【文徒】2019年(令和元)12月18日(第7巻230号・通巻1650号)


Index------------------------------------------------------
1)【記事】絵本作家ヨシタケシンスケが大活躍だ
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】
----------------------------------------2019.12.17 Shuppanjin

1)【記事】絵本作家ヨシタケシンスケが大活躍だ

朝日新聞デジタルが12月16日付で「笑顔描かぬ絵本、ヨシタケシンスケ氏語る『弱さの共感』」を掲載している。
https://www.asahi.com/articles/ASMDG3HS7MDBUCVL02Z.html
白泉社からインタビュー&イラスト集の「ものは言いよう」が刊行されたばかりだ。
https://www.hakusensha.co.jp/books/9784592733010
本の森セルバブランチ岡山北長瀬店がツイートしている。
《これは‥!!立ち読みなんてとてもできない。100%、いや120%!ヨシタケシンスケぎゅうぎゅうづめ。こんなの読んだら、えほん読みたくなっちゃうよね。どんどんどんどん読み返したくなっちゃうよね。中毒必死のおすすめ新刊。
「ものは言いよう」ヨシタケシンスケ 白泉社
https://twitter.com/selvaBRANCH/status/1205346303154147328
ヨシタケシンスケは岸政彦の「断片的なものの社会学」に影響を受けたと語っている(12月14日付ダ・ヴィンチニュース「ヨシタケシンスケ初の完全読本! 創作の秘密もたっぷり詰まった『ものは言いよう』」)。何か知らないけれど私は嬉しくなってしまった。
《岸政彦さんの『断片的なものの社会学』かな。あの本で岸さんは、誰もがわざわざ言葉にはしないけれど確実に存在している想い、みたいなものをちゃんと表現してくれた。僕が絵本を通じて表現したいのも同じで、たとえば「誰かにプロポーズする1分間」と「ぼーっとする1分間」では前者の方に価値があると思われがちだけど、その人にとってかけがえのない1分間として同一視をしたい、そのうえでぼーっとしている時間に何が起きているのかを丁寧にひもとき、名前をつけていきたいんです。読まない本を買うのが趣味、というのと同じように、名前をつけるだけで救われるものがあるはずだから。
まさに「ものは言いよう」で、言い方を変えるだけでテーマは無限に出てくるし、続けられる限り、求められる限りは、自分にできることをやっていきたいと思います。》
https://ddnavi.com/interview/582958/a/
岸政彦の「断片的なものの社会学」は朝日出版社から刊行されている。「紀伊國屋じんぶん大賞2016」を受賞している。
https://www.asahipress.com/bookdetail_norm/9784255008516/
岸は小説も書いていて芥川賞三島賞にノミネートされたことがある。新潮社から「図書室」を上梓している。
https://www.shinchosha.co.jp/book/350722/
ダ・ヴィンチニュース」でヨシタケシンスケをインタビューしたのは橘ももだが、こんなツイートを投稿している。
ヨシタケシンスケさんインタビューしました。思えば岸政彦さんの『断片的なものの社会学』はヨシタケさんに薦められて読んだのですが、そのお話もまたうかがってます。》
https://twitter.com/momotachibana28/status/1206505605906567168
絵本「わたしのわごむはわたさない」はPHP研究所から11月に刊行されている。
https://www.php.co.jp/books/detail.php?isbn=978-4-569-78900-2
「わたしのわごむはわたさない」は発売1カ月で13万部を突破した。
https://twitter.com/PHP_jidosyo/status/1205320158488612865
絵本の最新刊は光村図書出版から刊行された「なんだろう なんだろう」である。
https://www.mitsumura-tosho.co.jp/shohin/ehon/book_eh001.html
たまひよ」が12月16日付で「ヨシタケシンスケさん『普通の子が普通のことをする』絵本、だらしない自分に重ねて」を公開している。
《僕にとって、生きづらさや歩きづらさを支える自分用の松葉杖が“スケッチ”や“絵”だったんです。「もしあなたに合うようなら、その杖をどうぞお使いください」っていうスタンスだったんですけど、僕が思っている以上に、その杖を必要としてくれる方が多かった。これはもう、運がよかったとしか言いようがないですね。》
https://st.benesse.ne.jp/ikuji/content/?id=63592
11月25日に発売された「暮しの手帖」の「文 荻上チキ × 絵 ヨシタケシンスケ」による連載「みらいめがね」は「香港のデモと日常」であった。
https://www.kurashi-no-techo.co.jp/honshi/c5_003.html
集英社の「小説すばる」の表紙はヨシタケシンスケが描いている。

