【文徒】2021年(令和3)2月9日(第9巻25号・通巻1922号)



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1)【記事】それでも森喜朗「援護射撃」の面々とその理由
2)【記事】森喜朗発言批判は五輪中止世論に転化する?!
3)【記事】アップルの栄光は今何処?原田泳幸が妻・谷村有美暴行容疑で逮捕
4)【記事】荒木優太VS「學界」のSNS論争について
5)【本日の一行情報】
6)【人事】ハースト婦人画報社 2021年2月1日付
7)【人事】東洋経済新報社 2021年3月1日付
8)【深夜の誌人語録】
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1)【記事】それでも森喜朗「援護射撃」の面々とその理由

毎日新聞が2月4日付で掲載した「森喜朗氏、会長辞任の可能性に言及 『女性が…』発言の波紋拡大で」を書いたのは鈴木琢磨であった。この記事について私は2月5日付ので次のようなくだりを引用し、《理解できないのは毎日新聞。2月4日付で「森喜朗氏、会長辞任の可能性に言及 『女性が…』発言の波紋拡大で」(鈴木琢磨)を掲載しているが、ここで森に対して援護射撃をするのかよ!》と紹介した。
《女性蔑視とも受け止められる発言が国内外で波紋を広げており、森会長は「軽率だった。おわびしたい」と述べ、今回の発言の真意について「一般論として、女性の数だけを増やすのは考えものだということが言いたかった。女性を蔑視する意図はまったくない」と説明した。森会長はさらに「昨夜、女房にさんざん怒られた。『またあなた、大変なことを言ったのね。女性を敵にしてしまって、私はまたつらい思いをしなければならない』と言われてしまった。今朝は娘にも孫娘にもしかられた」と語った。》
鈴木の言ってみれば「援護射撃」は、この記事にとどまらなかった毎日新聞は2月7日付で「森氏『説得受け辞意翻す』 発言翌日『辞めるよ』と家を出た 事務総長『5000人の組織どうなる』」を掲載しているが、この記事も鈴木琢磨によるものであった。森喜朗をさしずめ「国定忠治」にでも見立てたかのような「浪花節」のこぶしは唸りをあげる。
《4日午前11時過ぎ、森会長が到着した東京・晴海にある大会組織委員会事務局は張り詰めた空気だった。深刻な表情で武藤事務総長が言った。「会長、(辞任は)いけません」。毎日新聞のウェブ速報は午前10時5分に流れていた。「辞めるとまでは語っていなかったのだが、組織委の幹部らはそう受け取ったんでしょう。ただ実のところ、辞めようと腹をくくっていました。
私の軽率な発言で海外にまで波紋を広げた問題が、身を引くことで収束するならいいじゃないか、と。女房に『辞めるよ』と言い残して家を出たんです。辞めるだろうな、と女房はあの時、思ったでしょうね」
だが、森会長はその後、辞意を翻す。「みんなから慰留されました。いま会長が辞めれば、IOC(国際オリンピック委員会はかえって心配するし、日本の信用もなくなる。ここは耐えてください、と」。元五輪担当相の遠藤利明会長代行からは、加藤勝信官房長官小池百合子東京都知事が心配しているとの報告も受けた。「見ると、発言しなかった人はみんな泣いているんだ。一番こたえたのは武藤さんの言葉だったかな。『ここで会長が辞めれば、5000人の組織はどうなりますか』と詰められました」》
https://mainichi.jp/articles/20210204/k00/00m/050/033000c
https://mainichi.jp/articles/20210207/ddm/041/050/037000c
第29代航空幕僚長をつとめた田母神俊雄は森を擁護するのではなく、言論の自由をば擁護している。
森喜朗氏が3日、JOCの臨時評議員会で、「女性がたくさん入っている理事会の会議は時間がかかります」と発言し、国内外で波紋が広がっているとかいうニュースが流れた。
また言論弾圧が始まった。発言に反対の人は反対意見を言えばよい。これで森氏が謝罪したりすると日本の言論の不自由は一歩進む。
https://twitter.com/toshio_tamogami/status/1357049347448299521
森喜朗氏の発言、いいじゃないかそれぐらいというのが素直な気持ちだ。日本は本来寛容な社会のはずだ。しかしこのくらいの発言が批判され大騒ぎになる社会になってしまったのか。森氏を擁護しているのではない。何も言えない社会に向って進むことが怖いだけだ。》
https://twitter.com/toshio_tamogami/status/1357432807035871232
《森氏の発言を女性蔑視と受け取っている男女は少数であると私は思う。誰かを個人的に傷つけた訳でもない。一つの見解として聞いておけばよい。これをことさら騒いで問題を大きくしたい人たちは何を狙っているのか。日本をこの程度の発言にも気を遣う息苦しい社会にしたくない。》
