【文徒】2020年(令和2)9月29日(第8巻179号・通巻1836号)

Index------------------------------------------------------
1)【記事】講談社「瀧澤ななみ本」回収・返金事件
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】
----------------------------------------2020.9.29 Shuppanjin

1)【記事】講談社「瀧澤ななみ本」回収・返金事件

講談社から6月24日に発売された「ベストライセンスシリーズ 新しいFP3級テキスト&問題集〈2020年‐2021年版〉」「同FP2級テキスト&問題集」は、記載内容に多数の誤りがあることが発覚し、回収・返金されることになった。講談社は9月7日に「『FPテキスト&問題集』の販売中止ならびに回収・返金のお知らせ」を発表している。
《本書につきまして、記載内容に多数の誤りがあることが判明いたしました。
FP技能検定を受検されるかたがたをはじめ、この度は皆様にご迷惑をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます。
なお多数の誤字脱字・誤植につきましても重ねてお詫びいたします
弊社はこの事態を受けまして、両書の販売を中止するとともに、店頭在庫の回収を進めております。またすでにご購入いただいた皆様には、お手数をおかけいたしましてまことに申し訳ありませんが、ご返品いただいた上で返金させていただきます。》
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000343554
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000343552
確かにテキストや問題集としては致命的な間違いを犯している。
https://www.kodansha.co.jp/upload/pr.kodansha.co.jp/files/pdf/2020/20200906_FPtext_errata.pdf
三カ月近くも気がつかなかったことが問題である。編集プロダクションに丸投げした企画であったのだろうか。だとしても、編集者は自らの出版物に対する「愛」を持っていれば、こんなことにはならなかったのではないだろうか。年収2000万円の編集者であっても、問われているのは出版に対する「愛」だろうに。
資格書・実用書の編集者・大倉裕貴は次のようにツイートしている
講談社の「Let’s Start!新しいFP2級AFP テキスト&問題集」「Let’s Start! 新しいFP3級 テキスト&問題集」ですが、誤植が多すぎて返金&回収となったようです。不良品を売りつける会社が講談社と滝澤ななみです。》
https://twitter.com/yohkura10/status/1304088625647239168
滝澤ななみというのは、同書の監修者である。瀧澤ななみはTAC出版でも、「みんなが欲しかった! FPの教科書 3級 2020-2021年」を5月27日に発売しているが、こちらは講談社のように「間違いだらけの教科書」ではないようだ。
https://bookstore.tac-school.co.jp/book/detail/08762/
そもそも講談社はTAC出版の、このジャンルでの成功を踏まえて、いつもながらの得意の二番煎じ戦略に打って出たのだろう。まあ、資本力を生かしての出版ということになろうか。「愛」や「志」、「使命」をすり減らしても、ともかく儲ければそれで良いという出版の典型であろう。底は見えているのだ。
前出の大倉裕貴は、こうもツイートしている。
講談社が出した①簿記3級テキスト、②簿記3級問題集、③簿記2級商業テキスト、④簿記2級工業テキスト、⑤簿記2級問題集、⑥FP3級テキスト&問題集、⑦FP2級テキスト&問題集だが、①のみ売れてあとはイマイチな感じ。TACが受託しているので二番煎じだと思われているのだろう。》
https://twitter.com/yohkura10/status/1303543641953116160
面白くもなければ、為にもならない出版物を世に問うた責任は誰が取るのだろうか。

