【文徒】2020年(令和2)6月25日(第8巻116号・通巻1773号)



Index------------------------------------------------------
1)【記事】「大波小波」に絶賛された天祢涼「あの子の殺人計画」(藝春秋)
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】
----------------------------------------2020.6.25 Shuppanjin

1)【記事】「大波小波」に絶賛された天祢涼「あの子の殺人計画」(藝春秋)

天祢涼からすれば「アンアン」に取り上げられたのが嬉しかったのではないだろうか。速報としてツイートしている。
《【速報】本日発売の『anan』(2206号)に取材していただきました。『あの子の殺人計画』について話しております。》
https://twitter.com/amaneryo_on_tw/status/1275557498510954496
天祢涼は「キョウカンカク」で講談社メフィスト賞を受賞してデビューしたミステリ作家である。
https://www.amaneryo.com/2020/06/blog-100/
藝春秋から刊行された「あの子の殺人計画」は「希望が死んだ夜に」につづく、神奈川県警本部捜査一課の真壁と生活安全課に所属しながら数々の事件を解決に導いた女性捜査員・仲田蛍のコンビが活躍するシリーズの第二作にあたる。「希望が死んだ夜に」では「こどもの貧困」をテーマにしていたが「あの子の殺人計画」は「こどもの虐待」をテーマにしている。社会派と本格派を融合したミステリーだ。
https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163912080
「ビストロ三軒亭」シリーズのミステリ作家・斎藤千輪がこう絶賛している。
《天祢涼さん( @amaneryo_on_tw )の最新ミステリ『あの子の殺人計画』を読了。
虐待されても母を庇おうとする少女、殺人の容疑者となる母。一気に読み進めた終盤、まさかの展開に唖然!
帯の「あなたは絶対に見破れない」のコピー通り、天祢さんの仕掛けたトリックに騙されました。
再読必至!》
https://twitter.com/chiwa_room/status/1272812056576552960
「あの子の殺人計画」は東京(中日)新聞の「大波小波」で「『今』の社会派推理小説」として取り上げられている。
《風俗店の女性オーナーが殺された。かつて被害者の店で働いていたシングルマザーの椎名綺羅が捜査線上に浮かぶが、動機がなく娘といたアリバイもあった。一方、母子家庭で生活苦にあえぐ母親に虐待されていると気付いた小学五年生の椎名きさらは、密(ひそ)かに母親を殺す計画を作り始める。
それぞれの事件はどのように決着するのか? 二つの事件に接点はあるのか?
これらの謎が解かれるにつれ、貧困が児童虐待の原因の一つになっていること、貧困が親から子へ受け継がれると、同じように虐待も受け継がれる貧困の連鎖、虐待の連鎖が起こる可能性が高くなるなど、厳しい現実も明らかになる。》
https://www.chunichi.co.jp/article/75938
天祢涼は「大波小波」を単なる書評としてしか理解していないところが、私などからすれば初々しくもあり、好感が持てる。自らのブログにこう書いている。
《6月19日「中日新聞」夕刊の「大波小波」のコーナーで『あの子の殺人計画』を紹介していただきました(系列の「東京新聞にも掲載されていた様子)。選者は、おそらく記者のかたですね。
『「今」の社会派推理小説』として、新型コロナと絡めつつ、「負の連鎖を断ち切る手がかりを示した」など、大変光栄なお言葉をいただいています。》
https://www.amaneryo.com/2020/06/anoko-tokyoshinbun/
東京新聞の前身にあたる都新聞に端を発している「大波小波」といえば過去に作家の丸谷才一花田清輝中村光夫といった錚々たる大物が執筆していた匿名コラムだ。連載が始まったのは昭和8年(1933)のことである。
これも驚かされたのだが、天祢涼は書店向けの販促物も自ら作っているのだ。天祢は自らのブログにこう書いている。
《発売前に読んでくれた人からは「やってくれたな、天祢涼!」「大傑作の誕生かっ!」などの声をいただいていますm(_ _)m
そうした声がうれしくて、例によって今回も作者自ら販促物をつくっています。
何年か前までは「こんなの小説家の仕事じゃない」「売れっ子になったらつくらずに済む」という気持ちも正直ありました。が、「どうせつくるんだったら色々やろうぜ!」と思うようになってからの方が、不思議と応援してくれる人が増えた気がします。楽しんでつくる、これ大事。
以上、「小説家だったら新作を書くことに集中しなさい」という指摘を無視してノリノリでつくっていることの言い訳をしたところで、今回の販促物をご紹介。下記4点です。》
https://www.amaneryo.com/2020/05/anoko-pr/#i
「あの子の殺人計画」ではフリーペーパー(A4用紙1枚、両面印刷)、豆色紙、POP二種類の計4点を作成しているのだが、天祢は《「うちの売り場はどれにも当てはまらない。こういう販促物がほしい!」という希望があれば、遠慮なくご連絡ください。作者が自分でつくっているのでフットワークは軽いです。》とまで書いているのだ。「あの子の殺人計画」を展開している書店をしっかりと把握しようとしている。これは書店から愛されるよな。
https://www.amaneryo.com/2020/06/anoko-bookstore/
うさぎや矢板店の書店員きらり3888のツイート。
《天袮涼さん『あの子の殺人計画』藝春秋 入荷しました!うさぎや矢板店 色紙とフリーペーパーをいただきました。私のコメントも掲載されています 著者が様々な目線に立ってこの世に生み出した、まるでノンフィクションのような社会派ミステリー。子どもを守る一石になることを願って読みました》
https://twitter.com/kirari3888/status/1263799036408025088?ref_src=twsrc%5Etfw