https://twitter.com/toshio_tamogami/status/1358172895822946306
産経新聞は2月6日付で主張「森氏の問題発言 組織委もJOCも猛省を」で次のように書いていることは昨日ので紹介した。
《東京大会では、女性選手の比率が史上最高の48・8%となる。男女がほぼ同数となる歴史の転機の重みを、森氏が理解しているとは言い難い。政官財界との太い人脈を生かし、開催準備を推し進めてきた功績は否定しない。だが、その発言が事あるごとに物議を醸しても周囲が止められず、野放しになっていたことも事実だろう。
角が立つ物言いを、世間が受け入れたわけではない。森氏がトップに立つことが開催機運の障害となっている現実を、組織委は自覚してほしい。
JOCも同罪である。臨時評議員会では、森氏の発言をとがめる声は出なかった。山下泰裕会長が5日になってやっと発言を疑問視する見解を示したのは、当事者意識の深刻な欠如を物語る。》
https://www.sankei.com/column/news/210206/clm2102060003-n1.html
しかし、同じ紙面の「産経抄」では、次のように書いている。
《「正しさ」で厚化粧した集団いじめに立ち会ったかのようで、割り切れない。テレビをつけると、どの局も東京五輪・パラリンピッ組織委員会森喜朗会長の女性に関する発言に対する批判ばかりが飛び込んでくる。各界の識者らが異口同音に、森発言への怒りと当惑を表明していた。
▼発言内容の評価については、5日の小欄も「日本のイメージを著しく低下させる」と記した。ただ、同日の朝日新聞社説が「暴言・妄言」「ゆがんだ考え」「女性全般を侮辱」とまで書いたことには疑問と違和感を覚えた。失言だとしても、そこまで断じる根拠は何かと。》
https://special.sankei.com/f/sankeisyo/article/20210206/0001.html
しかも、この「産経抄」、オレと同じような物言いをして終える。
《マスコミが一斉に大上段に構え振り下ろす「正義」は、うさんくさく危うい。》
この「産経抄」に反応しているのが門田隆将だ。
《今日も新聞は“森発言”一色。毎日など1面23面29面で展開。一方で中国の公式統計でウイグル不妊手術が5年で女性19倍、男性12倍となり“ジェノサイド”が裏づけられている事は1行もなし。森報道に“マスコミが一斉に大上段に構え振り下ろす「正義」は胡散臭く危うい”と産経抄。既に日本に紅衛兵時代到来。
https://twitter.com/KadotaRyusho/status/1357909642903343106
門田は、こうもツイートしている。
《「誰の為でもないアスリートの為に五輪がある。絶対にやる」と森喜朗氏を辞めさせ、中止に持っていって政権に打撃を与えたい勢力の必死さが興味深い。彼らはジェノサイド認定に関わるウイグ不妊手術問題では絶対に騒がない。女性の人権の真の味方か、ただ商売道具にしているだけか、見極めの好機。》
https://twitter.com/KadotaRyusho/status/1357985303483437057
有本香はまずは新聞では「朝日主要打撃論」、政党では「日共主要打撃論」がお作法なのだろうか。私もその昔は「社民主要打撃論」に依拠していたけれど。
《朝日が引いている森喜朗さんの発言は、他紙に掲載の「発言全」とずいぶん違う。全を読む限り、これを「女性蔑視発言」とするのは無理ある印象。後でご本人にも話を聞き、全容をどこかで発表する。TV・新聞の偏向報道に私たちの社会をかき回されるのはもうたくさん。》
https://twitter.com/arimoto_kaori/status/1357182102865776641
森喜朗さん発言への批判の急先鋒は、新日本婦人の会か。なるほど。》
https://twitter.com/arimoto_kaori/status/1357186795008524289
有本は森絡みで、多くのツイートを発表している。
《TBSさん、ニューヨーク・タイムズが取り上げたから何だというの?》
https://twitter.com/arimoto_kaori/status/1357195956756701184
《「辞任しろ!」と騒いでいる筆頭が枝野氏や福島瑞穂氏ですからね(笑)森発言は不用意だったとは言えますが、いつも通りの印象操作と的外れなバカ騒ぎです。五輪組織委会長職も、森さんとしては頼まれたから「無償」を条件に引き受けただけのもの。世界の王族やプーチンとサシで話せる人は他にいません》
https://twitter.com/arimoto_kaori/status/1357317738897657859
だから何だというの?
