【文徒】2020年(令和2)1月30日(第8巻18号・通巻1675号)


Index------------------------------------------------------
1)【記事】「謎の詩人 最果タヒ」に迫る!
2)【記事】「共産党『NO』」広告に広がる「NO」の声
3)【本日の一行情報】
4)【深夜の誌人語録】
----------------------------------------2020.1.30 Shuppanjin

1)【記事】「謎の詩人 最果タヒ」に迫る!

詩人の最果タヒは女性ファッション誌「FUDGE」(三栄書房の連載を再構成し、大幅加筆、更には書き下ろしも収める『「好き」の因数分解』をリトルモアから上梓した。
http://www.littlemore.co.jp/store/products/detail.php?product_id=1020
最果タヒの存在感がますます大きくなっているように思う。何しろ久方ぶりの売れる詩人なのである。「KAI-YOU.net」は1月27日付で「NHKの名物ドキュメンタリー『ノーナレ』で『謎の詩人 最果タヒ』放送」を公開している。
《2月3日の放送で、特集されるのは最果タヒさん。「謎の詩人」と銘打たれているが、2004年にはネット上で活動を始め、2008年に当時女性最年少の21歳で第13回中原中也賞を受賞して注目を浴びた、現代詩において知らない人はいない存在。
「詩」と聞くと構えてしまう人もいるかもしれないが、最果タヒんは、難しい言葉を使わず、積極的に詩を多くの人に届ける試みを続けてきた。
詩をテーマにしたゲーム「詩ューティング」、『別冊少年マガジン』で志村貴子さんや鬼頭莫宏さん、萩尾望都さんら漫画家とのコラボ連作『空が分裂する』はじめ、精力的な活動を現在も続けている。》
https://kai-you.net/article/71370
京都大学在学中の2007年に刊行した第一詩集「グッドモーニング」(思潮社)で中原中也賞を受賞した。
http://www.shichosha.co.jp/sales/item_1269.html
NHKの番組のため公式ホームページに詩を書き下ろしている!
https://www.nhk.or.jp/docudocu/program/4253/2257121/
詩集「夜空はいつでも最高密度の青色だ」も相変わらず売れている最果タヒ自身がツイッターで報告している。
《詩集『夜空はいつでも最高密度の青色だ』の重版が決まりました。7刷です。たくさんの方に読んでいただいて、いろんな感想をいただいて、この詩集を出したのはずっと昔のことにも思うけど、でもまだ4年前のことなんですね。これからも続いていきますように。ありがとうございます!》
https://twitter.com/tt_ss/status/1219926935402250242
夜空はいつでも最高密度の青色だ」は最果タヒの第4詩集。これリトルモアから刊行されている。
http://www.littlemore.co.jp/store/products/detail.php?product_id=943
リトルモアWEB」もツイッターで7刷を報告している。
《【重版!】
最果タヒ 詩集『夜空はいつでも最高密度の青色だ』の7刷が決まりました!
映画にもなり、今も広く読まれ続けている決定的1冊。これまでにお手にとってくださった皆さま、ありがとうございます。
来週1月31日には、新刊『「好き」の因数分解』も発売。ぜひ、あわせてお読みください。》
https://twitter.com/LittleMoreWEB/status/1219977461330403329
石井裕也によって映画化もされている。
https://www.youtube.com/watch?v=vUDhdOkJVhM
講談社小学館といった大手出版社も最果タヒの詩集を刊行している。講談社は「空が分裂する」を刊行し、小学館は「天国と、とてつもない暇」を刊行している。
http://kc.kodansha.co.jp/product?item=0000012860
https://www.shogakukan.co.jp/books/09388644
最果タヒの詩は広告業界も震撼させている。「HOTEL SHE, KYOTO」は「詩のホテル」として最果タヒとコラボした客室を3月31日まで展開している。
《このたび、HOTEL SHE, KYOTOに「詩のホテル」をコンセプトにした期間限定のお部屋ができました。
タッグを組むのは注目の詩人・最果タヒさん。
あまりに身近すぎて普段意識することの少ない「ことば」を部屋じゅうに散りばめます。どこに、どんな「ことば」があるのかは泊まってみてのお楽しみ。
このためにたくさんの詩を最果さんが書き下ろしてくれました。
お部屋はダブルとツインの2タイプ。恋人や家族、お友達と是非この貴重な空間を体験してください。》
https://tahi.chillnn.com/hotel/d349581b-1e27-48e0-a9a8-b618e62e11771572238126776/plan/d349581b-1e27-48e0-a9a8-b618e62e11771572239274728
最果タヒが「詩のホテル」についてツイートしている。
《「詩のホテル」期間延長もう少しできたらいいなあ、とかちょっと思う。満室になってとても嬉しいけど、泊まってくれた人のツイートを見て、新たに興味を持ってくれる人もいて、そういう人が泊まれないのは申し訳ない……。「期間延長したら行くよ!」って方、いらっしゃいますか?》
https://twitter.com/tt_ss/status/1220312264269414401
ラジオ番組「編集長稲垣吾郎」でも「詩のホテル」が取り上げられたそうである。
https://twitter.com/tt_ss/status/1219966078643605504
最果タヒツイッターで「詩のホテル」の延長が決まったことを報告しているではないか!
《詩のホテル、延長決まりました!会期はなんと7/5まで(予定
つまり「京都の展示→詩のホテル」ツアーが可能ということに…!まさかこんなに延長してもらえるとは思ってなかったので感動しております。HOTEL SHE,さん、ありがとうありがとう…!予約受付は2/1の20時からです》
https://twitter.com/tt_ss/status/1221784529242746889

