【文徒】2020年(令和2)10月9日(第8巻187号・通巻1844号)つづき

4)【本日の一行情報】

東京新聞は10月8日付で「『総理は多様性を認め、政策に生かして』日本学術会議大西隆元会長が本紙に寄稿」を掲載している。大西は次のように書いている。
《学術会議は、大学や企業の研究者等の代表が学術の観点から社会や政府へ提言、国際協力を行う組織で、発足して72年になる。210人の会員と約2000人の連携会員が、専門分野や分野横断的なテーマについて審議する多数の検討委員会を組織している。身分は非常勤国家公務員で、会議出席の際に旅費や手当は支給されるが、会長を含めて給料や年金とは無縁である。》
https://www.tokyo-np.co.jp/article/60373

◎「ヘミングウェイはなぜ死んだか」の柴山哲也のツイート。
《学術会議は国が金を出すから従うべきという意見がテレビワイドで続出、視聴者洗脳に余念がない。
外国もそうだというが外国は逆だ。
アカデミーフランセーズは仏国立だが政府は人選に口はださない。カンヌ映画祭も国が金を出すが出品映画には一切、口を出さない。
学術芸術の隆盛は国の繁栄だからだ。》
《学術芸術を国家や一党が支配する国は共産圏かポピュリズム社会主義の独裁国に過ぎない。
世論を煽りつつ携帯料金下げ、流行やグルメで大衆迎合する政権は、かつて南米小国で流行した新興のポピュリズム社会主義国に似ている。
しかしポピュリズム社会主義国家は軍事政権化し、間も無く消えていった。》
https://twitter.com/shibayama_t/status/1314052540003098624
https://twitter.com/shibayama_t/status/1314055403995426824

◎「ニューズウイーク日本版」は10月6日付で木村幹の「『日本学術会議』任命拒否騒動に見る国家と研究者の適切な距離」を発表している。私は次のような木村の指摘には同意できる。
《もちろん学術会議委員の選出制度が今日の様な形に至った背景には、様々な政治的思惑が働いており、必ずしも研究者や学術会議の委員達が望んだ結果ではない。
とはいえ結果として存在する現実の制度は、極めてわかりにくいものである。実際、筆者自身も学会活動を開始してから30年以上、それなりに研究者として活躍しているつもりであり、幾つかの小さな学会の理事も兼任しているが、日本学術会議の委員に関わる推薦等に携わった事は無く、またその推薦がどの様な人々によってどのような経路で行われているかを聞いた事すらない。
大多数の研究者にとって学術会議委員の推薦はどこか知らないところで誰かによって行われている、ものなのだ。だからこそ、比ゆ的な表現を使うなら、現状の学術会議は「研究者の国会」というよりは、既に各々の学会等で地位を築いた人々が互いに互いを選出する、「研究者の貴族院」或いは「枢密院」と言った方が現実に相応しい状況になっている、と言える。》
https://www.newsweekjapan.jp/kankimura/2020/10/post-16_1.php
記事はこう結ばれている。
《そして更には深刻なのは、同じ様な学術会議、いや正確には研究者の社会の現状への反発は、若手の研究者の中にもある事である。学術会議を構成する委員達の立場は、就職先の確保にすら苦しむ若手研究者の一部には、功成り名を遂げ特権的な研究者のそれに映っている。「学術会議はこれまで一体我々に何をしてくれたのだ」、そう叫ぶ彼らの声は「研究者の貴族院」の「ノブレス・オブリージュ」を問うている。》

◎日販による9月期店頭売上前年比調査の結果が発表された。9月の店頭売上前年比は全体で102.1%となり、2008年の集計開始以来初の5か月連続での前年超えとなった。
雑誌は前年比92.7%。書籍は前年比101.1%。コミックは依然として好調で、前年比115.7%となり、12か月連続で前年を超えた。
https://www.nippan.co.jp/news/pos_monthly_202009/

◎「ITmedia」は10月7日付で「本に触れない立ち読みコーナー、全国約300の書店に フライヤーと日販」を公開している。
《ビジネス書の要約をアプリで配信しているITベンチャーのフライヤーは10月7日、出版取次最大手の日本出版販売(日販)と提携し、本に触れずに立ち読みができるコーナーを全国36都道県、約300店の書店に開設すると発表した。コロナ禍で注目度を上げたビジネス書など30冊を対象とする。》
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2010/07/news086.html

実業之日本社知念実希人の恋愛×ミステリー小説「崩れる脳を抱きしめて」の庫版を10月8日に刊行した。これを記念して、11月8日は紀伊國屋書店でゲストに芦沢央を迎えて、11月15日は三省堂書店有楽町店でゲストに斜線堂有紀を迎えて、購入者限定のオンラインイベントを開催する。
https://news.mynavi.jp/kikaku/20201007-1377419/

三省堂書店池袋本店は三浦しをんの「ぐるぐる 博物館」(実業之日本社)の庫化記念企画として、三浦の直筆サイン本の販売と、ノンフィクション作家・梯久美子をゲストに迎えてのオンライントークセッションを実業之日本社の主催で11月14日に実施する。
http://ikebukuro.books-sanseido.co.jp/events/5563

主婦の友社が発行する育児誌「Baby-mo」の秋冬号では、付録絵本「みのけもよだつぅ」に関連して、インスタグラムで赤ちゃんとママの「みのけもよだつ」写真をテーマに投稿写真コンテストを開催している。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001399.000002372.html

小学館から11月6日に発売されるジェーン・スーのお悩み相談本「女のお悩み動物園」は悩んでいる女性の特徴と傾向を動物になぞらえ、相談事を分類しているそうだ。女性ファッション誌「Oggi」で連載されていたコラムを再編集して単行本化したものである。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000853.000013640.html
小学館は占いも「動物」で当てたことがある出版社だけに、これも当てたいところだろう。

たかしげ宙皆川亮二原作によるアニメ「スプリガン」はNetflixオリジナルアニメシリーズとして2021年の配信を予定している。同名原作のコミックスは小学館から刊行されている。もともと「週刊少年サンデー」に連載されていた漫画である。
https://news.mynavi.jp/article/20201006-1376793/

親鸞賞は朝井まかて歴史小説「グッドバイ」(朝日新聞出版)に決まった。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2020100600947&g=soc
朝井が森鴎外の末っ子である森類を主人公にした「類」(集英社の評価も高い。東京新聞の書評で重里徹也が次のように書いている
《短いセンテンス()を連ねる作者の筆は、落ち着いていて快い。私たちはどんどん先を読みたくなる気持ちと、立ち止まって書かれていることを考えたくなる思いのせめぎ合いという贅沢な楽しみを体験することになる。》
https://www.tokyo-np.co.jp/article/59376

徳間書店村田喜代子の「偏愛ムラタ美術館 展開篇」を刊行した。「偏愛ムラタ美術館 発掘篇」に圧倒されてから、約8年が経つのか。カバーが野見山暁治だものなあ。読む前から圧倒されてしまうよ。《絵画をみるとき、人は絵を通して、自分の裡を見ている》んだってさ!村田節に酔うしかあるまい。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000293.000016935.html
枚方蔦屋書店は10月10日に学サロンVOL.22として「『偏愛ムラタ美術館 展開篇』刊行記念 村田喜代子×三浦しをん 偏愛絵画を語り尽くす」を開催する。オンライン配信もする。
https://store.tsite.jp/hirakata/event/humanities/15764-1558390906.html

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5)【深夜の誌人語録】

見方を変えることで世界は変わる。