【文徒】2020年(令和2)1月24日(第8巻14号・通巻1671号)


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1)【記事】「インターネット税」はデマ? 総務省否定コメントにも依然くすぶる疑念
2)【本日の一行情報】
----------------------------------------2020.1.24 Shuppanjin

1)【記事】「インターネット税」はデマ? 総務省否定コメントにも依然くすぶる疑念(岩本太郎)

「インターネット税」は結局「デマ」と認定されたようだ。総務省が5G網の全国整備に際し光ファイバー回線を全国的に維持するための負担金制度の導入を検討しているとの報道は昨日の『でも紹介したが、これをきっかけにネット上で広まった上記の噂について総務省は22日、ウェブメディアからの取材に応えて否定するコメントを発表。同日付の『Engadget日本版』に対しては、同省の担当者が「いろいろ報道されているが、現時点では検討もしていないのが事実」と困惑した調子で次のように回答している。
《担当者は心当たりとして、昨年11月、5Gの普及に向けて、ユニバーサルサービス料にも言及した政策提言がまとめられたことを挙げます。
担当者は「(提言をうけ)今後検討に含めなければならないと思っているが、現時点で具体的な検討を始めた事実はない」とコメント。
また「今春にも有識者会議を立ち上げて負担金について協議する」とも報じられていますが、これについても「決定した事実はない」と述べました》
https://japanese.engadget.com/jp-2020-01-22-internet.html
「負担金制度」について総務省が《今春にも有識者会議を立ち上げ、議論に着手する方向だ》と報じたのは20日付の産経新聞だった。日経や共同もこの件を同日に報じているが、どちらも有識者会議云々には言及していない。
https://www.sankei.com/economy/news/200120/ecn2001200015-n1.html
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO54599810Q0A120C2SHA000/
https://this.kiji.is/591969029233460321
同じく総務省に取材のうえ「『インターネット税はデマ』と総務省」と見出しで明確に切り捨てたのは『ITMedia NEWS』だ。ただし中の総務省担当者のコメントには「デマ」の2字はなく、次のように紹介されているのみだ。
総務省ITmedia NEWSの問い合わせに対し、「報道を見て困惑している。ネットユーザーから1000円徴収するといったネットのうわさは、どこから出たのかも疑問」と答えた。さらに「5G網の整備、維持に向けた資金確保」という報道も間違いであるという》
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2001/22/news097.html
「ネットユーザーから1000円徴収」説はどこから出てきたのか
上記の『ITMedia NEWS』はここが発生源だとは断言していないが「しろくま」という匿名ユーザーが、上記の産経による報道を引用しながら22日の朝7時23分に投稿した以下のツイートなどを画面入りで挙げている。
《#インターネット税 1人約1000円か 5G導入国民負担(略)ただでさえ日本のスマホ代やインターネット代金は高いのに、税金が必要なら要らんわ!》
https://twitter.com/hontounokotoga1/status/1219747321665089536
当然ながら「しろくま」のもとには反響が殺到したようだ。「1000円」の論拠を示そうと引き続き投稿を重ねていたが、基本的には自分で勝手に見積もった数字だった模様。本人もあまり反省していない様子だ。
《税金て、高くなることあっても安くなることは無いので、もろもろ設備が追加されていくと、最終的には税金として支払う金額が合計1000か という意味で書いた》
《これに消費税と合計したら、最終的には携帯だけで払う税金の合計が幾らに増えるんだ?そう思ったから、本音を書いた》
《昨日はえらい目こいたから、産経新聞の記事は、あまりTwitterで紹介しない方が良いのかな? まいいや》
https://twitter.com/hontounokotoga1/status/1220037245375303680
https://twitter.com/hontounokotoga1/status/1220143734936895488
https://twitter.com/hontounokotoga1/status/1220184229939560448
もっとも、「インターネット税」そのものについてはあながち「デマ」と言い切れないのではないかとの見方も依然として上がっているようだ。
ITジャーナリストの宮脇睦は、先述した『ITMedia NEWS』記事中の総務省担当者のコメントに「デマ」との言葉がない点を指摘する。
《この見出しをつけた以上「デマ」との発言が、記事の重要なファクトとなるが、その「デマ」がないの。なぜだ。論旨だとして、『いわゆる「デマ」だ』という表現もない》
《記事中に「デマ」との総務省の発言は確認できない。あるのは「ネットユーザーから1000円徴収するといったネットのうわさは、どこから出たのかも疑問」と答えた」と微妙に論点がすり替えている》
https://twitter.com/miyawakiatsushi/status/1219911560329433088
https://twitter.com/miyawakiatsushi/status/1219910826464694274
20日の最初の報道自体が、総務省が世論の反応を見極めるために流した情報をもとにしていたのではないか、との声も出ている。
総務省 観測バルーンによる市民の反応測定終了。有識者会議へ。議員を無力化》
https://twitter.com/tsato_scrapbook/status/1220179078709334016
介護福祉士、大手医療介護施設で働くシステム管理女子」という小原美香子がこんなふうに呟いていた。
《だからユニバーサル料って言ってるだろ。問題なのは理由なんだよ。屋根屋上に課すみたいな事やってるから皆怒ってる
インフラの老朽化とか、メンテ要員の働き方改革で~っていうなら納得できる。メリット見えづらい5Gのゴリ押しに国民全員で追加投資しろいうから不満出てる》
https://twitter.com/alen_bluebee/status/1219893340042215424
ネットメディアの『WEZZY』も「インターネット税に非難轟々も結局『デマ』? 5G時代の必要経費どうなる」と題した記事の末尾をこう結んでいる。
《通信が社会のインフラである以上、その維持にかかるお金をひとりひとりが負担するという「負担金制度」も、たとえ現時点でデマだという説明が事実であっても、遅かれ早かれ検討の時はくるのではないだろうか》
https://wezz-y.com/archives/72199

