【文徒】2020年(令和2)7月16日(第8巻131号・通巻1788号)


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1)【記事】「サンデー毎日」の田中康夫「『電通』化する日本」を読む
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】
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1)【記事】「サンデー毎日」の田中康夫「『電通』化する日本」を読む

田中康夫が「サンデー毎日」に連載している「令和風景論」。7月26日号は「『電通』化する日本 巨大広告代理店は なぜ迷走したか」を掲載している。田中が電通グループ社長・山本敏博に投げつけた直言は、変化球ではなく、いつもながらの剛速球である。経済構造が空洞化し、労働環境が劣悪化する現在の風景を電通』化する日本として可視化させようと試みているのである。
剛速球であるというのは、田中の「論」は決して観念に逃げることなく、「具体」に徹底的に拘っているということだ。その徹底性が「普遍」を獲得していくと言ったら大袈裟かもしれないが、山本への激烈なる直言は、実は私たちへの直言であるという「本当の」正体を現すのである。
《…僕は「中抜き」とは異なる真っ当な仲介役の代理店は、eコマースの時代に於いても信頼と存在価値を得続けると考えています。個々の立場を越えて「ステイクホルダー・エコノミー」に集う私達が拳拳服膺すべき「三方良し」の矜持と諦観なのです。
が、そうした「良心」の持ち主をも、いとも無慈悲に併呑し、消費していく昨今の「世の中」。この先、私達は何処へ向かっていくのでありましょう?》
田中は「中抜き」に「やらずぼったくり」、「eコマース」に「ちょくせつとりひき」、「世の中」に「ニッポン」とルビを振っている。このルビには、さして驚かなかった私ではあるが、田中は「ステイクホルダー・エコノミー」に「しゃかい」とルビを振っていることに思わず膝を叩いた。「矜持」という言葉に実態と重量を持たせるべく、この言葉を単独で使用していない。「諦観」とワンセットで使っているのだ。そうすることで「矜持」にも、「諦観」にも、リアリティが生まれて来るのである。
更に言えば「三方良し」が近江商人の心得であることは周知の事実だが、田中はここで堤清二を想起しているのである。堤清二は田中を前にして「私は資本主義社会、自由主義経済をより良く正すトロツキストとしての役割が課せられているのかも知れませんね」と呟いたことが踏まえられているのである。この堤の呟きは「週刊SPA!」2013年12月10日号の連載「その『物語』の、物語。」で紹介されているのだが、ここで田中は「富国裕民」という言葉を使っているのだ。そのことを踏まえて言えば《個々の立場を越えて「ステイクホルダー・エコノミー」に集う私達が拳拳服膺すべき「三方良し」の矜持と諦観》が「富国裕民」を支えるのだ。
しかしながら「そうした『良心』の持ち主をも」、経済的新自由主義の妖怪は「いとも無慈悲に併呑し、消費していく」のだろうし、そんな妖怪が跋扈する「昨今の『世の中』」は、やがて竹中平蔵えも歯車として消費してしまうのは間違いないにしても、最終的に私たちを何処に連れて行こうとしているかといえば、田中がイメージし、また危惧しているのは田中や山本の父親に当たる世代が経験した1930年代の「悲劇」を、「茶番」として繰り返す場所なのではないだろうか。電通グループの山本はいざ知らず、私はそのような近未来を断固として拒絶したいと思っている。
http://mainichibooks.com/sundaymainichi/society/2020/07/26/post-2530.html
http://www.nippon-dream.com/?p=11215
いずれにしても、田中康夫の優しさをどのように受けとめるのか、その点に関しては山本敏博の「人間性」が問われているはずである

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2)【本日の一行情報】

◎7月15日の歴史的な意味を噛みしめたい。松井計のツイートだ
《今日は82年前に日本が東京オリンピック開催権を返上した日なんですね。ところがその事で1940年の第12回夏季オリンピック競技大会が中止になったのではありません。日本がバンザイした後、代替開催地にヘルシンキが決定。しかし第二次世界大戦の戦火が広がり、そのヘルシンキ大会が中止になったのです。》
https://twitter.com/matsuikei/status/1283272126066114560