《当然。余人をもって代え難いことは、IOCが一番よく知っている。》
https://twitter.com/arimoto_kaori/status/1357401683450449920
《森発言で小池都知事を調子づかせたのは痛かったね。今のコロナでの東京の窮状は知事の不作為によって引き起こされたと言って過言でないのだが、そこは一切責められず、森さんの「発言」ばかりが問題にされる。》
https://twitter.com/arimoto_kaori/status/1357676520005750784
有本は小池嫌いなのか。
《発言は撤回されたでしょう。そもそも、「差別」を主義としている人などどこにいるのでしょうか。》
https://twitter.com/arimoto_kaori/status/1357681061094821890
《二言目には、女性、女性と自らの属性に依ってばかりもの言う女性方へ。誰かに都合よく利用されていませんか。利用はするが、結局のところ評価しないというのが、あなたが妄想して嫌う「男社会」の真骨頂ですよ。いま、あなたを持ち上げている人々の真意を見抜いてください。》
https://twitter.com/arimoto_kaori/status/1357818254199197696
これは、私もそう思う。
森喜朗会長と電話でお話ししました。「女性を差別する意図はなかったが、多くの女性に不快な思いをさせてしまって申し訳なく思う」と仰っていました。やはりこの「騒動」は、あらためて事実関係をおさえて振り返ろうと思います。》
https://twitter.com/arimoto_kaori/status/1357856195382448128
《森さんは常にアスリート・ファーストで、自分以外の人のことを考える。だから不可能と言われたラグビーW杯の日本招致にも成功した。殆ど知られていないが、会長職を実質無償とするため、自身の報酬をアルバイト職員と同額の最低日給にし、その全額を積み立てて、組織委職員の懇親会費に充てている。》
https://twitter.com/arimoto_kaori/status/1358165619716222977
《森さんを擁護した知人が、ある会社の役員を辞める羽目に陥った。つくづく私は自由人でよかったなと思う。日本流ポリコレというより、これは古典的な日本流イジメなわけだが、それを率先してやっている人たちが、「私、進んでいる」と勘違いしているから始末に負えない。ただの村のイジメなのにさ。》
https://twitter.com/arimoto_kaori/status/1358327825699246081
小川榮太郎も「反小池」である。小川はフェイスブックに次のように投稿している。
《【小池政権への誘導に気づき連帯、行動せよ】森発言叩きは、明らかに東京五輪潰しの組織戦だ。尾崎東京医師会会長は去年8月にしんぶん赤旗のインタビューで事実上東京五輪を中止すべきとの輿論誘導を早くも行っていた。尾崎氏は小池応援団。危機を煽り続けてきたのと森叩きは同じリベラルメディア=野党=小池氏。同じ顔ぶれ。要するに、日本潰し、安倍=菅潰しの一貫した煽動の流れに森叩きがくる。森氏の発言断片で大火事を起こす放火が明かに狙われていたのだ。
私は小池都知事東京五輪は開催したいはずと見ていたが、寧ろ五輪などつぶれても、総理を目指すという裏のストーリーが描けつつあると推断する。細川新党を思い出せ。政党がなかったのに総理ができちゃった。小池政権に大きく誘導する全面的な日本売りの流れがあるとみるのが現状では自然であり、流れが出来たら自民党の4割も乗るであろう。来年の話をしている場合ではない。》
https://www.facebook.com/ogawaeitarou/posts/2393828067429469
小川は、こうも投稿している。
《女性蔑視だと騒ぐのが異常。男性が、子供が、女性が、高齢者が、某国人が、などと括って何か論評するとき、男性やおじさんで括ればどんな暴言も許されるが、女子供が対象だと発言者を社会的に虐殺する。それも個人としてモノ申すのでなく、マスコミによる社会的虐殺。特定の感想やカテゴライズを匿名の圧力で殺す。
森氏の発言は本筋からはどうでもいい単なる感想であろう。そんなものを寄ってたかって集団で人間の屑のように断罪する、これ以上卑しい人間の姿を私は人類史上ほかに見たことがない。こうした言論圧制はいつかとんでもない自滅を招くよ、西側リベラルという新しい人類の正義の管理者諸君。「新しい正義」は必ず滅びるからです。》
https://www.facebook.com/ogawaeitarou/posts/2392183694260573
最後に山崎行太郎のブログも紹介しておこう。山崎は2月7日付で森元首相(五輪・組織委員会・会長)の『女性差別発言(?)』を擁護する。」をエントリしている。
