【文徒】2020年(令和2)11月9日(第8巻207号・通巻1864号)つづき

小学館の情報誌「DIME」2021年1月号の特別付録は、8.5インチ液晶メモパッド。990円(税込)は安い。
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2011/06/news096.html
この手の付録は、誤解を恐れずに言うと「ガラクタ」。しかし、「ラクタ」であればこそ欲しくなっちゃうんだよね。人は何歳になっても「子ども」を残しているのだろう。学研の「大人の科学が人気なのも同じ理由だと思う。

◎パイ インターナショナルなど有志の出版社24社が実行委員会を結成し、10月5日(月)~10月16日(金)の2週間にわたって開催された「書店向けWeb商談会2020秋」の商談金額は全体で2043万2238円(上代)だったことが発表された。商談回数は、出展社と参加者が1対1で行う商談が全社合わせて779回行われた。商談数の多かった出展社の上位4社は、世界化社(25回)、PHP研究所(23回)、亜紀書房20回)、ニジノ絵本屋(20回)。一方で、商談数が0回という社が16社、出展社の1割以上にあたる。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000624.000012505.html

小学館集英社プロダクションは、世界一の本の街“神保町”を拠点とした大人向けの化・教養講座「小学館神保町アカデミー」において、オンライン講座のサービスを新たに開始した。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000325.000002610.html

◎「日本蒙昧前史」(藝春秋)で谷崎潤一郎賞を受賞した磯﨑憲一郎は東京工業大学科学技術創成研究院、リベラルアーツ研究教育院教授である。三井物産では広報部長をつとめていた。
https://www.titech.ac.jp/news/2020/048240.html
《我々は滅びゆく国に生きている、そしていつでも我々は、その渦中にあるときには何が起こっているかを知らず、過ぎ去った後になって初めてその出来事の意味を知る、ならば未来ではなく過去のどこかの一点に、じつはそのときこそが儚く短い歴史の、かりそめの頂点だったのかもしれない、奇跡のような閃光を放った瞬間も見つかるはずなのだ。》
https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163912271
仲野徹が9月27日付讀賣新聞に発表した書評が印象に残っている。仲野徹は、《まさに虚実皮膜、「こうであったかもしれない」物語が懐かしさを駆り立て続ける》と書いているのだが、仲野は作品の内容のみならず、その内容を包み込んでいる本そのものにも昭和の手触りを感じたとわざわざ記しているのだ。
《最後に付け加えておきたいのは、この本の装丁だ。深みのあるカーキ色のカバーはヌバテックスという紙でできている。そのなんともいえないしっとりとしたぬめり感がたまらない。
カバーを外して読むのが常なのだが、この本だけはつけたまま読んだ。昭和の手触りとはこんな感じではなかったかと懐かしみながら。》
https://www.yomiuri.co.jp/culture/book/review/20200926-OYT8T50176/

朝日新聞デジタルは11月5日付で「『鬼滅』映画なぜ大ヒット 理由考えたら、16もあった」(小原篤)を掲載している。
https://digital.asahi.com/articles/ASNC54QYBNC5UCLV00C.html
セリフだと思うけれど、この記者さんはセリフには余り関心がないようだ。ダースレイダーの次のようなツイートを紹介しておこう。
《娘二人と2回目の鬼滅の刃。全ての行動と心理をセリフで説明する、という映画としては致命的な作りにも関わらず…僕は利他性を若い世代に丸ごとインストールする可能性は凄いと思います。自分のことだけ考えて嘘ついたり、人事いじるような人には鬼殺隊の資格は無いし、呼吸も身につかないと思います。》
https://twitter.com/DARTHREIDER/status/1323488606292336640
東京新聞が11月8日付で掲載した社説「週のはじめに考える もやもや感が消えない」も「鬼滅の刃」について触れている。
《作品は鬼に家族を殺され、生き残ったものの鬼に変えられてしまった妹を人間に戻すために鬼たちと戦う主人公の姿を描いています。物語の最初にこんな場面があります。
山中で鬼と戦う剣士に妹を見つけられ殺されそうになります。なすすべがなく命乞いをする主人公に剣士が言い放ちます。「生殺与奪の権を他人に握らせるな!!」
鬼はこちらの事情を察してくれるわけではない。その脅威は不条理そのものです。自身が強くなって妹を守るしかない、そう叱咤したのです。
厳しい自助の求めですが、前向きに生きる姿に憧れます。
でも、周囲に視線を移してみると、多くの人は無力です。コロナ禍が現代の鬼だとすれば自助で乗り切れる人ばかりではないことは同じ。支え合いが必要です。
主人公も助け合う家族や仲間をとても大切にします。しかも、元は人間で不遇な過去を持つ鬼たちの生きづらさにも寄り添おうとします。痛みを自分事のように感じてつながろうとする姿に思わず心が熱くなります。
ファンは現実では自助の困難さ、共助の大切さを痛感しているからこそ、主人公の「共感する心」を支持している気がします。》
https://www.tokyo-np.co.jp/article/67104?rct=editorial
東京新聞の社説を読んで、朝日新聞の記者は恥ずかしくはならなかっただろうか。