◎「窓際記者」のツイート。核心は衝いている。
《ちなみに朝日新聞東京新聞の記者がみんな左翼というわけでもないし、産経の記者だってネトウヨ思想丸出しなのはごく一部。読売だってみんな巨人ファンではない。ただ日経の記者がネオリベ賛の新自由主義者の傾向が強いのは間違い無いから豆知識として覚えておこうな、おじさんとの約束だ!》
https://twitter.com/nekokisha/status/1283060782050271233
これも「窓際記者」のツイートだ。
東京新聞の知人曰く、社内競争がいかに安倍政権批判に絡めるかという手腕の見せ所コンテストになった結果が今の惨状だと。
極左路線で朝日から顧客を奪えると分かったし、地道に下町を取材して記事を書くよりお手軽な政権批判で紙面を作る方が楽なので、ビジネス左翼路線から戻れないのでしょう。》
《昔の「こちら特報部」なんて、手間暇かけた調査報道のお手本のような記事ばかりで、良い仕事してたんですよ、東京新聞
今や安倍政権批判を適当に切り貼りしたコタツ記事ばっかになってしまったので、目を通す価値もなくなったけど。思考停止して「全部安倍のせいだ」ってやってた方が楽だもんね…》
https://twitter.com/nekokisha/status/1283045858519461888
https://twitter.com/nekokisha/status/1283051368404652033
産経であろうが、東京であろうが、所詮、ブル新だからね。商業出版よりもブル新のほうがタチが悪いし、抑圧的であるという現実は、私も10代の頃より垣間見て来た、それだけのこと。

◎こういうことは、しっかりと記録にとどめておく必要がある。鹿児島のフリーランス・有村眞由美の連投ツイートだ。
《現時点で得た言葉からは新知事も県も質問を鹿児島県知事会見での質問制限をするつもりがない模様。会見主催者である青潮会が質問を禁じなければ、フリーランスも質問可能となるはずだ。青潮フリーランスの質問禁止を続けるのか、KTSと共同通信に二日前と本日も連絡を試みるも返答待ち状態が続く》
《さきほど共同通信からお電話をいただきました。》
《鹿児島県政記者クラブ青潮会)の幹事社共同通信からの折り返し電話で、新知事就任会見でのフリーランスの参加と質問につき、主催者である青潮会の考えを聞きました。「オブザーバー参加(質問できない)という規約に則ることになると思う。記者クラブ総会を開き内容を検討することが必要」との回答。》
《参加申込みについても尋ねたところ「申込書があったと思うので、あらためて示す。東京から来るとなると、どこで線引きをするかの問題がある。各社の意向というか記者クラブとしての判断となるので、クラブ総会の招集を含めて対応させていただきたい」との回答。》
《先ほど、青潮会のもう一つの幹事社KTS鹿児島テレビから電話がありました。本日午後に幹事社で話し合い、規約も調べて連絡する。結論をもらえるか聞くと「結論というところでお伝えしたいとは思っているが、とりあえず幹事社で話すことにしている」とのこと。》
《「28日の就任会見に間に合わないと困る。幹事社だけでは決められないだろう。総会招集にも時間がかかるだろうから、集まらずともSNSも使えるので青潮会として「フリーランスの質問権制限」を継続するのかだけでも決議して欲しい。明日には連絡をいただけると昨日聞いているのでお願いします」と返事》
https://twitter.com/arimumay/status/1282941295061643265

https://twitter.com/arimumay/status/1283234146442047490
畠山理仁が引用ツイートを投稿している。
《鹿児島県知事記者会見におけるフリーランス差別の問題。塩田康一 @shiota_koichi 新知事や県庁側は「フリーランスの質問権」について前向きな回答。ところが鹿児島県政記者クラブ青潮会」がクラブ規約というローカルルールを盾に「質問権」を認めない可能性あり。本末転倒。何のための記者クラブか。》
https://twitter.com/hatakezo/status/1283042720022507520

ニューヨーク・タイムズ東京支局長だったマーティン・ファクラーがツイートしている。
NYタイムズ紙は、中国の新しい国家安全法が香港での報道の自由を制限するのを懸念して、アジアの拠点を香港からソウルに移転させると発表した。移転先として東京やシンガポールも調べたが、ソウルのほうが「海外企業を歓迎し、メディアが自立しているから」と判断したそうだ》
https://twitter.com/martfack/status/1283217904880607232
朝日新聞の鮫島浩が引用リツイートしている。
NYタイムズ報道の自由が制約される香港からアジア拠点を移転するにあたり日韓メディアを比較して東京ではなくソウルを選んだ現実を日本のテレビ新聞は重く受け止めるべきだ。私も二月に訪韓しソウルの記者たちと意見交換したが、東京より風通しがよいと感じた。》
https://twitter.com/SamejimaH/status/1283249827048902662