森元首相の発言は、以上のようなものだったらしいが、これが「女性差別発言」なのか。そうだとすれば、「女性」について、何事であれ、発言してはいけない 、ということになりはしないか。別にどうでもいいが、これも、皮肉を込めて、逆説的に言えば、一種の「言論弾圧」であり「言論統制」ということになりはしないのか。》
私などは、森発言にこれこそ女性差別発言ではないかと思っているクチなのだが、山崎の次のような物言いには全面的に同意できる。
《野党系議員たちは、ここぞとばかりに、森元首相バッシングに狂奔しているようだが、国民や大衆、民衆の「集合的無意識」というものを考えたことはないのだろうか、とふと思う。
いい加減な欧米マスコミの「空理空論」に便乗して、「日本は遅れている」だの「日本人として恥ずかしい」だのと、国会やマスコミで騒いでいる暇があったら、地方遊説でもやってみたらどうか。永田町や霞ヶ関辺りで、泣こうが喚こうが、選挙には勝てない。野党の支持率が下落するだけだろう。》
https://yamazakikoutarou.hatenadiary.com/entry/20210207/1612686985

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2)【記事】森喜朗発言批判は五輪中止世論に転化する?!

この世論調査の結果には衝撃を受けた。2月7日付で発表された共同通信の世論調査では森喜朗会長が会長として「適任とは思わない」が59.9%。「適任と思う」はたったの6.8%だった。
https://this.kiji.is/731071600118349824?c=39550187727945729
やはり2月7日付で発表された讀賣新聞世論調査では森発言に「問題がある」との回答は「大いに」63%、「多少は」28%を合わせて91%!
https://www.yomiuri.co.jp/election/yoron-chosa/20210207-OYT1T50131/
「適任とは思わない」が59.9%と「問題がある」91%の「内実」を今日も追っていくことにしよう。
朝日新聞デジタルは2月4日付で「『謝罪も主張もできていない』 元吉本広報が見た森会長」を掲載している。
吉本興業の元広報担当役員で著書に「謝罪力」がある竹中功さんは、この日の会見について「本来であれば謝罪をしたうえで、組織委のトップとして大会開催への思いをアピールするチャンスにしなければならなかった。それなのに謝罪も主張もできていなかった。ゴールの設定がまったくできていない会見だった」と指摘した。
謝罪は「『誰が誰に対して、何について謝るのか』が必要」だという竹中さん。森氏が「誰に対して、何を反省しているのか認識できていないことが露見した」とみる。》
https://digital.asahi.com/articles/ASP246RDPP24UTIL02S.html
時事通信が2月8日付で配信した「寺田明日香森喜朗会長発言に上げた率直な声 陸上日本記録保持者のママアスリート」(青木貴紀)で、陸上女子100メートル障害で12秒97の日本記録を持つ寺田は次のように語っている。
《森会長は女性が進出してくるのは嫌なんだな、という思いをすごく感じた。そういう中で五輪を迎えると、他国の女性からも反感があると思うし、もちろん日本国内でもあると思う。ご自身でお辞めになることはないと思うので、周りの方々が進退について考えていただければ。今回の五輪は多様性がメインと言っても過言ではない。そこをしっかり考えていただけるようなフラットな方がリーダーに就いていただければうれしいと、個人的に思う。》
https://www.jiji.com/jc/v4?id=202102tfterada0001
「ハフポスト日本版」は2月7日付で「『日本の性差別に金メダル森喜朗会長の発言を受けて、国際人権団体が痛烈な批判」を公開している。
東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会森喜朗会長が「女性が多いと会議が長くなる」などと発言したことに対して、国際人権団体の「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」が日本のジェンダー差別をめぐる状況について「金メダル級」とする章を掲載した。》
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_601f4a6fc5b6d78d4447121e?ncid=tweetlnkjphpmg00000001
共同通信は2月7日付で「働く女性ら、森氏に辞任求める 広島で集会、採択JOCに」を配信している。
《「はたらく女性の広島県集会」が7日、広島市内のビルで開かれ、女性蔑視発言をした東京五輪パラリンピック組織委員会の森喜朗会長(83)の辞任を求める書を採択した。書は後日、日本オリンピック委員会(JOC)へ提出する予定。》
https://this.kiji.is/731066317541556224
