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1)【記事】花田清輝が見出した小沢信男が亡くなった
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】
4)【お知らせ】
----------------------------------------2021.3.9 Shuppanjin
1)【記事】花田清輝が見出した小沢信男が亡くなった
小沢信男が亡くなった。毎日新聞は3月7日付で「作家の小沢信男さんが死去 93歳 評伝『裸の大将一代記』など」を掲載している。
《画家山下清の評伝「裸の大将一代記」などの作品で知られる作家の小沢信男(おざわ・のぶお)さんが3日午後11時47分、CO2ナルコーシスのため東京都千代田区の病院で死去した。93歳。》
https://mainichi.jp/articles/20210307/k00/00m/040/098000c
不忍ブックストリート代表の南陀楼綾繁がツイートしている。
《小沢信男さんが亡くなったという電話を受けたのは、昨日、石巻に向かう電車の中でした。私が谷根千に住むきっかけをつくってくださり、その後も影響を受けてきた方でした。半生記を聞き書きしたり、句集を出させていただきました。コロナ禍でお会いできないままお別れしたことが無念でなりません。》
https://twitter.com/kawasusu/status/1368566325929418756
小沢は例えば、こんな俳句を詠んでいる。
ためらってまた矢のごとき蜻蛉かな
徴兵も成人の日もないまんま
学成らずもんじゃ焼いてる梅雨の路地
「TIMELESS 石岡瑛子とその時代」(朝日新聞出版)の河尻亨一は学生時代から小沢と交流があり、小沢を手本としてきたという。
《作家の小沢信男さんが逝去されました。93歳。学生の頃からお世話になり、ここ数年、仕事でご一緒する機会もたびたびあり、ついひと月前にも電話でお話しただけに、寂しい気持ちが大きいです。》
《『犯罪紳士録』『東京百景』『裸の大将一代記 山下清の見た夢』『時代小説の愉しみ』『私のつづりかた』etcーー社会派ルポルタージュから俳句、時代小説論、街歩きエッセイ、アーティスト評伝まで。かと思えば地域コミュニティ誌の老舗「うえの」の編集、文芸運動のオーガナイズなども。》
《時代をへる中でアップデートするボーダーレスな執筆・編集活動は、私のお手本でもあります。文章の味わいという意味では神です。まさに匠の技でした。この場を借りて、ご冥福をお祈りします。小沢信男先生、ありがとうございました。》
https://twitter.com/kawajiring/status/1368552292295733258
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https://twitter.com/kawajiring/status/1368552297228169217
三一新書「ドキュメント 犯罪の主役たち」も小沢信男の仕事である。徳間書店の「タウン」「アサヒ芸能・問題小説特集」に1967年~1968年に発表した犯罪ルポを一冊にまとめた本である。
《昭和四十二年九月三十日、神田錦町角の古ビルの物置部屋で、二人の娘が心中した。捨てられた娘は畳に四肢をうち棄てて、罪ある娘はみずから五体を簀巻きにして・・・。
電車の中吊り広告は、太平楽に歌った。
「女の同性愛心中にみた隠微な関係」
「倒錯して女ふたりの愛の果て」
隠微に倒錯しているものは、だれか・・・。》
「90年代アメリカ映画100」の佐野亨のツイート。
《小沢信男さんに書かれなくなって、東京はどうなるのだろう。》
https://twitter.com/torusano1124/status/1368499311214956544
有田芳生のツイート。
《えっ!半藤一利さん、安野光雅さん、そして小沢信男さん。洒脱な文章が大好きでした。「みすず」連載の「賛々語々」(3月号)「松葉杖」が絶筆になってしまったのでしょう。残念です。お悔やみ申し上げます。昭和世代が消えていきます。》
https://twitter.com/aritayoshifu/status/1368479581649342470
「装丁、あれこれ」(彩流社)の桂川潤のツイート。
《作家の小沢信男さんが93歳で逝去。『本の立ち話』(西田書店)に寄せた似顔絵は、本人以上にご家族に喜ばれた。個人的にまず思い出されるのは田村義也さん装丁の『東京百景』(河出書房新社)かな。合掌》
https://twitter.com/jun_soutei/status/1368486923811975168
筑摩書房のツイート。
《作家の小沢信男さんがお亡くなりになりました。 筑摩書房では「ゼロ年代の50冊」ベスト10(朝日新聞)にも選ばれた晩年の代表作『東京骨灰紀行』や『ぼくの東京全集』(ちくま文庫)、『私のつづりかた』など多くの著書を刊行させて頂きました。謹んでご冥福をお祈りいたします。》
https://twitter.com/chikumashobo/status/1368458653850734594
中川六平の編集者として最後の仕事が小沢信男であった。晶文社の斉藤典貴がツイートを投稿していた。
《小沢信男さんが亡くなった。2013年の夏、中川六平さんが亡くなり、進行中だった『捨身なひと』を引き継いだ。ご自宅へお邪魔していろいろお話を聞かせてもらった。本当に貴重で楽しい時間だった。ありがとうございました。謹んでご冥福をお祈りいたします。》
https://twitter.com/noritakasaito/status/1368492288796594177
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2)【本日の一行情報】
◎毎日新聞は3月6日付で「GAFAにどう対抗? ヤフー、LINE両トップのインタビュー詳報」を掲載している。川辺健太郎の発言。
《日本に住む人、あるいはLINEが進出しているタイなどに住んでいる人たちの生活の身近な課題解決にいち早く答えていく、その国固有の社会課題に解決策を提示していく、これをスピーディーにやっていくことが、勝つことにつながっていくと思います。
