://www.advertimes.com/20190428/article290419/
光本勇介が9月13日にこんなツイートを発表している。
《近日中に、誰でも簡単にこの「価格自由」の課金QRコードと課金ページが生成できるサービスもリリース予定です。誰でもその日から「価格自由」ができてしまうようになります。よろしくお願いします。》
https://twitter.com/Yusuke_Tokyo/status/1172316340897533953
箕輪厚介も9月13日にこうツイートしている。
《他の出版社の著者さん、編集者さんも価格自由を付けたいという人は是非連絡ください。あと書籍以外にも価格自由を付けていきます。そして最終的には誰でもすぐ自分の価格自由を発行できるサービスにしていきます。》
https://twitter.com/minowanowa/status/1172316624499511301
ところで光本勇介は「CASH」や「TRAVEL Now」を運営するバンクの代表取締役であったはずだが、突如、バンクの解散を発表した。9月12日のことである。会社を解散し、事業は売却するそうだ。
《突然のご報告となり恐縮ですが、この度、株式会社バンクのチームを「解散」することと致しました!
弊社が運営する事業「CASH」や「モノ払い」、「TRAVEL Now」は、いまでも、物凄い可能性と面白さを秘めていると思っています。
ただ、これらの事業を、自分たちの資本とチカラだけでは、希望するスピードで、理想とする規模の事業にするのに時間がかかりそうというのが今回の決断の一番の理由となります。》
https://yusuke.tokyo/bank_kaisan/
光本は帰国子女で大学は青山学院大学国際政治経済学部を卒業している。広告代理店のOgilvy & Mather Japanの出身だ。
https://mag.angl.jp/yusuke_tokyo/2018/06/28/
果たして光本勇介を信用できるのだろうか。そもそも箕輪や光本は出版物の再販制をどのように考えているのだろうか。

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2)【本日の一行情報】

◎「AFPBB News」が9月13日に「グーグル、仏に1100億円超支払い 租税問題で和解」を公開した。
《グーグルは、脱税の罰金として5億ユーロ(約598億円)、さらにフランス税務当局との和解金として4億6500万ユーロ(約557億円)の支払いに応じる。同社は声明で和解を認め、フランスと長年にわたって続いていた財務上の相違点をめぐる問題に終止符が打たれたことを歓迎した。グーグルは近年、イタリアと英国でも同様の和解に達していたが、今回の支払額は過去よりもはるかに大きい。》
https://www.afpbb.com/articles/-/3244283

双葉社は、2019年度「大阪ほんま本大賞 特別賞」を受賞したはるき悦巳の名作マンガ 「じゃりン子チエ」の庫版を3ヶ月連続で刊行する。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000141.000014531.html
清風堂書店のツイート。いや、おっしゃる通り!「大阪庶民の教科書」です。
《長らく品切れを起こしていたコミックが双葉庫から復活です。
大阪庶民の教科書『じゃりン子チエ』。
「大阪の本屋と問屋が選んだほんまに読んでほしい本~大阪ブックワンプロジェクト」という企画の特別賞を受賞した流れを受けて復刊しました。
収益の一部は大阪の子供たちに本として寄贈されます。》
https://twitter.com/seifudosyoten/status/1172126107056799745
こんなツイートも発見!
バクーニンが「神は死ぬべきだ」と言った。そしたらニーチェ「神は死んだ」と言った。世紀をまたいで、神も仏もない世界をはるき悦巳は描いた。悪と善が濃密に絡み合う。インド哲学のような、意味がよくわからない世界。とりあえずテツみたいに生きたら楽しそう。そう思わせられるのはなんなんだろう
https://twitter.com/ryo_king/status/1172591963591200769
じゃりン子チエ」のテレビシリーズでは1話・6話・11話で高畑勲がチーフディレクターをつとめている。ユジク阿佐ヶ谷で上映される。
https://twitter.com/yujiku_asagaya/status/1172041975136018433

