【文徒】2020年(令和2)12月16日(第8巻233号・通巻1890号)


Index------------------------------------------------------
1)【記事】テレビ東京「共演NG」でサントリーとキリンの共演が実現!
2)【記事】私たちの「日常」を支配するグーグル
3)【記事】キム・ギドクの死に“甘すぎる”日本のメディア
4)【本日の一行情報】
5)【深夜の誌人語録】
----------------------------------------2020.12.16 Shuppanjin

1)【記事】テレビ東京「共演NG」でサントリーとキリンの共演が実現!

テレビ東京系のドラマ「共演NG」(月曜夜10時)は弱小局の「テレビ東洋」がテレビのタブーを破り、共演NGの2人の大物スターを起用したドラマ「殺したいほど愛してる」に社運をかけるという内容だ。ドラマの自己言及性に加えて、視聴者を驚かせているのが、番組の本編終了時の「提供」クレジットにキリンとサントリーの2社が同時に登場することだ。
同じ番組に同じ業界内の競合他社が一緒にスポンサーになることはなく、これまではタブーであった。「東洋経済オンライン」がこの点に目をつけて12月14日付で竹内一晴の「キリンとサントリー『テレビの掟破り共演』の訳 テレビ東京のドラマで一緒にスポンサーに」を発表している。竹内は次のように書いている。
《この”共演”は、第1話放送直後からツイッターなどのSNS話題となった。番組内では何の説明もないが、アナウンサーが提供社名を読み上げる際、「この番組は、どうにか共演OKになったキリンとサントリーの提供でお送りしました」と伝える。
また両社のロゴが画面内での上下位置や大きさなどを競い合うような動きを見せ、それは放送回が進むにつれてエスカレートしていく。市場で激しく競合する「共演NG」の2社を共演させるという意図的な演出であり、ドラマの設定とリンクさせた「遊び心」であることがわかる。
この斬新なアイデアは企画・原作の秋元康氏の発案だ。》
https://toyokeizai.net/articles/-/395778
「パラボラ」は「ドラマ『共演NG』でキリンとサントリーが爆笑コラボ!2大スポンサーをネタにしたテレ東に称賛の嵐」を公開している。
https://parabola2020.com/kyoen-ng-kirin-suntory/
ミステリ評論家の千街晶之がツイートしている。
テレビ東京のドラマ『共演NG』、スポンサーもライヴァル社同士で本来なら共演NGのキリンとサントリーだけど、前回はテロップがキリン→サントリーの順、今回はサントリー→キリンの順になってていろいろ気を遣ってるなw》
https://twitter.com/sengaiakiyuki/status/1323268311992291328
ドラマとともに広告も話題になっている。テレビ東京としては、してやったりだろう。テレビ東京制作局プロデューサーの稲田秀樹マイナビニュース」が12月6日付で公開した「テレ東『共演NG』、異例のキリン&サントリーW出稿なぜ実現? 業界忖度崩す発想」でインタビューに応じ、次のように語っている
《ドラマの内容も含めて、各方面で高評価をいただきました。そもそも既成概念にとらわれず新しいチャレンジをする社風もあって、すごく会社内が活気づいた気がします。営業の人たちも盛り上がって、提供クレジットの遊びもどんどんエスカレートしていってますからね! 最終回なんかどうなっちゃうんだろう……。僕らもどういう演出の後提供が来るか、毎回直前までわからないんですよ。営業と2社さんで知恵を絞って考えていただいてるので、楽しみにしています。
https://news.mynavi.jp/article/20201206-kyouen_ng/
毎回、広告からも目を離せなかった視聴者は多かったはずである。監督は大根仁。そりゃあ面白くなるだろう。「共演NG」はゲバラまで引用している。
《テレビ東洋は在京キー局のなかで 最も弱いテレビ局です。でも最もテレビへの愛のある局でもある。「真の革命は、愛によって導かれる」。チェ・ゲバラの言葉です。
https://twitter.com/06Jun2010/status/1338481997920882693
コロナ禍で視聴者は面白さに飢えていたのだ。
《テレ東の本気ドラマ「共演NG」静かにハマっております。企画秋元康、脚本&演出が大根仁、主演が中井貴一鈴木京香という豪華さ。スポンサー枠でサントリーとキリンの共演NGが本当に実現してたり、キャスト陣の実際の経歴と設定が似てたり、現実と演出の境目が曖昧になってて芸が細かい。》
https://twitter.com/kaririririry_n/status/1325327856931467264
ついにテレビ東京の時代がやって来た。