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2)【本日の一行情報】

集英社女性誌「SPUR」8月号を熟読した。「私たちは黙っていないOUR FUTURE, OUR VOICE 100人の声」というタイトルからして熱い。ともかく編集者の熱量が伝わって来る一冊であった。特集のトップに登場するのは、この号の表紙のイラストを描いた女優の杏だが、私は杏がEテレの「緊急対談 パンデミックが変える世界」でジャック・アタリが危機に面した今こそ、利他的であることが大切だと言ったことに関心を持っていることを知った。杏は言う。
《…利他主義というのは、合理的な利己主義なんだというんですね新型コロナウイルスの場合も自分が感染しないためには、どうしても他人の感染を防ぐ必要があります。つまり、利他的であることは、ひいては自分の利益につながるということです。》
ジャック・アタリ欧州復興開発銀行の初代総裁をつとめたことで知られるが、私からすれば「ノイズ──音楽・貨幣・雑音」ジャック・アタリである。それまではノイズとしてしか認識されていなかったもののなかから、モーツァルトにしても、ジミ・ヘンドリックスにしてもそうであったように、新しい価値が生まれるというジャック・アタリの煽動にまだ大学生であった私は大いに酔っ払ったものである。
https://spur.hpplus.jp/magazine/202006/QSGUSYA/
昔は「マリクレール日本版」とか「流行通信」を熟読していたんだよな。そう言えば私が鷲田清一に度肝を抜かれたのは「マリクレール日本版」の連載によってであった。「モードの迷宮」である。広告主の顔しか見なくなって女性誌はつまらなくなったというのが私の基本認識である。

◎「NHK NEWS WEB」は6月23日付で「外出禁止や休業を強制できる法改正必要62% NHK世論調査」を掲載している。
感染症の拡大を防ぐため、政府や自治体が外出を禁止したり、休業を強制したりできるようにする、法律の改正が必要だと思うかNHKの世論調査で尋ねたところ、「必要だ」と答えた人が62%に上り、「必要ではない」と答えた人の27%を上回りました。》
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200623/k10012480041000.html
長野智子のツイート。
《うそでしょ。。》
https://twitter.com/nagano_t/status/1275323986839130114
堀江貴のツイート。
《めっちゃやばい風潮だこれ。》
https://twitter.com/takapon_jp/status/1275320198074007554
東京新聞記者の望月衣塑子も次のように危惧している。
《緊急時に外出禁止を強制し、自粛を求めるような動きが、世論の中から出てきている現在の空気は極めて危うい。かつて、日本では、世論が全体主義に向かい、第二次世界大戦に突き進んだ事を忘れてはいけない。》
https://twitter.com/ISOKO_MOCHIZUKI/status/1275590580597227521
これは清水潔のツイート。
鎖国以来の縛られ好き国民なのだろうか。あるいは長き悪政下に置かれ続けた国民全体ストックホルム症候群か。
この調査結果をまた国営放送がタレ流すという恐怖。》
https://twitter.com/NOSUKE0607/status/1275583198781558784
自粛警察支持派も多いのかもしない。

◎ロイターは6月23日付で「グーグルの米広告収入、新型コロナの影響で5.3%減少へ=調査会社」を配信している。
《調査会社イーマーケターは22日、米アルファベット(GOOGL.O)傘下のインターネット検索大手グーグルについて、今年の米国内の広告収入が前年比5.3%減少するとの見通しを示した。新型コロナウイルスが世界的に大流行する局面で、広告主の各社が支出を削減するため。》
https://jp.reuters.com/article/alphabet-google-advertising-idJPKBN23T3C7
グーグルは新型コロナの感染拡大で最も打撃を受けた業種と言われている観光業界の広告に大きく依存していることが響いたようだ。