◎ポスト「鬼滅の刃」候補は「呪術廻戦」だけではなく「約束のネバーランド」もそうだ。集英社、来年も凄いことになるのではないだろうか。テレビアニメ第2期が、2021年1月7日よりフジテレビのアニメ枠“ノイタミナ”で放送されることが決まった。
https://www.iwate-np.co.jp/article/oricon/2176140

毎日新聞は11月6日付で「特集ワイド 35万の読者が支持、生活情報誌『ハルメク』読んでつながり、心支える 編集長・山岡朝子さん」を掲載している。
《出版業界が不況にあえぐ中、3年前に新編集長を迎えて販売部数を倍増させた月刊誌がある。50歳以上の女性を対象にした生活情報誌「ハルメク」だ。書店に置かず、読者の自宅に直接届けるスタイルの定期購読誌。》
https://mainichi.jp/articles/20201106/dde/012/040/005000c
今となっては「すてきな奥さん」の休刊は主婦と生活社にとって失敗だったことがわかる。結局、広告よりも読者を大切にしなければ雑誌は生き残れない。

小学館系列の「MERY」は11月8日(日)~14日(土)の期間限定でオンラインイベント「LUCKY MERY WEEK」を開催している。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000028.000029212.html

◎「読むことの風」のアサノタカオがツイートしている。
藤本和子『ブルースだってただの唄 ―黒人女性の仕事と生活』(ちくま庫)はとても楽しみ。「水牛通信」掲載の1篇を追加、斎藤真理子さんの解説、買わないわけにいかない。ウェブマガジン「水牛」で読める藤本さんの『砂漠の教室』も、すばらしい。復刊されないかな。》
https://www.saudadebooks.com/post/news20201021
https://twitter.com/asanotakao1975/status/1324483499093454848
仲俣暁生リツイートしている。
《ホントに楽しみです。藤本和子はもっと今の若い女性たちに読まれてほしい。彼女のブローティガン作品の訳がいかに多くの人に影響を与えたか、それをいわば「簒奪」したのが現代日本学の体であるということも、もっと知られるべきかと。》
https://twitter.com/solar1964/status/1324484779966828546
筑摩書房のツイート。
アメリカで黒人女性はどのように差別と闘い、生きてきたか。名翻訳者が女性達のもとへ出かけ、耳を澄まし、彼女たちの思いを書きとめた。新たに1篇を増補。》
https://twitter.com/chikumashobo/status/1323926394552807425
藤本による「アメリカの鱒釣り」の翻訳は学史的な事件であった
https://www.shinchosha.co.jp/book/214702/
今は新潮社庫だけれど、サイのマークの晶社から刊行された。ポール・ニザンの「アデンアラビア」も、チェーザレパヴェーゼの「美しい夏」も、レイ・ブラッドベリの「たんぽぽのお酒」も、イタロ・カルヴィーノの「まっぷたつの子爵」も晶社であった。

KADOKAWAと、公益財団法人 角川化振興財団は、11月6日(金)、埼玉県所沢市に大型複合施設「ところざわサクラタウン」および「角川武蔵野ミュージアム」を全館開業した。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000007719.000007006.html
私は神保町で十分、間に合っている。

徳間書店は、2010年に48歳という若さで逝去、今年没後10年の節目の年となる北森鴻の「旗師・冬狐堂【一】狐罠」を徳間庫より、11月6日(金)に発売した。北森の代表的シリーズである「旗師・冬狐堂」は、店舗を持たない骨董商「旗師」宇佐見陶子を主人公にした古美術ミステリーだが、これまで、長編は講談社、短編集は藝春秋と分かれて刊行されていた作品を、初めて一つの版元でシリーズを全4巻にまとめて、4カ月連続で刊行する。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000302.000016935.html
今回、解説を担当したのは阿津川辰海。
《【お仕事告知】11/6発売、北森鴻先生の『狐罠 旗師・冬狐堂一』の解説を執筆させていただきました。
今回の復刊では、発行出版社が分かれていた「旗師・冬狐堂」シリーズが装いも新たに一つにまとまることが目玉。刊行スケジュールは二枚目の写真の通りです。表紙といい、力の入った復刊ですね……!》
https://twitter.com/tatsumi2017/status/1324357524368154626

白泉社の「ヤングアニマル」で連載の「平穏世代の韋駄天達」がテレビアニメ化され、2021 年 7 月よりフジテレビ「ノイタミナ」枠ほか各局で放送されることが決まった。
https://screenonline.jp/_ct/17406729