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2)【記事】私たちの「日常」を支配するグーグル

グーグルで検索したり、YouTubeを閲覧しながらネタを拾い、グーグルドキュメントで章を書き、Gメールで連絡を取り合っている私からすると、全く仕事にならなかった。10月14日午後9時の悲劇だった。朝日新聞サンフランシスコ支局長の尾形聡彦が10月14日午後9時13分にツイートしていた
YouTubeGmail など米グーグルのサービスで世界的に障害が発生しています。北米、欧州、日本、インドなど世界各地で障害が起こっている模様です。》
https://twitter.com/ToshihikoOgata/status/1338457140629889026
朝日新聞デジタルは12月14日付で「ユーチューブやGメールでアクセス障害 世界各地で発生」(尾形聡彦)を掲載している。
《グーグルは日本時間14日午後8時55分、Gメールなどのサービスについて「大部分のユーザーに影響を与える障害を認識している」と公表。その約1時間後の同午後9時52分、大部分のユーザー向けのサービスが復旧したと説明した。》
https://digital.asahi.com/articles/ASNDG75QYNDGUHBI02S.html
毎日新聞は12月14日付で「グーグルで一時大規模障害 Gメールやユーチューブなど広範に」(坂井隆之)を掲載している
《グーグルの公表情報によると、不具合が生じたのは、Gメールとユーチューブのほか、無料クラウドサービスのグーグルドライブやグーグルスプレッドシートなど。グーグルの日本法人の広報部は14日深夜、毎日新聞の取材に対し、「障害は解消されている」とした上で、「システムのさらなる改善のために努力を継続してまいります」とコメントした。原因は明らかにしていない。》
https://mainichi.jp/articles/20201214/k00/00m/040/323000c
野口悠紀雄のツイート。
《これまで #Gメール などを使っていて、一度も障害がなかった。全世界の何十億の人々にサービスを提供して事故を起こさなかった。しかも無料のサービスだ。今回の障害で数億人が慌てふためいたろう。#グーグル がいかにすごい企業かが分かる。》
https://twitter.com/yukionoguchi10/status/1338476072422133763
私にしても仕事に関してはグーグルに支配されてしまっている。これは「ニコニコ窓口担当」のツイート。
《【不具合/ニコニコ】
12月14日(月)現在、ニコニコにおいて、視聴ができない、一部ページが表示されないなどの不具合が発生しております。
現在、原因調査と復旧作業を行っております。
ご不便をお掛けし申し訳ございません。》
《【障害/一部復旧】
12月14日(月) 21:00頃から発生していた障害ですが、動画・生放送などのサービスについては復旧作業が完了しました。
ニコニコチャンネルのみ引き続きメンテナンスを行っています。
復旧まで今しばらくお待ちください。》
https://twitter.com/nico_nico_talk/status/1338458068204441602
https://twitter.com/nico_nico_talk/status/1338478271894151171
こんなツイートが投稿されていた。
Googleがくたばる

Google Homeが使えなくなる
 ↓
部屋の照明、エアコン、テレビの制御ができなくなる

外は雪が降りしきる中、暖房が停止。Googleが使えなくなったので再起動できない

リモコンをどこにやったか分からなくなり、凍死しかけてる

たすけて←いまここ》
https://twitter.com/Hayaponlog/status/1338455266715549698
これは決して笑いごとではないのだ。
《GoTo停止よりGoogle停止のほうがよほど阿鼻叫喚やな
https://twitter.com/shokoryuzaki/status/1338456837864091648
こんなツイートも。
《今日の事故から学んだ教訓
Googleに頼り過ぎてはダメ。プラットフォームは分散しよう
https://twitter.com/kakitonabe/status/1338484276174618624