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2)【本日の一行情報】

集英社山本太郎とれいわ新選組「#あなたを幸せにしたいんだ」を発売した。12月15日付日刊スポーツは、こう書いている。
《連日、各地で「街頭記者会見」を続けているが、時折見せる涙の理由を問われると「(役者出身だが)ギャラの出ない演技はしない。自分たちが行動して世の中が壊れるスピードを止めたいが、今は2議席しかなく、代表はバッジを失った。何とかしたい思いをすぐ、形にできるわけではない。現実の壁への悔しさでしょう」と答えた。》
https://www.nikkansports.com/general/nikkan/news/201912150000579.html
今年の参議員選挙に出馬した山本以外の候補者のスピーチも収められているのだが、これが面白い。不思議なことに山本が普通に見えて来るのだ。
https://books.shueisha.co.jp/items/contents.html?isbn=978-4-08-780894-0

◎「Business Journal」は12月16日付で「街から本屋が消えた…『書店ゼロ自治体』急増、セブンは“読みやすい”500円新書発売」を公開している。
《街に書店が1軒もない自治体が増え、取次大手のまとめでは全国46都道府県、420の自治体、行政区にのぼるという。「書店ゼロ自治体」が多いのは、北海道、長野、福島、沖縄、奈良など。全国の約2割の自治体から書店が消えたということだ。》
https://biz-journal.jp/2019/12/post_131882.html
それでも日本出版インフラセンターに登録している書店は1万2803店舗もあるという。恐らく5000店ぐらいまでには減少するのではないだろうか。歩いて行ける範囲から書店は消え、首都圏においても書店は電車に乗らなければ行けない存在になるのだ。

◎「かさこ」なる人物は日本セルフマガジン協会なる団体の会長をつとめている。私などからすると、どことなく「胡散臭い」人物に思えてしまうのだけれど・・・。
https://profile.ameba.jp/ameba/kasakot/
「かさこ」が12月15日に自らのブログに発表した「出版社はなぜ電子書籍普及に消極的なのか?電子書籍なら著者の印税は10倍になるから!」が「BLOGOS」にも転載された。
《紙の本で出した場合/著者の印税は最大でも/よくて10%。/下手すると5%とか7%。/でもAmazonKindleの/電子書籍で著者が自分で/出版すれば最大70%!/10倍収入が違うのです。/1000円の紙の本が/1万部売れても/著者はたった70万円程度。/しかし1000円の電子の本が/もし1万部売れたら/著者は700万円/入ってくることになる。/だから出版社は/電子書籍に消極的なんです。/著者に逃げられちゃうから!》
https://ameblo.jp/kasakot/entry-12558735097.html
https://blogos.com/article/423819/
AmazonKindleで1万部売ることは、殆んど奇跡に近いという現実についても、「かさこ」は語るべきではないのだろうか。

◎「ENCOUNT」は12月16日付で「女心つかむ秘訣は読者の直筆ハガキ…“10万部完売”60代ファッション誌の舞台裏」を公開している。宝島社で60代向け女性ファッション誌「素敵なあの人」で編集長をつとめる神下敬子が「いまの60代のファッション感覚は、40代に近いセンスなんです」と語っている。
https://encount.press/archives/13451/

御朱印ならぬ「御城印」というのもあるんだ!徳間書店から「目指せ!全国制覇 御城印ガイド お城版“御朱印”をもらおう!」が発売された。
https://www.work-master.net/2019174659

◎「Agenda note 」が「デジタル時代に『新聞社』をどう残すか。ネットメディアから移籍記者 朽木誠一郎の考え」を公開している。朝日新聞社でデジタルディレクターをつとめる朽木誠一郎のキャリアがユニークだ。
《1986年生まれ。2014年3月に群馬大学医学部医学科を卒業。2014年4月にオウンドメディア運営企業に入社。同年9月に編集長に就任し、サイトグロースを担当。2015年10月に編集プロダクション・有限会社ノオト入社。記者・編集者として基礎からライティングや編集を学び直す。2017年4月にBuzzFeed Japan News入社、2018年3月に単著『健康を食い物にするメディアたち』を出版。2019年3月に朝日新聞に移籍、引き続きwithnewsなどのウェブメディアで記者・編集者として活動する他、朝日新聞社デジタルディレクターに就任。》
朽木は次のように指摘しているが、私もそう考えている。
《「新聞社」「出版社」といった成り立ちも、すべてネット上に展開されるようになった今、やがてはその区別が読者側には意味をなくしていくと思います。》
https://agenda-note.com/brands/detail/id=2178

◎「DIME」の付録は、いつも面白い。2・3月号の特別付録「コンパクトUSB加湿器」を早速990円で購入した。USBケーブルを電源につないで、水を入れた容器に浮かべると、勢いよく、ミストを噴射する。
https://dime.jp/genre/822562/

白泉社のアプリ「マンガPark」は「年納め200チャプター無料&1冊まるごとコインバックキャンペーン」を12月21日まで実施している。
https://octoba.net/archives/20191216-mangapark-news.html