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2)【本日の一行情報】

◎朝から嫌な気分にさせられたのは私だけではなかったようだ。武田砂鉄のツイート。
《報じた後に相談先を載せれば、その前で何を報じてもいい、みたいな感じになっている朝のワイドショー。》
https://twitter.com/takedasatetsu/status/1310385493075402752
清水潔のツイート。
《80年代、一人のアイドルがビルから身を投げた。彼女はなぜ死を選んだか、そんな推測が渦を巻き現場には花束が山になった。その後、恐ろしい人数の後追い自殺が続いた。下卑た噂や、根拠なき報道は人心を刺激する。何もわからぬ中で適当な事を口にせず、今は静観する時だと思う。ただ冥福を祈りたい。》
https://twitter.com/NOSUKE0607/status/1310362255897239553
「モーニングCROSS」の見識。堀潤のツイートである。
《モーニングCROSSでは自ら命を絶った方々に関する報道は基本的にお伝えしていません。ビッグデータ解析でランキング上位に入っていてお伝えしなくてはいけないときは、見出し程度の紹介でも必ず相談窓口をお知らせしています。今朝は丸山裕理さんが「パパゲーノ効果」を解説してくれました。大切です。》
https://twitter.com/8bit_HORIJUN/status/1309383614245646340
たかまつななのツイート。そうだ、そうだ、その通りだと思う。テレビは本質的に欲望の煽動装置にほかならない。
《視聴率がとれるからといって、著名人の自殺報道をメディアが行って、自傷行為を繰り返す人が増えたり、自死遺族を苦しめたりすることに怒りが湧いてくる。社会を良くするための報道が人を傷つけるのは本当にどうかと思う。もっと誠実にやろうよ。その影響力をいかして、たくさんの人を救ってほしい。》
https://twitter.com/nanatakamatsu/status/1310169490034847745
青木俊は元テレビマンである。
《人の自殺に舌なめずりするテレビ。》
https://twitter.com/AokiTonko/status/1310186256752500736

ダルビッシュ有のツイート。
《今日で2020年のレギュラーシーズンが終わりました。
60試合だったり、無観客だったり色々違うシーズンでしたが自身初、日本人としても初めての最多勝を獲ることができました。
ハーフですが気持ちは完全に日本人なので、日本人として嬉しく思います。
ポストシーズンも頑張ります!》
https://twitter.com/faridyu/status/1310357756927455232

阿部和重クリストファー・ノーランの「テネット」をゴダールを持ち出して次のように評価している。
《『TENET テネット』から受ける感触は『カラビニエ』に近い。滑稽で、時に鈍重で明らかに無理があり、締まり(編集)と緩み(構図)が同等に共存し、その病んだ老体を持てあましつつもそれをむしろ際立たせることで映画というジャンルの限界をさらす試みと見れば、ノーランの最高傑作ではないかと思う。》
https://twitter.com/abekazushige/status/1310250296539406336

平野啓一郎は、こういうツイートのほうが良いよね。
《三島が涙を流すほど感動し、強い影響を受けた小高根二郎の『蓮田善明とその死』を読んでいるが、当然のことながら三島についての記述もあり、蓮田だけでなく彼自身が理解されたという思いもあったのだろう。三島はかなりエモーショナルな序を書いている。
《「一行一行が私の心に触れ、ああ、そうだったのか、なるほど、そうだったのか、と二十数年後の今になって、いちいち腑に落ちることも一再ではなかった。そして私は、これを書いた小高根氏にただ感謝した。」~『蓮田善明とその死』(小高根二郎著)序/三島由紀夫
https://twitter.com/hiranok/status/1310386119310155776
https://twitter.com/hiranok/status/1310386965481533440

◎こんなツイートが投稿された。
《【Obituary】京都大学名誉教授加藤幹郎先生(1957-2020.9.26)、昨日9月26日ご病気のためご他界されたそうです。James Joyce研究(特に『英学研究』に掲載されたCirce論は圧巻)はじめ日本映画学会初代会長・顧問としてご活躍された方でした。心よりご冥福をお祈り申し上げます。》
https://twitter.com/Morioka_Joyce/status/1310049524623179777
バンクシー:アート・テロリスト」の毛利嘉孝がツイートしている。
加藤幹郎さんが亡くなったニュースを聞いて衝撃を受けている。特別親しかったわけではないけど、京大の特別講義に呼んでいただき、そのまま鴨川沿いの料理屋に行って延々とスパイク・リーの話をしたのは、一生忘れない貴重な時間だった。ご冥福をお祈りいたします。》
https://twitter.com/mouri/status/1310233988368224256
「映画監督に著作権はない」(フリッツ・ラング)を翻訳した井上正昭のツイート。
加藤幹郎氏、病気だとは聞いていたが……。学生時代にほんの短い間だけだが、付き合いがあった。少人数でドゥルーズ『シネマ』の読書会をやったのがきっかけだった。フランスのテレビで録画した映画のビデオを加藤氏の研究室の機材で何十本もまとめて NTSC に変換してもらったこともあった。ご冥福を。》
https://twitter.com/masaakiinoue/status/1310349413492039680
私は加藤のようにファスビンダーを過大評価したくない。