巖谷國士のツイート。
《辞任するつもりが引きとめられたから留まると?全世界流行病のさなかに、ろくな対策もしていない無能の政権が、全世界競技会をひらくと言いはって、しかも全世界に向けて最悪の差別体質を露呈してしまった会長を、そんなチャチな理由で続投させると?それに怒って抗議しないほど国民もチャチなのか?》
《今回の女性蔑視発言とその後の会見での弁明や恫喝は、政府与党の差別体質(イデオロギーでもある)を世界に知らせた。そればかりか、論理欠如の感情的表現、意味のずらし、公私混同、同調の強要などによって、言語=思考を抹殺しようとする現政権の妄執を露呈していた。いま阻止しなければ危ない。》
https://twitter.com/papi188920/status/1358152956277760000
https://twitter.com/papi188920/status/1358321673196371970
毎日新聞は2月7日付で「『黙るもんか』森氏辞任求めJOC前でホウキデモ 女性蔑視の『粗大ゴミを掃く』」(大島祥平)を掲載している。
《…7日、日本オリンピック委員会JOC山下泰裕会長)が入る東京都新宿区のビル前で、森会長の退任を求める抗議活動があった。
森会長が4日の謝罪会見で「(自分が)粗大ゴミになったのかも。そうしたら掃いてもらえば」と話したことから「ホウキデモ」としツイッターなどで参加が呼びかけられた。集まった十数人が小さなホウキや抗議のメッセージを無言で掲げる「サイレントスタンディング」で、2時間ほど抗議した。》
https://mainichi.jp/articles/20210207/k00/00m/040/124000c
三省堂国語辞典編集委員飯間浩明森喜朗発言について連ツイを発表したが、「蔑視」「差別」「偏見」の違いが端的に解説されている。なるほど、なるほど。
《森会長の発言について「自分は女性だが、そのとおりとしか思えない」「そんなに女性蔑視かなと、女性の自分は思う」との意見があります。「友人の女性たちは、みんな長話をする」と個人が発言したのなら、必ずしも問題になりません。でも、決定権のある立場の人がこれを言うと、差別発言なんです。》
《「友人の女性たちはよく長話をする」は事実かもしれません。これが「一般に女性は長話をするものだ」となると、男女を型にはめている可能性があります。さらに「女性が多い理事会は、時間を規制しないと終わらなくて困るそうだよ」と責任者が言うと、選考で女性差別につながるおそれがあります。》
《すでに述べたように、蔑視は軽蔑の心を表すことなので、「蔑視のつもりはなかった」と言われると追及しにくい面があります。一方、差別というのは実害を与えるものです。この場合は女性理事にまさしく「ガラスの天井」を設ける発言であり、蔑視発言というよりは差別発言というほうが正確です。》
《メディアでは今回「女性蔑視発言」という表現が多い。「差別」よりも「蔑視」のほうがマイルドだと考えて使っているふしがあります。でも、両者は別物です。ニューヨークタイムズは「会長が会議での女性の制限を提案」と本質を突いた表現をしています。要するに実害を与える差別だと言っているのです。》
《「男の人って○○だよね」「女性は○○だ」という発言は、個人レベルではそんなに問題にならないでしょう。ただ、個人でも、根拠なくこの表現を連発するのは避けたいです。「男の人ってコーラが好きですね」などと、何かというとこの型で語る人がいて驚いた経験があります。》
《補足もしくは蛇足です。「男の人ってコーラが好きですね」のような発言を何と呼べばいいか。実害を伴わないので差別ではなく、軽蔑していないので蔑視でもありません。これは「偏見」と分類すべき発言です。偏見は罪のない「独断と偏見」から、差別につながる深刻な偏見まであります。》
https://twitter.com/IIMA_Hiroaki/status/1358446033269784576

https://twitter.com/IIMA_Hiroaki/status/1358456853101834242
毎日新聞は2月8日付で掲載している「♯五輪をどうする『東京五輪は先進国のお葬式』 近現代史家の辻田真佐憲さん」で、辻田は次のように語っている。
《――森氏が女性蔑視の発言をしたことを受け、辻田さんは4日、ツイッター上で「東京オリンピックは本当に先進国のお葬式になってしまいましたね」とつぶやいていました。どういう意味でしょうか。
◆1964年の前回の東京五輪は、日本が先進国としてデビューする華々しい大会だったと今では言われています。今回の東京五輪についても、安倍晋三前首相が「もう一度世界の中心で活躍する国として再生する」と述べていたように、開催したい人たちにとっては「あの感動をもう一度」という思いが込められていました。