「NEWS」加藤シゲアキが12月21日発売の「小説新潮」2020年1月号より小説「オルタネート」の連載を開始した。
https://www.shinchosha.co.jp/news/article/2226/

◎コミック配信サービス「まんが王国」を中核に、コンテンツプラットフォーム事業を展開するビーグリーが運営する無料マンガアプリ「コミックevery」において、新潮社の漫画作品の配信を12月14日(土)から開始した。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000115.000034768.html

◎12月12日のニッポン放送垣花正 あなたとハッピー!」は、「あんたアウト!」をテーマに特別企画を展開したが、新潮社出版部長・中瀬ゆかりがアウトな人を紹介したそうだ。
《新潮社のライバルB社のとある偉い人の漢字の能力が“アウト”だと明かす中瀬。
「ある時、その偉い方が小説のゲラをチェックしていたとき。急に担当編集者を呼びつけて『このキノイという人物をもっと描かないとだめだ!』と言い出したんです。担当編集者が不審に思い、ゲラを見ると“木乃伊”と書かれていたんです。木乃伊と書いてミイラと読みます。その方は、出版社にも関わらず、木乃伊の漢字が読めなかったんです」》
https://www.1242.com/lf/articles/219147/?cat=entertainment&pg=happy
B社は文藝春秋を指すのだろう。「偉い人」というからには執行役員クラスに違いあるまい。

NHK大河ドラマ「いだてん」は全47話の平均視聴率は8.2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と大河ドラマ史上初の1桁台を記録してしまったが、ツイッターでは一年間を通じて盛り上がった。境治は「Yahoo!ニュース」に12月16日付で「2019年のTwitter上を走り続けた『いだてん』~そこに見えるテレビ視聴の変化~」を発表している。
《データセクション社のInsight Intelligence Qを使って1月1日から12月15日までの「いだてん」が含まれるTweet数を計測したところ、12月15日は25万件を超えた。年間で564万件で1日平均1.6万件。異常と言っていいほど多い。それだけ圧倒的な数の濃いファンが一年中飽きることなく視聴し続けたということだ。》
https://news.yahoo.co.jp/byline/sakaiosamu/20191216-00155068/
https://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2019/12/16/kiji/20191216s00041000315000c.html

◎LINEの「NEWS AWARDS 2019」において「LINEジャーナリズム賞」は「ハフポス日本版」が9月14日に配信した「東京の街で『ヒジャブ』の彼女がクリエーターとして生きる理由」に決定した。この記事を執筆したのは記者の吉田遥。
吉田は「『深く知るほど後悔』耳の聞こえない両親と生きた娘」でもノミネートされていた。220万本の配信記事からノミネートされるだけでも大変なことだが、2本も候補に入ったとは、どんなキャリアの人物かと思ったら、今年の2月に記者を始めたのだそうだ。「ハフポス日本版」は吉田について次のように紹介している。
《吉田記者は2019年2月にハフポスト日本版に入社した。新卒で就職したのは物流会社で、営業を担当していた。「マイノリティーや声の小さな個人の思いを届けたいと」と一念発起し、ニュースエディターとして7カ月で執筆した記事が大きく評価された。》
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_5df6ea59e4b047e8889f62e3
これが受賞作。
https://www.huffingtonpost.jp/entry/rahmalia-aufa-yazid_jp_5d71053be4b09bbc9efa8264
「『深く知るほど後悔』耳の聞こえない両親と生きた娘」も読ませる。
https://www.huffingtonpost.jp/entry/coda_jp_5d58001ce4b0eb875f247f5b
新しい才能がネットから生まれる時代になったということだ。

◎「NEWS AWARDS 2019」の「ニュース報道」部門では、朝日新聞デジタルが大賞に選ばれた。
https://www.asahi.com/articles/ASMDF63HKMDFUEHF00S.html

博報堂は、多様な関係者とともに未来創造の技術としてのクリエイティビティを議論し、研究し、社会実験していく場として、「UNIVERSITY of CREATIVITY」(略称、UoC)を2020年春に開設することを決定した。
https://www.hakuhodo.co.jp/news/newsrelease/76043/

博報堂は、2020年4月1日付で、九州支社と子会社の西広の両事業を統合し、社名を「株式会社九州博報堂」とすることになった。
https://www.hakuhodo.co.jp/news/newsrelease/76118/

朝日新聞デジタルが12月16日付で「海賊版削除要請、出版社員は腱鞘炎 切実なメロンの例え」を掲載している。朝日の取材に応じているのは集英社の伊東敦・編集総務部長代理である。
https://www.asahi.com/articles/ASMDJ76RHMDJTIPE003.html

◎「プリンセスGOLD」(秋田書店)は、2018年2月16日発売の4月号をもって紙版は休刊し、4月16日より電子版として再スタートすることになった。
https://natalie.mu/comic/news/261569

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3)【深夜の誌人語録】

退路も複数持つようにしよう。