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3)【記事】キム・ギドクの死に“甘すぎる”日本のメディア

朝日新聞デジタルは12月12日付で「韓国の映画監督、キム・ギドクさん死去 新型コロナ感染」(小峰健二)を掲載している。
《韓国を代表する映画監督の一人で、ベネチア国際映画祭の金獅子賞を獲得した「嘆きのピエタ」などで知られる、キム・ギドクさんが11日、滞在先のラトビアで、新型コロナウイルス感染症のため死去した。複数の韓国メディアが伝えた。59歳だった。》
一応、セクハラ事件には触れている。
《一方で17年には、俳優の女性が「メビウス」の撮影中にキムさんから暴力などを受けたとして告訴した、と韓国メディアが報道。他にも女性俳優がキムさんからセクハラや性的暴行などを受けたと告発するなどしているという。関係者によると、近年は国外で生活を送っていたとされる。》
https://digital.asahi.com/articles/ASNDD35PKNDCUCVL02Y.html
中央日報は12月12日付で「世界3大映画祭で受賞のキム・ギドク監督、コロナで死去 ラトビアで」を掲載している。キム・ギドクの映画人としての業績を紹介したうえで、次のように記事をまとめている。
《しかし独特の暴力的な作品世界の裏で、映画制作現場自体が暴力的という非難が絶えなかった。2018年には全世界的な「#Me too」波紋の中で、キム氏と映画制作を共にした女優・スタッフが各種性的行為を強要され、暴力に苦しんだという暴露が続いた。キム氏は法廷争いをする一方、海外映画祭の記者会見で「映画は暴力的でも私の人生はそうでない」と容疑を否認した。しかし『人間の時間』(2017)を最後に韓国映画界を離れ、海外で過ごしていた。》
https://japanese.joins.com/JArticle/273301?sectcode=730&servcode=700&cloc=jp%7Cmain%7C
朝鮮日報は12月14日付で「性暴力疑惑のキム・ギドク監督を追悼? ジレンマに陥った韓国映画界」を掲載している。
《「もし誰かにそのようなひどい暴力を振るったなら、彼をたたえるのは間違っている」
映画監督キム・ギドク氏が59歳で死去したというニュースが報道された直後の12日、映画『パラサイト 半地下の家族』の英語字幕を担当したダルシー・パケット氏がソーシャル・メディアに投稿したが映画界とその周辺に広まった。同氏はこので、「2018年に彼の性暴力疑惑がテレビで報道された後、私は学校の授業でキム・ギドク映画について教えるのをやめた」と述べた。》
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2020/12/14/2020121480051.html
ハンギョレは12月15日付で「『追悼はもう一つの加害』キム・ギドク監督の死と映画界の理由ある沈黙」を掲載している。
《キム監督の死について、「たいていの死は哀悼の対象だが、ある場合にはそれがもう一つの加害になる」と述べた映画評論家のパク・ウソン氏は、ツイッターで「作家と作品」の区分は「虚構」だと主張した。
「監督と映画は切り離すことができるという主張、監督の社会的な生き方とは別に、映画はひとえに美的基準のみで評価することができるという主張は、我々は誰なのか、我々はどこにいるのか、我々に起こったことは何なのかについて、我々皆がまったく知らないふりをすることができると確信する妄想にすぎない」》
http://japan.hani.co.kr/arti/politics/38587.html
「かぞくのくに」の映画監督であるヤン・ヨンヒが連ツイを発表している。
《①キム・ギドク(監督はつけない)の作品を逃さず見ていた時期のことを考えていた。日本の緩い報道を見て、日本では彼の性暴力が伝わってないんだと認識した。これを読んだ人がどう考えるか、には興味ない。「知る」ことは必要だと思うので、キム・ギドクが何をしたかを短く書く。特に映画に関わる》
《②人には考えて欲しい。性暴力の被害者は1人や2人ではない。被害者たちは新人女優、女性スタッフで、場所はミーティングやロケ地など。世界で脚光を浴びる監督の目に止まったと夢を膨らませる女優たちを「映画のためだ」と言い服を破り、抵抗すると殴り強姦した。俳優を誘って一緒に女優を強姦した。》
《③ロケ地から逃げる女優をスタッフに探して連れてこさせ犯す。一つのロケ地でボロボロになった女性たちはお互い助けあうことも出来ず壊れていったという。大学での授業でも「私と寝たら映画に出れる」と学生に言う。脚本ミーティングでも「お前のあそこはどんなニオイだ」とかばかり聞いてきたと。》
《④。。。これらは氷山の一角。女優だけではなく、スタッフも餌食になった。最初、被害者が相談しても先輩たちや団体は「映画業界ってそういうもんだ、証拠がないと」と取り合ってくれなかったという。被害者たちは現場から逃げ、夢を持っていた映画を諦め、PTSDに苦しんだ(今も苦しんでいる)。》
《⑤監督の部屋からレイプの声が聞こえ、スタッフが沈黙していた地獄が、韓国で有名な調査報道TV番組「PD手帳」(50分ほど)によって暴露された。番組では被害者の女性だけでなく、男性スタッフも証言。「世界の巨匠」の悍ましい性暴力が明らかになった。キム・ギドクは謝罪もせずに逃げ、死んだ。》
《⑥全て映画を理由に(餌に)、映画の現場で行われた。映画のために監督と女優が交わるべき、から始まるらしい。
書いた内容は番組で放送されたもの。アンカーは「酷過ぎて番組で扱えない話もあり」と濁した。番組を大袈裟だという韓国の映画人に会ったことはない。。。かいつまんで書いた。》
《⑦私が直接、キム・ギドクが離れないという女優のSOSに駆けつける女性PDたちを映画祭で見た時の感覚を今も覚えている。映画監督の端くれとして、MeeTooなんてない時代を生きてきた56歳の女として、このtweetを書きながら手が震えてるし涙が止まらない。特に映画関係者は言葉を選んで欲しい。》
《⑧昨年から1年半ほど殆ど韓国にいながら、韓国映画界の素晴らしい部分と腐った部分とに向き合っている。特に今年は仕事が進まないほど疲弊したが、多くを学んだし助けて頂いた。ノロマなので時間がかかるが少しずつ発信したいと思う。
ソウル郊外より。ヤン》
https://twitter.com/yangyonghi/status/1338147616593379329