ニッポン放送は7月13日(月)22:00から24:00の時間帯で「開局65周年」記念特番「倉本聰・古木巡礼~森のささやきが聞こえますか」をオンエアした。「YAHOO!ニュース」碓井広義は「ラジオの『魅力』を再認識させた、ニッポン放送倉本聰』特番」を発表している。
《構成はシンプルで、主な要素は3つです。倉本聰さんと女優・清野菜名さんの「対談」。坂本長利さん、倍賞千恵子さん、西田敏行さんという名優たちによる、倉本さんの書下ろし『「古木巡礼」ストーリー』の「朗読」。そして、挿入される中島みゆきさんの「歌」になります。
この3要素が、交互に組み合わされて、番組は進行していきます。まず対談ですが、もちろんリモート形式。とはいえ、ラジオですから、普通に会話しているように聴こえて、違和感などありません。
https://news.yahoo.co.jp/byline/usuihiroyoshi/20200714-00188065/
福島の立ち入り禁止区域にある「桜」の木の話では倉本が「明の進み方が間違っていたというか、行き過ぎたと思うんだよね」と語る。このパートで流れるのは「世情」だった。ラジコで聞けるのが嬉しい。
http://radiko.jp/#!/ts/LFR/20200713220000

◎日刊スポーツは7月15日付で「トランプ氏めい暴露本発売、米でベストセラー」を掲載している。共同通信の配信記事である。
《トランプ米大統領のめいメアリー氏(55)が、一族の内情を暴露しトランプ氏を批判した著書が14日、発売された。トランプ氏が名門大に入るために「大学進学適性試験」(SAT)を別人に受けさせる「替え玉受験」を行ったなどと指摘し、米国では予約販売時点から関心が高くベストセラーとなっているもようだ
題名は「トゥーマッチ・アンド・ネバーイナフ」。》
https://www.nikkansports.com/general/news/202007140001305.html
スキャンダラスな話題に包まれていただけに、これがパブリシティとなった。ロイターは7月14日付で「トランプ氏めいの内幕本、最高裁が出版差し止め仮処分を解除」を掲載している。
ニューヨーク州最高裁は13日、トランプ米大統領のめいのメアリー・トランプ氏が執筆したトランプ一族の内幕本について、出版を差し止める仮処分命令を解除した。
本の題名は「トゥー・マッチ・アンド・ネバー・イナフ」。トランプ氏の弟ロバート・トランプ氏が、出版は1999年に死去したトランプ氏の父親との間で合意した守秘義務に違反していると主張し、差し止めを要求。ニューヨーク州の裁判所が6月30日、出版を一時的に差し止める仮処分命令を出していた。》
https://jp.reuters.com/article/usa-trump-mary-trunp-book-idJPKCN24F01T
トランプ本が次々にベストセラーになっている。

◎木俣正剛は「藝春秋」の編集者時代、6年間にわたって松本清張を担当していたという。
《どんな作品でも手を抜かないところが、清張先生のすごいところでした。松本清張と名前がついていれば、適当に書いても絶対売れる時代です。しかし、小心と思えるほど原稿にこだわりがありました。
ご自宅に原稿をいただきにいくのですが、1回にもらえる原稿は400字3枚と決まっています。で、何度も何度も「感想はどうかね」と尋ねられます。1200字に感想を何度もいうのは辛いので、必死で他の話題を持ち出して、逃れるのが編集者の生存術です。一番話をそらしやすいのは、人事の話。清張さんは会社の人事の話が大好きでした。》
https://diamond.jp/articles/-/243084

◎「NEWSポストセブン」は7月14 日付で「Netflixはいかにして韓国ドラマを世界的ブームにしたのか?」を掲載している。ソウル在住のKDDI総合研究所特別研究員・趙章恩は
Netflixにとっても、今や韓国ドラマは同社の収益を支える重要な存在だ。Netflixは、『愛の不時着』を制作した韓国の制作会社「スタジオドラゴン」の2番目の大株主でもあるが、Netflix側に不利な資本提携だったにも関わらず、株主になることを選んだ。2020年1月の決算発表でも、同社のテッド・サランドスCCO(最高コンテンツ責任者)は「韓国制作者のレベルの高いコンテンツが途方もない影響を作り出すだろう」と話し、株主に宛てた書では「Made in Korea作品に投資し続ける」と書いたほど、韓国ドラマに熱を入れているようだ。》
https://www.news-postseven.com/archives/20200714_1577763.html?DETAIL