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2)【記事】「共産党『NO』」広告に広がる「NO」の声

これも京都の問題。京都ノートルダム女子大の田中裕喜もツイッターに投稿している。
《この広告は、京都らしくありません。京都人はこういう表現を一番嫌ってきたはずです。夏木マリさん、榎木孝明さんにも、がっかりしました。》
https://twitter.com/biwakootsu/status/1221360957059784704
例の新聞広告の件である。毎日新聞は1月28日付で「京都市長選 現職支持団体が「共産党『NO』」広告 著名人の顔写真、許可なく掲載も」を掲載している。
《2月2日投開票の京都市長選で、地元紙の京都新聞に掲載された広告が波紋を広げている。現職の門川大作氏(69)=公明、自民府連、立憲民主府連、国民民主府連、社民府連推薦=を支持する政治団体「未来の京都をつくる会」の広告で、「共産党の市長は『NO』」などのメッセージが添えられていた。ネット上には「共産党に対する悪質な攻撃だ」との意見が相次いだ上、広告に顔写真を掲載された日本画家の千住博さんや放送作家小山薫堂さんらも「許可なく掲載され、遺憾だ」などと反発している。》
https://mainichi.jp/articles/20200128/k00/00m/010/219000c
毎日新聞統合デジタル取材センター記者の大村健一がツイートしている。
《新聞社においてこのタイプの原稿を選挙期間中に出すのは、普段の何倍も神経を使います。しかし京都、読売、朝日は広告を掲載している。書くなら多分うちしかないと思いました》
https://twitter.com/k_oomura/status/1222121478205800448
香山リカのツイート。
《先ほどニューヨークの千住博さんからお電話いただきました。
診療中で出られず留守電でしたが、
あの新聞広告は千住さんの了解なしにお名前、写真が載ったもので、まったく本意でないと。
このホームページご覧ください。またのちほど千住さんとお話してここで報告します。》
https://twitter.com/rkayama/status/1221716211316080641
香山の指摘するように千住博は自らのブログに1月27日付で「緊急:京都新聞の広告について」をエントリしている。
千住博京都造形芸術大学学長当時に候補者を応援してきた経緯から、今回も推薦者として名前を連ねてきておりました。ですが、千住はアーティストとして、意見の多様性や、議論の必要性を大切にしています。今回のような、ある特定の党を排他するようなネガティブキャンペーンには反対です。
まるで千住博がこの様な活動に同意しているような意見広告に、千住の許可なく無断で掲載されたことを大変遺憾に思います。》
http://www.hiroshisenju.com/news
政治学者の山口二郎ツイッターで次のように指摘している。
《これは看過できない重大事。京都市長選に関連した反共新聞広告の賛同人に、本人の承諾なしに名前を使ったとのこと。門川市長陣営は経緯を明らかにしなければならない。》
https://twitter.com/260yamaguchi/status/1221717408328511488
立憲民主党の山岸一生は元朝日新聞記者だが、こうツイートしている。
《昔、京都で記者をしていました。京都特有の政党事情がある、だから選挙の構図には外野から何も言いません。
しかし、国政でともに戦う仲間に対しては、お互いに、敬意を払うべきです。こちらから「NO」と壁を作っていたら、分断されるだけ。これは、私が #東京9区 において肝に銘じていることです。》
https://twitter.com/isseiyamagishi/status/1221624973959188480
国民民主党原口一博もツイートしている。
《①良識を疑う広告。ヘイトではないか?
②この広告に国民民主党立憲民主党の名前?どういう経緯で名前が出ているのか?機関決定をしている?事実ならその責任を問われるだろう。要調査。
③下のACの広告は何?上の広告とあたかも関連するかのように私には見えるが偶然なのだろうか?》
https://twitter.com/kharaguchi/status/1221272599264542720
有田芳生立憲民主党参議院議員だか「元党員」である。そんな有田もこの広告には呆れているようだ。
《古典的な反共主義は20世紀の悪しき遺物。そこに立憲民主党どを巻き込む広告は、まさに陰謀だ。政治的判断への評価や異論と次元は別にして、巧妙なプロパガンダに対しては、黙すことなくダメだと語らなければならない。衆院選共産党の票は欲しい、それ以外は地方の自由では信頼を失う。》
https://twitter.com/aritayoshifu/status/1221387239399145473
「いま、解読する戦後ジャーナリズム秘史」(ミネルヴァ書房)を上梓したばかりの柴山哲也の次のような指摘には同意できる。
《この問題は公器である新聞の広告倫理綱領に抵触しないかの問題をはらむ。
言論の自由や見解の相違で片付けられない。日本新聞協会加盟社の新聞広告には広告表現の倫理綱領がある。
共産党が京都を大切にしていないとの印象操作をもたらす表現とみなされれば京都新聞は紙面対応を迫られる可能性がある。》
https://twitter.com/shibayama_t/status/1221422479903621120
門川大作のオフィシャルページから「応援メッセージ」が消えてしまった。香山リカのツイートで知った。
《あらあら、門川大作候補の応援人や応援メッセージがみーんな消えちゃった!これはもうミステリー!》
https://twitter.com/rkayama/status/1222048355464826880
本当でしょ?
http://www.kyoto-daisakusen.jp/message/
そして誰もいなくなった門川大作の周囲は、かつて反戦脱走米兵援助に携わったベ平連・ジャテック系の人脈で固められているんだけど…時代は変わるということなのだろうか。