◎「週刊少年マガジン」連載の和久井健「「東京卍リベンジャーズ」が「東京リベンジャーズ」のタイトルで2021年にテレビアニメ化されることが決まった。
https://eiga.com/news/20200622/4/

◎道端アンジェリカが、初ヌード写真集「Angelica」を双葉社から8月7日に発売する。カメラマンは「少女アリス」「Rain」「なぎさホテル」「ロクス・アモエヌス」の沢渡朔!これは期待できる。
https://www.tokyo-sports.co.jp/entame/news/1920081/
道端と言えば「S Cawaii!」(主婦の友社)だったよなあ。インスタグラムに写真を公開。
https://www.instagram.com/p/CBtpC_jHL4U/
早くもアマゾンランキング1位を獲得。
https://www.instagram.com/p/CBxPo2GH8QU/
追伸、「昭和」の伊佐山ひろ子は良かったよね。

◎「婦人公論」7月14日号(中央公論新社)は、ミュージシャンのDAIGOと宮澤エマの対談を掲載している。DAIGOの祖父竹下登元総理であり、宮澤エマの祖父が宮沢喜一元総理!
https://natalie.mu/stage/news/384299

◎「春オンライン」は「週刊春」6月25日号で明らかにした「持続化給付金事業の下請け企業が、電通の意向として、ライバル会社の博報堂に協力しないよう下請けを”恫喝”するメッセージ全」を6月21日付で公開した。
《そのため、電通傘下で本事業にかかわった会社が、この博報堂託事業に協力をした場合、給付金、補助金のノウハウ流出ととらえ言葉を選らばないと出禁レベルの対応をするとなりました。
対象はこのリストに載っている各社の皆様にご協力をお願いできればと思います。
TOWとしても長年の関係と信頼があるうえで、今回の仕事をいただいているため、当然ですが弊社が協力をお願いした皆様にもすいませんが、強制的にお願いしたい次第です》
https://bunshun.jp/articles/-/38584
「週刊春」の記事の正しさを経産省が認めたということだろう。
共同通信は6月23日付で「給付金、電通が下請け圧力に関与 経産省、委託先から報告」を配信している。
経済産業省は23日、新型コロナウイルス対策の「家賃支援給付金」の事業委託を巡って電通の取引先が下請け会社に圧力をかけ、電通社員も関与していたと明らかにした。電通が設立に関わり、別の給付金事業を受託している一般社団法人サービスデザイン推進協議会から報告を受けたという。》
https://this.kiji.is/648064780255970401?c=39550187727945729
朝日新聞デジタルは6月23日付で「電通の『圧力』、経産省が確認 担当管理職が不適切発言」を掲載している。
経済産業省の民間委託事業に絡んで広告大手の電通が下請け企業に圧力をかけた疑いについて、経産省は23日、電通社員1人が不適切な発言をしていたと認めた。この社員は管理職とみられ持続化給付金の事業を担当していた。経産省は他にも同様の行為がなかったか調べる。》
https://www.asahi.com/articles/ASN6R6F3CN6RULFA01S.html?ref=tw_asahi
東京新聞は6月24日付で「電通の下請け圧力、発言したのは持続化給付金担当」を掲載している。
《広告大手の電通が国の家賃支援給付金事業を巡り下請けに圧力をかけた問題で、電通以外の企業に協力しないよう発言した社員は、持続化給付金事業を担当する管理職だったことが分かった。同事業の外注先である複数の下請けに電通が圧力をかけた恐れもあり、野党は閉会中審査の国会で追及を強める構えだ。》
https://www.tokyo-np.co.jp/article/37446

◎今回の都知事選に関して確かにテレビの扱いは冷たい。4年前とはえらい違いである。こうなると都知事としてテレビに出まくっていた現職に圧倒的に有利に働こう。「日刊ゲンダイDIGITAL」は6月23日付で「小池知事“雲隠れ”にTV局加担…他候補と報道時間つり合わず」を掲載している。
《「都知事選を報道しようにも各候補を映す『尺』を揃える必要があります。少なくとも主要5候補の放送時間を平等にしないと、映像が短かった陣営や支援者から『差別だ』と抗議される恐れがあるのです。ところが、平等に扱おうとすると、ネット動画出演くらいしか選挙活動の『画』がない小池知事と、頻繁に街宣する他候補の『尺』がつり合わなくなる。小池知事のネット動画をテレビで流しても、まず数字は取れませんしね。街宣に出てくれれば『平等』に報道できるのですが……」
元キャスターの小池知事のことだ。「尺を揃えないと放送できない」というテレビ局の“不律”を知った上で、引きこもっている可能性もある。》
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/274996

