【文徒】2020年(令和2)10月30日(第8巻202号・通巻1859号)


Index------------------------------------------------------
1)【記事】講談社「本」の休刊を発表
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】
----------------------------------------2020.10.30 Shuppanjin

1)【記事】講談社「本」の休刊を発表

講談社は10月24日付で「読書人の雑誌」と銘打った同社のPR誌「本」の休刊を発表した。
講談社はこのたび、読書人の雑誌『本』を2020年11月25日発売の2020年12月号をもって休刊することを決定いたしましたのでお知らせいたします。
長年にわたって刊行してまいりましたPR誌でございますが、市場状況と今後の展望について慎重に検討を重ねた結果、今回の結論に達しました。
詳しくは最終号となる11月発売の『本』12月号をご覧ください。1976年1月の創刊以来『本』を支えていただいた読者の皆様、執筆していただいた皆様に心より感謝申し上げます。》
https://www.kodansha.co.jp/news.html#news58901
共同通信が10月28日付で配信した「講談社がPR誌『本』を休刊へ」でも、理由は「市場状況と今後の展望を慎重に検討した結果」とされている。
https://news.yahoo.co.jp/articles/6a0ace1c24bd3bf08d0d9dcae0a650f0148c3f24
先日も小学館がPR誌「本の窓」が紙版での刊行を終え、芸ポータルサイ ト 「小説丸」に統合された。
https://twitter.com/sgkhonmado/status/1318031470632476672
毎日新聞は10月29日付で「講談社の『本』休刊へ 理由の詳細説明は最終・12月号で 76年創刊」(平林由梨)を掲載し、次のように書いている。
《同誌は1976年1月から刊行。「読書人の雑誌」を掲げ、ノンフィクションやエッセー、学術のジャンルから芸、哲学・思想まで、幅広く読み物を掲載してきた。同社発行図書の案内だけでなく、「読書人の拡大や掘り起こしを使命としてきた」としている。》
https://mainichi.jp/articles/20201028/k00/00m/040/312000c
荒井カオルが呟いている。
講談社のPR誌「本」が廃刊されるのか。進撃の巨人で死ぬほど儲かってるのだし、こういう媒体を簡単につぶすのやめてほしい》
https://twitter.com/araikaoru/status/1321613870276911104
漫画事業は順調であっても、他は決して順調とは言えないなかで筋肉質経営を志向すれば、こうなるということなのだろう。
noteのディレクター の志村優衣は提案している。
講談社さん、noteで復刊しませんか……? 相談乗ります》
https://twitter.com/yui_shim2/status/1321629383346384897
私であれば、この提案に乗るけれど……。
「〈弱さ〉と〈抵抗〉の近代国学」の石川公彌子がツイートしている。
《同い年か。やむをえないのだろうが、虚脱感に見舞われる。》
https://twitter.com/ishikawakumiko/status/1321423210173194242
私も何故か虚脱感に見舞われている。こんなツイートも発見。
《出版社のPR誌って、ある程度の大きさの本屋さんではカジュアルにもらえるので、お金がないときによく助けてもらった。あまり知られない存在だけに、何とかならないかと思っていたけど……。
https://twitter.com/PipoDingDong/status/1321458006081466369
この気持ち、わかるよなあ。私にとって大書店に行く楽しみの一つは各社のPR誌を集めることであった。そういう楽しみがどんどん縮小していくのだろう。加えて、こんな心配もある。
《そうなると、「本」に連載→書籍化という流れがなくなるのか。
https://twitter.com/protobiume/status/1321485776308203521
水谷竹秀が呟く。
《紙媒体がどんどん消滅していく。》
https://twitter.com/takehide1975/status/1321444231651622915
そういうことだ。