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3)【本日の一行情報】

◎インターネットには無料のフェイクニュースが溢れかえっているが、ニュースメディアはインターネットに経済的基盤を蝕まれているのは世界的な現象である。「東洋経済オンライン」は1月28日付で「『フェイクニュース』との正しい付き合い方」を発表している。来日したBBCグローバルニュースの責任者であるジェイミー・アンガスをインタビューした記事である。ジェイミー・アンガスは、こう指摘している。
《メディアの資金調達は大きな課題だ。デジタル収入を得ることは非常に難しく、デジタルからの利益の大半は少数のプラットフォーマーが握っており、ニュースへの投資とリターンが釣り合わなくなっている。そのため営利企業がジャーナリズム、とくに国際ニュースや調査報道へ投資するインセンティブがほとんどなくなっている。
その一方で、現在、ビル&メリンダ・ゲイツ財団など裕福な個人投資家や政府などがジャーナリズムに資金提供するケースもある。しかし、ジャーナリズムが少数の人によって制御されることにつながると危惧している。ジャーナリズムは多様であるべきだからだ。
国の資金や慈善資金、商業資金など多くの形で資金を調達する必要がある。われわれメディアは、営利企業が質の高いジャーナリズムに資金を投入することができる形を探す必要がある。》
https://toyokeizai.net/articles/-/326948
ニュース・メディアの収入源を購読収入と広告収入だけではなく、寄付やファンドといったところまで間口を広げて模索する必要があるのかもしれない。