◎谷津矢車が行成薫を評価している。私は谷津の眼力を信頼している。
《『スパイの妻』(行成薫 講談社庫)読了。1940年、日米開戦前夜の日本・神戸。満州から戻ってきた貿易商の夫、優作の様子がおかしいことに気づいた聡子の近辺ではきな臭いことが起こり始め……。》
《本書は第77回ヴェネチア国際映画祭銀獅子賞(監督賞)を受賞した映画のノベライズ作品。
それにしても、この著者さん、守備範囲が広い。わたしの知る限り、青春、プロレス、ごはんもの……などなど、ジャンルを選ばず質の高い作品を仕上げてこられる。》
《本書も著者さんにとっては新境地であろう昭和期の歴史(正確には時代)小説です。なのだけど、それっぽさをしっかりと抑えつつ、ストーリーのメトロノームを崩さない。》
《ややネタバレになってしまうかもしれませんが、戦中期ということは当然当時のイデオロギーに触れざるを得ません。本書はそれよりも普遍的な価値を出すことで、小説ごとイデオロギーに呑まれることなく、現代のエンタメ作品としての距離を確保。この辺りの塩梅もドンピシャに上手い。》
《本書と並べ読んでほしいのは、『神戸・続神戸』 (西東三鬼 新潮庫)。  https://shinchosha.co.jp/book/101451/
より深く作品世界を楽しめるんじゃないかと思います。》
https://twitter.com/yatsuyaguruma/status/1310188213818937350

https://twitter.com/yatsuyaguruma/status/1310191663172579328
行成薫は編集者に恵まれていないのかもしれない。

◎「春オンライン」は9月26日付で「《セクハラ告発》志村どうぶつ園プロデューサーが『わいせつ写真』送信! 日テレは『公表しておりません』」を発表している。「春オンライン」の独自ネタである。
日本テレビに番組プロデューサーY氏によるセクハラ行為、X子さんと約束したレギュラー仕事が与えられない理由、X子さんのセクハラ事件に関する社内メールが無断で削除された経緯について問い合わせると、以下の回答があった。
「ハラスメントに関しては、通報者や被害者保護の観点から従来より、その有無を含め、公表しておりません」》
https://bunshun.jp/articles/-/40490
日本テレビは被害者に寄り添わなければ、同社の社員である加害者に加担したことになるのがわからないのだろうか。会社や組織の対応次第でセクハラは容易に構造的暴力に転化することを忘れてはなるまい。

◎「春オンライン」は9月26日付で「SNSの申し子・春名風花に聞いた『ツイッターの治安はやっぱり悪化しましたか?』」を発表している。春名風花の発言。
《昔はツイートの内容を全く見てない、もしくは見る気のない人が飛び込んできて「子どものくせに!」と言ってくるケースが多くありました。野次馬のような感じで、この場合はとにかく「ツイートを読んでください」に尽きます。最近はまたそれと違っていて、「行きすぎた正義」を感じることが多いんです。ツイートを読んだ上で意見を言ってきて、最後に一言「死ね!」「自殺しろ!」と終わるみたいな。》
https://bunshun.jp/articles/-/40417
これも「春オンライン」の独自ネタである。