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2)【本日の一行情報】(岩本太郎)

◎『現代ビジネス』で長谷川不動産経済社代表の長谷川高が「大手企業・老舗企業の意外な収入源…『不動産賃貸業』が会社を救う?」と題して寄稿。これまでいくつかの出版社と仕事をしてきた中で聞いた話として、以下のように書いている。
《たとえば、朝日新聞、読売新聞、TBS、電通といった大手マスコミ各社も、不動産賃貸業が本業を支えています》
《現代において大手出版社、大手マスコミが、不動産賃貸業を一つの柱に据えて、厳しい時代を生き延びようとすることは、ある意味、老舗企業にとって王道の「生き残り戦略」なのです》
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/69593
長谷川が知らなかったのかどうかはともかく、「不動産賃貸業」で少なからず利益を上げているメディア企業の中に、ここには名前が挙がっていない講談社も該当することは『現代ビジネス』も当然知っているだろう。昨年秋にも「株式会社ボルテックス 100年企業戦略研究所」が「生き残ってきた日本企業は『不動産』の財務を重視している」と題して、こんなエントリを上げているのだ。
朝日新聞社講談社等はいわずと知れた大企業ですが、手堅い家賃収入も得ている会社という共通項を持っているのです。
朝日新聞社有価証券報告書(2019年3月期)によると、不動産事業の利益は68億2700万円と、全体の営業利益のうち約8割を占めています。また講談社は、2018年11月期の売上高のうち、不動産収入は31億5100万円と、前年度から0.6%の増加を見せました》
https://100years-company.jp/articles/inheritance/040039
こうしてすぐに突っ込まれるってわかりそうなものなのに。

◎「第65回小学館漫画賞」が22日に発表。受賞作は以下の通り(カッコ内は連載中の媒体)
〈児童向け部門〉
環方このみ「ねこ、はじめました」(ちゃお)、
〈少年向け部門〉
小山愛子舞妓さんちのまかないさん」(週刊少年サンデー
〈少女向け部門〉
コナリミサト「凪のお暇」(Eleganceイブ
〈一般向け部門〉
小林有吾アオアシ」(ビッグコミックスピリッツ
赤坂アカかぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~」(週ヤングジャンプ
〈審査委員特別賞〉
藤子・F・不二雄プロ
沢田ユキオスーパーマリオくん」(コロコロコミック
https://www.shogakukan.co.jp/sites/default/files/manual/20200122.pdf
https://www.jiji.com/jc/article?k=2020012201228

◎21日に発売された『映画秘宝』の最終号は17日時点でネット書店では既に完売。発売後も「売り切れ」報告がネット上で相次いだ。
https://www.j-cast.com/2020/01/21377670.html

◎昨日23日に幡ヶ谷で本葬が営まれた坪内祐三への追悼を、早稲田大学時代に坪内が参加していた学内ミニコミ誌『マイルストーン』を立ち上げ、彼とは40年以上の付き合いを持ってきた旧友・一志治夫が『春オンライン』に寄稿。
《サークル内には芝居に意欲を出すグループがいて、創刊から1年ほどたった頃、早稲田祭で「人生劇場」を演じることになる。同時に、高田馬場から大学まで人力車を走らせ、無料でお客さんを運ぶというアイディアが持ち上がり、実行される。その車夫となったのが坪内だった》
《しかし、ほどなく坪内に対しては誰もが一目おかざるをえなくなる。その圧倒的な知識量と章の内容に気圧され始めるのである。もちろん二十歳の若者だから、いま振り返ればまだまだ途上だったのだろうが、抱え持つ教養と知性はピカイチだった。背景にあったのは、やはり坪内家の血筋のようなもの、そして坪内自身の“体質”だったと思う》
https://bunshun.jp/articles/-/28191