しかし、実際には、水質汚染や酷暑、費用の膨張など開催国としての問題点が次々に明らかになり、ここにきて森氏の女性蔑視発言が出てしまった。つまり、森氏の発言によって、先進国としてはありえないような時代遅れの価値観が日本に存在していることを国内外に示してしまったわけで、東京五輪が先進国としての日本の「お葬式」になると皮肉を込めて、つぶやいたわけです。》
辻田によれば、森発言は五輪撤退の引き金を引くことになるのかもしれない。
《――森氏の発言は、五輪開催に影響を与えるでしょうか。
◆もちろん影響はあると思いますが、それと同時に、関係者が五輪に関わることをやめるための口実になっていく可能性もあると思います。五輪から撤退するにしても、大義名分があった方がいいわけで、そういう意味では、森氏の失言はその大義名分になるわけです
今回の女性蔑視発言とは別ですが、森氏が「コロナがどうであろうと必ず(五輪を)やり抜く」と発言したことを受け、タレントの田村淳さんが聖火ランナーを辞退しました。五輪という泥船から脱出したい人にとっては、森氏の発言は最高の口実になっているわけで、撤退への引き金を引いたとも言えます。》
https://mainichi.jp/articles/20210207/k00/00m/040/077000c
2月7日付毎日新聞が掲載している「#五輪をどうする 森氏女性蔑視発言『一般社会では謝罪では済まない』 オリンピズムの伝道師」で東京都立大・武蔵野大客員教授の舛本直は次のように語っている。
《一般社会ではセクハラ、パワハラは「撤回」「謝罪」では済みません。それなのに政治家の人たちは「撤回」「謝罪」で済ませるのでしょうか? しかも、森さんはこれまでも失言を繰り返しています。お年寄りの政治家が名誉職のような形でオリンピック・パラリンピックの組織の長をやるのが、どだい無理な話なのです。政治の世界では撤回、謝罪で済むかもしれませんが、オリンピック・パラリンピックの委員会の職務はそんなことで務まるものではありません。
「オリンピズムの伝道師」を自称している私からしたら、これは問題視するしかありません。かといって森さんが辞任しても、この緊急事態で引き継げる適切な人がいるかというと、心配になることも事実です。》
https://mainichi.jp/articles/20210206/k00/00m/040/155000c
肝心の東京五輪については「このままの感染状況が続けば開催は厳しいでしょう」と述べている。
今日は仲俣暁生のツイートで締めよう。
《しかしまあ、あらゆる意味で今回の汚辱に満ちた東京五輪を象徴している人物であることは間違いない。「余人をもって代え難い」とは、森が辞めることすなわち五輪中止ということ。後任が安倍という風説も、これが政略五輪にほかならないことの証明なのでコロナ禍を理由に中止するのが唯一の退路かと。》
https://twitter.com/solar1964/status/1357798676865814529

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3)【記事】アップルの栄光は今何処?原田泳幸が妻・谷村有美暴行容疑で逮捕

毎日新聞は2月8日付で「マックHDの元社長を逮捕 妻への暴行容疑」(林田奈々)を掲載している。
《妻に暴力を振るったとして、警視庁渋谷署は6日、日本マクドルドホールディングス元会長兼社長の原田泳幸容疑者(72)を暴行容疑で逮捕した。容疑を否認しているという。》
https://mainichi.jp/articles/20210208/ddm/041/040/075000c
朝日新聞デジタルは2月7日付で「元マクドナルド会長・原田泳幸容疑者逮捕 妻への暴行容疑、否認」を掲載している。
《自宅で妻を殴ったなどとして、警視庁は6日、日本マクドナルドホールディングス元会長兼社長の原田泳幸(えいこう)容疑者(72)を暴行の疑いで逮捕した。捜査関係者への取材でわかった。容疑を否認しているという。》https://digital.asahi.com/articles/DA3S14792062.html?iref=pc_ss_date_article
原田泳幸アップルコンピュータ日本法人の社長を務めた後、日本マクドナルドHD、ベネッセホールディングスのトップをつとめたプロ経営者のハシリのような存在だ。過去は華やかだったのだ。現在はタピオカなどの販売を手がける「ゴンチャジャパン」の社長をつとめている。
三崎尚人が呟いている。
《報道で谷村有美さんの実名を出しているのは、ぱっと見東京新聞だけ。歌手を引退したわけではないから実名報道ありという判断なのかしら…。》
https://twitter.com/nmisaki/status/1358060056705593349
これがそう。東京新聞が2月6日付で掲載した「マクドナルドの原田元社長を暴行容疑で逮捕 妻・谷村有美さんの足殴る」。
《妻へ暴力をふるったとして、警視庁渋谷署は6日、暴行の疑いで、「日本マクドナルド」の元社長、原田泳幸容疑者(72)を逮捕した。