毎日新聞は9月28日付で「『半沢直樹』最終回 瞬間最高35.8% あの『ラストバトル』で」(佐々本浩材)を掲載している。
《27日夜に最終回が放送されたTBS系日曜劇場「半沢直樹」の番組平均世帯視聴率が関東地区で32.7%(ビデオリサーチ調べ)だったことがわかった。2013年に放送された前シリーズの「半沢直樹」の最終回が記録した、平成のドラマで1位に当たる42.2%(関東地区)を上回ることはできなかったが、30%の分厚い壁を軽々と突破した。》
https://mainichi.jp/articles/20200928/k00/00m/040/042000c
朝日新聞デジタルは9月28日付で「思想難民の日本、だから刺さった半沢直樹 冷笑も共感も」を掲載している。常見陽平の見立てである。
《令和の日本社会は、軸を見失ったままです。欧米的「模範」と現実とのはざまで右往左往している、思想難民です。だからこそ、古い体質にどっぷりつかりながらそれと戦う半沢直樹は刺さった。》
https://digital.asahi.com/articles/ASN9T6JFPN9KUPQJ00M.html
BuzzFeed Japan記者・神庭亮介が呟いている。
《『半沢直樹』って半沢と大和田のラブストーリーだったのかもな。薄い本が流行りそうだ。》
https://twitter.com/kamba_ryosuke/status/1310207946752626689
香川照之を中心に歌舞伎も含めて舞台俳優たちによる怪演のオンパレードは確かに面白かった。

産経新聞は9月26日付で「フォロワー13万人、本も出版 寮母さんのガツンごはん」を掲載している。
《造船関係会社社員寮で寮母を務めるあきこさん(38)。力仕事の社員を支えるメニューは、ガツンと胃袋にくるものでありながら、人の顔を表現した“キャラ弁”など見た目も楽しい「映(ば)える」ものも多い。「記録用に」とスマートフォンで撮影し、インスタグラムにアップすると話題となり、ついには手がけた料理を写真で紹介した「寮母あきこのガツンごはん」(マガジンハウス刊、税別1400円)が出版された。》
https://www.sankei.com/premium/news/200926/prm2009260005-n1.html

◎「日刊スパ!」が9月27日に発表した「“老人向け”実話誌はなぜ売れる? 出版不況でも10万部の売上げ、創刊ラッシュ」によれば、実話誌業界は「実話ラヴァーズ」「実話ナックルズGOLD」「実話ネオヴィーナス」など創刊がつづいている。しかも、売れている。「週刊現代」や「週刊ポスト」では物足りなくなった「団塊の世代がブームを支えているのだろう。「実話ラヴァーズ」と「別冊実話ラヴァーズ」の編集長である比嘉健二は次のように語っている。
《今や愛人専門誌の異名を持つ同誌だが、スマホの出会い系やアプリをうまく使いこなせない世代の男性たちのハートを確実に掴んだというわけである。
「今の60代、70代ってさ、離婚したり、そもそも結婚してなかったり、妻に先立たれている人も多いし、結婚していても誰もが夫婦円満なわけじゃない。友達が身近にいてワイワイおしゃべりできる女性と違って、男って孤独なんだよ」
つまり、コンビニで気楽に買えるエッチな話題が多めの雑誌は、寂しい男たちの体だけでなく心をもホットにしている存在なのだ。》
https://nikkan-spa.jp/1701604

◎「ほんのひきだし」が「御書印帖とめぐる日本の本屋」という連載を開始した。第一回が取り上げたのは、港区は表参道の山陽堂書店である。山陽堂書店の遠山秀子は次のように書いている。
《1959年、今の上皇ご夫妻のご成婚パレードが山陽堂書店の前を通って行った翌年、私は本屋の娘として生まれました。1964年の東京オリンピックでの道路拡幅工事が始まる3歳くらいまで、現在の3倍あった建物に、祖父母、父母、叔母をはじめ、勤労学生の住み込みの店員さんたちと一緒に大所帯で暮らしていました。》
《山陽堂書店のスタンプのデザインは、昭和11年のものです。父の幼なじみのおじさんがスタンプ帖から、うちのページを切り離して持ってきてくれました。
復活させることができたのは、このおじさんのおかげです。なにしろ現物は、私が処分してしまったのですから。
昭和11年頃、スタンプラリーが流行していたそうです。
当店は、昭和6年に現在の場所に移り、地上3階・地下1階で、地下室には井戸がありました。その建物と明治神宮が描かれているスタンプです。同じページには「雑誌週間 雑誌一読常識百倍」というコピーに湯島聖堂のスタンプが押してあります。》
https://hon-hikidashi.jp/bookstore/114487/
雑誌一読常識百倍とはステキなコピーだ。その精神を私たちは継承した来たと胸を張れるのだろうか。