-----------------------------------------------------

2)【本日の一行情報】

◎訂正の訂正とは、いや本当に恥ずかしい限りだが、逃げてはなるまい。昨日の「」に掲載した「3)【訂正とお詫び】『出版人・広告人』11月号における事実誤認について」で「調査報道」と書いてしまったが、これは「調査情報」の間違いである。そして「調査情報」は明後日(11月1日)発売号で休刊する。
その特集号に沢木耕太郎スペシャルインタビューで登場する。これは「週刊金曜日」で活躍する岩本太郎からの情報提供であった。
http://www.tbs-mri.co.jp/pdf/kyukan.pdf
https://www.fujisan.co.jp/product/1281681061/

立川談慶が「PRESIDENT Online」に10月27日付で「日本人は昔から『損得勘定』ではなく『忖度勘定」』で動いてきた」を発表している。
《つまりわれわれ日本人は、官僚のみならず全国民が「損得勘定」ではなく「忖度勘定」で動く国民なのかもしれません。》
https://president.jp/articles/-/39908?page=1

◎「アサジョ」は10月28日付で「全盛期の『JJ』は書店スタッフに厳戒態勢を取らせていた!」を発表している。
《それでは全盛時の「JJ」はいったいどれほど支持されていたのか、前出の女性誌ライターが振り返る。
「私は1990年代に書店でアルバイトをしており、当時は毎月23日になると店長から『今日はJJの発売日なのでスタッフさんは頑張ってください!』との指示が飛んだもの。書店スタッフはまさに厳戒態勢で臨んでいました。
書店は通常、開店直後の午前中はあまりお客さんがいないのですが、『JJ』の発売日に限っては朝イチから女子大生を中心に若い女性がわんさかと押し寄せ、奪うように『JJ』を手に取っていったもの。発売日が土曜日になると女子高生やOLも加わって大変なことになっていました。あのころの熱気を懐かしく思う人はもうオバサンなんでしょうね」》
https://asajo.jp/excerpt/99694

◎ファッション通販サイトを運営するマガシークは、NTTドコモと共同運営するファッション通販サイト「d fashion」で、10月28日(水)より雑誌「GISELe」(主婦の友社)との誌面連動企画の第三弾を開始している。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000029.000052613.html

◎今年は三島由紀夫の「没後50年」にあたる。三島由紀夫といえば新潮社である。主要作の大半は新潮庫に収められているが、その装幀は、白地にオレンジ色の字を配したおなじみのデザインと、写真を使ったデザイン、そして絵を使ったデザインが混在していた。
これを没後50年を機に、金銀箔をほどこし、デザインを統一して、新潮社は「新・三島由紀夫」フェアを開始する。次のような豪華執筆陣による新解説も収録した。
『愛の渇き』石井遊佳(作家)
金閣寺恩田陸(作家)
『春の雪 豊饒の海(一)』小池真理子(作家)
『花ざかりの森・憂国佐藤秀明(日本近代学者)
潮騒重松清(作家)
『宴のあと』辻原登(作家)
『真夏の死』津村記久子(作家)
仮面の告白』中村則(作家)
『午後の曳航』久間十義(作家)
『サド侯爵夫人・わが友ヒットラー平野啓一郎(作家)
『禁色』森井良(フランス学者)
新編短編集「手長姫 英霊の声 1938 -1966」も刊行された。11月25日発売の「芸術新潮」12月号は「21世紀のための三島由紀夫入門」を特集する。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000051.000047877.html
どうでも良いことなのだけれど、私は三島の「奔馬豊饒の海・第二巻」を何度も何度も繰り返し読んでいる。「奔馬豊饒の海・第二巻」を読んだならば、渡辺京二の「神風連とその時代」などもついでに読んでおくと良いかもしれない。

毎日新聞は10月28日付で「なぜ今受ける? アニメ映画『劇場版『鬼滅の刃』無限列車編』 興収100億円を最速で突破」(勝田友巳)を掲載している。しかし、この手の記事は多いよな。こう書いている。
《アニメ評論家の藤津亮太さんは「炭治郎は大変な重荷を背負わされるが、嘆くのではなくそれを自ら引き受ける。人生の不条理に直面した時、思いの強さと努力で乗り越える姿が、現代の観客の支えになっているのでは。また、敵役の鬼の側にもドラマがあり、熱いだけでなく泣ける作品でもある」と、子どもから大人まで幅広く受け入れられた物語性を分析する。》
https://mainichi.jp/articles/20201027/k00/00m/040/287000c