https://twitter.com/yangyonghi/status/1338171678287806464
ヤン・ヨンヒは、こうもツイートしている。
《日本メディアのキムギドクの死に対する言葉の甘さは何?本当に怒りも呆れも通り越して脱力するのも飽きた。彼の性暴力が暴露されて数年経ってる。日本の記者は日本のメディアしか見て読まないの?調べないの?》
https://twitter.com/yangyonghi/status/1338190414226968576
ニューズウィーク日本版」が12月14日付で「韓国キム・ギドク監督、コロナで死去 世界三大映画祭受賞の巨匠とセクハラ醜聞、本当の姿は?」を発表している。
《良くも悪くも子供のような人である。好奇心が旺盛で、自分が興味のある物や事柄を次回作ではすぐに反映させる。そして、それは普通の大人なら羞恥心によって隠すであろう女性への執着ですらも、映画の中で生々しく表現されている。
それがたたってか、作風から女性蔑視者であると言われ、撮影現場や映画祭会場でもよからぬ行動が噂された。そして、2008年オダギリジョー主演の映画『悲夢』では、自殺未遂シーンで女優が死にかける事故が起こった。
その後3年間、彼は人里離れた山に籠って生活をしていた。3年後、その隠とん生活を描いた映画『アリラン』で復活し作品作りを続けたが、彼へのスキャンダルイメージを決定的にしたのが2017年、映画『メビウスで主演予定だった女優からの暴行告発である。》
https://www.newsweekjapan.jp/stories/culture/2020/12/post-95182_1.php