◎「CNET Japan」は1月28日付で「グーグルやアマゾンに価値観まで変えさせてはならない」を公開している。
《SonosやPopsocketsなどの企業のトップは1月17日、下院が開催した独禁法関連の公聴会で、Amazon、Google、AppleFacebookを非難した。これらのテノロジー企業が、競合他社を締め出し、新興企業をつぶし、中小企業を利用してその巨大な力と利益を維持することで、さまざまな市場で不公平な支配を行っていると主張したのだ。
だが、問題は経済よりもさらに深刻な領域に及んでいる。これらの大企業は、われわれ人間を劣化させてしまうかもしれない。これらの企業はオンラインでの選択の幅を狭め、自社の利益につながるようわれわれを意図的に囲い込んでいる。彼らの手口はあからさまな強制ではなく、例えばソーシャルメディアでの「いいね」やシェア、リツイートなどの、いくつかの動機付け要因を使って、われわれが特定の行動をとるよう条件付けている。だが、こうした条件付けは思わぬ結果を生んだ。われわれは、より深い価値観ではなく、衝動と経済的な利益に駆られて意思決定するようになるにつれ、良心がむしばまれている。簡単に言えば、われわれは人間として悪化しているのだ。》
https://japan.cnet.com/article/35148531/
テジタル人権という言い方を私はしているが、プラットフォームに対してデジタル人権を守らせていく仕組みをどう確立していくかが問われているのだ。放っておけば商業主義の暴走を招くだけである

◎同感だ。「BRUTUS」編集長・西田善太の発言である。「CINRA .NET」は1月28日付で「BRUTUS西田善太×CINRA .NET柏井万作が語る、ウェブと雑誌と編集」を公開している。
《いい編集者というのは、世の中で起きていることすべてを見逃したくないという、子供みたいな想いを抱いている人だと思います。その場にいたい、この目で見たい、それらを誰彼かまわず話したい。そういうサービス精神がないと編集ではない。そしていちばん大事なのは「ウケたい」と思えるかどうか。自分の話をダラダラするのではなく、それがドカンとウケた時に幸せを感じる、そこを忘れてはいけないと思うんです。》
https://www.cinra.net/report/202001-kotodama_gtmnm?path=%2Freport%2F202001-kotodama_gtmnm&page=1

◎「サントリー 伊右衛門の公式Twitter」が呟いていた。
《昨晩は、主人が熱演のあまり、皆様をお騒がせしましたようで、すみません。
まずは心を落ち着け、茶などお召し上がりくださりませ。 妻より》
https://twitter.com/Iyemon_jp/status/1221736794879717382
大河ドラマ麒麟がくる」で伊右衛門のCMに出演している本木雅弘演じる斎藤道三が、娘婿の土岐頼純をお茶で毒殺するシーンが放送されたが、ド迫力の熱演であった。日刊スポーツは1月28日付で「『伊右衛門』が『麒麟がくるの毒殺場面に粋な返し」を掲載している。
《26日放送されたNHK大河ドラマ麒麟がくる」で、長く伊右衛門のCMキャラクターを務める本木雅弘演じる斎藤道三が、娘婿の土岐頼純(矢野聖人)をお茶で毒殺する場面が放送された。SNS上では「こんな恐ろしい伊右衛門あるかぁ」「サントリーさん、ドラマだから許して」などと話題になり、「伊右衛門」が急上昇ワードとしてツイッターのトレンド入りする珍事が発生していた。》
https://www.nikkansports.com/entertainment/news/202001280000016.html
こうした事態を受けて、抜群の運動神経をもって、即座にツイッターで切り返したサントリーSNS戦略が素晴らしい。1.1万のリツイート、1.9万の「いいね」を獲得した。このサントリーのツイートに対するリプライでこんな投稿もあった。
伊右衛門は『山崎の水』をお使いですね。あの『山崎の戦い』の。》
https://twitter.com/moonkiba/status/1221768126703910913

◎「Pen-Online」が2019年10月に渋谷・松濤にオープンした「BAG ONE」(バグワン)を紹介している。出版社の「TWO VIRGINS」が運営する書店だ。
《選書は店舗責任者である神永泰宏さんと後藤さん、吉川さんが行っており、大好きなビート学やヒッピーカルチャー、旅関連の書籍が数多く並んでいる。棚を見ているだけで、自由や土地と暮らしを愛するこの店の姿勢が伝わってくるのがわかるだろう。また、書店だけではなく、1階の奥と2階が居心地のよいカフェバーになっているのも特徴。旅を感じさせるこだわりのフードメニューが充実しているほか、100種類以上のラムを楽しめる。2階にはプロジェクターが設備されており、アート作品を飾れる展示壁も完備。
https://www.pen-online.jp/feature/culture/bookshops/1

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4)【深夜の誌人語録】

過程のない結論などあり得ない。