渋谷署によると、原田容疑者は5日、東京都内の自宅で妻のシンガーソングライター谷村有美さん(55)の足を殴るなどしたとされる。署は認否は明らかにしていない。妻が通報した。》
https://www.tokyo-np.co.jp/article/84494
産経新聞が2月6日付で掲載した「日本マクドナルド元社長を逮捕 自宅で妻に暴行容疑」も谷村有美の名前を出している。
https://www.sankei.com/affairs/news/210206/afr2102060004-n1.html
では讀賣新聞は? 2月7日付で「マックやベネッセの元トップ・原田泳幸容疑者、妻に暴行容疑…ゴルフの練習器具で殴る」を掲載している。谷村有美の名前は出していない。
《捜査関係者によると、原田容疑者は5日、東京都内の自宅で、50歳代の妻の腕や脚をゴルフの練習器具で殴った疑い。容疑を否認している。
妻が警察に通報したという。渋谷署が詳しい状況を調べている。》
https://www.yomiuri.co.jp/national/20210206-OYT1T50188/
万城目学がツイートしている。
《2009年「野性時代」で『バベル九朔』のプロトタイプとで言うべき第一話を書いたとき、主人公がレコ一にお邪魔するシーンに谷村有美を登場させているのであった。これは著者の雑居ビル管理人時代、1階の古レコード屋で見つけた実話がベース、そのとき値札は100円だったが切なかったので200円に変えた。》
https://twitter.com/maqime/status/1358077693082836993

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4)【記事】荒木優太VS「學界」のSNS論争について

昨日ので荒木優太が「マガジン航」に2月6日付で寄稿した「削除から考える芸時評の倫理」を紹介したが、この論争は最初から紹介しなければわかりにくいとの指摘を受けた。確かに、そうだ。森喜朗発言やら春砲などに気を取られてしまった私たちの失敗である。
まずは荒木のツイートから紹介しよう。荒木は2月5日に次のようなツイートを発表する。
《【訂正のお願い】今日発売の『學界』3月号に寄稿した新人小説月評の末尾が編集部によって勝手に削除されました(左:本誌、右:最終ゲラ)。消された「岸政彦『大阪の西は全部海』(新潮)に関しては、そういうのは川上未映子に任せておけばいいでしょ、と思った。」の一を追記してください。》
《あとで長い章を出すと思いますが、これは編集権の濫用であり、極めて横暴なものです。『學界』編集部を強く非難します。》
https://twitter.com/arishima_takeo/status/1357636393632108545
https://twitter.com/arishima_takeo/status/1357636547995082752
ここで言う「長い章」が「マガジン航」に発表した「削除から考える芸時評の倫理」なのであろう。「學界」の反応は早かった。目には目を、言語には言語を、ツイッターにはツイッターを、とばかりに「學界」の公式アカウントが同日夜、荒木優太に反論している。
學界3月号「新人小説月評」の筆者・荒木優太氏が、編集部に月評の内容を編集段階で勝手に削除されたとしてTwitter抗議していますが、編集部の認識はまったく異なります。ここに経緯を記し、荒木氏の投稿に反論します。》
《掲載されている月評から削除された3行について、編集部からは荒木氏に、批評としてあまりに乱暴すぎるのでもう少し丁寧に書くか、それでなければ削除してほしい旨申し入れました。》
《その3行はすでに荒木氏がTwitterで公開していますが、批評として成立しておらず、このままでは掲載できないと判断しそう伝えました。》
《編集部からの、より丁寧に論じる方向での改稿、でなければ削除の申し入れに対し、荒木氏からは、では、末尾に「全体的におもしろくなかったです。」と付け加えてくださいとの返答がありました。とても受け容れられる批評の言葉ではありません。》
《改稿していただけないのであればその3行は削除しますという編集部からの申し入れに対し、荒木氏からは「お好きになさるとよいでしょう」、ただし「その事実をSNS等で吹聴する」という返答でした。荒木氏の言うように「勝手に削除」したのでは断じてありません。やりとりの記録も残っています。》
《今出ている形は双方の話し合いの結果であり、「編集権の濫用」ではまったくありません。以上、経緯を記しました。》
https://twitter.com/Bungakukai/status/1357664278921183232

https://twitter.com/Bungakukai/status/1357665333637570572
最も反応が早かったのは「岸政彦『大阪の西は全部海』(新潮)に関しては、そういうのは川上未映子に任せておけばいいでしょ、と思った。」と作品を荒木に批判された岸政彦であった。岸は、荒木が【訂正のお願い】を発表した一時間後にこれをリツイートして、何と荒木を擁護しているのだ。