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4)【本日の一行情報】

巖谷國士のツイート。
《いつもなら11月から、庭の柿を箱詰にしてお送りしているところだが、今年は台風などでかなり果実が落ち、コロナ禍で増えた鳥たちの食料になったため、収穫はゼロだった。枝にのこるヘタの数だけ、鳥たちが元気になっていてくれたらいい、と思うことにする。》
https://twitter.com/papi188920/status/1338689670020911105
心に沁みる呟きだ。

志茂田景樹のツイート。
《コロナ禍と「鬼滅に刃」ブームで本屋さんでの本の売上が伸びているという。構造不況的不景気に陥って久しい出版界にとって願ってもない朗報だ。ただターミナル駅至近の大書店では売上げの更なる低下も見られるという。リモート勤務の休憩時間に電書で静かに読書も今風でいい。》
https://twitter.com/kagekineko/status/1338743249788260352
コロナ禍のステイホームに読書は欠かせなかった。

朝日新聞デジタルは12月14日付で「『コロナのおかげ』伊料理の巨匠、ユーチューバーになる」を掲載している。
《料理人・日高良実さん、63歳。自身のレストラン名でもある「アクアパッツァ」を日本に広めた「イタリアンの巨匠」にして、二つの店で28人を雇う経営者は、コロナ禍を生き抜くためにユーチューバーになった。》
https://digital.asahi.com/articles/ASNDC63V6NCWULZU00P.html

◎「SankeiBiz」は12月15日付で掲載している「『唯一無二の存在』京都アニメーション 放火殺人事件が業界に与えた影響」でアニメ史の研究者で日本大芸術学部講師の津堅信之による平凡社新書京アニ事件」を取り上げている。
京アニ京都府内に本拠を置き、東京都内のスタジオが主流を占めるアニメ業界では異質な企業だ。スタッフを自ら育成し、作業の多くを外注せずに自社で完結させることでも知られ、津堅さんは「他社とのかかわりを極力絶ち、独立独歩。常にアニメ界の主流の対極にいて成功してきた」と評価。著作では京アニを「独立国」と表現した。》
https://www.sankeibiz.jp/workstyle/news/201215/cpd2012150602001-n1.htm

◎アニメ映画「鬼滅の刃 無限列車編」の興収が302億8930万円、観客動員が2253万人に達した。
https://mainichi.jp/articles/20201214/k00/00m/040/098000c
千と千尋の神隠し」(308億円)を抜くのは時間の問題だ。

◎「BBC NEWS JAPAN」は12月14日付で「追悼:英作家ジョン・ル・カレ氏 スパイ小説で弱い人間を描き続け」を発表している。
《ル・カレ氏は徹底的な調査と、卓越した章力によって、プロの情報部員が生きる薄暗いたそがれの世界を次々に描いた。それは「007」的なきらびやかさやアクション、ロマンスなどはない、覚束ない薄明かりの中で敵と味方も、愛と憎しみも、善悪の違いもはっきりしない世界だった。》
https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-55298730
ニートラップという言葉はル・カレの創作だ。元駐ギリシャ大使の齋木 俊男は「ジョン・ル・カレことデイヴィッド・コーンウエルとは若い頃ちょっとした接点があった」そうだ。
《時期は1961年から1~2年間。場所は当時西独の首都ボン。コーンウエル(以下ル・カレ)はイギリス大使館の二等書記官。私日本大使館の三等書記官で、歳は先方が2つばかり上。きっかけは忘れましたが、似たようなランクの同業ということで知り会ったのでしょう。
親しいというほどの仲でないながらパーティなどで見かけると話しかけるようになったのは、先方のドイツ語が達者でしかも西ドイツの政情について豊富な情報を持っていたからです。ル・カレのドイツ語は英米人に特有な訛がなくすこぶる流暢。英語が苦手な私には楽でした。
また自伝が明らかにしたようにそのとき彼は実はイギリスの諜報機関M16に属しており、その事情からでしょう西ドイツ 政界の事情に表裏ともに通じていました。当時は1961年のベルリンの壁構築など東西冷戦が高まるなか、西独ではドイツ再統一が声高にしかし空しく叫ばれていた時代。今となればもう歴史の一部です。》
https://www.kasumigasekikai.or.jp/2017-07-14-5/
ミステリー作家の阿津川辰海がツイートしている。
ジョン・ル・カレの訃報に動揺していました。今年の『スパイはいまも謀略の地に』も現代でスパイの生き様を描いた良作だった。
時代の空気感としてスパイ小説の面白さを知らない世代の私が、『寒い国』の面白さに打たれ、どっぷりハマったのがル・カレ作品でした。カーラ三部作はバイブルです。R.I.P.
https://twitter.com/tatsumi2017/status/1338444756951523328
早川書房のツイート。
《スパイ小説の巨匠ジョン・ル・カレが今月12日逝去されました。享年89。
『寒い国から帰ってきたスパイ』『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』等の数々の傑作で知られ、遺作は本年邦訳の『スパイはいまも謀略の地に』となりました。ここに謹んで哀悼の意を表します。》
https://twitter.com/Hayakawashobo/status/1338375897053679616