産経新聞は9月12日付で「千葉の停電『生活情報届かない』 頼りは『ラジオと新聞』」を掲載している。
《台風15号で大きな被害を受け、いまも広い地域で停電が続く千葉県。各地のガソリンスタンド前には長い車の列ができ、給水所にも多くの人が集まった。携帯電話がつながらなかったり、つながりにくかったりする状況も続いており、住民生活への影響は計り知れない。役所など公共機関も停電している自治体も。公的機関からの情報“遮断”に悩む住民らは、乾電池式のラジオなどに頼るなどしている。》
https://www.sankei.com/affairs/news/190912/afr1909120044-n1.html
新聞は、もっともっと被災者の役に立つことができたはずである。新聞は紙面のみならず、新聞販売所を拠点とした情報発信やサーヴィスの提供を試みるべきである。新聞社はSNSが使えなくても壁新聞を発行することも可能である。
災害報道に際して、「被災地」の現状を「非被災地」に向けて報道することは、メディアが果たすべき役割の一部でしかないことを自覚すべきではないだろうか。SNSの時代において、メディアはマスであれ、ソーシャルであれ、何であれ、「被災地」に向けて、情報発信も含めて「被災者」にとって有益なサーヴィスの提供を図るという「加担」が必要になるのではないだろうか。
マスメディアの時代において、メディアは「当事者」にならないことを倫理として掲げて来たが、ソーシャルメディアの時代においては、メディアもまた「当事者」であるということを前提にしなければならないはずである。そこにおいて報道は「正義」ではなく、多様なサーヴィスなのである。
https://news.yahoo.co.jp/byline/horijun/20190912-00142282/
被災地に行くだけでは駄目なんだよ、行くだけでは「非被災地」に向けて報道することぐらいしかできないじゃないか!

◎「BOOKウォッチ」が9月12日付で「『ハーメルンの笛吹き男』、突然のバカ売れ、その理由は・・・」を掲載している。
《『ハーメルンの笛吹き男─伝説とその世界』(ちくま庫)が突然バカ売れしている。きっかけは出版社によるツイート。瞬く間に3度の重版がかかり2万9000部の増刷に。累計発行部数は15 万部を突破した。》
https://www.j-cast.com/bookwatch/topics/2019/09/12009821.html
ハーメルンの笛吹き男 伝説とその世界」の著者は私が尊敬する阿部謹也である。

◎「NHK NEWS WEB」が「NHK国際放送の番組 BPO審議入り」を公開した。
《去年11月に放送したNHK国際放送のドキュメンタリー番組で、家族や友人などのレンタルサービスを行う会社を取り上げた際、利用客として紹介した男女3人が実際は会社のスタッフだったことについて、BPO=「放送倫理・番組向上機構」は、放送倫理上の問題がなかったか審議することを決めました。》
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190913/amp/k10012081491000.html

◎日販がブレイディみかこの「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」(新潮社)を推している。「ほんのひきだし」に日販 マーケティング部の古幡瑞穂が「日常の社会問題を“子どもの目”で描く『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』 読者像から“次の一冊”を探る」を発表している。
《発売前のゲラを読んだ人たちがこぞって絶賛し、話題になった『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(長いタイトルなので、『ぼくイエ』なんて愛称で呼ばれています)。この『ぼくイエ』は、6月の発売以降毎週「1週間の売上記録過去最高!」を塗り替え続けており、勢いの衰える気配がありません。》
https://hon-hikidashi.jp/more/94409/

◎電子版のみでリリースされているが、「月刊週刊女性」という考え方は面白い。主婦と生活社にも優秀な人材がいるんだね。
https://www.jprime.jp/articles/-/16050

幻冬舎は、秋の電子書籍キャンペーンとして「電本フェス~幻冬舎の電子書籍ほぼ全作品割引 最大70%OFFキャンペーン~」を9月13日(金)から9月26日(木)まで実施している。合計で3,900冊を超えるタイトルのうち、400冊以上については、2週間通して70%割引する。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000476.000007254.html

斎藤美奈子が「週刊朝日」で津原泰水の「ヒッキーヒッキーシェイク」を書評している。
幻冬舎が「売れない小説」のレッテルを貼ったこの小説はしかし庫化と同時に売り上げを伸ばしている。事前の騒動はさておき、今日的な問題を深刻になりすぎない形で扱った、これは前向きなエンタテインメント小説である。》
https://dot.asahi.com/ent/publication/reviews/2019091300097.html?page=1

近畿日本ツーリスト首都圏は、武蔵野銀行朝日新聞社とクラウドファンディング事業で提携した。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000770.000001864.html

◎学研プラスは累計230万部を数えるショートストーリー集である「5分後に意外な結末」シリーズの新刊「『悩み部』の復活と、その証明。」を発売した。「悩み部」の活躍を描くタイトルは5つになるが、累計30万部以上というヒット作となっている。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002388.000002535.html

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3)【深夜の誌人語録】

「とことん」や「ぎりぎり」を大切にしたい。