「テック・ジャイアント」と呼ばれる(GAFAのような)巨大プラットフォーマーは、押しなべてグローバルなサービス。国ごとの課題解決の優先度が高いわけではない。例えば、日本のデジタル化の遅れについて特別に対応するということはないでしょう。我々は、その優先度の差を生かして、集中する地域にいち早く解決策を提示して、ユーザーの支持を得る。そういう戦い方をしていきます。》
https://mainichi.jp/articles/20210306/k00/00m/020/088000c
要するにローカリズムに賭けようというわけだ。川辺はわかっているのだ、身の丈を。
◎付録の「DIME」(小学館)だ!3月16日発売の5月号は「LEDビューティーミラー」。
https://dime.jp/genre/1096897/
女性向けの付録だ。
◎ダースレイダーは3月7日付「bizSPA!フレッシュ」に「菅首相長男の接待報道、文春にタダ乗りする他メディアの情けなさ」を発表し、こう書いている。
《ちなみに僕があえて文春という名前を何度も言っているのは、文春報道が出た後に各紙が追っかけていろいろと記事を書いているんですが、気になるのは他の新聞や週刊誌の報道は固有名詞を出さずに「一部週刊誌報道によると」などという書き方をして、クレジットをちゃんと載せないということ。でも明らかに文春の取材能力、調査報道の功績ですよね。》
《卑怯ですよ、文春という名前を出さないのは。文春に限らず、いろんなスクープを出したメディアに他紙が乗っかったり追っかけるときに、固有名詞を出さないんですよね。こういった慣例を改めて見て、日本のメディア空間はいびつだということを、今回も強く感じました。》
https://bizspa.jp/post-422619/
例えばリベラルな論調で知られる信濃毎日新聞が3月6日付で掲載した社説「総務官僚の接待 身内調査の限界が明白だ」に「文春」の名前はない。「文春砲」でさえ「わかった」報道の餌食にしてしまうのだ。こんな具合に。
《菅義偉首相の長男正剛氏が勤める「東北新社」から繰り返し接待を受けていた総務省の幹部が、NTTからも高額の接待を受けていたことが分かった。》
https://www.shinmai.co.jp/news/article/CNTS2021030600115
◎上野千鶴子が岩波書店から刊行した「女の子はどう生きるか」は10代に向けて書かれている。朝日新聞デジタルは3月8日付で「セレブな主婦を夢見るのはダメ?上野千鶴子さんと考えた」(三島あずさ、阿部朋美)を掲載している。上野は埼玉県立浦和第一女子高校の生徒たちとオンライン読書会で語り合った。
《Bさんは「上野さんが専業主婦に肯定的でないのは分かる」とした上で、「でも、頑張って自分を磨いてお金持ちと幸せな結婚ができれば、それでもいいのでは?」と疑問を投げかけた。
上野さんは「老婆心ながら」と笑いつつ、「子育ては期間限定。それに、離婚の可能性や離職後の再就職の難しさ、非正規雇用の不安定さなど、さまざまなデータをふまえると、みなさんの世代で専業主婦を選ぶのはリスクが高いことがわかっている。そのことは覚えておいてほしい」と答えた。》
https://digital.asahi.com/articles/ASP354Q3MP32UTIL04D.html
◎「リアルサウンド」が3月8日付で公開している「『文學界』編集長・丹羽健介が語る、実験場としての雑誌 『文芸誌は絶えず変わっていく文学の最前線』」で丹羽は次のように語っている。
《今は意識が変わりましたが、文学と比較して週刊誌を低く考えるところがあったと思います。自分のデスクの本棚に『ランボー全詩集』をさして、俺はこんなところにいる人間じゃない、本当は文学をやりたいんだと厭味ったらしくアピールしたりしていました。そうしたらある日、後に社長になった当時の平尾隆弘編集長から「昼ご飯に行かない?」と呼び出され、2人で話しました。
「丹羽君は、文学は本のなかだけにあるように思っているかもしれないけど、僕は違うと思うんです。見方をかえれば、日々社会で起こっていることにも文学的興味をそそることがあるんじゃないか」。意味がよくわからないままなんとなく丸め込まれた形でしたが、そういわれたことが心に残って、週刊誌ジャーナリズムと文学を優劣で考えるのはやめました。あらゆるものの中に文学があるという考えは今につながっている気がします。》
https://realsound.jp/book/2021/03/post-718053_2.html
平尾が国文社から刊行した「宮沢賢治」は立派な文学であった。詩人の鮎川信夫を週刊誌ジャーナリズムの世界に引きずり込んだのは、確か平尾の仕事であったはずだ。
◎宮崎本大賞は行成薫の集英社文庫「本日のメニューは。」に決まった。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000211.000011454.html
◎3月8日(月)の重版によってて発行部数50万部を突破した宇山佳佑の「桜のような僕の恋人」(集英社文庫)がNetflixで映画化されることになった。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000214.000011454.html
◎「プチコミック」4月号(小学館)にて、創刊45年目のアニバーサーリーイヤーを飾る豪華企画「Happy45」が発表された。なかでも注目は漫画家と読者によるオンライン飲み会が実施されることだ。第1弾として、「天は赤い河のほとり」「夢の雫、黄金の鳥籠」の篠原千絵、「せいせいするほど、愛してる」「どうしようもない僕とキスしよう」の北川みゆきをゲストに迎え、4月23日(金)に開催を予定している。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001047.000013640.html
◎凸版印刷、電通、サイバー・コミュニケーションズは、第四回「eSPORTS TRINITY」をオンライン形式で3月24日(水)に開催する。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000620.000033034.html
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3)【深夜の誌人語録】
一番である必要は全くない。
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4)【お知らせ】
「文徒」2000号まで、あと60号。