◎フジテレビ系水曜夜10時から放送中の「突然ですが占ってもいいですか?」発の占いムック「突然ですが占ってもいいですか? PRESENTS とにかく運がよくなりたい!」が9月16日に扶桑社より発売後、売れ行き好調で6刷めとなる2万部の重版を10月26日に決定し、累計発行部数が15万部を突破した。これ、まだ売れるんじゃないのかな。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000579.000026633.html

◎日刊スポーツは10月28日付で「白石麻衣『鬼滅』抑え初登場1位、乃木坂集大成1冊」を掲載している。
乃木坂46白石麻衣(28)の卒業記念メモリアルマガジン(講談社)が、27日調べの日販の「週刊ベストセラー」で、週間総合ランキング初登場1位を獲得したことが分かった(調査期間:10月19日~10月25日、日販調べ)。28日午後7時から開催する配信ライブをもって乃木坂46から卒業する。
また、前週の同ランキングで1位、2位を獲得していた「劇場版 鬼滅の刃 無限列車編」のノベライズ本2作は、それぞれ2位と3位だった。
https://www.nikkansports.com/entertainment/news/202010270001721.html

東京新聞は10月28日付で「『arc』最新号発売 上野千鶴子さんインタビューも」を掲載している。
川崎市高津区の出版社「レイライン」が今月、広告に頼らない言論誌「arc(アーク)」の最新刊となる24号を完成させ、全国の書店で販売を始めた。社会学者の上野千鶴子さんの巻頭ロングインタビューをはじめ、コロナ禍で混沌とする社会や移行期の政権への洞察を示している。》
https://www.tokyo-np.co.jp/article/64735?rct=kanagawa

日本財団が17~19歳1000人を対象に9月末~10月初旬に実施した調査で、「新聞を読んでいる」と答えたのは32.7%。2018年の調査から約15ポイント減少しており、「読まない」派が7割に迫ろうとしていることがわかった。
https://www.nippon.com/ja/japan-data/h00850/
小説家の松井計は、この数字を次のように理解している。
《これさあ、7割が読まないんだから新聞なんかもうオワコン、みたいに考えてる若いもんがいたとしたら、それは大変な間違いだよ。新聞を読む3割と読まない7割の格差がどんどん広がる、てことなんだからさ。》
https://twitter.com/matsuikei/status/1321615281605672960

朝日新聞デジタルは10月27日付で「オフレコ取材メモを提供、記者を停職4カ月 北海道新聞」を掲載している。
北海道新聞の記者がオフレコ取材の内容が記載されたメモを別の取材先に提供していた問題で、北海道新聞社は27日までに、編集局報道センター所属の記者(31)を停職4カ月の処分とすることを決めた。処分は11月2日付。同社が27日付朝刊で明らかにした。》
https://digital.asahi.com/articles/ASNBW3HN8NBWIIPE003.html

◎「BUSINESS INSIDER JAPAN」は10月28日付で「サイバーエージェント藤田社長、納得の決算『上場20年、売上高5000億円目前もなお成長』純利益は4倍増」を公開している。
ライブ配信による決算説明会に登場した同社の藤田晋社長は、「上場して20年を迎え、売上高は5000億円突破を目前にしてなお成長を続けている」と順調ぶりを自画自賛した。
売上高は広告事業などでコロナの影響を受けるも、過去最高を更新。前年比5.5%増の4785億円。
営業利益も前年比9.9%増の338億円。期初の見通し上限を上回り、社員に「特別インセンティブ」として総額14億円を支給したという。》
https://www.businessinsider.jp/post-223150