◎新田哲史がアゴラを去る。新田のツイート。
《【皆さまへ】突然のおしらせで恐縮ですが、今年限りで退任します。アゴラがほんの少しは政局に影響を与えるメディアになれたのも執筆陣、スタッフ、何より読者の皆さまのおかげです。今後のことはまた追ってお知らせします。5年3カ月、ありがとうございました!》
https://twitter.com/TetsuNitta/status/1338593623730868226

朝日新聞の尾形聡彦の直言ツイート。
《GoTo一時停止を発表する菅首相。社会の怒りを受け、追い込まれた決断です。11日のニヤついた「ガースー」発言を官邸記者たちは半ば好意的に報じたのに、世間では怒りが拡大。菅氏に心酔する多くのキャップら官邸記者と、読者の認識との深刻な乖離が浮き彫りになりました。官邸記者たちは猛省すべきです》
https://twitter.com/ToshihikoOgata/status/1338432746880823296
尾形聡彦は嘆いているのだ、呆れているのだ。
菅首相のぶら下がり。最初に「GoTo一時停止の判断」について聞いたあと、2問目は「今年の漢字『密」についての受け止め」。2問しかないぶら下がりで、コロナが緊迫した今の局面で、GoToについての再質問をせずに、「今年の漢字」が2問目とは...官邸クラブのあまりに緊張感のない判断に唖然としました》
https://twitter.com/ToshihikoOgata/status/1338445026288791552
同じく朝日新聞の飯島浩が引用ツイートしている。
菅総理がGOTO見直し世論に圧されて前言を翻し政策を大転換した日である。なぜ二の矢三の矢を飛ばし徹底追及しないのか。なぜ再質問しないで「今年の漢字『密』についての受け止め」を聞くのか。私も唖然とした。官邸クラブの政治記者の緊張感を欠いた質問が政治報道の信頼をどんどん失わせていく。》
https://twitter.com/SamejimaH/status/1338455413138759682
これも飯島浩のツイート。これは鋭い指摘である。
菅総理の「ガースー発言」と安倍総理の「コラボ動画」は同じ匂いがする。誰かの振り付けで世論受けを狙い、見事に滑った。実は安倍政権はこの振り付けでネット世論を制し、長期政権を築いた。二人の総理はその成功体験にとらわれ、目下に迫るコロナ危機下で民衆が期待するリーダー像を見誤ったのだ。》
https://twitter.com/SamejimaH/status/1338476915577872388
こちらは立川談四楼のツイート。
《菅さんの「ガースー」発言は、神経の逆撫でという点において、安倍さんの星野源に便乗したあの動画に匹敵する。支持者(大企業、富裕層)のみの優遇に力点を置き、弱者を一顧だにしない姿勢が露わになったから怒りを買ったのだ。強者はどうでもいい。弱者に目を向けることこそが政治家の仕事ではないか。》
https://twitter.com/Dgoutokuji/status/1338694885591842817
ニューズウィーク日本版」は12月15日付で藤崎剛人(ブロガー、ドイツ思想史)の「メルケル演説が示した知性と『ガースー』の知性の欠如」を掲載している。
《・・・東京の感染者数が初めて600人を超えた12月11日、菅義偉首相は「ニコニコ動画」の生放送に出演し、「こんにちは、ガースーです」と笑顔をみせた。コロナ対策に関して、人々の移動を促し、感染拡大の要因のひとつと指摘されている「GoToキャンペーン」について尋ねられると、一時停止は「まだ考えていない」と述べた。
この菅首相の振る舞いは、9日のメルケル演説と対比され、SNSで話題を呼んでいる。メルケルの情熱的に市民に訴えかける振る舞いに対して、菅首相の姿勢はパンデミックの危機にあってあまりにも不誠実にみえるというのだ。》
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/12/post-95187_1.php