《驚いた。言われてる俺からすると糞みたいなコメントだけど(笑)、糞でも書く権利はある。その後のレスを見ると、編集部が勝手にやったんじゃなくて、ちゃんとやり取りはあったらしいが、最終的には書き手の判断が尊重されるべき。擁護したくないけど(笑)擁護せざるをえない。》
https://twitter.com/sociologbook/status/1357651243187924993
更に岸は、こうもツイートしている。
《それにしても「川上未映子に任せておけばいい」は、俺にも川上さんにもあまりにも失礼な糞みたいな評だな。不妊のことが出てくるかだろけど、そもそも『夏物語』は出産で終わる話だし、俺の不妊治療は俺が実際に体験したことで、女性の一人称で書かれてはいるが、自分自身の体験がベースになっている学作品としての批評ではなく、ただ大阪で不妊の話を書いたからといって「川上未映子に任せておけばいいでしょ」という薄っぺらい揶揄をするのは、これは書評や批評のテイをなしていない、非常に悪質で低レベルの章と言うしかない。
しかしそんな糞みたいな章でも、やはり最後は書き手の判断。
なので、今回はこれはこの荒木とかいう人を擁護せざるを得ない。
ただまあ、編集部と相当やりとりしたという経緯はちゃんと最初のtweetで書くべきやったと思う。「いきなり勝手にされた」みたいな印象操作しとるね(笑)》
https://twitter.com/sociologbook/status/1357651625440026632
https://twitter.com/sociologbook/status/1357652066756272129
https://twitter.com/sociologbook/status/1357652394914369537
岸政彦は自らの経験も吐露して荒木にエールを送っている。
《俺にも経験があって、ある大手出版社からある故人について書いてほしいと言われ、自分では批判とは思わずに、いろいろ正直なところを書いたのだが、驚いたことに「遺族から反対された」という理由で、短い章だが全ボツになったことがあった。そのときは俺もさすがに相当怒って、どうなったかというと、その大手出版社の社長が自ら俺の大阪の自宅まで謝りにきた(笑)(笑)
しかし章をボツにするということは書き手にとってはそれぐらいの事態で、繰り返すがいかに糞みたいな章だったとしても、俺はこの荒木とかいうひとを気の毒に思う。
なにか表現すれば毀誉褒貶あって当たり前。句があれば言われたほうも反論すればよい。俺はだいたいのことは無視するようにしているが、何を言われても何の実害もない。
そういう意味で、今回削除されたこのひとはお気の毒である。糞みたいなこと言われて不愉快ではあるが、おたがいがんばりましょう
https://twitter.com/sociologbook/status/1357653009858142209
https://twitter.com/sociologbook/status/1357653337810767872
https://twitter.com/sociologbook/status/1357653725746135040
荒木優太が「學界」の連ツイに反応している。
《言及ありがとうございます。詳しくは長にて説明しますが、とりあえず、①「批評の言葉」かどうかを編集部が判断するのがお門違いであり、私はメールにて「岸さんの箇所は現状ママでよろしくお願いします」という指示をちゃんと提出しています。》
《②そして、「現状、岸さんの作品についてもう少し説明していただけないのであれば(どこが駄目かというのももう少し明示していただけないのであれば)、編集部判断で最後の3行を削除するというような話になっています」などと言われれば、私には物理的に手出しできないのだから「お好きになさるとよいでしょう」と言うほかないではないですか。私の意志をちゃんと理解した上で、削除を強行するのは編集権の濫用だと思います。》
https://twitter.com/arishima_takeo/status/1357669533528383490
https://twitter.com/arishima_takeo/status/1357669783672524801
https://twitter.com/arishima_takeo/status/1357669895190634496
かくて2月6日付で「マガジン航」に公開された荒木優太の「削除から考える芸時評の倫理」は次のように書く。
《…2月5日発売の『學界』3月号の拙の末尾「岸政彦『大阪の西は全部海』(新潮)に関しては、そういうのは川上未映子に任せておけばいいでしょ、と思った。」(p.307)が編集部によって削除されるという事件が発生した。
検閲とはいわないまでも、不変更を指示した