白泉社の「ヤングアニマル」で1997年に連載がスタートし、23年経つ現在も物語が続いている「拳闘暗黒伝/拳奴死闘伝セスタス」がテレビアニメ化され、「セスタス -The Roman Fighter- (ザ・ローマン・ファイター)」として、2021年4月よりフジテレビのアニメ枠「+Ultra」で放送されることが決まった。
https://www.oricon.co.jp/news/2176127/full/

共同通信は11月5日付で「NYタイムズ、電子版が紙抜く 四半期収入で初」を配信している。
《米新聞大手ニューヨーク・タイムズは5日、2020年7~9月期の新聞電子版などデジタルのサブスクリプション(定期購読)収入が四半期で初めて、紙媒体を上回ったと発表した。10月にデジタルと紙媒体の契約者の合計が700万人を超えたことも明らかにした。》
https://www.47news.jp/news/5461761.html
歴史の必然。

◎ぴあより「絶景イルミネーション&ナイトアミューズメントぴあ2021」が発売された。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001711.000011710.html
あしかがフラワーパーク」に行ってみたい。

◎古田大輔が呟いている。
朝日新聞を辞めてBuzzFeedに移ったときに「BuzzFeedは朝日系」みたいに言う人が出てきて(今もいる)、資本関係とか公表しててもチェックもせずに批判する人いるんだなと思った。今回Googleに入って「Googleは朝日系」って言う人いるかなと思ったけど、流石にいなかった》
https://twitter.com/masurakusuo/status/1324301164746170368
「ForbesJAPAN」は11月6日付で「ニュースメディアが生き残る道は? 古田大輔が語るジャーナリズムの今と未来」(小田駿一)を発表しているが、この秋、グーグルニュースラボのティーチングフェローに就任した古田は次のように語っている。
《海外、特にアメリカのジャーナリズムで底力を感じるのは、大学や大学院でジャーナリズム教育を基礎から叩き込むところです。これまで先人たちが積み上げてきたものをきちんと勉強できる環境がある。体系的に学ぶ場所があって、その上でお互いに業界の仲間として議論し、切磋琢磨しながら新しい取材や表現を生み出していくのは魅力的です。
日本のジャーナリズム教育や記者教育はほとんどがOJTで、実はきちんと体系的に学ぶのが難しい。一方で、日本のジャーナリズムがすごいのは、チーム取材のパワーです。海外のジャーナリストは一人で取材して書く人が多いですが、日本では新聞社をはじめ、チームで作業を分担しながら取材し、ピースを集めて事実を追いかけるパワーはすごいと感じますね。》
https://forbesjapan.com/articles/detail/37952/1/1/1
大学でジャーナリズム学科を設けているところが少ないものなあ。11月7日に開催されたオンラインセミナー「ニュース業界でのキャリア形成-必要とされるスキルは-」で古田大輔はモデレーターをつとめたが、読売とNHKで記者の経験を持つコンサルの島契嗣がツイートしている。
セミナーで古田大輔さんが「米国ではジャーナリストが40%も減った。日本でも今後(10年ぐらい?)同じことが起きる」と言っていたけど、これすごい数字だよな。数千人もの記者は、みんなどこに行くんだ?ウェブメディアがこれだけの移民を受け止め切れるはずがない。》
https://twitter.com/shima_keishi/status/1325109989267025920

◎KBS WORLD Radio Newsは11月6日付で「『私は私のままで生きることにした』 日本で販売部数40万部突破」を発表している。日本の版元はワニブックスである。
《作家キム・スヒョンさんのエッセイ集「私は私のままで生きることにした」の日本語版の累積販売部数が40万部を超え、韓国の本としてはこれまでで最大のベストセラーとなっています。
韓国の出版社は6日、「『私は私のままで生きることにした』の日本での販売部数が40万部を超えた。日本で韓国の本がこれほど売れたのは初めて」と明らかにしました。》
https://world.kbs.co.kr/service/news_view.htm?lang=j&Seq_Code=77378

毎日新聞は11月7日付書評面の「今週の本棚・著者に聞く」は、「バブル」(光社)の山口ミルコを取り上げている。山口は角川書店を経て、1994年に幻冬舎に入り、五木寛之の「大河の一滴」などのベストセラーを生んだ来た元編集者である。
《その活躍は会社からも認められていたが、ある日、理由の分からないまま「左遷」されたことを知る。「目玉が床に落ちそうになった。何も信じられなくなって」。2009年に退社。その後、乳がんを患い、闘病生活を著書『毛のない生活』『毛の力』などにつづった。》
https://mainichi.jp/articles/20201107/ddm/015/070/020000c
「バブル」では自身の退社も描かれている。

朝日新聞は11月7日付で社説「積ん読の勧め 肩の力抜いて自分流に」を掲載している。そう「積ん読」も読書なんだよね。
https://digital.asahi.com/articles/DA3S14686479.html

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6)【深夜の誌人語録】

努力はたくさん、勇気は少しだけ。