朝日新聞デジタルは10月29日付で「任命除外『多様性、念頭に』 首相『判断変更しない』 国会代表質問」を掲載している。
《9月に就任した菅義偉首相に対する初めての代表質問が28日、衆院本会議で始まった。野党は日本学術会議の任命除外問題を追及。首相は除外について、具体的な理由の説明を避けたうえで、「多様性が大事だということも念頭に任命権者として判断したものであり、変更することはない」と改めて表明した。》
https://digital.asahi.com/articles/DA3S14675729.html
同紙は10月29日付で掲載している社説「国会代表質問 『建設的』には程遠い」で次のように書いている。
《首相は今週になって、民間出身者や若手が少なく、出身や大学にも偏りがあると言い始め、きのうの答弁でも、「多様性」の確保が念頭にあったと語った。しかし、これとても、6人を拒む理由にはならない。
人事権の行使を通じて、政権の意に沿うよう、学術会議を牽制(けんせい)する狙いがあるのではないか――。こうした疑念は、後付けのような説明をいくら重ねても、払拭はできまい。》
https://digital.asahi.com/articles/DA3S14675570.html?iref=pc_rensai_long_16_article
毎日新聞は10月29日付で「焦点 学術会議、首相うやむや 『組織のあり方論』に矛先振り向け」を掲載している。「多様性」を確保するというのであれば任命拒否とはならなかったのではないだろうか。岩崎歩は次のように書いている。
《現会員204人は、大学や研究機関、企業など80以上の組織から選ばれているが、最多の東京大が35人、京都大が16人、大阪大、慶応大、早稲田大などが10人前後と、一部の大学からの選出が多いのは確かだ。しかし、仮に首相のいう「出身や大学などの多様性」を確保する目的だったとしても、在籍会員ゼロの東京慈恵会医科大の小沢隆一教授と、会員が1人しかいな立命館大松宮孝明教授を任命しない理由にはならない。》
《そもそも、日本学術会議法は会員の選考基準を「優れた研究または業績がある科学者」と定め、個人の思想や信条は関係ない。「偏り」についても、元会長の大西隆・東京大名誉教授は「1990年代半ばまでは関東地方が3分の2を占め、99%が男性だったが、最近は地域や男女のバランスをとり、大学が圧倒的に多かった所属も企業や国の機関の研究者をできるだけ選ぶようにしている」と反論。現会員は関東地方が49・5%、女性は37・7%で、東大の比率も22期(2011~14年)より大幅に減っているという。》
https://mainichi.jp/articles/20201029/ddm/002/010/037000c
同紙は10月29日付で掲載している社説「代表質問への首相答弁 議論を恐れているのでは」を掲載している。
《残念ながら、首相は従来の発言を繰り返すだけで、さらに踏み込むことはなかった。これでは国会の議論は成り立たない。首相は審議を恐れているのではないかとさえ感じさせる答弁ぶりだった。
日本学術会議の新会員候補のうち6人を任命しなかった問題が典型的だ。》
https://mainichi.jp/articles/20201029/ddm/005/070/130000c
首相は議論を恐れているのではなく、議論などするつもりがないのである。首相にとって政治の本質はロゴスにではなく、数こそが本質なのである。東京新聞は10月29日付で社説「学術会議問題 説明を尽くさぬ不誠実」を掲載している。
《首相がいまさら何を言っても後付けの説明にしか聞こえない。首相がすべきは任命拒否を撤回し、違法状態を解消することである。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/65017?rct=editorial
しかし、一方で政権サイドのマスコミ対策も進んでいるようだ。東京新聞労働組合がツイートしている。
報ステ。/学術会議への人事介入を追及する野党に/コメンテーターが/「森友、加計、桜と同じ展開か。/時間だけかけ、野党の支持につながらず…」/という趣旨の的外れな批評。
時間かかるのは、政権側が/示すべきものを示さないから。/野党冷や水でなく/「政権-主権者」の構図で本質を突くべきだ。》
https://twitter.com/danketsu_rentai/status/1321446486924668928

-----------------------------------------------------

3)【深夜の誌人語録】

逃げるのは恥ではなく、立派な戦術である。