◎「PRESIDENT Online」は12月12日付で「樋口恵子×上野千鶴子『真面目で責任感の強い"よい嫁"が社会の足を引っ張っている』」を掲載している。これはマガジンハウスから刊行された「しがらみを捨ててこれからを楽しむ 人生のやめどき」の一部を再編集したものである。上野は次のように発言している。
労働組合運動や社会運動をやっている男性は夫としては最悪のことがあります。というのは、社会運動って正義とか大義のためにあるものじゃないですか。これが仮にモーレツサラリーマンだったら、「あなたがやっているのは、せいぜい会社の利益のためでしょう?」と言えるんだけど、社会運動をしている夫が走り回って家を顧みなくても、同じようには言えないというのを聞いたことがあります。
例えば、いわさきちひろさん(絵本作家/1918~1874年)の夫の松本善明さん(弁護士・共産党所属の国会議員/1926~2019年)も、戦後最大の冤罪事件といわれた松川事件なんかを手がけたりして立派な人ですが、朝早く家を出て夜遅くまで帰らない。だから、ちひろさんが女家長で、両親や子どもの世話、家計の維持まで全部やって、もうボロボロだったらしいんです。で、ある日帰ってきた夫に「あなたが悪い」って言ったんですって。そしたら善明さんが無邪気に「僕のどこが悪い? だって、僕は一日中いないんだよ」って(笑)。》
https://president.jp/articles/-/41029?page=1
https://magazineworld.jp/books/paper/3123/

朝日新聞デジタルは12月15日付で「電通社員、下請けへの圧力認める『博報堂に協力するな』」を掲載している。
公取委独占禁止法違反に当たる行為がなかったかどうかを調査。関係者によると、この調査の過程で、社員は圧力をかけたことを認め、「ノウハウを他社に漏らしたくなかった」という趣旨の説明をしたという。公取委は違法性がなかったかどうか、慎重に判断するものとみられる。》
https://digital.asahi.com/articles/ASNDH4Q35NDHUTIL00S.html

◎12月13日(日)、新宿バルト9にて「このBLがやばい! 2021年度ランキング発表会 in BL FES!!」が開催され、新書館が刊行する「イエスかノーか半分か」シリーズ番外篇「つないで」と、総集篇第2弾「OFF AIR 2」が小説部門第1位を獲得した。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000015.000042122.html

東京新聞は12月15日付で「【独自】『首相の違法行為』学術会議任命拒否に抗議し辞任 東大名誉教授が化庁の会議座長を」(望月衣塑子)を掲載している。
化庁の登録美術品調査研究協力者会議の座長を務めていた佐藤康宏東大名誉教授が、菅義偉首相が日本学術会議の推薦した新会員候補6人の任命を拒否したことに抗議し座長を辞任していたことが分かった。》
《「私は学術会議とは縁もゆかりもないが」と前置きした上で、「拒否された6人の教授の自由を守らないことは、いくらでも学問の自由を時の政権に売り渡すことになる。首相の違法行為を許せば、研究者だけの問題にとどまらず、芸術家やメディアを含め、あらゆる表現者、そして市民にも確実に影響を及ぼすものになるだろう」と警鐘を鳴らす。》
https://www.tokyo-np.co.jp/amp/article/74395
佐藤康宏は「若冲伝」(河出書房新社)で芸術選奨部科学大臣賞を受賞している。
http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309256177/

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5)【深夜の誌人語録】

編集とは作品にとって調味料のようなものだ。