◎以前にも紹介した『QuickJapan』のウェブ版『QJWeb』(太田出版と「とうこう・あい」の共同事業)が15日にオープンした。
https://qjweb.jp/
ライターの飯田一史が『QJWeb』編集長の森山裕之にインタビュー。森山は2000年代に『QuickJapan』編集長を務めた後、飛鳥新社『dankaiパンチ』副編集長や、よしもとクリエイティブ・エージェンシーマンスリーよしもとPLUS』編集長、ヨシモトブックス編集発行人などを経て独立。2016年に出版社「STAND! BOOKS」を設立。今回のウェブ版は昨年《本誌のスタッフは本誌で手一杯だった》ことから依頼を受け、スタッフ集めからビジネスモデルの構築まで担当。基本は無料記事配信のPVをベースとする広告収入やタイアップに置くが《すでにQJ冠のイベントは開催していますが、今後複合的に展開していく予定です》とのことだ。
https://news.yahoo.co.jp/byline/iidaichishi/20200117-00159365/
http://stand-books.com/about/

◎上記と同じ飯田一史のレポート「学校図書館の図書購入費は横ばいなのに新聞の購読数は増え続けるわけ」。国学図書館協議会の調査によると、雑誌についても購読割合や平均購読誌数が徐々に減少してきている一方で、新聞購読の割合は反対に増えているという。
《国の学校図書館整備等5か年計画で学校図書館への新聞配備予算が措置されてから8年目に入り、9年前の調査から新聞購読の割合は小学校で20.3ポイント、中学校で18.8ポイント増加した。
金額で言うと、2017年度からの第五次学校図書館整備計画において、学校図書館への新聞配備に5か年で150億円の財政措置が図られている》
https://news.yahoo.co.jp/byline/iidaichishi/20200120-00159530/

福音館書店の月刊育児誌『母の友』(1953年創刊)が昨年末発売の1月号で通巻800号を迎えた。
https://sukusuku.tokyo-np.co.jp/life/25867/
https://www.fukuinkan.co.jp/maga/detail_haha/

白泉社はミリオンセラーになった絵本シリーズ『ノラネコぐんだん』の書店コラボカフェ「NORANEKO COFFEE」を今年も実施。名古屋市の「Carlova360 NAGOYA」で1月24日から2月24日まで、横浜市のTSUTAYA菊名駅東口店で2月1日から同29日まで開催の予定だ。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000130.000046848.html

◎『少年ジャンプ+』から生まれたヒット作「とんかつDJアゲ太郎」が実写映画化されることになった。製作はフジテレビ、配給はワーナー・ブラザースで、キャストや監督は29日に発表予定。6月19日の公開を予定している。
https://party-channel.com/archives/25964

◎『月刊AKB48グループ新聞』の休刊が決定したと『週刊女性PRIME』が報道。2011年12月の創刊以来コンビニや駅の売店、専門ショップなどで毎月第3金曜日に発売されてきたタブロイド判32ページの媒体だが、1年前に発行元が日刊スポーツからスポーツニッポンに移っていた。
https://www.jprime.jp/articles/-/16949

佐賀県内の書店員が店内で飾り付けたディスプレイの写真をTwitterの投稿。そこで《Amazonには絶対負けないと思ってるんだけどなぁ…もしかして、もうこういうの求められてないの?読んでみたいって、心を動かされないの…?》と呟いたところ、「負けない気概を持って続けてくれればいい」といった好意的な意見のほか「まだアマゾンを本屋の対抗だと思っているんだ?」などの批判も寄せられるなどネット上で大反響を呼んだそうだ。当の店員は『JCASTニュース』の取材に応えて次のようにコメント。地元の佐賀新聞で本の紹介記事を連載している名物書店員だという。
《アマゾンのことを普段意識して仕事をしているわけではありません。アマゾンは便利ですし、利用する気持ちは分かります。それは仕方ないことです。しかし、ディスプレイやポップで本を購入する人がいないわけではありません。そんな人に届けばと思って、メッセージを書きました。それほど大げさな話ではなく、本屋に求められる本とは何か、皆さんが考えるきっかけになればいいと思っています》
https://twitter.com/honyanohomma/status/1216666569805221888
https://www.j-cast.com/2020/01/22377790.html

◎ウラゲツ(=月曜社)によるジュンク堂2店閉店関連ツイート続報。
《同業他社ではすでにJ某店の店舗縮小による返品依頼が届き始めています。京都店(2月末閉店)、ロフト名古屋店(2月末閉店)、某店、福岡店(6月末閉店、再出店予定あり)、全部楽天BN帳合。いまだかつてない返品量になるのは確実》
https://twitter.com/uragetsu/status/1220184222276583424
歴史学、人・社会科学など学術書の出版社・有志舎の代表である永滝稔もこれに呼応してツイート。
丸善ジュンクの複数店舗閉店により、有志舎も数ヶ月に渡る返品赤字が予想されます。
こりゃ、さすがにまずいです。
しかし、だからといって回避・改善することもできない案件なので、どうしようもない》
https://twitter.com/yushisha/status/1220213194737639425