花田紀凱が「サンデー毎日」を《「羊頭狗肉」というが「狗肉」さえない》と切って捨てている。
https://www.sankei.com/premium/news/200927/prm2009270004-n1.html

大塚英志は「週刊ポスト」10月2日号の書評で村上春樹の「猫を棄てる 父親について語るとき」(藝春秋)を取り上げ次のように批判している。
村上春樹百田尚樹ではないのだから、「比喩」や「寓話」で歴史を語ることはいい加減、やめるべきなのだ。『猫を棄てる』でそのことだけが露わになった。》
https://www.news-postseven.com/archives/20200927_1597454.html?DETAIL
「論争」が起きて欲しいところだ。

◎生鮮食品EC「クックパッドマート」を導入するマンションの累計総戸数が、9月24日(木)に1万戸を突破したそうだ。
https://info.cookpad.com/pr/news/press_2020_0924

◎日刊スポーツは9月25日付で「菅氏の人生相談連載が無念中断、首相就任で多忙極め」を掲載している。
《現職官房長官の人生相談として永田町で話題を呼んでいたビジネス誌「プレジデント」の「菅義偉の戦略的人生相談」が、25日発売の10月16日号で終了する。首相就任で、多忙を極めてきたため。「感動の最終回」として6ページの総集編を掲載したプレジデント編集部は「いったんお休みし、再開できる日を待ちたい」と話している。》
https://www.nikkansports.com/general/nikkan/news/202009240000824.html
プレジデント社は10月22日にムック「第99代総理大臣菅義偉の人生相談」(税別845円)を緊急発売する。

ハースト婦人画報社のファッション誌「25ans」(ヴァンサンカン)は、9月28日発売の11月号で森星がカバーガールを務める通常版に加え、横浜流星を起用した特別表紙版を限定発売する。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000196.000008128.html

朝日新聞デジタルは9月25日付で「アマゾンがゲーム事業参入 日本展開『まだ分からない』」を掲載している。
《米アマゾンは24日、ストリーミングゲームサービス「ルナ」を始めることを明らかにした。米国で招待制でスタートし、2021年の一般向けサービス開始を目指す。ソニー任天堂など日本企業が得意としてきたゲーム事業で、米巨大ITの参入が加速している
アマゾンは米国で「ルナ」の利用希望者の受け付けを開始。「試行期間」との位置づけで、希望者がアマゾン側から招待されれば、月額5・99ドル(約630円)で50を超えるゲームを楽しめる。》
https://digital.asahi.com/articles/ASN9T75JFN9TUHBI01M.html

河出書房新社より9月18日に刊行されたカンザキイオリの「あの夏が飽和する。」が、発売直後から売り切れ店が続出し、発売後1週間を待たずに重版が決定した。10月5日の重版出来で、発行部数は6万部を突破する。同書は10代を中心にカリスマ的人気を誇るボカロP・カンザキイオリが動画1,000万回再生を記録した大ヒット曲を、本人の手で小説化したものである。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000316.000012754.html
音楽と小説のコラボがブームとなりつつある。映像も加えれば、トライアングル効果ということになる。

◎「東洋経済オンライン」は9月26日付で「安倍政権下で進んだメディア同士の『分断』
東京新聞の望月衣塑子記者に聞く報道と政治」(辻麻梨子)を発表している。
《時の政権は批判的な報道を抑え込みたいものだ。しかし、権力を行使できる大臣が公然と電波停止の可能性に言及すれば、現場は萎縮してしまう。これに対してテレビ各局が連帯し、抗議行動につなげなかったこともテレビ局の自粛や萎縮に拍車をかけたように思う
実際に、テレビ局への権力側の介入は日常的に行われていると感じる。政権に批判的な内容がテレビで報道されると、各局の局長や政治部の記者に対して首相の補佐官や秘書官から電話やメールなどで抗議が届くと聞く。かつてであれば、「こんな抗議が来ました」と笑って流していたような話も、局によってはすぐに反省会を開くこともあるようだ。》
《安倍政権では、首相会見で質問ができたのは記者クラブ加盟社にほぼ限られていた。フリーランスが当てられることも今年、フリージャーナリストの江川紹子氏が会見の場で「まだあります!」と叫ぶまで、まずなかった。
朝日新聞政治部の南彰記者によると、第2次安倍政権が発足してから2020年5月17日までの首相単独インタビューは、産経新聞夕刊フジ含む)32回、NHK22回、日本テレビ読売テレビ含む)11回に対し、朝日新聞はたった3回。安倍前首相が対応に差をつけることで、メディア間の分断が進んだ。》
https://toyokeizai.net/articles/-/377451
政界から野中広務のような戦争経験者がいなくなり、マスコミ企業の経営者も讀賣新聞のような例外を別にして、みんな「戦争を知らない子供たち」になってしまった。その結果がこういうことなのである。