クックパッドはローソンと連携し、東京都内の「ローソン」3店舗(港一の橋店、世田谷桜新町二丁目店、久が原一丁目店)において、生鮮食品EC「クックパッドマート」の商品受け取り場所である生鮮宅配ボックス「マートステーション」を活用した生鮮食品販売を6月18日より開始している。「クックパッドマート」のコンビニへの導入は初のことだ。
https://info.cookpad.com/pr/news/press_2020_0618

◎木俣正剛が「ダイヤモンド・オンライン」を舞台に春秋時代を振り返って快調である。
6月24日付のお題は「『週刊春の記事内容を事前につかめ!』新聞社・広告代理店との攻防」である。
《新聞広告や中づりは、編集長が作ります。日曜の段階でタイトルを考え、記事の扱い、大小、右トップと左トップに持ってくる記事はどれか、といった原案をすべて編集長が考え、出来上がってから編集幹部と話し合って完成させます。そして、火曜の夕方には中づりは電通に、新聞広告は新聞社に運ばれます。なぜ、発売日よりも2日も早いのかというと、一応、理由は「新聞や中づりのNGワードと週刊誌の言葉が合うかどうか」を審査するということになっています。》
《まあ、しかし、双方がうすうすわかっていることなのですが、実際には、新聞社は週刊誌が自分たちの知らないことをやっていないか、やっていれば、担当各部署に「こんな記事が出るよ」と通報するための事前審査であることは間違いありません(かつて担当した新聞社の人は認めていました)。中づりにしても、担当が広告代理店ですから、クライアントに内容を通報する可能性は十分にあります。》
広告代理店の立場からすればクライアントに内容を通報するのも仕事のうちであろう。木俣は春と新潮の違いにも言及している。実は、この違いは大きい。
《新聞広告を巡っては、もう1つ重要な戦いがあります。その新聞の批判をするときの記事の言です。朝日新聞従軍慰安婦報道を巡る騒動では、自紙に自分の新聞への批判が堂々と掲載されることに対し、新聞側からも随分と言の交渉がありました。
週刊新潮』はこういう場合、強気に出ます。「ダメなら黒塗りにしてくれ」と。確かに、なんだろうと読者に思わせる効果があります。春は伝統的に双方の主張を入れて、妥協点を探るのが方針でした。やはり黒塗りは、あんまりきれいなものではないし、読者にもあざといと思われる、私はそう思っていました。》
交渉を完全に断ち切る新潮と交渉の余地を残す春と言えば良いのだろうか。実はクライアントなども、この違いを痛感することは度々あるはずだ。
https://diamond.jp/articles/-/241191

毎日新聞は6月24日付で「NHKは何を間違ったのか NHK動画に厳しく抗議 偏った黒人像を作った『400年制度化された差別』」を掲載している。立命館大学教授の坂下史子が次のように述べている。
《13人でアニメ動画だけではなく番組内容も確認し、いろいろと問題があると思いました。まず、動画には抗議デモが起こった直接のきっかけである警察暴力の話がでてこないため、誤解を招く。怒っている本当の理由がよく説明されていません。さらに、激怒する筋骨隆々の男性を登場させ、「粗野で、怒りのコントロールができない」という黒人に対する否定的な固定観念ステレオタイプ)とくっつけてしまった。米国ではこうした偏った黒人に対するイメージが、不平等な社会の仕組みを維持するために使われてきた歴史があります。》
https://mainichi.jp/articles/20200623/k00/00m/030/330000c

朝鮮日報は6月23日付で《「『愛の不時着』5回も見た」 ヒョンビンが日本の週刊誌の表紙に》を掲載している。
《韓日関係は戦後最悪だが、日本では韓流が再び脚光を浴びているアカデミー賞4冠を達成した映画『パラサイト 半地下の家族』に続き、今度はドラマ『愛の不時着』が大人気を呼んでいる。朝日新聞は17日、「韓流ドラマ再ブーム」という記事で、日本でもインターネット動画配信サービス「ネットフリックス」が配信中の『愛の不時着』を集中的に取り上げ、分析した。同紙は、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)上に「(新型コロナウイルス禍による)自粛生活の唯一の彩り」「もう見るのは5回目」といった賛辞が並んでいると報じた。
週刊朝日」最新号は同ドラマで主演した俳優ヒョンビンを表紙モデル=写真=にした。同誌は、ヒョンビンに魅了される日本人女性が急増しているとして、『愛の不時着』が社会現象になっていると伝え、カラーグラビアを含む合計10ページにわたって「ドハマりする韓流ドラマ20」特集を組んでいる。》
http://ekr.chosunonline.com/m/svc/article.html?contid=2020062380176
朝日新聞の影響力は大きいのである。

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3)【深夜の誌人語録】

謙虚になれないのは自信がないからだ。