◎「まいじつ」は7月12日付で「もはや別人!? 山川恵里佳の“変貌”に衝撃…『誰だか全然分からない』」を発表している。
《タレントの山川恵里佳が7月5日、自身のSNSを更新。レアな眼鏡ショットを公開したのだが、ネット上では彼女の〝田中みな実化〟を指摘する声が多く上がっている。》
https://myjitsu.jp/archives/124779
確かに眼鏡が似合っている。

◎GoToキャンペーンの評判は相変わらず悪い。猪谷千香のツイート。
《GoToキャンペーン、そりゃやれば都市から地方の観光地に行く人たちはある程度いるでしょう。でも、もしもそれで地方に感染者が増えれば、地方では観光業の人たちと、そうじゃない住民たちとの間で、すごい摩擦が起きるのではないかと心配している…》
https://twitter.com/sisiodoc/status/1283041610784276480
毎日新聞は7月15日付で「東京、コロナの警戒レベルを最高に『感染拡大』 小池都知事、緊急記者会見へ」を掲載している。
《東京都は15日、新型コロナウイルスの感染者の急増などを受け、感染状況の警戒レベルを4段階のうち、最も高い「感染が拡大していると思われる」に引き上げる方針を固めた。》
https://mainichi.jp/articles/20200715/k00/00m/040/126000c
毎日新聞は7月15日付で「東京、コロナの警戒レベルを最高に 『感染拡大 』 小池都知事、緊急記者会見へ」を掲載している。
《東京都は15日、新型コロナウイルスの感染者の急増などを受け、感染状況の警戒レベルを4段階のうち、最も高い「感染が拡大していると思われる」に引き上げる方針を固めた。》
https://mainichi.jp/articles/20200715/k00/00m/040/126000c
毎日新聞編集編成局次長兼写真・映像報道センター長の齊藤信宏が引用ツイートしている。
《警戒レベル4段階のうち最も高い「感染が拡大していると思われる」東京から、地方にGoToって…。本当に #GoToキャンペーン の前倒しは思いとどまったほうがいいと思います。》
https://twitter.com/nobusaitoh/status/1283273657586814976
共同通信は7月15日付で「『GoTo』事業、予定通り開始 指針拒否なら休業要請、衆院審議」を配信している。
西村康稔経済再生担当相は15日の衆院予算委員会で、新型コロナウイルス感染症を受けた政府の観光支援事業「Go To トラベル」に関し、22日に予定通り開始すると表明した。「感染防止策の徹底を基本として開始する予定だ」と述べた。》
https://www.47news.jp/politics/5016387.html
朝日新聞記者の三浦英之のツイート。
《「東京都の施策」と「Go to ナントカ」はどうしても矛盾して見えます。「慎め」と「行け」と。例えば「Go to ナントカ」は感染の拡大していない地方に限定し、「同県内の移動」などの調整が必要ではないだろうか》
https://twitter.com/miura_hideyuki/status/1283269029726007296
津田大介のツイート。
《GoToトラベルを考える上で悩ましいのは観光業がコロナの影響をもろに食らっている業種だってことなんだよな。実際帝国DBのコロナ関連倒産では業種別でずっと上位 https://tdb.co.jp/tosan/covid19/index.html
補償するには規模が大きすぎるので無担保融資を続けるしか現実的な道はない気がする。》
https://twitter.com/tsuda/status/1283245578638331904
英軍事誌ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー東京特派員・高橋 浩祐がツイッターで次のように連投している。
《東京都が15日、新型コロナの警戒レベルを最高水準に引き上げる一方で、西村康稔経済再生担当相は同日の衆院予算委員会で、政府の観光支援事業「Go To トラベル」を22日に予定通り開始すると表明した。》
《しかし、小池知事だけではなく、このところ、大阪や青森、山形、熊本など各地の知事が「Go To トラベル」で、旅行者が首都圏から地方に新型コロナの感染を拡散することを懸念する声が上がっている。地方と国のチグハグ感が際立ってきている。》
《地方は医療ソースが乏しいほか、高齢者の人口割合もぐっと多いクラスターが発生した時のことなどを心配し、慎重な声が上がるのは当然だろう。
また、いまGo To トラベルを実施したら、感染拡大に火に油を注ぎ、コロナ収束が長引き、逆に観光産業もさらにダメージを受ける事態にもならないか。》
https://twitter.com/KosukeGoto2013/status/1283272585271218177
https://twitter.com/KosukeGoto2013/status/1283272671375982592
https://twitter.com/KosukeGoto2013/status/1283272750019121153

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3)【深夜の誌人語録】

最終的には理屈ではなく「好み」が問われるはずだ。