◎「シネマトゥデイ」は9月25日付で「ぴあフィルムフェスティバル最高賞に石田智哉『へんしんっ!』 齊藤工は新人監督たちにエール」を公開している。
《映画祭のメインプログラムである「PFF アワード」。今年、応募総数480本のなかからグランプリを受賞した『へんしんっ!』は、車いすに乗る石田監督が、しょうがい者の表現活動の可能性を探ったドキュメンタリー作品。映画製作を通じて、さまざまな人たちと関わり合うなかで、多様な違いを発見していくさまを描き出す。本作が初監督となった石田監督は、中学生のころ、自身に合った学習方法としてiPadを紹介され、映画制作に興味を持った。立教大学で映像制作系のゼミに所属。ボランティアサークルではバリアフリー映画上映会を行っていたという。》
https://www.cinematoday.jp/news/N0118690
https://pff.jp/jp/news/2020/09/award2020-result.html
押場靖志が「へんしんっ!」を評して次のように書いている。
《おそらく映画において、映画を撮る主体が「撮る」という行為を中動態的に生きることが起こるのだ。そしてその行為のなかで、みずからのまだ無定型な気持ちを探り、そこに映像と音の形を与えながら、映画という作品に仕上げてゆくのだが、そのなかで自らが変化し、以前とは違うものになってゆく。》
https://filmarks.com/movies/92746/reviews/98007825

徳間書店小柳ルミ子の芸能生活50周年記念書籍「もう68歳と思うのか、まだ68歳と考えるのか」を9月26日(土)に発売した。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000287.000016935.html
小柳ルミ子南沙織天地真理が「三人娘」と呼ばれていたんだよなあ。

◎「PRESIDENT Online」は9月28日付で立川談慶の「日本人を思考停止にする『同調圧力』が、落語という世界に誇る化を生んだ」を発表している。
《もしかしたら、日本人は「マジョリティ側」に黙ってついて行くのが好きな国民なのかもしれません。「寄らば大樹の陰」ということわざが昔から言い伝えられているのは、この国に住む人たちが変わっていないことを意味しています。たとえ大樹が「小樹」になり果てているはずの落ちぶれた組織であっても、その姿勢は変わらないのでしょう。
同調圧力」というと外部からの強制的な力で、他人と同じ歩調を要求されるようなイメージがありますが、そうではなく、むしろ日本人は「人と合わせることそれ自体」が好きなのかもしれません。》
《落語は、下半身の動きを制御した特殊な芸能です。しかもそのストーリーは、状況説明をほぼカットしたかたちの会話のみで、進行します。
観客は、「ああ、登場人物は若い女性だな」「ああ、いま酒を飲んでいるな」などと、演者の口調と上半身の手振りのみで想像することに「同調」します。観客には非常に負担を要求する「同調」ではありますが、その総和は気持ちのいい「圧力」となって会場全体に夢のようなひとときをもたらします。》
《落語という世界に誇るべき化を産んだのも「同調圧力」ならば、日本人を同質化・均質化させ、そのシフトチェンジを阻んでいるのも「同調圧力」なのであります。》
https://president.jp/articles/-/39046
この章を田中康夫が「至言」と絶賛している。立川談慶は、私たちの連載陣の一角を担う福井紳一の教え子である。

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3)【深夜の誌人語録】

意外と知られていないのは、無理を重ねても無理しか生まれないということだ。